目次
• 配線損失とは何かを理解する
• PVSystで配線損失を入力する前に確認する情報
• 手順1:システム条件と配線区間を整理する
• 手順2:直流側の配線損失を入力する
• 手順3:交流側の配線損失を入力する
• 手順4:結果画面で配線損失を確認する
• 配線損失の入力値を決めるときの考え方
• 初心者が間違えやすい配線損失の設定ミス
• 配線損失を低減する設計上のポイント
• PVSystのシミュレーション結果を現地条件と合わせて確認する
• まとめ
配線損失とは何かを理解 する
配線損失とは、太陽光発電設備の中で電気がケーブルを流れるときに発生する損失です。太陽電池モジュールで発電した電力は、ストリングケーブル、接続箱、集電盤、パワーコンディショナ、交流ケーブル、受変電設備などを通って系統側へ送られます。この経路の中で、ケーブルの抵抗によって一部のエネルギーが熱として失われます。これが配線損失です。
配線損失は、発電所の規模、ケーブル長、ケーブル断面積、電圧、電流、配線ルート、機器配置によって変わります。たとえば、同じ設備容量でも、モジュールからパワーコンディショナまでの距離が長い場合は損失が大きくなりやすく、逆に機器を近くに配置できれば損失を抑えやすくなります。また、低い電圧で大きな電流を流す構成では、配線損失が大きくなりやすい傾向があります。
PVSystでは、配線損失をシミュレーション条件の一部として入力します。入力された配線損失は、年間発電量や損失図に反映されます。したがって、配線損失の値が実態より小さすぎると、発電量が過大に見積もられる可能性があります。反対に、実態より大きすぎる値を入れると、設計案が必要以上に不利に見えることがあります。
初心者がまず押さえるべき点は、配線損失は「どこか一箇所の損失」ではなく、発電所全体の電気経路で生じる損失だということです。PVSyst上では、直流側と交流側を分けて考えるのが基本です。直流側は、太陽電池モジュールからパワーコンディショナ入力側までの範囲です。交流側は、パワーコンディショナ出力側から受変電設備や連系点に向かう範囲です。
配線損失は、設計の初期段階では概算値として入力し、設計が進んだ段階でケーブル長や線種に基づいて見直すのが実務的です。最初から完全な値を入れようとすると作業が止まりやすくなりますが、最後まで仮の値のままにしてしまうと、シミュレーションの信頼性が下がります。PVSystの使い方としては、初期検討、基本設計、詳細設計、提出前確認の各段階で、配線損失を更新していく意識が大切です。
PVSystで配線損失を入力する前に確認する情報
PVSystで配線損失を入力する前に、まず必要な情報を整理します。入力画面だけを開いても、どの値を入れるべきか判断できなければ、結局は感覚的な設定になってしまいます。配線損失はシミュレーション結果に直接影響するため、できる範囲で根拠を持った数値を用意することが重要です。
最初に確認したいのは、発電設備の基本構成です。モジュール容量、ストリング数、パワーコンディショナの台数、接続箱や集電盤の有無、受変電設備までの距離などを把握します。特に、どこまでを直流側として扱い、どこからを交流側として扱うのかを整理しておくと、入力値の重複を防ぎやすくなります。
次に確認するのは、ケーブル長です。配線損失はケーブルの長さに大きく左右されます。モジュールから接続箱までの距離、接続箱からパワーコンディショナまでの距離、パワーコンディショナから受変電設備までの距離など、区間ごとにおおよその距離を確認します。初期段階では正確な実長がわからない場合もありますが、その場合でも配置図やレイアウト図から概算距離を出しておくと、入力値の妥当性を説明しやすくなります。
ケーブルの種類や断面積も重要です。一般に、断面積が大きいケーブルほど抵抗が小さくなり、同じ電流が流れても損失は小さくなります。ただし、断面積を大きくすればよいという単純な話ではなく、施工性、コスト、電圧降下、許容電流、保護協調なども合わせて判断する必要があります。PVSystのシミュレーションでは、電気設計の最終判断そのものを行うわけではありませんが、配線条件が発電量にどの程度影響するかを見るためには、ケーブル条件をできるだけ現実に近づける必要があります。
また、設計段階によって入力の粒度を変えることも大切です。候補地選定や概略検討の段階では、一般的な配線損失率を仮置きすることがあります。一方で、提出用の発電量予測や設計比較を行う段階では、実際の配線計画に基づいて直流側と交流側の損失を分けて確認する必要があります。実務では、初期値のままシミュレーションを使い回してしまうケースがあるため、どの時点の設計条件に基づいた入力なのかを明確にしておきます。
