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GNSSで解決!GPS誤差を抑える最新補正技術LRTKの紹介

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万能の測量機LRTKの説明

GPS誤差の現状と影響

GPS(Global Positioning System)は私たちの日常生活に欠かせない存在ですが、その位置情報の誤差は一般に5〜10メートル程度とされています。スマートフォンの地図アプリで自分の現在位置を表示する程度ならこの誤差でも問題ありません。しかし、測量や建設現場などセンチメートル単位の正確さが求められる場面では、5メートルものズレは大きな影響を及ぼします。たとえば土地の境界を測る際に数メートルの誤差があれば、全く違う場所を示してしまい信用できません。


GPSの誤差が生じる原因には、大気中での電波遅延やビル・地形による電波の反射(マルチパス)、そして衛星時計のずれなど様々な要素があります。そのため、通常の単独GPS測位では高さ方向の精度も十分ではなく、水平面で数メートルの誤差に加えて高さ方向の誤差はさらに大きくなりがちです。この現状では、建設機械の自動制御やインフラ点検で正確な位置を把握することは困難です。実際、従来はこうした高精度が要求される場面では、重くて高価なトータルステーション(光学測量機)や1級GNSS測量機器が使われてきました。GPS誤差の問題は、安全で効率的な作業の妨げとなるだけでなく、二次測量や手戻り作業によるコスト増大にも繋がります。


GNSSとは?精度向上のカギ

「GNSS」とはGlobal Navigation Satellite System(全球測位衛星システム)の略で、GPSを含むあらゆる衛星測位システムの総称です。アメリカのGPSだけでなく、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDou、そして日本の準天頂衛星システム「みちびき」などがGNSSに含まれます。単一のGPS衛星群だけでは上空の衛星配置によっては測位が不安定になることがありますが、複数の衛星システム(マルチGNSS)を利用することで常に十分な数の衛星を捕捉でき、精度や信頼性が向上します。


GNSSの活用が精度向上のカギとなる理由は、利用可能な衛星数が増えるだけでなく、複数周波数帯の信号を受信できる点にもあります。近年の衛星測位ではL1だけでなくL5など複数の周波数信号を同時に使うことで電離層遅延の誤差を相殺し、高精度化が可能となりました。また、日本の「みちびき」のように、GNSSには既存の測位精度を補強するための専用信号を送信できる衛星も存在します。つまり、GNSS全体をフルに活用し最新の補強信号を取り入れることで、従来のGPS誤差数メートルという限界を突破し、高精度測位(センチメートル級測位)を実現する道が開けてきたのです。


誤差補正技術の進化:SBAS、DGPS、RTK、そしてLRTK

GNSSの測位精度を高めるために、これまでさまざまな補正技術が開発され進化してきました。代表的な方式としてSBASDGPSRTKがあり、そして最新のアプローチとしてLRTKが登場しています。それぞれの特徴を簡単に振り返ってみましょう。


SBAS(静止衛星型の広域補強システム): SBASは、地上の基準局で測位誤差を算出し、それを静止衛星経由で広域に送り届ける仕組みです。日本では「MSAS」や「ひまわり」を用いた補強実験などが知られており、米国のWAASや欧州のEGNOSもSBASの一種です。SBASを利用すると、通常数メートルの誤差があるGPSでも1メートル前後の精度まで向上します。広範囲をカバーできる利点がありますが、補正情報は主にGPS向けで提供され、センチメートル級の精度には達しません。

DGPS(差分GPS): DGPSは基地局で得た正確な位置情報をもとに、近隣の移動局(ローバー)に誤差補正を適用する方法です。単純にコード測位の差分情報を使う方式で、数メートルの誤差を数十センチメートル~1メートル程度まで縮めることが可能です。かつては船舶航法や測位サービスで広く使われましたが、専用の無線通信が必要で精度もRTKほど高くないため、近年ではより高精度な手法に取って代わられつつあります。

