目次
• i-Construction 2.0で人材像が変わる理由
• i-Construction 2.0で求められる人材の共通点
• 必要スキル1 3次元データを扱う力
• 必要スキル2 デジタル施工管理を回す力
• 必要スキル3 現場と技術をつなぐ調整力
• 必要スキル4 安全と自動化を両立する運用力
• 必要スキル5 学び続けて変化を定着させる力
• 会社として進めたい育成の考え方
• まとめ
i-Construction 2.0で人材像が変わる理由
人材像が変わる最大の理由は、建設業界がこれまでと同じ人数構成、同じ役割分担のままでは回りにくくなっているからです。国土交通白書では、建設業や運輸業で就業者の高齢化や若年者の入職減少が見込まれ、中長期的な担 い手の確保と育成が喫緊の課題だと整理されています。さらに建設技術者数は2020年以降5年ごとに約1.5〜3.0%ずつ、建設技能労働者数はおおよそ5年ごとに約7〜8%ずつ減少し、2025年時点では建設技能労働者の約半数を50歳以上が占める見込みとされています。人が減るなかで、従来どおり人手を増やして対処する発想だけでは限界があるため、現場全体の仕事の進め方そのものを変える必要があります。
そのためi-Construction 2.0は、単なる機械化の話ではなく、仕事の流れをデータでつなぎ、現場作業を遠隔化・省力化し、判断の質と速度を上げる取組として進められています。2025年度の取組整理でも、3次元モデルと2次元図面の連動、属性情報の標準化、デジタルデータを活用した監督・検査、遠隔施工や自動施工の環境整備などが具体策として並んでいます。ここから読み取れるのは、これから必要とされる人材が、単工程の専門家ではなく、データの入り口から成果確認までを横断して見られる人へ移っていくということです。
i-Construction 2.0で求められる人材の共通点
ここで重要なのは、すべてを 一人で極める必要はないという点です。測量寄りの担当者、施工管理寄りの担当者、設計寄りの担当者で強みは違って構いません。ただし、これからは自分の専門外にまったく触れない人よりも、自分の専門を軸にしながら周辺のデジタル工程を理解し、他職種と会話できる人の価値が高まります。たとえば、現場担当者が3次元モデルの見方を理解していれば、設計との認識差を早期に見つけやすくなります。施工管理担当者が点群や出来形データの意味を理解していれば、検査や協議を効率化しやすくなります。人材の評価軸は、作業を抱え込む力から、流れをつなぐ力へ変わっていくと考えるとわかりやすいです。
必要スキル1 3次元データを扱う力
この力が必要な理由は、今後の現場では2次元図面だけを読めれば十分、とは言い切れなくなるからです。2025年度の整理では、3次元モデルを契約図書として活用するため、3次元モデルと2次元図面の連動を原則化し、連動確認ルールの策定や試行工事、2次元図面作成労力の削減が進められています。これは、将来の業務で3次元モデルが参考資料ではなく、実務判断の基盤になっていく方向を示しています。したがって、今後評価される人材は、3次元データを「専門部署が作るもの」として受け身で眺めるのではなく、自分の担当業務にどう使うかを 考えられる人です。
ただし、3次元データを扱う力とは、高度な専門ソフトを自在に操作することだけを意味しません。現場実務でまず重要なのは、3次元モデルや点群を見たときに、どこを確認すべきかを理解できることです。たとえば、施工計画に影響する干渉箇所、法面や構造物の形状差、設計と現況のずれ、出来形確認に必要な基準面との関係などを読み取れることが重要です。加えて、データの更新タイミング、座標や基準の扱い、誰が見ても同じ解釈になる表現かどうかを意識できると、現場の手戻りは大きく減ります。3次元データを使いこなす人とは、派手な操作をする人ではなく、現場判断に必要な情報を外さず読める人です。
必要スキル2 デジタル施工管理を回す力