PVSystに入力する配線損失は、単なる操作項目ではなく、現地レイアウトと電気設計を反映する項目です。したがって、シミュレーション担当者だけで完結させず、設計担当者、施工担当者、電気担当者と情報を合わせながら値を決めると、結果の説明力が高まります。
手順1:システム条件と配線区間を整理する
PVSystで配線損失を入力する最初の手順は、システム条件と配線区間を整理することです。いきなり入力画面で数値を入れるのではなく、まず発電設備の電気の流れを簡単に分解します。これにより、直流側と交流側のどちらにどの損失を入れるべきかが見えやすくなります。
太陽光発電設備では、太陽電池モジュールが直流電力を発生し、その電力がストリング単位で集められ、パワーコンディショナに入力されます。パワーコンディショナで交流に変換された後、交流ケーブルを通って受変電設備や連系点へ送られます。PVSystで配線損失を考えるときは、この流れを直流側と交流側に分けます。
直流側に含める範囲は、一般的にはモジュールからパワーコンディショナ入力側までです。ストリングケーブル、延長ケーブル、接続箱までの配線、接続箱からパワーコンディショナまでの配線などが対象になります。設備構成によっては接続箱を使わない場合もありますが、その場合でもモジュールからパワーコンディショナまでの直流配線が存在するため、直流側の損失を考慮します。
交流側に含める範囲は、パワーコンディショナ出力側から受変電設備、さらに連系点に向かう範囲です。パワーコンディショナの配置が分散している場合や、受変電設備までの距離が長い場合は、交流側の配線損失が無視できないことがあります。大規模な発電所では、機器配置や集電方法によって交流側の損失に差が出るため、設計案比較の際にも注意が必要です。
ここで大切なのは、同じ損失を二重に入力しないことです。たとえば、外部の電気計算で直流側と交流側を合算した配線損失率をすでに求めている場合、その値をPVSystの複数箇所に重複して入れてしまうと、実際より大きな損失になります。反対に、直流側だけを入力して交流側を入れ忘れると、実際より有利な発電量になります。
実務では、配線損失を整理するために、簡単なメモを作っておくと便利です。たとえば、直流側はモジュールからパワーコンディショナまで、交流側はパワーコンディショナから受変電設備まで、というように範囲を書き出します。そのうえで、各区間のケーブル長、ケーブルサイズ、電圧、電流、損失率の見込みを整理します。PVSystの入力画面だけに依存するのではなく、根拠となる設計条件を別途残しておくことで、後から見直すときにも混乱しにくくなります。
初心者の場合、配線損失を単一のパーセントとして考えがちですが、実務では「どの区間の損失か」を明確にすることが重要です。PVSystのシミュレーション結果を社内や顧客に説明するときも、単に「配線損失を入力しました」と伝えるより、「直流側と交流側を分けて、現在のレイアウトに基づき入力しました」と説明できるほうが信頼性が高まります。
手順2:直流側の配線損失を入力する
次の手順は、PVSystで直流側の配線損失を入力することです。直流側の配線損失は、太陽電池モジュールで発電した直流電力がパワーコンディショナに届くまでの損失です。PVSystでは、システム設定や詳細損失の設定画面から、直流配線に関する損失条件を入力します。
直流側の入力でまず意識したいのは、ストリング構成との関係です。ストリングの本数、モジュール直列枚数、パワーコンディショナの入力条件によって、直流側の電圧と電流が変わります。配線損失は電流の影響を強く受けるため、同じケーブル長でも電流が大きい構成では損失が大きくなります。PVSystでアレイ構成やストリング設計を入力した後に、直流側の配線損失を確認する流れが自然です。
直流側の配線損失を入力する方法には、損失率として入力する考え方と、ケーブル条件に基づいて入力する考え方があります。初心者が最初に扱いやすいのは、直流側の損失率をパーセントで入力する方法です。たとえば、設計資料や社内基準で直流側の配線損失率が定められている場合、その値を入力します。ただし、単に一般的な値を入れるのではなく、設備規模や配線距離に対して妥当かどうかを確認する必要があります。
