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配電設備維持管理に活かす3D点群記録:スマホと高精度測位技術の活用術

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

配電設備維持管理の現状とDXの必要性

電気の安定供給を支える配電設備(電柱・電線・変圧器など)は社会インフラの要ですが、これらの維持管理には膨大な手間がかかっています。ある大手電力会社では管内に数百万本規模の電柱と、地球数周分にも及ぶ数十万キロメートルの電線を保有しており、年間で百数十万件にのぼる工事・点検をこなしている例もあります。さらに多くの設備は高度経済成長期から1980年代に施工されたもので老朽化が進んでおり、計画的なメンテナンスと更新が欠かせません。しかし近年は人口減少による技能者の減少や高齢化が進み、現場では限られた人員で膨大な設備を管理する必要に迫られています。


こうした状況のもと、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務となっています。属人的で非効率な業務プロセスを見直し、デジタル技術で作業効率化・省力化やデータの有効活用を図ることが、安全で持続可能な配電設備管理の鍵を握ります。例えば、設備点検へのドローン・AI画像解析の試行導入や、工事設計資料の電子化・共有など各社で様々な取り組みが始まっています。本記事ではとりわけ、3Dスキャンによる点群データ記録という切り口から、配電設備維持管理のDXの可能性を探ります。


目視や紙台帳に頼った従来手法の限界

従来の配電設備管理は、人間の目視点検と紙の台帳管理に大きく依存してきました。点検員が定期的に現場を巡視し、電柱の傾きや腐食、電線の弛み、機器の損傷などを目視で確認します。必要に応じて双眼鏡や簡易な測定器を使い、異常の有無をチェックします。点検結果は点検票に手書きで記録され、事務所に戻ってから設備台帳に転記・更新されます。写真撮影も行われますが、後から膨大な写真の中から問題箇所を洗い出す作業にも手間がかかります。長年こうした手法で現場の安全を維持してきましたが、その裏では大きな負担がかかっていました。


まず、人手による目視点検にはヒューマンエラーの可能性が避けられません。見落としや判断ミスがあれば劣化の進行を見逃し、事故リスクに直結します。また、点検作業自体も高所作業や長距離の巡視を伴うため、作業員の負担や危険が大きいのが実情です。紙の台帳管理にも限界があります。記録の転記ミスや、現場での設備変更が台帳に反映されないまま放置されるケースも少なくありません。古い設置図面や表計算ソフトのファイルでは、最新の現場状況を正確に把握しにくく、計画立案や緊急対応に支障をきたす恐れがあります。現場の詳細な情報がベテラン個人の頭の中に留まり、組織全体で共有されにくい属人化も課題です。従来手法のままでは、増え続ける老朽設備への対応や効率化の要求に立ち行かなくなる恐れがあり、抜本的な改善が求められています。


3Dスキャン・点群記録の概要と現場活用例

3Dスキャンとは、現実空間の対象物を非接触で計測し、その形状を点群データとして記録する技術です。点群データとは、物体や地形の表面を構成する多数の点を三次元座標(X, Y, Z)で表現したデータの集合体で、各点には位置座標や場合によっては色(RGB値)などの情報が含まれます。簡単に言えば、現実空間を無数の点の集まりとしてデジタルに切り取ったものです。この点の“雲”を解析することで、現場の形状をパソコン上で再現したり、距離・面積・体積などを測定したりできます。


点群データは専用の3Dレーザースキャナー写真測量(フォトグラメトリ)によって取得します。例えば地上設置型のレーザースキャナーでは、レーザー光を照射して返ってくる反射光から対象物までの距離を測定し、周囲の表面点群を取得します。またドローンやカメラで様々な角度の写真を撮影し、画像解析によって3D形状を復元する方法でも点群を生成できます。従来、人が巻尺や測量機器で一つ一つ測っていた作業も、こうした3Dスキャン技術を使えば短時間で面的・立体的に現況を計測可能です。


現在、建設・土木分野を中心に点群活用が急速に広がっています。例えば土木工事では出来形管理のために盛土や掘削の体積を点群データから算出したり、トンネルや橋梁を定期スキャンして変位をモニタリングしたりといった用途で効果を上げています。点群は現場の“今”を精密に記録したデジタル資源となるため、国土強靭化やi-Construction推進の中で重要な位置を占めつつあります。


