目次
• PVSystで発電量が低く出るときに最初に見るべき考え方
• 見直しポイント1:気象データと設置地点の条件
• 見直しポイント2:方 位角と傾斜角の入力
• 見直しポイント3:アレイ容量とPCS容量のバランス
• 見直しポイント4:近接影と架台間隔の設定
• 見直しポイント5:温度損失と設置方式の条件
• 見直しポイント6:配線損失・ミスマッチ損失・汚れ損失
• 見直しポイント7:システム制御、自家消費、出力制限の条件
• 発電量が低い原因を切り分ける実務的な確認手順
• PVSystの結果を現地条件と照合する重要性
• まとめ:設定値と現地情報をそろえることで発電量の妥当性が見える
PVSystで発電量が低く出るときに最初に見るべき考え方
PVSystで発電量が低く出たとき、まず大切なのは「どの段階で発電量が落ちているのか」を分けて考えることです。最終的な年間発電量だけを見ると、原因が気象条件なのか、レイアウトなのか、電気設計なのか、損失設定なのかがわかりません。太陽光発電のシミュレーションでは、日射がモジュール面に入る段階、モジュールが直流電力を作る段階、PCSで交流に変換する段階、系統や負荷に供給される段階のそれぞれで損失が発生します。
たとえば、同じ設備容量でも、設置地域の日射量が違えば発電量は大きく変わります。さらに、同じ地域でも方位角や傾斜角がずれていれば、モジュール面に入る日射量が変わります。日射量が十分でも、架台列の影や周辺建物の影が大きければ、システム全体の発電量は下がります。電気的な構成に問題があれば、PCSの動作範囲や出力上限によって発電機会を取りこぼします。温度条件が厳しければ、モジュール温度の上昇によって出力が低下します。
このように、PVSystの結果は一つの設定だけで決まるものではありません。発電量が低いからといって、すぐに設備容量を増やす、PCS容量を変える、損失率を下げるといった判断をするのは危険です。まずはレポート内の損失図やエネルギー収支を確認し、どの項目で大きな低下が起きているかを把握する必要があります。
実務では、最初に年間発電量、比発電量、PR、システム損失、影損失、温度損失、配線損失、PCS損失、クリッピング損失などを並べて確認します。比発電量が極端に低い場合は、日射条件や影、設計条件に大きな問題がある可能性があります。PRが低い場合は、発電設備としての損失設定が厳しすぎる、またはレイアウトや電気設計に無理がある可能性があります。年間発電量だけで判断せず、どの指標が低いのかを見分けることが、原因特定の第一歩です。
見直しポイント1:気象データと設置地点の条件
PVSystで発電量が低く出る原因として、最初に確認すべきなのが気象データと設置地点の条件です。太陽光発電シミュレーションでは、日射量が入力の出発点になります。どれだけ機器の設計が適切でも、入力している日射データが低ければ、結果として発電量も低くなります。
よくあるのは、設置地点に近いと思って選んだ気象データが、実際には標高や海沿い、内陸、山間部などの条件を十分に反映していないケースです。近隣地点であっても、雲の出やすさ、降雪、霧、海風、山影の影響などによって日射量は変わります。特に山間部や沿岸部、盆地、積雪地域では、同じ都道府県内でも発電量の見通しが大きく変わることがあります。
また、PVSystで選択している設置地点の緯度経度や標高が、実際の計画地とずれている場合も注意が必要です。地図上では近く見えても、シミュレーション上の地点が実際より日射条件の悪い場所になっていると、年間発電量が低く出ます。反対に、現地より条件の良いデータを使えば発電量が高く出るため、低い結果だけでなく高すぎる結果にも注意が必要です。
気象データを見直す際は、まず年間水平面日射量や月別日射量を確認します。発電量が低い月が特定の季節に偏 っている場合、その季節の日射データが厳しく設定されている可能性があります。たとえば冬季に極端に発電量が低い場合は、日射量そのものが低いのか、傾斜角や影の影響なのか、積雪や汚れの条件を入れているのかを分けて確認します。
気温データも発電量に影響します。一般的に太陽光モジュールは温度が高いほど出力が下がるため、気温が高く設定されている地域では温度損失が大きくなります。夏季の発電量が想定より伸びない場合、単に日射が強いから発電量が増えるとは限らず、高温による出力低下が反映されている可能性があります。
