ここで重要なのは、i-Construction 2.0の省人化は、現場から人を機械的に減らすことだけを意味していないという点です。測量、設計、施工、出来形管理、検査、書類作成までをデータでつなぎ、移動、待機、重複入力、手戻り、確認のやり直しといった「付加価値を生まない仕事」を減らし、限られた人員でも回る体制をつくることが本質です。したがって、最新機器を入れれば自動的に省人化できるわけではありません。大切なのは、どの工程のどのムダを削るのかを見極め、現場の流れ全体を設計し直すこ とです。
目次
• i-Construction 2.0で省人化は本当に進むのか
• 省人化が進みにくい現場の共通点
• ポイント1 計測・設計・施工・検査を3次元データでつなぐ
• ポイント2 二重入力と紙の転記をなくす
• ポイント3 遠隔臨場と遠隔検査を前提に工程を組む
• ポイント4 人がやる判断と自動化する作業を切り分ける
• ポイント5 着工前シミュレーションで手戻りを減らす
• ポイント6 省人化を数字で管理する
• ポイント7 小さく始めて標準化する
• まとめ:省人化を現場改善につなげるには
i-Construction 2.0で省人化は本当に進むのか
つまり、i-Construction 2.0は、従来のICT活用工事をさらに広げた施策であると同時に、施工機械の自動化だけを指すものでもありません。施工そのものを自動化する取組だけではなく、データをつなげること、施工管理や監督検査を遠隔化することまで含めて、現場のオートメーション化を進める枠組みです。そのため、現場の実務担当者が注目すべきなのは、「何を入れるか」よりも「どこで人が張り付き、どこで人が移動し、どこで入力し直しが起きているか」です。ここを見誤ると、ツールやシステムは入ったのに、省人化した実感がないという状態に陥ります。
さらに見落としがちなのは、i-Construction 2.0が制度や機械の話だけではなく、働き方の設計変更でもあることです。現場でしかできないと思い込まれてきた確認作業、同じ情報を何度も転記する書類業務、口頭依存で引き継がれていた判断基準などを見直さなければ、省人化は表面的なものに終わります。逆にいえば、工程間の受け渡しを滑らかにし、誰が見ても同じ情報にアクセスできる環境をつくれれば、少人数でも品質と安全を維持しやすくなります。
省人化が進みにくい現場の共通点
省人化が進みにくい現場には共通点があります。それは、個別工程だけをデジタル化して満足してしまうことです。たとえば、計測だけはデジタル化されていても、その後の図面化、出来形確認、発注者説明、検査資料作成が従来どおりであれば、現場全体の負担は思ったほど減りません。データがあるのに紙に貼り直し、写真があるのに台帳へ転記し、3次元情報があるのに最後は2次元の見た目だけで説明していると、デジタル化が部分最適で終わってしまいます。
もうひとつの共通点は、省人化を人数の話だけで考えてしまうことです。現場の実 感としては、人数を減らすより先に、移動回数を減らす、待ち時間を減らす、再計測を減らす、確認のやり直しを減らすほうが効果は大きいことが多くあります。たとえば、発注者確認のために毎回現場へ人が集まる、手戻りを恐れて機械や作業員を解析待ちで拘束する、事務所に戻ってから再度入力する、といった状態が続けば、人数が同じでも実質的な生産性は低いままです。省人化とは、こうした見えにくいロスを削ることだと捉え直す必要があります。
その意味で、i-Construction 2.0を現場改善につなげるには、工種ごとの高度な自動化技術だけを追うのではなく、まずは日々の仕事の流れを棚卸しすることが近道です。どこで紙が発生するか、どこで二重入力が起きるか、どこで経験者しか判断できない状態になっているかを洗い出すと、次に手を付けるべきポイントが見えてきます。
ポイント1 計測・設計・施工・検査を3次元データでつなぐ