このとき必要なのは、機器に詳しいことよりも、施工管理の目的を理解していることです。何のために計測するのか、どのタイミングで記録すれば後工程が楽になるのか、どのデータなら協議や検査で使いやすいのか、誰にどの形式で共有すれば意思決定が早くなるのか。こうした設計ができる人は、同じ技術を使っても成果の出 し方が違います。逆に、現場でデータを取って満足してしまい、後で使えない形式のまま眠らせると、デジタル化の効果は出ません。i-Construction 2.0で求められるのは、機器担当者ではなく、データの流れを止めない施工管理担当者です。
また、デジタル施工管理を回せる人は、現場の負担軽減にも直結します。デジタルデータを活用した監督・検査の試行では、AR等を用いて現地で出来形の良否を視覚的に把握し、段階確認や実地検査の効率化、迅速化、ペーパーレス化につなげる方向が示されています。これは、単に新しい見せ方を導入するという話ではありません。現場の確認作業を、より短時間で、より共通認識を持ちやすい形に変えるということです。したがって、これからの施工管理担当者には、帳票づくりの正確さに加えて、データを使って現場確認の質を上げる発想が欠かせません。
必要スキル3 現場と技術をつなぐ調整力
この事実が示しているのは、今後の人材評価で重要になるのが、単独で作業できることよりも、複数分野の橋渡しができることだという点です。たとえば、現場側の事情を知らないまま技術導入を進めると、通信環境、施工手順、安全区画、出来形確認方法のどこかでつまずきます。逆に、現場の制約だけを見て新技術を避け続けると、省人化や働き方改革の機会を逃します。調整力のある人は、その中間で現実的な落としどころをつくれます。実装可能な条件を整理し、誰に何を準備してもらうかを分け、導入前の不安を具体的な論点に分解できる人は、i-Construction 2.0の推進役として非常に価値が高いです。
調整力というと、会議がうまい人を想像しがちですが、本質はもっと実務的です。座標や基準を誰が管理するのか、3次元モデルの更新責任はどこか、施工データの保存場所はどこか、検査に使う形式は何か、現場のネットワーク条件は十分か、といった曖昧になりやすい点を事前に潰せることが重要です。i-Construction 2.0の現場では、技術導入の成否は高価な設備の有無よりも、関係者の役割整理と情報伝達の精度で決まる場面が少なくありません。だからこそ、これからの中核人材には、専門知識と同じくらい段取りと調整の力が求められます。
必要スキル4 安全と自動化を両立する運用力
このため、これから求められる人材は、新技術に前向きであるだけでは足りません。どの作業を自動化してよいのか、どこに人の確認を残すべきか、異常時の切り替えはどうするのか、通信断や計測誤差が起きたときの判断をどうするのかを考えられることが必要です。現場では、便利そうだから導入するのではなく、危険を減らし、品質を安定させ、関係者が納得できる手順に落とし込めるかが重要になります。安全と自動化を両立できる人は、攻めの導入と守りの運用を同時に考えられる人です。この視点がないと、どれだけ新しい技術を入れても現場に定着しません。
さらに言えば、この運用力は現場経験がある人ほど伸ばしやすい力でもあります。なぜなら、危ない場面、止まりやすい工程、確認漏れが起きやすい手順を知っているからです。ベテランの強みは、従来手法に固執することではなく、その経験を新しい運用設計に変換できることにあります。i-Construction 2.0で本当に求められるのは、若手のデジタル感覚とベテランの危険予知を対立させることではなく、両者を結び付けて安全な標準手順をつくる人材です。
必要スキル5 学び続けて変化を定着させる力
第五の必須スキルは、学び続けて変化を定着させる力です。i-Construction 2.0は、一度研修を受ければ終わる固定的な制度ではありません。3次元モデルの契約図書化、属性情報標準化、遠隔施工、デジタル監督・検査など、毎年のように試行、ルール策定、運用改善が進んでいます。2025年度の取組でも、3次元モデルと2次元図面の整合確認ルールや契約図書としての試行が進められ、施工管理の分野でも要領改訂や新しい試行が重ねられています。つまり、現時点での正解を暗記するより、変更点を追いながら現場へ落とし込む習慣を持つ人が強いのです。