実務で重要なのは、気象データを一つだけ見て判断しないことです。必要に応じて複数の気象データを比較し、どの程度発電量に差が出るかを確認します。発電事業の収支や設備規模の判断に使う場合は、過度に楽観的なデータではなく、計画地の条件をできるだけ反映したデータを選ぶことが重要です。PVSystで発電量が低いと感じたときも、まずは「入力された日射条件が本当に妥当か」を確認することで、設計上の問題なのか、そもそもの気象条件によるものなのかを切り分けやすくなります。
見直しポイント2:方位角と傾斜角の入力
次に確認したいのが、方位角と傾斜角の設定です。太陽光パネルは、どの方向を向き、どの角度で設置されているかによって、受け取る日射量が変わります。PVSystで発電量が低く出る場合、方位角や傾斜角の入力ミス、または実際の設計意図と異なる設定が原因になっていることがあります。
方位角でよくあるミスは、基準方向の考え方を誤ることです。南向き、東向き、西向きといった表現は現場では直感的に使われますが、ソフト上では角度として入力する必要があります。入力時に符号や基準を取り違えると、南向きのつもりが大きく東西に振れた設定になり、発電量が低下することがあります。特に複数方位の屋根や東西向きの架台を扱う場合、アレイごとの方位設定が正しく反映されているかを慎重に確認する必要があります。
傾斜角についても、実際の架台角度と入力値が一致していないケースがあります。地上設置型では架台の角度、屋根設置型では 屋根勾配、折板屋根では金具や架台による補正角度を考慮します。傾斜角が小さすぎると冬季の日射取得が減り、汚れや排水の面でも不利になる場合があります。傾斜角が大きすぎると、夏季の発電量や設置面積あたりの容量に影響します。どちらが良いかは地域や目的によって変わるため、発電量が低い場合は年間だけでなく月別の発電量を見て、どの季節に低下しているかを確認します。
また、方位角と傾斜角は影の影響とも関係します。たとえば傾斜角を大きくすると、前列と後列の高低差が大きくなり、架台列間の影が増える場合があります。方位角を変えると、朝夕の影や発電ピークの時間帯が変わります。そのため、方位角や傾斜角は単体で最適化するのではなく、架台間隔、敷地形状、PCS容量、売電条件、自家消費パターンと合わせて検討する必要があります。
PVSystで結果が低いときは、まず理想的な方位・傾斜に近い単純モデルを作り、発電量の基準値を確認する方法があります。そのうえで、実際の方位角、傾斜角、影条件、損失条件を順番に追加していくと、どの設定で発電量が落ちたのかがわかりやすくなります。最初から複雑なモデルだけを見ると原因が埋もれてしまうため、角度条件は基準ケースと実案件 ケースを比較して確認するのが実務的です。
見直しポイント3:アレイ容量とPCS容量のバランス
PVSystで発電量が低い場合、アレイ容量とPCS容量のバランスも重要な確認項目です。太陽光発電システムでは、モジュール側の直流容量とPCS側の交流容量の比率によって、年間発電量やピーク時の出力制限が変わります。いわゆる過積載を行う設計では、朝夕や曇天時の稼働率を高める一方で、日射が強い時間帯にはPCSの出力上限によって一部の電力が切り捨てられることがあります。
発電量が低く見える原因の一つは、この出力上限によるクリッピング損失です。モジュール容量を大きくしているのに年間発電量が思ったほど増えない場合、PCS容量がボトルネックになっている可能性があります。ただし、クリッピングがあるから必ず悪い設計というわけではありません。過積載では一定のクリッピングを許容しながら、年間全体の発電量や設備利用率を高める考え方もあります。重要なのは、意図した範囲の損失なのか、設定ミスによる過大な損失なのかを判断することです。
PCSの入力電圧範囲や最大入力電流も確認が必要です。ストリング本数、直列枚数、並列数の組み合わせが不適切だと、低温時の開放電圧が上限を超える、または高温時の動作電圧が下限を下回るなど、電気的な制約が発生します。PVSyst上で警告や不整合が出ていないかを確認し、アレイ構成がPCSの仕様範囲に収まっているかを見直します。
また、複数のアレイや複数方位の構成では、PCSへの割り当て方によって発電量が変わることがあります。東西向きのアレイを組み合わせる場合、発電ピークの時間帯が分散するため、PCS容量を効率的に使える場合があります。一方、同じ時間帯にピークが集中する構成では、クリッピングが増えやすくなります。発電量が低い場合は、単にDC/AC比だけを見るのではなく、時間別の出力推移やPCS損失の内訳を確認することが大切です。