ここで言う「つなぐ」とは、起工測量、施工計画、出来形確認、検査説明、維持管理への引き継ぎまで、同じ座標系と同じ前提で情報を扱えるようにすることで す。これができると、現場担当者は毎回ゼロから資料を作り直す必要がなくなり、設計意図の読み違い、施工位置の認識違い、出来形説明の食い違いが減ります。3次元データが途中で切れずに流れれば、「誰が何を見て判断したか」が揃いやすくなり、確認業務そのものが短くなります。
実務では、最初からすべての工種で完璧な3次元運用を目指す必要はありません。むしろ効果が出やすいのは、土工や構造物周辺のように、形状確認や数量確認、干渉確認が頻繁に起きるところから始めることです。特に、現況把握、施工中の進捗確認、出来形説明のあいだで同じ情報を何度も作り変えている現場では、3次元化の効果が出やすくなります。
また、3次元データを活かすには、モデルを作ること自体を目的化しないことが重要です。現場改善の観点では、モデルの豪華さよりも、誰が更新するか、どの情報を正とするか、写真や計測結果をどう結び付けるかを決めておくほうがはるかに大切です。3次元データは、上手く使えば省人化の起点になりますが、更新ルールが曖昧だとかえって混乱を生みます。最初に運用の型を決めておくことが、後の省力化を左右します。
ポイント2 二重入力と紙の転記をなくす
現場で実際に大きな負担になっているのは、建機操作そのものよりも、情報の写し替えです。i-Construction 2.0のデータ連携のオートメーション化では、設計データと後工程で使うデータをつなげ、同じデータを再度手入力しない方向が明確に示されています。さらに、3次元モデルなどの活用によって積算に必要な情報を自動入力する考え方や、電子成果品から必要情報を検索しやすくする方向性も示されています。
この考え方を現場改善に置き換えると、まず減らすべきは、紙に書いた内容を事務所で再入力する流れです。日報、出来形メモ、写真整理、検査資料、協議用の説明資料がそれぞれ別の様式で存在し、しかも同じ数値や同じ位置情報を何度も入力している現場では、人手不足以前に作業設計に無理があります。省人化を進めるなら、入力のタイミングを一回に寄せること、現場で取った情報をそのまま使い回せる形にすることが重要です。
たとえば、位置情報付きの写真、測点や部材と紐づく記録、時刻と担当者が追える作業履歴が、同じ基盤上で管理できれば、説明資料のためだけに後から情報を拾い直す必要が減ります。ここで大切なのは、何でもかんでも詳細入力させることではありません。後で使う情報だけを、現場で無理なく取れる最小限の形で残す設計にすることです。入力項目が多すぎれば現場は回らず、結局あとで人手をかけて補完することになります。
紙をなくすこと自体を目標にする必要もありません。本当に見るべきなのは、紙が悪いのではなく、同じ情報が複数の媒体に分散している状態です。紙が残っても、元のデータが一つで、そこから必要に応じて出力される構造になっていれば、ムダは大きく減ります。逆に、紙を廃止しても、別の画面に同じ内容を何回も打ち込むなら省人化にはつながりません。
ポイント3 遠隔臨場と遠隔検査を前提に工程を組む
ここで重要なのは、遠隔臨場や遠隔検査を「できたら使う便利機能」として扱わないことです。本気で省人化したいなら、最初から遠隔確認を前提に工程を組み立てる必要があります。確認してほしいポイント、撮影すべき画角、必要な解像度、リアルタイムで見せるのか記録映像で足りるのか、現場側と確認側の役割分担はどうするのかを事前に決めておくことで、立会いのためだけに人が集まる回数を減らせます。
遠隔化の効果は、単純な移動時間の削減だけではありません。確認の順番待ち、日程調整のし直し、担当者の同席のための拘束、現場から事務所へ戻っての説明作業まで含めて圧縮できる点が大きなメリットです。特に複数現場を抱える担当者にとっては、移動が減ることで、品質確認や安全確認に使える時間そのものが増えます。結果として、少人数でも管理の目が届きやすくなります。