より詳細に検討する場合は、ケーブル長や断面積をもとに損失を考えます。直流配線の距離が短く、ケーブルサイズが適切であれば、損失は比較的小さく収まります。一方、広い敷地でモジュール群とパワーコンディショナの距離が長い場合、直流側の損失が大きくなりやすくなります。特に、パワーコンディショナを一箇所に集約する配置では、直流配線が長くなる可能性があるため注意が必要です。
PVSystに入力するときは、基準となる出力に対して何パーセントの損失として扱われるのかを理解しておきます。配線損失は、単純な固定値ではなく、発電量や電流条件に応じて変動する性質があります。シミュレーション上では入力方法によって扱いが異なるため、入力欄の意味を確認しながら設定します。特に、標準動作条件に対する損失なのか、年間シミュレーションの中で計算される損失なのかを混同しないようにします。
直流側の配線損失を入力した後は、他の損失項目との関係も確認します。ミスマッチ損失、汚れ損失、温度損失、パワーコンデ ィショナ損失などとは別の項目として扱われます。配線損失に他の損失を含めてしまうと、損失の内訳が不明確になります。損失図を見たときに、どの要因でどれだけ失われているのかを把握できるよう、配線損失は配線に関する損失として整理して入力することが重要です。
初心者が直流側の配線損失を入力する際には、最初から細かすぎる設定を目指すよりも、設計段階に応じた妥当な粒度で入力し、後で更新できるようにしておくとよいです。初期検討では概算値、詳細設計では実際の配線計画に近い値、提出前には最終設計に基づく値というように段階的に精度を上げることで、PVSystを実務に使いやすくなります。
手順3:交流側の配線損失を入力する
3つ目の手順は、交流側の配線損失を入力することです。交流側の配線損失は、パワーコンディショナで交流に変換された電力が、受変電設備や連系点に到達するまでに発生する損失です。直流側に比べて見落とされることがありますが、設備規模が大きい場合や、パワーコンディショナから受変電設備までの距離が長い場合には、発電量に影響する 重要な項目です。
交流側の損失を考えるときは、まずパワーコンディショナの配置を確認します。パワーコンディショナが発電エリア内に分散配置されている場合と、一箇所に集中配置されている場合では、交流配線の距離や集電方法が異なります。また、低圧で集電するのか、高圧側に昇圧して送るのかによっても、配線損失の考え方が変わります。
PVSystでは、交流側の損失も詳細損失の項目として設定します。入力値は、パワーコンディショナ出力後のケーブル損失を表すものとして扱います。直流側の配線損失とは範囲が異なるため、直流側で入力した損失と重複しないように注意します。外部計算で全体の配線損失をまとめて出している場合は、その中に交流側が含まれているかを確認してから入力します。
交流側の配線損失は、発電所のレイアウトに大きく左右されます。たとえば、受変電設備を敷地の端に配置する場合、そこまでの交流配線距離が長くなり、損失が増える可能性があります。反対に、電気設備を発電エリアの 中心に近い位置へ配置できれば、配線距離を短くできる場合があります。PVSystで設計案を比較するときは、単にモジュール配置や傾斜角だけでなく、電気設備の配置による配線損失の違いも考慮することが大切です。
交流側の入力で注意すべき点は、パワーコンディショナの変換損失と混同しないことです。パワーコンディショナによる直流から交流への変換損失は、配線損失とは別の要素です。交流側の配線損失は、変換後にケーブルを通ることで発生する損失です。これらを混ぜて入力すると、損失内訳が不正確になり、シミュレーション結果の説明が難しくなります。
また、交流側の損失は、受変電設備以降のどこまでをシミュレーション範囲に含めるかによっても変わります。発電端での評価なのか、連系点での評価なのか、売電メーター位置での評価なのかによって、考慮すべき配線範囲が変わる場合があります。実務では、提出先や社内基準によって評価点が異なることがあるため、PVSystでどこまでの損失を含めた結果なのかを明確にしておく必要があります。
交流側の配線損失を入力した後は、直流側と合わせた全体の配線損失が妥当な範囲に収まっているかを確認します。直流側と交流側を個別に見るだけでなく、合計として発電量にどれくらい影響しているかを確認することで、過大入力や入力漏れに気づきやすくなります。
手順4:結果画面で配線損失を確認する
4つ目の手順は、シミュレーション実行後に結果画面で配線損失を確認することです。PVSystでは、入力した条件がシミュレーション結果に反映され、損失図やレポートの中で各損失項目として表示されます。配線損失を入力しただけで満足せず、結果としてどの程度の影響が出ているかを必ず確認します。