実務では、アレイ容量を少し変えたケース、PCS容量を変えたケース、ストリング構成を変えたケースを比較して、どの変更が年間発電量に効くかを確認します。発電量が低い原因がPCS容量にある場合、モジュール枚数を増やすだけでは改善しないことがあります。逆に、PCS容量を増やしても、日射条件や影損失が主因であれば効果は限定的です。PVSystの結果を見るときは、発電量の低さを設備容量だけで判断せず、直流から交流への変換過程でどの程度の制限が発生しているかを必ず確認しましょう。
見直しポイント4:近接影と架台間隔の設定
PVSystで発電量が低くなる大きな要因の一つが、近接影の設定です。太陽光発電では、周辺建物、樹木、電柱、受変電設備、フェンス、法面、隣接する架台列などが影を落とすことで、モジュールに届く日射が減少します。特に地上設置型では、架台列同士の影が年間発電量に大きく影響します。
架台間隔が狭い場合、冬季の太陽高度が低い時間帯に前列の影が後列にかかりやすくなります。朝夕だけでなく、冬の午前中や午後に広い範囲で影が発生する場合、年間発電量が大きく下がることがあります。土地を有効活用するためにパネルを詰め込みすぎると、設備容量は増えても、1枚あたりの発電量やPRが低下します。PVSystで発電量が低く出ている場合、アレイ容量だけを見て「これだけ載せているのに発電しない」と考えるのではなく、影によるロスを確認する必要があります。
近接影の設定では、3Dシーンの寸法入力が重要です。架台の高さ、傾斜角、列間距離、モジュールの配置、地盤の高低差、周辺障害物の位置や高さが正確でないと、影損失の結果も不正確になります。たとえば架台高さを高く入力しすぎる、列間距離を狭く入力する、障害物の高さを実際より大きく入力するなどのミスがあると、発電量が必要以上に低く出ます。逆に、障害物を入力していない場合は発電量が過大に出ます。
また、影の影響は単なる日射量の減少だけではありません。モジュールの一部に影がかかると、電気的なミスマッチやストリング単位の出力低下が発生する場合があります。PVSystでは影の計算方法や電気的影響の扱いによって、結果が変わります。単純な影損失だけを見ているのか、ストリング構成を考慮した影の影響まで見ているのかを確認することが大切です。
屋根上設置でも、パラペット、空調設備、避雷設備、隣接建物、看板、屋上配管などが影の原因になります。現地写真だけでは高さや距離を正確に把握しにくいため、可能であれば現地測量や図面、点群データを使って障害物の位置関係を整理します。影の設定が曖昧なままシミュレーションを行うと、発電量が低く出た原因が設計なのか、入力値なのか判断できません。
発電量が低いときは、近接影を一時的に無効化したケースと、影を有効にしたケースを比較すると原因を切り分けやすくなります。影なしでは発電量が妥当で、影ありで大きく下がる場合は、レイアウトや障害物条件が主因です。その場合、架台間隔を広げる、列数を減らす、配置を変える、障害物から離す、ストリング構成を見直すなどの対策を検討します。
見直しポイント5:温度損失と設置方式の条件
太陽光パネルは、日射が強いほど発電しやすい一方で、モジュール温度が上がると出力が低下します。そのため、PVSystで発電量が低い場合は、温度損失の設定も確認する必要があります。特に夏場の発電量が想定より伸びない場合や、日射量の割に年間発電量が低い場合は、温度条件が影響している可能性があります。
温度損失は、気温、風速、設置方式、背面の通風、屋根との距離、架台形状などによって変わります。地上設置で背面の通風が十分にある場合と、屋根に近接して設置される場合では、モジュール温度の上がり方が異なります。屋根上で通風が悪い条件を設定していると、温度損失が大きくなり、発電量が低く出やすくなります。反対に、実際は通風が悪いのに通風が良い条件で設定すると、発電量を過大に見積もる可能性があります。
PVSystでは、熱的な挙動を表す係数や設置方式の条件を入力します。初心者が見落としやすいのは、初期設定のまま進めてしまい、実際の設置方式と合っていないケースです。たとえば、地上設置のつもりでモデルを作ったのに、屋根密着に近い条件になっている場合、温度損失が大きく表示されることがあります。逆に屋根上案件で地上設置に近い通風条件を使うと、発電量が高く見える可能性があります。