配電設備の維持管理でも、この3D点群記録は大きな可能性を秘めています。従来の台帳や図面では把握しきれなかった詳細な現況をデータ化でき、点検・計画業務の高度化に寄与します。活用例としては次のようなものが考えられます。


電柱・電線のデジタル台帳化: 電柱や架線の正確な位置・高さを点群として記録し、GIS上で3D資産マップを構築。紙の図面では得られない立体的な配線経路やクリアランスを把握可能になります。

保守点検への活用: 傾斜した電柱や損傷箇所をスキャンデータから抽出し、補修や交換の優先度判断に活用。点群上で部材の変形や腐食の程度を計測すれば、従来の目視記録より定量的な劣化評価ができます。

災害対応の迅速化: 台風・地震などで倒壊した電柱や切断された電線の状況を3Dスキャンで即座に記録。離れた拠点からでも点群を見れば被害規模を正確に把握でき、迅速な復旧計画立案に繋がります。

計画設計への利用: 現地の点群を背景データとして活用し、新たな配電線ルートや機器設置計画を立案。事前に3D上で支障物との干渉チェックができるため、設計ミスや施工時のトラブルを減らせます。


このように点群記録は、配電分野でも台帳管理から点検・工事計画まで幅広く活用できるポテンシャルを持っています。次章では、この点群データを従来より手軽に取得できる新しい技術として、スマートフォンと高精度測位技術の組み合わせに注目します。


スマホ+高精度RTK測位(LRTK)の組み合わせで点群取得と測位を一括管理

「高度な3Dスキャンは高価な専門機材が必要」という常識を覆しつつあるのが、スマートフォン+RTK測位による手法です。近年の高性能スマートフォンには、LiDAR(レーザーによる光検出と測距)センサーが搭載されたものがあり、数メートル先までの周囲環境をリアルタイムに3Dスキャンして点群化できます。一方で、スマホ内蔵のGPS精度は数メートル程度と粗く、通常のスマホ単体で取得した点群データには絶対座標(地図上の座標)が付与されません。そのためスキャン結果が地図上のどこに位置するか不明であったり、歩き回ってスキャンする過程でデータがわずかに歪んでしまう課題があります。


この問題を解決する鍵となるのが、スマホに装着できる小型の高精度GNSS受信機とRTK(Real Time Kinematic)測位技術の活用です。ここで言うLRTKとは、スマートフォンに取り付けて使う超小型のRTK-GNSS受信機のことで、スマホの位置をリアルタイムにセンチメートル級の精度で測定できるデバイスを指します。RTK測位とは、衛星測位(GPS等)の誤差を基地局からの補正情報で打ち消し、高精度な位置を算出する手法です。従来、このRTKは測量用の専用機器や高価なGNSS端末で利用されてきましたが、LRTKデバイスにより安価で手軽にスマホでもRTK測位が可能になりました。


スマホの3Dスキャン機能とLRTKを組み合わせれば、点群取得と測位を一括管理できます。仕組みはシンプルで、スマホ上部に装着したLRTK受信機で常に自分の位置をcm精度で測りながら、スマホのLiDARで周囲をスキャンするだけです。取得される点群データの一つ一つにリアルタイムで高精度な位置座標が付与されるため、歩き回ってスキャンしても点群が歪まず、データ全体が正しい実空間座標系(グローバル座標)に結び付いた状態で得られます。後から基準点に合わせて位置合わせする必要もなく、その場で得られる点群が即GISやCAD図面上の座標と一致するのです。


さらに専用アプリ上では、取得中の点群がスマホ画面にリアルタイム表示され、自分がスキャンした範囲や取り残しがその場で確認できます。スキャン完了後はスマホ上で任意の2点間の距離を測ったり、面積・体積を計算したりといった解析も即座に行えます。従来はレーザースキャナーで計測し、パソコンにデータを移して解析するといった手順が必要でしたが、スマホとLRTKだけで現場で完結できる手軽さは大きな魅力です。


このスマホ+RTKによる点群計測ソリューションは、まさに“ポケットに入る3D測量機”と言えるでしょう。重量数百グラムのスマホと小型受信機だけを携行すれば、思い立ったときにすぐ現場で3D計測が実施できます。高額なレーザースキャナーやドローン、専門の測量チームを手配しなくても、現場担当者自身の手で必要な箇所をさっとスキャンしてデータ化できるのです。技術者不足が懸念される中、「誰でも・いつでも・どこでも」精密な点群データを取得できるスマホ測量は、配電設備のDX推進において強力な武器となり得ます。