まず確認したいのは、損失図です。損失図では、日射量から最終的な出力までの流れの中で、どの段階でどのような損失が発生しているかを視覚的に確認できます。配線損失は、直流側や交流側の損失として表示されます。ここで、配線損失が想定より大きすぎないか、逆に小さすぎないかを確認します。
配線損失が大きく表示されている場合、入力値が過大である可能性があります。また、実際に配線距離が長い設計になっている可能性もあります。入力ミスなのか、設計上の課題なのかを切り分けることが重要です。たとえば、ケーブル長を誤って片道ではなく往復相当で二重に扱っている、直流側と交流側に同じ損失を入れている、外部計算で含めた損失を再度入力している、といったミスが考えられます。
反対に、配線損失が極端に小さい場合も注意が必要です。初期値のままになっている、交流側の入力を忘れている、実際のケーブル距離を反映していない、といった可能性があります。特に、広い敷地の発電所や、受変電設備までの距離が長い案件で配線損失が小さすぎる場合は、入力条件を見直すべきです。
次に確認したいのは、年間発電量への影響です。配線損失は、発電量を直接減少させる要因です。損失率が少し変わるだけでも、設備容量が大きい場合には年間発電量の差が大きくなります。設計案を比較する場合、配線損失の入力条件が案ごとにそろっていないと、正しい比較ができません。たとえば、ある案では詳細な配線損失を入力し、別の案では初期値のままにしていると、発電量差の原因が設計の優劣なのか入力条件の違いなのかわからなくなります。
レポートを確認する際には、配線損失が他の損失と比べてどの程度の割合を占めているかを見ます。温度損失や影損失に比べれば小さく見える場合もありますが、配線損失は設計改善によって調整できる余地があります。発電量を少しでも改善したい場合、配線ルートや機器配置の見直しが有効なこともあります。
シミュレーション結果を提出する場合は、配線損失の入力根拠も説明できるようにしておきます。単にPVSystの結果だけを出すのではなく、どの配線範囲を対象にしたのか、直流側と交流側をどのように扱ったのか、入力値は概算なのか詳細設計に基づくのかを整理しておくと、質問を受けたときに対応しやすくなります。
配線損失の入力値を決めるときの考え方
配線損失の入力値を決めるとき、初心者が最も悩むのは「何パーセントにすればよいのか」という点です。結論から言えば、すべての案件に共通する唯一の正解はありません。配線損失は、設備容量、電圧、電流、ケーブル長、ケーブルサイズ、機器配置、施工条件によって変わるため、案件ごとに判断する必要があります。
ただし、実務上は段階に応じた考え方があります。概略検討の段階では、まだ詳細な配線ルートやケーブルサイズが決まっていないことが多いため、社内基準や一般的な想定値を使って仮設定します。この段階では、あくまで概算であることを明確にしておくことが重要です。後の段階で配線設計が固まったら、入力値を更新する前提で扱います。
基本設計の段階では、パワーコンディショナの配置、接続箱や集電盤の位置、受変電設備の位置がある程度決まってきます。この段階では、直流側と交流側に分けて、ケーブル距離を概算しながら損失を見直します。設備配置の違いによって配線損失が変わるため、複数案を比較する場合は、案ごとの配線条件を反映することが望ましいです。
詳細設計の段階では、ケーブルサイズや配線ルートが具体化します。この段階では、電気計算に基づく損失値をPVSystへ反映することが理想です。PVSystのシミュレーションは発電量予測のためのものですが、入力条件が詳細設計とずれていると、実際の設備に対する説明力が下がります。提出前や最終確認時には、PVSystの入力値と設計図書の整合を確認します。
入力値を決める際に注意したいのは、過度に楽観的な値を入れないことです。配線損失を小さく入力すれば発電量は高く見えますが、実際より過大な予測になれば、後で説明が難しくなります。反対に、安全側を意識しすぎて大きすぎる値を入れると、設計案が不必要に不利に見えることがあります。重要なのは、保守的でありながらも、実態から大きく外れない値を設定することです。
また、配線損失を固定値として扱うのではなく、設計変更に応じて変わる項目として認識することも大切です。モジュール配置を変える、パワーコンディショナの位置を変える、ケーブルルートを変える、電圧構成を変えると、配線損失は変化します。PVSystの使い方 としては、配線損失を一度入力して終わりにするのではなく、設計案の比較や修正に合わせて更新することが実務的です。