温度損失を確認するときは、レポート内の損失図で温度 による低下がどの程度あるかを見ます。一般的に温度損失は無視できない項目ですが、極端に大きい場合は設定条件の見直しが必要です。月別に見ると、夏季に温度損失が大きくなる傾向があります。夏季の日射量が十分なのに発電量が伸びない場合、温度損失とPCSの出力制限が同時に発生していないかを確認します。
また、モジュールの温度係数も発電量に影響します。使用するモジュールデータの仕様が正しく登録されていない場合、温度上昇に対する出力低下が実際と異なる結果になります。機器データを選ぶときは、容量だけでなく、温度係数、電圧、電流、動作範囲などが実際に使用する機器と合っているかを確認します。
発電量が低い原因が温度損失にある場合、設計上の対策としては、通風を確保する、屋根面との離隔を見直す、設置方式に適した部材を使う、温度特性の良いモジュールを選ぶなどが考えられます。ただし、PVSyst上で損失を小さく見せるために条件を甘くするのは避けるべきです。シミュレーションは実態に近い条件を再現するためのものなので、現地の設置方式に合った設定を行うことが重要です。
見直しポイント6:配線損失・ミスマッチ損失・汚れ損失
PVSystで発電量が低い場合、個々の損失設定が積み重なっていることもあります。配線損失、ミスマッチ損失、汚れ損失、劣化、補機消費などは、それぞれ単独では数パーセント以下に見える場合でも、合計すると年間発電量に大きく影響します。発電量が想定より低いときは、これらの損失率が過大に設定されていないか、また実態と合っているかを確認します。
配線損失は、モジュールからPCSまでの直流配線、PCSから受変電設備までの交流配線、ケーブル長、ケーブル断面積、電流値などによって決まります。ケーブル長を長く入力しすぎている、断面積が小さすぎる、電圧条件に合わない設定になっている場合、配線損失が大きくなります。大規模な地上設置では、PCSや集電設備の配置によって配線距離が大きく変わるため、レイアウト設計と合わせて確認する必要があります。
ミスマッチ損失は、モジュールごとの出力差、ストリング間の差、影、方 位の違い、汚れの偏りなどによって発生します。すべてのモジュールが完全に同じ条件で発電するわけではないため、一定のミスマッチは避けられません。しかし、複数方位のモジュールを同一系統に混在させたり、影のかかり方が大きく異なるストリングをまとめたりすると、損失が増えやすくなります。PVSyst上でミスマッチ損失が大きい場合は、単なる損失率の入力だけでなく、ストリング構成や影条件との関係を確認することが重要です。
汚れ損失も見落とされがちな項目です。砂ぼこり、花粉、鳥のふん、落葉、塩害、積雪後の汚れなど、設置環境によって汚れの影響は変わります。汚れ損失を大きく設定すると、当然ながら年間発電量は下がります。特定の月だけ汚れ損失を大きく設定している場合、月別発電量にも影響します。たとえば乾燥した季節に汚れが蓄積しやすい地域や、雨で洗い流されにくい傾斜の小さい設置では、汚れ損失を無視できない場合があります。
一方で、損失設定は低くすればよいというものではありません。提出用の発電量予測や事業計画では、現実的な損失を反映しなければ、後で実績発電量との差が大きくなります。問題は、根拠のない損失率を重複して入れてしまうことです。たとえば 、影による損失を近接影で詳細に計算しているにもかかわらず、別の項目で影を見込んだ余裕損失を追加していると、発電量が必要以上に低くなる可能性があります。汚れやミスマッチも同様に、実態を反映した設定なのか、安全側を見すぎて二重計上になっていないかを確認しましょう。
実務では、損失項目を一覧化し、初期設定値、社内標準値、案件固有値を区別して管理すると便利です。PVSystの結果が低い場合は、各損失率を一つずつ標準値に戻した比較ケースを作ると、どの損失が発電量に効いているかを把握できます。特に複数人で作業する場合、以前の案件からコピーした設定が残っていることもあるため、案件ごとに損失条件を確認する習慣が必要です。
見直しポイント7:システム制御、自家消費、出力制限の条件