配電柱・引込線・地上機器・地中埋設のデジタル記録法と分類の工夫

配電柱: スマホLiDARで電柱の周囲を歩いてスキャンすれば、電柱1本まるごとの精密な3Dモデルが取得できます。電柱に取り付けられた変圧器や標識番号まで詳細に点群化でき、傾斜角度の測定や部材配置の記録に役立ちます。取得データは電柱IDごとに紐付けて管理することで、台帳上で各電柱の最新3D情報として活用できます。


引込線: 家屋へ電気を送る引込線のような細い電線は、LiDAR点群では途切れたり見落とされたりしがちです。しかし電柱側と建物側の取付点をスキャンで正確に捉えておけば、両者を結ぶ線の経路を推定できます。必要に応じて複数方向から写真を撮影し、フォトグラメトリで点群化することで、細い線状物もモデル化が可能です。引込線まで含めて3D記録しておくことで、樹木との離隔や宅内引込み経路の把握に役立つデータとなります。


地上機器: 地上に設置された開閉器・変圧器・分岐箱などの機器類も、スマホを使って四方からスキャンすることで外形寸法や設置状況を詳細に記録できます。箱の蓋や計器類の配置、周囲の構造物との位置関係なども点群から把握でき、保守点検や交換作業の計画立案に活用できます。機器ごとにデータを分割し属性情報(設備番号や型式など)をひも付けて管理すれば、後から特定の機器だけを抽出・閲覧するといったことも容易です。


地中埋設: 地中に埋設されたケーブルや管路は直接スキャンできませんが、デジタル記録する方法はあります。新設工事では開削した溝にケーブル類を敷設後、埋め戻す前にスマホで溝内部をスキャンすれば、地下設備の正確な位置と深度を3Dモデルとして残せます。既設の埋設物についても、図面上の経路情報にLRTKで測位した地上の参照点を組み合わせ、高精度な位置データとして再整備できます。例えばマンホールや表示杭の位置を点群データに取り込んでおけば、地下資産の推定ルートを現場でAR表示するといった応用も可能です。地上と地下の情報を統合して管理することで、掘削時のリスク低減や資産把握精度の向上に繋がります。


こうした多様な配電資産の3Dデータは、種類や個別設備ごとに整理・分類して管理する工夫が重要です。取得した膨大な点群をそのままでは扱いにくいため、資産種別やロケーション単位でデータを分割・レイヤー分けすると効率的です。例えば電柱ごとに点群ファイルを分割して電柱IDに紐付けたり、電線やケーブルは別レイヤーで管理するといった方法が考えられます。クラウドの点群管理ツールを使えばオブジェクトにタグ付けしたり色分け表示することも容易です。分類整理を徹底することで、3Dデータと既存の資産台帳情報をスムーズに対応付けられ、維持管理業務の一層の効率化が期待できます。


点群からの寸法・位置・傾斜取得、クラウド連携での資産管理台帳への自動反映

3D点群データからは、従来の目視点検では困難だった様々な定量情報を取得できます。点群上で2点間の距離や高低差を測るのはボタン操作ひとつで即座に可能で、例えば電線の地上高や電柱間隔、変圧器の設置高さなども正確に計測できます。傾斜のある電柱であれば、点群上で鉛直方向とのずれを算出することで傾斜角度や偏位量を求めることができます。従来はメジャーや測角器で現場合わせしていた寸法確認も、点群データさえあればオフィス内で何度でも行えるようになります。計測結果はラベル付けして点群内に保存したり、スクリーンショットとして記録することもでき、定期点検の報告資料としてそのまま活用することも可能です。


取得した点群データはクラウド連携によって資産管理台帳へシームレスに反映できます。現場でスキャンしたデータをクラウド上にアップロードすれば、オフィスのPCからブラウザ経由で即座に点群を確認でき、必要に応じて詳細解析や図面化を進められます。さらに点群プラットフォームと既存の設備管理システムを連携することで、点群から抽出した情報を資産台帳データベースに自動登録することも可能です。例えば、電柱点群から算出した高さ・傾斜・正確な設置位置座標を台帳に書き込んだり、点検で判明した不良個所を台帳上で警告フラグとして立てるといった仕組みが考えられます。こうした自動反映により、現場で取得した最新の設備情報がすぐさま台帳に反映され、二重入力の手間やミスなく社内で共有されます。常にアップデートされたデジタル台帳を基にすることで、計画策定や意思決定の精度も向上します。