初心者が間違えやすい配線損失の設定ミス
PVSystで配線損失を入力するとき、初心者が間違えやすいポイントがいくつかあります。配線損失は小さな項目に見えるため、ミスに気づかないままシミュレーションを進めてしまうことがあります。しかし、発電量予測や設計比較に影響するため、入力後の確認が欠かせません。
よくあるミスのひとつは、直流側と交流側を混同することです。モジュールからパワーコンディショナまでの損失を交流側に入れてしまったり、パワーコンディショナ出力後の損失を直流側に含めてしまったりすると、損失の内訳が不明確になります。結果として、損失図を見てもどの区間に課題があるのか判断しにくくなります。
次に多いのは、二重入力です。外部 の電気計算で全体の配線損失を算出し、それをPVSystの直流側に入力したうえで、さらに交流側にも同じような値を入力してしまうケースです。この場合、実際より大きな損失として計算され、年間発電量が低く表示されます。入力値の根拠を確認し、その値がどの範囲を含んでいるのかを必ず把握します。
逆に、入力漏れもよくあります。初期設定のままシミュレーションを実行し、配線損失をほとんど考慮していない状態で結果を使ってしまうケースです。小規模な概算検討なら大きな問題にならない場合もありますが、提出用の発電量予測や事業性評価で入力漏れがあると、結果の信頼性に影響します。
また、案件間で同じ配線損失率を使い回すことにも注意が必要です。似たような設備容量でも、敷地形状、機器配置、配線距離が異なれば、配線損失は変わります。過去案件の値を参考にすることは有効ですが、そのままコピーするのではなく、今回の案件に合っているか確認する必要があります。
ケーブル長の扱いを誤ることもあ ります。図面上の直線距離だけを見て入力すると、実際の配線ルートより短く見積もる可能性があります。配線は地形や架台配置、通路、機器位置、施工条件に沿って敷設されるため、単純な直線距離とは異なる場合があります。概算段階では仕方ない面もありますが、詳細設計段階では実際のルートに近づけて確認します。
さらに、配線損失と電圧降下を混同することもあります。電圧降下は電圧の低下に着目した電気設計上の確認項目であり、配線損失は電力として失われるエネルギーに着目した項目です。両者は関連しますが、同じものではありません。PVSystに入力する値が何を意味しているのかを理解しておくことが大切です。
配線損失を低減する設計上のポイント
PVSystで配線損失を確認した結果、損失が大きいと感じた場合は、設計面で改善できる可能性があります。配線損失は自然条件による損失ではなく、設備配置や電気設計の工夫によってある程度抑えられる項目です。発電量を改善したい場合、配線損失の見直しは有効な検討ポイントになります。
まず考えたいのは、配線距離を短くすることです。配線損失はケーブル長が長くなるほど大きくなります。パワーコンディショナや接続箱、集電盤、受変電設備の配置を見直すことで、配線距離を短縮できる場合があります。特に広い敷地では、電気設備をどこに配置するかによって、直流側と交流側の損失が変わります。
次に、適切なケーブルサイズを選定することです。ケーブル断面積が小さすぎると抵抗が大きくなり、損失や電圧降下が増えます。一方で、必要以上に大きなケーブルを選ぶと、施工性やコストの面で不利になることがあります。PVSystの結果だけでケーブルサイズを決めるわけではありませんが、発電量への影響を確認する材料として活用できます。
ストリング構成や電圧設計も関係します。一般に、電圧を高くし、電流を抑えられる構成では、配線損失を抑えやすくなります。ただし、機器の入力範囲、安全基準、設計条件を満たす必要があるため、単純に電圧を上げればよいわけではありません。PVSystでは、ストリング設計や機器条件と合わせて配線損失を見ることが大切です。
機器配置の分散と集中のバランスも重要です。パワーコンディショナを分散配置すれば直流配線を短くできる場合がありますが、交流側の集電方法や保守性、施工性に影響します。逆に、パワーコンディショナを集中配置すると管理しやすい面がありますが、直流配線が長くなる場合があります。どちらが有利かは案件条件によって異なるため、PVSystで複数案を比較することが有効です。
また、現地の地形や施工条件も配線損失に影響します。図面上では短いルートに見えても、実際には段差、排水路、道路、既存構造物、法面などを避ける必要があり、ケーブルルートが長くなることがあります。机上のシミュレーションでは見えにくい部分ですが、現地条件を反映しないと、配線損失の入力が実態からずれる可能性があります。