RTK(Real-Time Kinematic): RTKは現在広く使われるセンチメートル級測位の代表的技術です。既知点に設置した基地局と移動局との間でキャリア位相(搬送波)の生データをリアルタイムに通信し、両者の観測差から誤差要因を除去することで高精度な位置を算出します。RTKでは一般に水平1〜2cm、垂直3〜4cm程度の精度が得られ、初期の固定解(整数値の解決)も数秒以内という高速性が特長です。しかしRTKには基地局を用意し常時通信する必要があり、利用範囲も基地局から半径数キロ〜十数キロメートル程度に限定されます。通信インフラを利用するネットワーク型RTK(VRS方式など)も普及していますが、こちらも携帯回線への接続や有償サービス契約が必須で、通信圏外では使えないという課題がありました。

LRTK: 上記RTKの進化形として登場したのがLRTKです。LRTKは、後述する日本の準天頂衛星「みちびき」のCLASという最新技術を活用し、従来必要だった基地局や通信を不要にした画期的なリアルタイム補正方式です。LRTKによって、RTKと同等のcm精度を、ユーザーは専用デバイスを空が見える場所に置くだけで得られるようになりました。いわばSBASの広域性とRTKの高精度性を両立させた手法であり、まさにGPS誤差を数センチにまで抑える最新の補正技術として注目されています。


LRTKとは何か?従来技術との違いと特徴

:contentReference[oaicite:0]{index=0}LRTKとは、一言でいえばスマートフォンで扱える超小型の高精度GNSS測位システムです。日本のスタートアップ企業レフィクシア社が開発した「LRTK Phone」は、重さ約165g・厚さ1cmほどのデバイスをiPhoneに装着するだけで、単独でセンチメートル級精度(cm精度)の測位を可能にします。従来の高精度測量機器のように大掛かりな装置や二人一組の作業は不要で、現場に赴いた1人の作業者がスマホ片手に測量を完結できる点が大きな特徴です。


LRTKの最も大きな違いは、基地局や通信回線に依存しないことです。通常のRTK測位では、自前の基地局設置または携帯ネットワーク経由で補正情報を取得する必要がありました。これに対しLRTKでは、補正情報を得るためにスマホの電波すら必要としません(詳しくは次章で説明します)。そのため山間部や災害現場など、従来なら「通信圏外でRTKが使えない」と諦めていた環境でも、LRTK端末さえ空が見通せる場所に置けば高精度測位が可能です。


またLRTKは、既存技術に比べて扱いやすさと携帯性にも優れています。トータルステーションのように重量物を運搬・据え付けしたり、GNSS基地局を三脚に固定して設置したりといった手間がありません。手のひらサイズのLRTK端末とスマホがあれば、あとは現場で電源を入れるだけです。端末は内蔵バッテリーで約6時間稼働し、USB-C経由でモバイルバッテリーからの充電も可能なので、長時間のフィールドワークも安心です。さらにマルチGNSS・マルチ周波数対応の高性能受信機であるため、市販の1級GNSS測量機と遜色ない測位精度を実現しています。実際の比較では、LRTK Phoneで取得した座標値はプロ向け高級機と数ミリ以下の差しかなく、プロ仕様機器に匹敵する精度を持ちながらも、より低コストで提供されていることが分かります。


ソフトウェア面でも、LRTKは非常に充実しています。iPhone用の専用アプリ「LRTKアプリ」は直感的な操作でワンタップ測位やデータ保存が行える設計です。取得した座標データには測点名やメモを付けてクラウドに同期することができ、LRTKクラウド上で地図表示や3D表示で結果を閲覧・共有することも可能です。こうしたデバイス・アプリ・クラウドのトータルソリューションにより、LRTKは単なるGNSS受信機に留まらず万能測量ツールとして機能します。従来技術との違いである「手軽さ」「一人運用」「オールインワン性」は、現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を大きく前進させるポテンシャルを秘めています。


LRTKがGPS誤差を抑える仕組み(みちびき・CLAS・マルチ周波数)

LRTKがこれほど高精度な測位を可能にする裏には、日本独自の衛星システム「みちびき(準天頂衛星システム)」と、その提供するCLASという補強サービスの存在があります。CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)は、日本全国に整備された電子基準点網(GEONET)のデータをもとに算出した誤差情報を、みちびき(静止軌道を含む準天頂衛星)から専用のL6帯電波に乗せて配信するサービスです。簡単に言えば、「国が運用する基準局の補正情報を、衛星通信でユーザーに直接届ける」という仕組みで、ユーザー側はCLAS対応受信機でその信号を受信し、自身の測位に補正を適用することでセンチメートル級の精度を得られます。