点検周期最適化、予防保全、更新判断の支援データとしての価値

3D点群データを活用することで、配電設備の点検周期を最適化できる可能性があります。従来は全ての設備を一律の頻度で点検していましたが、デジタルデータに基づいて設備の状態を定量評価すれば、状態の良い設備は点検間隔を延ばし、劣化兆候が見られる設備は早めに再点検するといったリスクベースの計画が立てられます。実際に取得した傾斜角や変形量のデータを分析することで、次回点検までに許容値を超えるかを予測し、点検スケジュールを柔軟に見直すことが可能です。このように点群データに裏付けられた状態監視は、限られた人的資源を効率的に配分しつつ、見逃しリスクを低減するスマートな保守体制に繋がります。


また、詳細な現況データは予防保全の質を高めます。経年で蓄積した点群データを比較すれば、電柱の傾斜進行や機器の変形といった劣化のトレンドを把握できます。例えば前回点検時より傾斜が数度増していれば、倒壊に至る前に補修・建替えを検討するといった予防措置がとれます。点群記録によって「異常が起きてから対処する」事後保全から「異常の芽を早期に発見し対策する」予防保全へのシフトが促進され、結果的に設備事故やサービス中断のリスク低減につながります。


さらに、点群データは設備の更新計画の立案にも有用な意思決定材料を提供します。老朽化更新の優先順位を決める際、従来は経過年数や経験則に頼っていた部分を、実測に基づく客観データで裏付けられます。例えば複数の候補設備の点群を比較し、損傷度合いや構造健全性を定量評価することで、より緊急度の高いものから順に更新していく計画を合理的に策定できます。3Dデータは視覚的にも直感的に訴えるため、社内での説明や合意形成にも役立ちます。データ駆動型の計画策定により、限られた更新予算を最も効果的に配分し、設備投資の最適化を図ることが可能となります。


このように、現場から収集された高精度な点群データは、単なる記録に留まらず、配電設備管理のあらゆる局面で価値を発揮します。点検・保全・更新の各プロセスにデータを組み込むことで、経験と勘に頼っていた従来の運用から脱却し、科学的根拠に基づく意思決定へと転換できます。ひいては電力の安定供給とコスト効率の両立、そして将来世代へのノウハウ継承(熟練者の知見をデジタル資産として残す)にもつながり、配電分野のDXを力強く後押しする基盤となるでしょう。


おわりに:スマホとLRTKで始める簡易3D測量

配電設備の維持管理に3D点群記録を取り入れることは、DX時代における重要な一歩と言えます。現場の「ありのまま」をデジタルデータとして残し、それを分析・活用することで、これまで見えなかった課題の可視化や業務プロセスの革新が可能になります。本記事で述べたように、点群データは点検・台帳・計画といった様々な業務に付加価値をもたらし、ひいては安全性の向上とコスト最適化に寄与する強力な武器となります。


とはいえ、「高度な3D計測の導入はハードルが高いのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし現在では、スマートフォンと小型の高精度GNSS受信機(LRTK)を組み合わせれば、誰でも手軽に簡易3D測量を始められる環境が整いつつあります。特別な高額機材や測量の専門知識がなくとも、現場担当者自らがスマホ片手に高精度な点群データを取得できる時代です。まさに「1人1台の3D測量機」を実現するLRTKの登場によって、配電設備管理の現場DXは現実的な選択肢となっています。


配電設備の老朽化や人手不足といった課題に直面する今こそ、こうしたスマホ測量技術を試験的にでも導入してみる価値は十分にあります。まずは限定的な範囲からでも3D点群記録を始め、社内でデータ活用のメリットを実感してみてはいかがでしょうか。蓄積された点群データは将来的に大きな財産となり、設備管理の在り方を変革する土台となるでしょう。スマホ+LRTKが実現する手軽で精度の高い3D測量を追い風に、配電設備維持管理のDXを力強く推進していきましょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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