発電量が低く見える原因として、システム制御や自家消費、出力制限の設定も重要です。PVSystでは、単純な系統連系だけでなく、自家消費、蓄電池、出力制御、負荷パターンなどを考慮したモデルを作ることがあります。この場合、モジュールが発電できる電力量と、最終的に利用または売電できる電力量が異なるため、どの数値を見て「発電量が低い」と判断しているのかを明確にする必要があります。
自家消費モデルでは、需要負荷の時間パターンが結果に大きく影響します。昼間に負荷が少ない施設では、太陽光が発電していても自家消費できる量が限られます。余剰売電を行う設定か、逆潮流を制限する設定かによって、余った電力の扱いが変わります。逆潮流を認めない条件にしている場合、需要を超えた発電は抑制されるため、利用電力量が低く表示されることがあります。これは設備が発電できないというより、システム制御上使えない電力が発生している状態です。
出力制限の設定も確認が必要です。系統側の制約や契約上の上限、PCSの出力上限、発電所全体の連系容量などを入力している場合、発電可能な時間帯でも出力が抑えられることがあります。発電量が低いと感じたときは、出力制限による損失がどの程度あるかを確認します。特に過積載設計では、PCS容量によるクリッピングと系統側の出力制限が重なっていないかを見ます。
蓄電池を含むモデルでは、充放電効率、容量、充電可能時間、放電制御、SOC範囲などが結果に影響します。蓄電池があるから発電量が必ず増えるわけではありません。蓄電池は余剰電力の活用やピークシフトに役立ちますが、充放電ロスが発生します。また、負荷パターンや制御条件が合っていなければ、蓄電池が十分に使われず、期待した効果が出ないこともあります。
PVSystのレポートを見るときは、発電した直流電力量、PCS後の交流電力量、系統へ送られた電力量、負荷に使われた電力量、損失として捨てられた電力量を区別することが大切です。最終的な売電量が低い場合でも、モジュール面では十分に発電している可能性があります。その場合、原因は発電条件ではなく、制御や需要条件にあります。逆に、直流段階から発電量が低い場合は、日射、角度、影、温度、モジュール条件を優先して確認します。
実務担当者が注意すべきなのは、目的に合った指標を見ることです。売電事業であれば系統へ送られる電力量が重要です。自家消費案件であれば、発電量だけでなく自家消費量、自家消費率、買電削減量、余剰電力量を確認します。発電量が低いという表現の中に、どの電力量を指しているのかが曖昧なままだと、対策もずれてしまいます。
発電量が低い原因を切り分ける実務的な確認手順
PVSystで発電量が低い原因を探すときは、思いついた項目から場当たり的に変更するのではなく、順番を決めて確認すると効率的です。おすすめは、まず単純な基準モデルを作り、その後に案件固有の条件を一つずつ加えていく方法です。
最初に、設置地点、気象データ、標準的な方位角と傾斜角、影なし、標準的な損失設定でシンプルなケースを作ります。この段階で発電量が低い場合は、気象データや基本的な機器設定に原因がある可能性が高くなります。基準モデルの発電量が妥当であれば、次に実際の方位角、傾斜角、アレイ容量、PCS容量を反映します。ここで発電量が下がる場合は、配置や電気設計の影響が見えてきます。
その後、近接影を追加します。影を追加したタイミングで大きく発 電量が下がるなら、架台間隔や障害物が主な原因です。影のないケースと影のあるケースを比較することで、影損失の影響を定量的に把握できます。さらに、配線損失、ミスマッチ損失、汚れ損失、温度条件、出力制限、自家消費条件を順番に追加していきます。各段階で発電量やPRがどれだけ変化したかを記録すると、説明資料としても使いやすくなります。
複数の項目を同時に変更すると、どの設定が原因かわからなくなります。たとえば、架台間隔を変えると同時にPCS容量や損失率も変えてしまうと、発電量が増減しても理由を説明できません。比較シミュレーションでは、一度に変える条件をできるだけ少なくすることが基本です。実務では時間が限られているため、すべてを細かく検証するのは難しい場合もありますが、少なくとも気象データ、角度、影、PCS容量、主要損失の5項目は分けて確認したいところです。
また、発電量が低いかどうかを判断するには、比較対象が必要です。同じ地域の過去案件、社内の標準モデル、概算計算、実績データなどと比べることで、今回の結果が本当に低いのか、それとも妥当な範囲なのかが見えてきます。単純に感覚で低いと判断すると、実際には日射条件や設置条件を反映した正 しい結果である可能性もあります。
