はじめに:概算数量設計の重要性と現場の課題
*図: ドローンによる現場測量の様子。高所や広範囲の測量を安全かつ効率的に行える点が魅力です。* 建設プロジェクトにおける概算数量設計は、計画段階で工事に必要な土砂の量や造成規模を見積もる重要なプロセスです。正確な概算数量の算出は、工事費用の見積りや工程計画の策定に直結し、プロジェクトの成否を左右します。しかし、設計初期の現場では詳細な測量データが不足しがちで、限られた情報から数量を推定しなければなりません。そのため従来の概算数量設計では、「実際の数量と大きく乖離しないか」という不安が常につきまとい、設計者や発注者にとって頭痛の種となっていました。
現場の条件や制約も課題です。山間部の急傾斜地や湿地帯など測量が困難な地形では、人力で十分な測量点を取得すること自体が難しく、概算数量の精度が犠牲になりがちでした。また、限られた人員で広範囲を測る場合、どうしてもポイント間隔が粗くなり、局所的な凹凸や地形変化を見落とすリスクがあります。こうした課題から、概算数量設計の段階では安全側に大きめの数値を想定したり、経験則による補正を加えたりするケースも少なくありませんでした。結果として不要な予算計上や、逆に不足による契約変更が発生するなど、従来手法には改善の余地がありました。
従来手法の限界と精度・工数の悩み
従来の概算数量設計では、主に人手による地形測量と図面上の計測に頼っていました。例えば、設計担当者が紙の地形図や既存の2D CADデータから断面を切り出し、計算で土量を求めるといった方法です。しかし紙図面の等高線から推定する土量には限界があり、標高点の粗さや読図の誤差から精度を確保するのが難しいのが実情でした。
一方、現地測量を行う場合でも課題は山積みです。広い敷地をトータルステーションやGPS測量でカバーするには多くの人手と時間を要します。例えば数ヘクタール規模の敷地であれば、測量班が何日もかけて多数の測点を取得し、その後社内でデータ整理と土量算出を行う必要がありました。人力で取得できる点の数には限りがあり、短時間で済ませようとすれば測点間隔を大きく取らざるを得ず、地形を粗くしか把握できません。その結果、「測り切れなかった谷部分に土量の見落としがあった」「不陸を見逃して数量が過小だった」というリスクが伴いました。
精度を上げようとすればするほど工数が増大するのも悩みどころでした。細密に測ろうとすれば日数も人員も増えコスト高となるため、概算設計の段階ではある程度の割り切りが必要でした。このように従来手法の限界として、精度と効率を両立しづらい点が 挙げられます。忙しい現場では十分な時間をかけられず、「精度は二の次」で概算を出すことも多かったのです。
ドローン測量による3次元モデル生成のしくみ
近年、この状況を一変させつつある技術がドローンを活用した写真測量です。ドローンに搭載した高解像度カメラで上空から多数の写真を撮影し、専用のソフトウェアで解析することで、現地の詳細な3次元モデルを生成できます。この処理にはSfM(Structure from Motion)と呼ばれる手法が使われ、複数写真の重複領域から特徴点を抽出し、それらの位置関係を解析することで点群(ポイントクラウド)を作成します。さらにMVS(Multi-View Stereo)処理によって点群を高密度化し、滑らかな地形表現が可能になります。その結果得られるのは、地表面の形状を無数の点の集合体として表現した3次元点群データです。
従来は人手で一点一点測っていたものが、ドローン写真測量では数千万点規模の測量データを短時間で取得可能となります。例えばドローン 飛行時間は数十分程度、撮影後のデータ処理も自動化が進んでおり、数時間で精密な地形モデルが完成します。最近の高性能ドローンではRTK-GNSSを搭載しており、飛行中に取得する位置情報にも数cmの精度が期待できます。そのため最低限の制御点(後述)を補助的に設定するだけで、現地座標系に合致した精度の高い点群モデルを生成できるようになっています。空撮による3次元モデル化は、これまで測量に要していた日数を大幅に短縮するとともに、これまで得られなかった詳細データをもたらしてくれます。
点群データから土量・断面・面積を瞬時に算出する仕組み
*図: ドローン写真測量から得られた地形の点群データ例。地表面が無数のポイントで高密度に表現されている。* ドローン写真測量で得られた点群データは、まさに現地そのもののデジタルコピーと言えるものです。各点にはX,Y,Zの座標値(およびカラー写真に基づく色情報)を持つため、この点群を解析することで様々な計測が可能になります。専用ソフト上で地表面の点群からメッシュや等高線を生成すれば、従来手作業で行っていた土量計算や断面図の作成が飛躍的に効率化されます。
例えば土量算出では、点群から生成した地表面モデルと設計で予定している造成面を重ね合わせ、両者の体積差を演算します。これにより、ある造成区域でどれだけ土を盛るか・切るかといった土量を瞬時に算出できます。点群から直接メッシュ比較を行うため、複雑な地形や不規則な形状でも計算精度が高く、従来の人力計算に比べて誤差を大幅に減らせます。