ただし、遠隔化は現場の段取りが悪いと機能しません。映像が見えればよいわけではなく、確認に必要な情報がその場で出せること、記録が残ること、後から追跡できることが必要です。現場改善の観点では、通信機器やカメラの種類以上に、確認手順の標準化のほうが重要です。何を見せれば合格かが曖昧なままだと、結局、現地再確認が発生し、省人化の効果は薄れてしまいます。
ポイント4 人がやる判断と自動化する作業を切り分ける
省人化を急ぐと、「できるだけ無人にする」「なるべく人を減らす」という発想に寄りがちですが、現場実務ではその考え方は危険です。i-Construction 2.0の施工のオートメーション化でも、自動施工機械はオペレータが搭乗せず、カメラやセンサーで周辺状況を把握し、得た情報をもとに施工する方向が示される一方で、安全ルールの策定や機能要件の整備が並行して進められています。1人で複数台の建設機械施工を現場外から管理するイメージも示されていますが、それは「人が不要になる」ことではなく、「人の役割が変わる」ことを意味します。
現場改善の観点で言えば、自動化に向くのは、繰り返しが多く、条件が整理しやすく、危険が高いわりに判断の幅が小さい作業です。反対に、周辺環境の変化が激しい作業、関係者調整を伴う作業、例外処理が多い作業は、依然として人の判断が中心になります。この切り分けが曖昧だと、自動化の導入後も人がつきっきりになり、期待したほど省人化が進みません。
たとえば、日常的な進捗把握、定型的な出来形確認、記録整理、位置の見える化のような仕事は、デジタル化や半自動化との相性が良い領域です。一方で、施工条件の急な変更への対応、近隣との調整、危険予知に基づく中止判断、工程変更の意思決定は、人が担うべき核です。すべてを自動化対象にするのではなく、人が価値を出す部分を残し、それ以外を徹底的に軽くすることが、省人化の成功パターンです。
また、この切り分けは現場ごとに言語化して共有する必要があります。経験者だけが暗黙知として持っていると、担当者が変わった瞬間に現場が止まります。i-Construction 2.0を活かすうえでは、機械やソフトよりも先に、判断基準の標準化が必要です。誰が見ても同じ条件で同じ対応ができるように整理しておけば、自動化との分担も明確になり、教育負荷も下がります。
ポイント5 着工前シミュレーションで手戻りを減らす
なぜこれが省人化につながるのかというと、現場での人手不足を悪化させる最大の要因の一つが手戻りだからです。施工ヤードの 取り合い、仮設動線の干渉、重機の作業範囲の競合、既設構造物との取り合い、検査タイミングの認識違いなどは、現場で起きてから直そうとすると、一気に人手を消費します。反対に、着工前に関係者間で施工イメージを共有し、どこにリスクがあるかを見える化しておけば、同じ人数でも現場はかなり回しやすくなります。
実務では、複雑な工事ほど、着工前レビューの密度が重要です。平面図や断面図だけで済ませず、工程の流れに沿って、どの順序で施工するのか、どの時点で何を確認するのか、どこで他工種とぶつかるのかを事前に擦り合わせることで、現場の迷いが減ります。現場での迷いが減るということは、追加の打合せ、再説明、やり直しが減るということです。これはそのまま省人化につながります。
シミュレーションは大規模現場だけのものではありません。小規模でも、土量の増減、搬入経路、仮置き位置、出来形確認の段取りを先に可視化しておくだけで、日々の段取り替えが少なくなります。i-Construction 2.0の本質は、高度なデジタル表現そのものより、先回りして現場の迷いをなくすことにあります。
ポイント6 省人化を数字で管理する
現場実務で見たいのは、たとえば起工測量から施工着手までに要した日数、現場立会い回数、再計測の件数、写真整理と帳票作成にかかった時間、出来形説明資料の作成時間、解析待ちによる拘束時間、検査対応のための移動時間といった項目です。これらは一見地味ですが、実際には人手を大量に消費している領域です。ここが減っていなければ、どれだけ高度な機械やモデルを使っていても、現場の省人化は進んでいないと考えるべきです。