配線損失を低減するには、発電量だけでなく、施工性、保守性、安全性、全体コストとのバランスを取る必要があります。PVSystは、配線損失の違いが年間発電量にどう影響するか を確認するための有効なツールです。設計変更の効果を数値で比較できるため、関係者間での説明にも使いやすくなります。
PVSystのシミュレーション結果を現地条件と合わせて確認する
PVSystで配線損失を入力して発電量を計算しても、その結果が現地条件と合っていなければ、実務上の精度は高まりません。配線損失は図面や計算上の値だけでなく、実際の配置、地形、施工ルート、機器位置によって変わるため、現地条件との照合が重要です。
まず確認したいのは、PVSystで想定しているレイアウトと実際の現地レイアウトが一致しているかです。モジュール配置、通路、傾斜地、障害物、設備配置が変われば、配線ルートも変わります。設計初期のレイアウトをもとに配線損失を入力した後、現地確認や詳細設計によって配置が変わった場合は、配線損失も見直す必要があります。
次に、現地測量の精度も重要です。発電所の敷地形状や高低差、機器配置位置を正確に把握できていないと、配線距離の見積もりにずれが生じます。特に、傾斜地や造成地では、平面図上の距離だけでなく、実際の地形に沿った配線ルートを考える必要があります。配線損失そのものは電気的な項目ですが、その前提には正確な現地情報があります。
また、施工段階では、設計時に想定していたルートから変更が入ることもあります。現場の状況により、ケーブルラックや埋設ルート、機器位置が調整される場合があります。こうした変更が発電量予測に大きく影響するとは限りませんが、提出資料や完成後の検証を行う場合には、最終的な施工条件とシミュレーション条件の差を把握しておくことが大切です。
PVSystの結果は、発電量を予測するための強力な材料ですが、入力条件の精度に依存します。配線損失もその一部であり、現地条件を反映するほど、結果の説明力が高まります。逆に、現地条件が曖昧なまま入力値だけを細かくしても、見かけ上の精度が高くなるだけで、実態に合わない可能性があります。
太陽光発電所の設計では、シミュレーションと現地確認を分けて考えるのではなく、相互に補完することが重要です。PVSystで発電量や損失を確認し、現地では測位、地形確認、設備位置確認、施工ルート確認を行うことで、机上検討と現場実態のずれを小さくできます。
まとめ
PVSystで配線損失を入力する方法は、単に画面上の数値欄を埋める作業ではありません。配線損失は、太陽電池モジュールで発電した電力が、パワーコンディショナや受変電設備へ届くまでに失われる電力を表す重要な損失項目です。入力値が適切でなければ、年間発電量や損失図、設計案の比較結果に影響します。
初心者が押さえるべき流れは、まず配線損失の意味を理解し、次に直流側と交流側の範囲を整理し、PVSystでそれぞれの損失を入力し、最後に結果画面で反映状況を確認することです。特に、直流側と交流側の混同、二重入力、入力漏れ、過去案件の値の使い回しには注意が必要です。
配線損失の入力値は、設計段階に応じて見直すことが大切です。初期検討では概算値を使い、基本設計では機器配置やケーブル距離を反映し、詳細設計では実際の配線計画に基づいて更新します。PVSystを実務で使う場合、一度入力して終わりではなく、設計変更に合わせてシミュレーション条件を更新する姿勢が求められます。
また、配線損失は現地条件とも深く関係します。発電所の敷地形状、傾斜、機器配置、配線ルートが変われば、損失の前提も変わります。PVSyst上で正確な発電量予測を行うためには、現地の位置情報や地形情報をできるだけ正確に把握することが重要です。
そのため、太陽光発電所の設計や施工前確認では、シミュレーションだけでなく、現地での高精度な位置確認も欠かせません。LRTKは、iPhoneに装着して使えるGNSS高精度測位デバイスとして、現地の設備位置、測点、地形、施工予定位置の確認を効率化できます。PVSystで配線損失や発電量を検討する際も、現地の正確な位置情報をもとにレイアウトや配線ルートを確認できれば、机上のシミュレーションと現場条件のずれを減らしやすくなります。PVSystによる発電量予測と、LRTKによる現地測位を組み合わせることで、太陽光発電設備の設計検討から施工確認まで、より実務に即した判断がしやすくなります。
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