また、任意のラインに沿って断面図を切ることも容易です。点群データ上で「測線」を指定すれば、その線に沿った縦断面・横断面の形状を即座に描画できます。従来は現地で測った点をつないで断面図を起こしていた作業が、ボタン一つで完了するイメージです。さらにオルソ画像(上空写真を歪み補正した真上からの画像)も生成されるため、平面図上で面積を測ったり、設計図と重ねて出来形を確認したりといった使い方もできます。要するに、点群データがあれば距離・面積・体積などあらゆる幾何情報をデジタルに計測できるのです。
これら は専用ソフトやクラウドサービス上で半自動的に処理されるため、担当者は結果を確認して必要に応じて調整するだけで済みます。例えば盛土・切土量の算出結果は即座に表やグラフで表示され、断面も複数箇所を連続して切り出して一括出力することが可能です。出来形検査にも有効で、完成した地形の点群データを設計の予定地形と比較すれば、所定の高さまで盛土が達成されているか、過不足はどこかといった情報を色分けヒートマップで可視化できます。これにより、従来は目視やスケールによって現場合わせしていた出来形確認が、データに基づく客観的な検証作業へと変わります。
実例:ドローン活用で3日→半日に短縮した概算設計作業
ドローン測量と点群解析の威力を示す実例として、ある造成予定地での概算数量設計作業を考えてみましょう。対象は約10ヘクタールの用地で、従来は2~3人の測量チームが地上測量でデータを取得し、設計担当が土量を算出していました。この場合、現地踏査と測量に2~3日、社内での計算整理にさらに1日程度を要し、合計3~4日かけて概算数量を取りまとめていたとします。
これをドローン測量に切り替えたところ、作業時間が劇的に短縮されました。ドローンでの空撮準備・飛行は半日もあれば完了し、取得した写真から点群モデル生成~土量算出までの解析処理もその日のうちに終わったのです。結果、3日がかりだった作業が実質半日で成果を得ることができました。時間にして約1/6、労力としても測量はドローンオペレーター1名と補助1名で済むため、人員数は半減以下です。
このスピード感により、発注者への素早いフィードバックが可能になりました。早期に正確な数量情報が得られるため、設計変更の判断や予算措置も前倒しで検討できます。また、短期間で済むということは繰り返し測量も容易になることを意味します。必要に応じて現況を再度ドローン撮影すれば、工事着手前に複数パターンの造成案を比較検討するといった使い方もできます。従来は時間と費用の都合で一度しかできなかった測量を、ドローンなら状況が変わるたびに気軽に実施できるわけです。
測量が困難な現場(法面・立入困難地)の対応力
ドローン測量の恩恵が特に大きいのが、人が立ち入りにくい危険な現場です。急峻な法面(のりめん)や崩落の危険がある斜面では、従来の地上測量は命綱を付けて人力で行うしかなく、測り残しやヒューマンエラーのリスクも高い状況でした。ドローンであれば、離れた安全な場所から上空に機体を送り込むだけで、そうした危険個所の詳細なデータを取得できます。崖錐や採石場の壁面など、これまで実測が困難だった対象でも、空撮写真から点群化することで形状を把握できるようになりました。
また、災害直後の現場や老朽インフラの点検といった場面でも、ドローンは大活躍しています。例えば大規模な土砂崩れが起きた直後は、余震や二次災害の恐れから人が立ち入れませんが、ドローンであれば上空から被災地全体の地形をスキャンできます。これにより、早期の概算数量算出(崩落土砂の量や緊急的な盛土の必要量など)が可能となり、初動対応の迅速化につながります。
さらに、橋梁やダムといった高所の構造物も、足場を組んだり高所作業車を使わずにドローンで点検・計測 ができる例が増えています。水面下や樹林の下などドローンのカメラだけでは捉えづらい場所については、地上型レーザースキャナーやUAVレーザー測量(LiDAR搭載ドローン)との併用でカバーする動きもあります。このようにドローンと3次元計測技術は、従来は測れなかった所を測れるようにし、現場の安全性とデータ精度を飛躍的に向上させています。
LRTKと併用することで現地座標の精度がさらに向上
ドローン写真測量を用いた点群モデルは、相対的な形状精度は非常に高いものの、そのままでは厳密な絶対座標が担保されない場合があります。現場ごとの座標系(平面直角座標系や公共座標)に点群を合わせ込むためには、いくつかの基準点(GCP:Ground Control Point)を現地に設置し、高精度な位置を既知点として与える必要があります。この基準点の測量作業に威力を発揮するのがLRTKです。