数字で管理するメリットは、改善の優先順位が明確になることにもあります。たとえば、現場作業そのものより書類作成時間が重いのであれば、先に見直すべきは施工機械ではなく情報整理の流れです。逆に、測量や出来形確認のやり直しが多いのであれば、計測精度やデータ連携の仕組みを先に直すべきです。省人化は総論では進まず、どの工程に何時間かかっているかを見てはじめて具体策に落ちます。
また、数字を持つことは社内 調整でも有効です。新しい運用を現場に定着させるには、手間が増えたように見える初期段階を乗り越えなければなりません。そのとき、移動時間がどれだけ減ったか、再入力がどれだけ減ったか、担当者あたりの現場数をどこまで広げられたかが見えると、改善を続ける理由が共有しやすくなります。
ポイント7 小さく始めて標準化する
最後のポイントは、一気に全部変えようとしないことです。BIM/CIMの現在の課題として、関連人材の不足、データ連携の未充実、現行プロセスからの転換の難しさが挙げられているように、制度の方向性が明確でも、現場への実装は段階的に進める必要があります。逆にいえば、今は完璧な統合環境を待つより、効果が出やすい範囲から始めて標準化したほうが前に進みます。
おすすめなのは、まず一つの工種、一つの現場、一つの書類業務で成功パターンをつくることです。たとえば、現況把握から出来形確認までを同じ位置基準で回す、写真と位置情報を一体で管理する、遠隔確認の手順を統一する、といった小さな単位から始めると、現場の抵抗が少なく、改善効果 も確認しやすくなります。重要なのは、単発の成功で終わらせず、次の現場でも同じ手順で回せるようにすることです。
標準化で特に効くのは、ファイル命名、座標の扱い、写真の取り方、確認タイミング、更新担当の決め方です。これらが現場ごとにバラバラだと、データがつながらず、せっかくのデジタル化が引き継ぎのたびに失速します。反対に、最低限のルールが統一されていれば、担当者が変わっても運用が崩れにくくなり、少人数でも安定して回せるようになります。
i-Construction 2.0は壮大な構想に見えますが、実際の現場改善は地道です。毎日の仕事を少しずつ軽くし、そのやり方を横展開できる形にすることで、はじめて省人化が定着します。大きな制度を現場に落とし込むときほど、小さな標準化の力が効いてきます。
まとめ
i-Construction 2.0で省人化は進むのかという問いに対しては、進むと答 えてよいでしょう。ただし、その前提は、現場の仕事を「人を減らす発想」ではなく、「ムダを減らして少人数でも回る流れに変える発想」で見直すことです。施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化という3本柱は、どれか一つだけを導入しても十分ではありません。計測から検査までのデータをつなぎ、二重入力をなくし、遠隔確認を前提に工程を組み、人がやる判断と自動化する作業を切り分け、着工前のシミュレーションで手戻りを減らし、その効果を数字で追い、小さく始めて標準化する。これが現場改善としての王道です。
人手不足が続く時代には、人数を増やすことより、今いる人が高い付加価値を出せる状態をつくることのほうが現実的です。そのためには、現場で位置を取る、記録する、共有する、確認するという日常業務の負担をどこまで軽くできるかが重要になります。i-Construction 2.0を大きな制度論で終わらせず、まずは日々の測位、出来形確認、情報共有の省力化から着手したいなら、iPhone装着型GNSS高精度測位デバイスであるLRTKのように、現場で扱いやすく、取得した位置情報をそのまま実務に結び付けやすい仕組みを取り入れることが有効です。簡易測量を無理なく現場運用に乗せ、少人数でも精度とスピードを両立しやすい環境を整えることが、これからの現場改善の第一歩になります。
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