LRTK端末はまさにこのCLAS信号に対応した受信機であり、測位時に自動的にみちびきから補正情報を取得します。これによって、通常は5~10mあった単独測位の誤差が一気に数cmまで縮小されます。特筆すべきは、補正情報取得のために携帯回線が不要な点です。従来のRTKでは基地局の電波やインターネット経由のデータが生命線でしたが、CLASでは補正データが上空の衛星から直接降ってくるため、山奥や海上など地上通信が届かない場所でも高精度測位が可能となります。日本国内であればどこでも均一な補正が受けられるうえ、衛星からの信号受信自体には利用料がかからず無料(受信機の購入費用のみ)というメリットもあります。


もちろん、CLASを活用するには受信機側が高度な性能を備えている必要があります。LRTK端末はGPS・GLONASS・Galileo・みちびきなど複数衛星からの信号を同時にとらえるマルチGNSS対応で、さらにL1/L2/L5といった複数周波数もサポートしています。これにより、電離層誤差の補正や搬送波の整数位相(整数アンビギュイティ)の迅速な解決が可能となり、リアルタイムで固定解(Fix解)に到達します。実際、空が十分開けた環境では端末起動後20〜40秒程度で測位精度ステータスが「Fix(固定解)」に切り替わり、水平±2cm・垂直±4cm以内という高精度に収束します。その精度は高く、単独測位では難しかった高さ方向(Z方向)の測位も数センチの誤差で可能となっています。


このようにLRTKは、みちびきのCLAS補正情報マルチ周波数GNSS受信という最新技術の組み合わせによって、GPS誤差を劇的に抑えることに成功しました。言い換えれば、国土地理院の電子基準点ネットワークを仮想的に自分のものとして利用し、その恩恵を小型デバイスで享受しているようなものです。従来は難しかった山間部での測位や災害時の現場測量も、LRTKならセンチメートル級測位で対応できるようになりつつあります。この技術は内閣府の公式サイトでも紹介されており、日本発の高精度測位ソリューションとして国内外から注目されています。


導入事例と実用効果(測量・建設・点検・災害)

LRTKはその利便性と精度から、さまざまな分野で活用が始まっています。ここでは測量建設インフラ点検災害対応の4つの場面における導入事例と効果を紹介します。


測量: 従来、基準点測量や用地測量にはトータルステーションや高価なGNSS機器が必要で、専門の測量士が複数人で作業するのが一般的でした。LRTKを導入すれば、1人の作業者がスマホと端末だけで現地の座標測定を完了できます。例えば土地家屋調査や土木の出来形管理で、基準点の座標出しを即座に行い、その場でクラウド共有するといった運用が可能です。人員削減や作業時間の短縮といった効果はもちろん、cm精度のデータがすぐクラウドで共有できるため、後工程での図面作成や検査作業も効率化します。

建設: 建設業界でも高精度GNSSは重機のマシンガイダンスやICT施工で活躍しています。LRTKは、小型で機動性が高いため、現場監督者や技術者が手軽に現況測量出来形チェックを行うツールとして効果的です。たとえば道路工事で設計図の座標データをLRTKアプリに取り込み、杭打ち位置まで誘導する「座標誘導」機能を使えば、草木や積雪に隠れた測量標を探すのも容易です。また、施工後の構造物をスマホのAR機能で3D設計モデルと照合し、仕上がりをチェックするといった高度な使い方も高精度測位があってこそ可能になります。これらにより、手戻りの防止や品質向上に寄与し、業務プロセス全体の省力化・DX化に貢献しています。

インフラ点検: 橋梁や道路、上下水道といったインフラ点検の現場でもLRTKは有用です。例えば道路標識の設置場所を写真付きで記録する場合、LRTKの測位写真機能を使えばcm精度の位置情報+撮影方位を自動で付与した写真が残せます。時系列で同一地点の写真を管理することもできるため、経年劣化の比較や補修後の確認が正確に行えます。さらに、地中に埋設された管やケーブルの位置をあらかじめLRTKで測定・記録しておき、次回の掘削時にAR表示でその位置を透視投影するといった活用もされています。これにより誤って配管を損傷するリスクを減らし、安全かつ効率的な点検・工事が実現しています。