PVSystの使い方に慣れていない段階では、エラーや警告が出ていないかも必ず確認しましょう。機器の組み合わせ、電圧範囲、ストリング構成、入力漏れなどに問題がある場合、結果が意図しない形になることがあります。警告を無視して計算を進めると、発電量が低い理由を見落とす可能性があります。計算が完了したから正しいというわけではなく、入力条件とレポート内容を照合することが必要です。
PVSystの結果を現地条件と照合する重要性
PVSystで発電量が低く出る原因を正しく判断するには、ソフト上の設定だけでなく、現地条件との照合が欠かせません。太陽光発電のシミュレーションは、現地をどれだけ正確にモデル化できるかによって精度が変わります。図面上では影が少ないように見えても、実際には隣地の建物や樹木、法面、電柱、看板、既設設備などが影を落とす場合があります。地盤の高低差や架台の実際の高さが想定と異なることもあります。
特に発電量が低い結果になった場合、現地が本当に厳しい条件なのか、入力が過度に保守的なのかを見分ける必要があります。現地写真、配置図、造成図、測量図、周辺障害物の高さ情報、屋根伏図、単線結線図などを確認し、PVSyst上のモデルと一致しているかを見直します。周辺影の影響を扱う場合は、障害物の位置と高さが数十センチから数メートル違うだけでも、冬季の影の出方が変わることがあります。
また、現地の地形や高低差は架台設計にも影響します。平坦な敷地として入力しているが、実際には傾斜地である場合、列間の影や設置高さが変わります。逆に、現地に段差があるのにモデル上で過度に不利な条件を設定している場合、発電量が低く出すぎることもあります。シミュレーション結果の信頼性を高めるには、現地の三次元的な情報をできるだけ正確に把握することが重要です。
近年は、現地で取得した位置情報や点群データを活用して、障害物や地形をより正確に確認する流れが広がっています。太陽光発電の設計では、机上のレイアウトだけではわからない微妙な高低差、周辺構造物、架台位置、境界付近の制約 が発電量に影響します。PVSystの設定値を見直す際も、現地で測った情報があると、影や配置条件の妥当性を説明しやすくなります。
発電量が低いときに大切なのは、結果を無理に高く見せることではありません。実際の条件に合っているなら、低い発電量も重要な判断材料です。反対に、入力ミスや過度な保守設定で低くなっているなら、正しい条件に直す必要があります。現地条件を正確に把握し、それをPVSystの設定に反映することで、発電量の低さが設計上の課題なのか、現地条件による合理的な結果なのかを判断できます。
まとめ:設定値と現地情報をそろえることで発電量の妥当性が見える
PVSystで発電量が低く出たときは、年間発電量の数値だけを見て判断するのではなく、気象データ、方位角、傾斜角、アレイ容量、PCS容量、近接影、温度損失、配線損失、ミスマッチ損失、汚れ損失、出力制限、自家消費条件を順番に確認することが重要です。発電量が低い原因は一つとは限らず、複数の設定が積み重なっていることも多くあります。
特に初心者が注意したいのは、初期設定や過去案件の設定をそのまま使ってしまうことです。気象データが計画地と合っていない、方位角の基準を間違えている、架台間隔が実際と違う、影条件を過大に入れている、損失率を二重に見込んでいる、PCS容量による制限を見落としている、といった小さなミスが発電量の低下につながります。PVSystの使い方では、操作手順だけでなく、入力値の意味を理解することが欠かせません。
発電量が低い原因を切り分けるには、基準モデルを作り、条件を一つずつ追加して比較する方法が有効です。影なしと影あり、標準損失と案件固有損失、出力制限なしとあり、PCS容量違いなどを比較すれば、どの要素が発電量に効いているかを説明しやすくなります。これは社内共有や顧客説明、設計見直しにも役立ちます。
そして、PVSystの結果をより実態に近づけるには、現地情報の精度が重要です。太陽光発電の設計では、パネルの配置、架台高さ、列間距離、周辺障害物、地盤の高低差、境界位置などが発電量に影響します。これらを曖昧なまま入力すると、発電量が低い理由も高い理由も説明しにくくなります。
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