目次
• i-Construction 2.0とは何か
• なぜ今、2.0への移行が必要なのか
• 従来のi-Constructionとの違い
• i-Construction 2.0の3つの柱
• 実務担当者の仕事はどう変わるのか
• 導入で誤解しやすいポイント
• 現場で進めるときの考え方
• まとめ
i-Construction 2.0とは何か
i-Construction 2.0をひとことで言えば、これまで進めてきたICT活用を土台にしながら、建設現場を「人が多く張り付かないと回らない現場」から「少ない人数でも安全に、継続的に、品質を確保しながら回せる現場」へ変えていくための方針です。2016年度からのi-Constructionでは、測量から設計、施工、検査、維持管理までの建設生産プロセス全体でICTを活用し、2025年度までに生産性を2割向上させることが大きな目標でした。これに対して2.0では、単にデジタル機器を使うだけでな く、自動化や遠隔化、データ連携まで含めて現場の運び方そのものを変えていくことが中心に置かれています。
なぜ今、2.0への移行が必要なのか
従来のi-Constructionとの違い
従来のi-Constructionと2.0の違いを実務目線で整理すると、第一の違いはゴール設定です。従来は、ICT機器や3次元データを建設生産プロセスに広く導入し、2025年度までに生産性を2割向上させることが中心でした。これに対して2.0では、2040年度までに少なくとも省人化3割、すなわち生産性1.5倍を目指し、安全確保や働き方改革も含めて、より長期かつ構造的な変化を狙っています。単年度の省力化や部分最適ではなく、人口減少を前提にした持続可能な現場運営へ視点が移っている点が大きな違いです。
第二の違いは、手段の置き方です。従来は「ICTを活用して人の作業を効率化する」色合いが強く、たとえば3次元測量、ICT建設機械、3次元設計データ、出来形管理のデジタル化などが中心でした。2.0ではそこか ら一歩進み、「施工そのもののオートメーション化」「設計から施工、検査までのデータ連携の自動化」「監督、検査、書類、確認行為まで含めた施工管理のオートメーション化」が明確に打ち出されています。実務的に言えば、人が一つひとつ手でつないでいた工程を、データと機械ができるだけ自律的につなぐ方向へステージが上がったということです。
第三の違いは、対象範囲です。従来のi-Constructionを「ICT土工」や「ドローン測量」の延長として理解していると、2.0も重機の高度化だけの話に見えがちです。しかし実際には、2.0は施工だけでなく、発注、設計、測量、監督、検査、維持管理へつながる情報の流れ全体を対象にしています。BIM/CIMの原則化やデータシェアリングの考え方が重要になるのは、まさにこのためです。現場で使う3次元データが、その場限りの一時ファイルではなく、後工程へ渡せる資産になるかどうかが、2.0時代の分かれ目になります。
i-Construction 2.0の3つの柱
第二の柱は、データ連携のオートメーション化です。ここで重要なのは、3次元データや設計情報を、測量 、設計、施工、検査の各段階でバラバラに持つのではなく、できるだけつながる形で扱うことです。BIM/CIMの原則化は、この流れを下支えする制度的な土台です。測量成果を設計へ渡し、設計モデルを施工へ生かし、施工で得た実績を検査や維持管理へつなぐ。この一連の流れが滑らかになるほど、二重入力、転記ミス、図面と現地の食い違い、書類作成の重複が減ります。2.0で求められているのは、高度なソフトを導入したかどうかより、現場データが次の工程で再利用できる状態にあるかどうかです。
この3本柱は別々に見えて、実際には密接につながっています。施工を自動化しようとしても、元になる設計データや地形データがばらばらでは機械は正しく動けません。データが整っていても、監督や検査が従来どおり現地常駐と紙中心のままでは、全体の省人化は進みません。逆に言えば、測量、位置出し、施工、出来形、検査をひとつのデータの流れとして見られる会社ほど、2.0への移行は速くなります。i-Construction 2.0を理解するうえで大切なのは、個別技術の先進性よりも、プロセス全体のつながりを見ることです。
実務担当者の仕事はどう変わるのか
実務担当者にとって一番大きい変化は、「現場で頑張る」ことの中身が変わる点です。従来は、測る人、図面を直す人、位置を出す人、写真を撮る人、書類をまとめる人が、それぞれの工程で都度がんばることで現場を成立させてきました。2.0では、その都度対応を減らすために、最初から後工程で再利用できるデータを作ることが重視されます。したがって、これから評価されるのは、単に現場経験が長い人だけではなく、座標系、3次元データ、属性情報、成果の受け渡し条件を理解し、工程全体でデータをつなげられる人です。