災害対応: 自然災害の現場では、一刻も早く被害状況を把握し復旧計画を立てる必要があります。福井市では豪雨災害の復旧現場にLRTK Phoneを導入し、被災箇所の測量を迅速に行った事例があります。通信インフラが不安定な状況でも、LRTKならみちびきの補正で高精度測位ができるため、孤立した現場の状況を正確に測って後方支援の人々と共有できます。実際に、被災現場で地形をスキャンして土砂崩れの体積を算出したり、崩落した道路の寸法を即座に測定したりといった用途で活用されました。これらの取り組みは早期復旧とコスト削減に大きく寄与し、自治体の防災計画にも高精度GNSSの有用性を示しています。LRTKは手軽に持ち運べるため災害時の機動調査に適しており、今後ますます防災分野での活用が期待されています。


LRTKを使った簡単測量の手順

最後に、LRTK Phoneを用いて簡単測量を行う一般的な手順を紹介します。特殊な技術がなくても、以下のステップに沿って操作すれば誰でもセンチメートル精度の測位が可能です。


機器とアプリの準備: 測量を始める前に、LRTK端末の電源を入れてスマートフォンと接続します。iPhoneの場合は専用のLRTKアプリを起動し、端末がBluetoothで認識されたら接続ボタンをタップしてください。端末をしっかりスマホに装着し、空が開けた屋外に持ち出します。

高精度測位の開始: 電源投入後、端末は自動的に衛星を捕捉し始めます。初めの数十秒間は精度がまだ±数メートル程度ですが、みちびきからCLAS補正を受信して内部演算が進むと、測位モードが徐々に高精度になります。アプリ上でステータスが「Fix(固定)」に変われば補正完了で、センチメートル級精度の測位が可能な状態です(空の見通しが良ければ概ね30秒前後でFixに到達します)。

ポイントの測定と記録: 測りたい地点に端末を設置し(できれば付属の一脚や三脚を使うと安定します)、アプリの「測位」ボタンを押してその地点の座標を取得します。取得した座標はリアルタイムで画面に表示され、緯度経度や高さ(標高)が確認できます。必要に応じて、数秒間測位して平均値を求める機能を使うことで、より安定した座標値を得ることもできます。

データの保存: 測位した座標に問題がなければ、アプリ上で「保存」ボタンをタップしてデータを保存します。保存時にその点の名前(点名)やメモを入力できるので、「○○基準点」や「△△現場A測点1」のように分かりやすくラベル付けしておきます。ボタン1つで記録が完了し、スマホ内に高精度座標が蓄積されます。

クラウドへの同期と活用: 現場で取得した測位データは、後でまとめて活用できます。アプリ右上の同期ボタンを押せば、保存した全ての測位結果がLRTKクラウドへアップロードされます。オフィスに戻ってPCのブラウザからクラウドにログインすれば、現場で測った点の位置を地図や航空写真上で確認したり、座標リストをダウンロードしたりできます。またクラウド上で複数の測点間距離や面積を計測することも可能です。現場で得たデータを即座に共有・解析できるので、関係者との情報共有や報告書作成もスムーズです。


以上のように、LRTKを使った測量の流れは非常にシンプルです。従来のような高度な測量スキルや煩雑な機器操作は必要ありません。スマートフォンに不慣れな方でも直感的に扱えるアプリ画面になっており、「測る→保存→共有」がワンタップずつで完結します。わずかな時間でセンチメートル精度の測位ができるため、現場の合間に追加測量したり、急な測定依頼に即応したりすることも苦になりません。高精度測位をもっと身近に、もっと手軽に——LRTKはGPS誤差の課題を解決し、測位の世界を次のステージへと押し上げる頼もしいツールと言えるでしょう。これからGNSSを活用した作業の効率化や精度向上を検討されている方は、ぜひ最新補正技術LRTKの導入を検討してみてください。現場の風景が一変するほどの利便性と性能を実感できるはずです。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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