LRTK(※レフィクシア社の提供するスマートフォンRTKソリューション)は、スマホに装着する超小型のRTK-GNSS受信機を用いて、手軽にセンチメートル級の測位を可能にする技術です *図: スマートフォンに装着したポケットサイズのRTK-GNSS受信機「LRTK Phone」。このデバイスにより誰でも簡単に高精度測位が行える。* 。従来、RTK方式の測位には高価な専用機器や熟練したオペレーターが必要でしたが、LRTKの登場によって1人1台スマホで高精度測量という時代が現実のものとなりました。スマホと小型デバイスを組み合わせ、専用アプリを起動してボタンを押すだけで、任意の地点の座標をリアルタイムに取得できます。
ドローンで取得した点群にLRTKで測った基準点を与えれば、点群全体を公共座標系に高精度で合わせることができます。これにより、出来上がった3次元データを設計図や他の測量データとピタリと重ね合わせることが可能になります。また、LRTKは単点測量だけでなく、スマホのカメラやAR機能と連動して点群スキャンを行う用途にも活用できます。例えばスマホを持って現場を歩き回るだけで、絶対座標付きの点群を取得することもでき、ドローンが飛ばせない屋内空間や橋梁の裏側などの測量にも役立ちます。ドローン+LRTKの併用によって、現場全体のあらゆるポイントを高精度にカバーできるようになり、概算数量設計に必要なデータ精度は一段と向上するでしょう。
まとめ:3次元計測が概算精度と働き方を変える
以上のように、ドローンによる3次元計測は現場の概算数量設計の精度と効率を飛躍的に高める技術として注目されています。従来手法では日数を要した土量算出がほぼリアルタイムで可能となり、危険な測量作業も安全な方法に置き換わりつつあります。その結果、設計段階から正確な数量情報を得られるため、過大な安全率を見込んだり経験則に頼ったりせずに、データに基づいた合理的な計画策定が行えるようになります。これは発注者・受注者の双方にメリットが大きく、予算の最適化や契約変更リスクの低減、さらには環境負荷の軽減(余分な掘削・運搬を削減)にもつながります。
働き方の面でも変化が生じています。測量作業の負担軽減により技術者はより短時間で成果を得られるため、空いた時間を設計検討や他業務に充てることができます。重い測量機材を担いで危険な現場を歩き回る必要が減り、代わりにデスク上で点群データを解析・活用するスタイルが広がっています。若手技術者にとってもデジタルツールを駆使する業務は魅力的に映り、人材確保・ 育成の面でもプラスに働くでしょう。まさに3次元計測がもたらすDX(デジタルトランスフォーメーション)が、概算数量設計の精度向上と働き方改革を同時に実現しつつあるのです。
今後、国土交通省が推進するi-Construction施策の深化により、こうした3D測量技術の活用はさらに普及が進むと考えられます。現場の標準的な手法として定着すれば、概算段階から完成後まで一貫してデジタルデータで管理することも可能となり、建設プロジェクトの生産性と透明性は飛躍的に向上するでしょう。
おまけ:LRTKで始めるスマホ×高精度測量ワークフロー
最後に、ドローン測量と並んで注目を集めるスマホ×高精度測量のワークフローについて触れておきます。前述のLRTKを活用すれば、手元のスマートフォンがそのまま高精度な測量機器に早変わりします。現場での基本的な使い方はシンプルです。
• デバイス装着と起動: スマホにLRTK Phone受信機を取り付け、専用アプリを起動します。初期設定で補強信号の受信(日本版GPS衛星「みちびき」のCLAS信号など)を行えば準備完了です。
• ポイント測定: 測りたい地点でスマホ画面のボタンをタップするだけで、その場所の座標値(緯度・経度・高さ)を記録できます。測定は瞬時で、精度は状況にもよりますが水平・垂直とも数センチ以内に収まります。測点に名前やメモを付けて保存することも可能です。
• クラウド共有: 記録したデータはその場でクラウドにアップロードできます。事務所に戻ってからケーブル接続や手動でデータ整理をする必要はありません。クラウド上では地図表示された測点を確認でき、複数人でデータを共有してリアルタイムに活用できます。
このようにLRTKを使った簡易測量は、従来の測量機器に比べ圧倒的に手軽でスピーディーです。例えば従来は複数人で行っていた現場の水準測量も、LRTK搭載スマホ1台で代替できるケースがあります。機動性が高 いため、必要なときにすぐ測れる「日常使いの測量ツール」として現場の働き方を変革しつつあります。ドローンによる広範囲の3D計測と、スマホ単体によるピンポイントの高精度測位を組み合わせれば、鬼に金棒です。これから概算数量設計に取り組む方は、ぜひこうした最新ツールも積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。効率化と精度向上を両立する新たなワークフローが、皆様のプロジェクトを力強く支えてくれることでしょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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