さらに、人材の役割も変わります。2025年度の取組予定では、自動施工の導入に必要な知識やスキルを整理し、自動施工コーディネータの育成に向けたプログラム作成が進められています。これは、将来の現場で求められる人材像が、単独で機械を動かす技能だけでなく、複数技術を組み合わせて現場全体を設計し、遠隔施工やデータ連携を成立させる調整力へ広がることを示しています。施工管理、測量、設計、情報管理の境目が、これまでより確実に薄くなっていくはずです。
もう一つ見逃せないのが、発注者と受注者のやり取りの質が変わる点 です。これまでは、現場で取得した情報を最終的に図面や写真帳票へ落とし込めば足りる場面も多くありました。しかし2.0では、取得したデータを次工程で活用しやすい状態で受け渡すことが重要になるため、成果の粒度、属性、更新履歴、共有方法まで含めて事前にすり合わせる必要が高まります。実務では、現場が終わったあとに資料をまとめる感覚ではなく、工事の最初から「どのデータを誰が次に使うのか」を意識して準備する姿勢が求められます。
導入で誤解しやすいポイント
i-Construction 2.0を語るときに起こりやすい誤解の一つは、「すぐに完全無人化を目指す話だ」という見方です。もちろん将来的な方向として無人化や自動化は重要ですが、現時点の公的資料を見ても、まず進んでいるのは遠隔施工の試行拡大、発注ルール整備、安全ルール整備、データ共有基盤づくり、人材育成などです。つまり実務の現場では、いきなり全部を自動化するのではなく、危険な作業から人を離す、遠隔化できる工程を増やす、データをつないで手戻りを減らす、といった段階的な導入が現実的です。
もう一 つの誤解は、「新しい機械や新しいソフトを入れれば2.0になる」という考え方です。しかし2.0の本質は、単品導入ではなく、データの入口から出口までを一貫して考えることにあります。たとえば高性能な計測機器を入れても、座標の扱いが曖昧で、成果の命名や更新ルールが統一されておらず、設計や施工に再利用できなければ、現場の負担はかえって増えることがあります。逆に、最初は小規模でも、測量、位置出し、出来形、検査で同じ基準のデータを回せれば、2.0的な前進は十分に始まっています。制度が小規模現場やモバイル端末活用まで視野に入れているのは、そのためです。
現場で進めるときの考え方
では、実務としてどこから着手すべきか。おすすめは、いきなり完全自動施工を目標にすることではなく、まずはデータの入口を整えることです。現況を素早く、正確に、後工程で使える形で取得できるか。座標、写真、点群、出来形、設計データを現場単位でばらばらにせず、次工程へ渡せるか。ここが整っていない状態で遠隔施工や自動化へ進んでも、結局は人手による補正や確認が増え、期待した省人化につながりません。2.0の本質は、機械を増やすことではなく、手戻りと重複を減らす情報基盤を作ることです。
加えて、現場で実装を進めるときは、技術導入を単発イベントにしないことも大切です。測量担当だけが3次元データを理解していても、設計担当が別形式で作り直し、施工担当がさらに紙へ落とし直し、検査担当がまた写真と帳票を手作業で整理しているようでは、2.0の効果は限定的です。むしろ重要なのは、現況把握、設計反映、施工指示、出来形確認、検査資料化までの流れをひとつの業務として見直すことです。どの段階で同じ情報を重複入力しているのか、どこで座標や属性が失われるのかを洗い出すだけでも、2.0に向けた改善点はかなり明確になります。
まとめ
i-Construction 2.0とは、従来のi-Constructionを否定するものではなく、ICT活用で整ってきた土台の上に、自動化、データ連携、リモート化を重ねて、少ない人数でも安全に現場を回せる体制へ進むための次段階です。違いの本質は、道具の新旧ではなく、現場の仕事を「人手の足し算」で回すのか、「データと仕組み」で回すのかにあります。これから実務担当者に求められるのは、個別作業の巧拙だけでなく、測量から施工管理までをつなぐ情報の流れを設計する視点です。i-Construction 2.0への対応は、い つか大規模投資をして始めるものではなく、現場で使う座標や3次元データの扱いをそろえるところから始まります。そうした第一歩を確実に進めるうえでも、LRTKのような現場で使いやすい高精度測位の仕組みを活用し、測る、合わせる、残すを日常業務の中で無理なく回していくことが、これからの建設現場ではますます重要になります。
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