ここで大切なのは、資格取得や座学だけを学びと捉えないことです。新しい計測方法を一つ試す、出来形確認の流れを一工程だけデータ化する、協議資料を2次元中心から3次元併用へ変える、写真整理のルールを見直す。こうした小さな改善を継続できる人は、現場の変化を定着させやすいです。i-Construction 2.0で必要なのは、天才的なデジタル人材ではなく、変化を嫌がらず、現場に合う形へ調整しながら前進させる人材だといえます。
会社として進めたい育成の考え方
ここまで見てきた5つのスキルは、個人の資質だけで身につくものではありません。会社としての育成設計が必要です。特に重要なのは、現場、測量、設計、施工管理の担当を完全に分断しないことです。i-Construction 2.0が目指しているのは、まさに工程横断のデータ連携だからです。担当ごとに閉じた教育をしていると、3次元データは作れても使われない、現場で計測しても検査につながらない、遠隔化しても協議が遅い、といった分断が起きやすくなります。育成では、個別スキル教育と同時に、前工程と後工程を理解する越境学習を組み込むことが欠かせません。
また、デジタル人材育成は若手だけのテーマではありません。北海道開発局のアクションプランでも、3つのオートメーション化の推進に加え、受発注者双方のデジタル人材育成が急務だと整理されています。つまり、現場の実務に最も近い中堅層や、判断経験の厚いベテラン層を巻き込まずに進めると、導入は進んでも定着しにくくなります。若手に操作を任せ、ベテランが判断するという分業は有効ですが、その間の会話が成り立つよう、共通言語を育てることが必要です。座標、3次元モデル、点群、出来形、属性情報、遠隔確認といった言葉を全員が最低限理解できる状態をつくると、導入スピードは大きく変わります。 港湾局
さらに、育成の起点は大規模投資でなくても構いません。重要なのは、日常業務の中でデータを扱う頻度を増やすことです。たとえば、現況確認を写真とメモだけで終わらせず位置情報付きで残す、点ではなく面で出来形を確認する発想を持つ、設計と施工の打合せで3次元表現を一度でも使う、といった小さな実践が人材の底力を育てます。デジタルが特定担当者の仕事のままだと組織は変わりません。誰でも触れられる簡単な入口を増やし、その先に高度な運用を積み上げる順番が現実的です。これは中小規模の事業者ほど効果的な進め方です。
まとめ
i-Construction 2.0で求められる人材とは、単に新しい機器を扱える人ではありません。3次元データを読み、デジタル施工管理を回し、現場と技術をつなぎ、安全と自動化を両立させ、変化を学び続けて定着させる人です。言い換えれば、現場経験を土台にしながら、データとデジタル技術を実務に変換できる人材こそ、これからの建設現場で価値が高まります。i-Construction 2.0は一部の先進現場だけの話ではなく、担い手不足と生産性向上に向き合うすべての現場に関係するテーマです。だからこそ、特別な人を探すより、今いる人材が一歩ずつデジタル対応力を高められる環境をつくることが重要です。
その第一歩として有効なのは、測る、記録する、共有するという日常業務をできるだけシンプルにデジタル化することです。現場で位置情報と3次元的な把握を無理なく扱えるようになると、後工程の説明、確認、協議、検査が確実に変わります。iPhone装着型GNSS高精度測位デバイスであるLRTKのように、現場担当者が日々の測位や記録を始めやすい仕組みを取り入れれば、特定の専門部署だけでなく、現場全体のデータ活用力を底上げしやすくなります。i-Construction 2.0に対応できる人材を育てるうえでも、まずは現場で使える形からデジタルを定着させることが、もっとも現実的で効果の高い進め方です。
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