目次
• 外壁検査で基礎巾木との境目を見る重要性
• 白華が発生する基本的な仕組み
• 白華の位置と広がり方を読む
• 雨天後と乾燥時の変化を読む
• 外壁下端と基礎巾木の納まりを読む
• ひび割れや浮きなどの周辺症状を読む
• 地盤面と排水環境から水分の供給源を読む
• 室内側と床下の情報を重ねて読む
• 白華を発見したときの記録方法
• 調査と補修の優先順位を決める考え方
• 外壁検査で避けたい白華の判断ミス
• まとめ
外壁検査で基礎巾木との境目を見る重要性
外壁検査で建物の足元を確認すると、外壁と基礎巾木の境目に白い粉や筋状の付着物が見つかることがあります。一般に白華と呼ばれる現象ですが、見た目が白いというだけで、直ちに重大な構造不良や雨漏りを意味するわけではありません。一方で、白華はコンクリートやモルタルなどの内部を水分が移動した可能性を示すため、単なる汚れとして見過ごすことも適切ではありません。
外壁と基礎巾木の境目は、建物のなかでも水分の影響を受けやすい場所です。上部の外壁を流れた雨水が集まりやすく、地面から跳ね返る雨水にもさらされます。舗装や土から水分が供給される場合もあり、植栽への散水、設備からの排水、雨樋の不具合など、建物周囲の環境から影響を受けることもあります。
さらに、この境目では異なる材料や仕上げが切り替わります。外壁材、下地、防水層、見切り部分、基礎コンクリート、巾木仕上げなどが近接し、それぞれの吸水性や乾燥速度が異なります。そのため、ほかの場所では目 立たない水分移動が、材料の境界付近で白華として表面化する場合があります。
外壁検査の実務では、白華の有無だけを記録して終わらせないことが重要です。白華がどこから始まり、どの方向に広がり、周辺にどのような劣化があり、雨天後にどう変化するのかを読み取る必要があります。表面に現れた位置が水分の入口とは限らず、外壁内部や仕上げ層の背面を移動した水が、乾燥しやすい場所から出ていることもあるためです。
白華を適切に読む目的は、現場で原因を無理に断定することではありません。確認できた事実を整理し、想定される水分の供給源を絞り込み、経過観察でよいのか、追加調査が必要なのか、早めに安全対策や補修を行うべきなのかを判断することにあります。
特に、白華とともにひび割れ、仕上げの浮き、塗膜の膨れ、剥離、欠損、さび汁などが確認される場合は、白い付着物だけを清掃しても問題が解決しない可能性があります。水分の入口や滞留原因を残したまま表面処理を行うと、白華や塗膜異常が再発 することもあります。
そのため、基礎巾木との境目に白華を見つけたときは、位置、時間、納まり、周辺症状、屋外環境、建物内部という複数の視点から確認することが大切です。本記事では、この考え方を6つのポイントに分けて解説します。
白華が発生する基本的な仕組み
白華は、コンクリートやモルタルなどに含まれる水溶性の成分が、水分とともに材料表面へ移動し、水分が蒸発した後に白い結晶や粉として残る現象です。表面に薄く広がる場合もあれば、ひび割れや材料の境目に沿って筋状に現れる場合もあります。
白華が生じるためには、材料内を移動する水分と、その水分に溶ける成分、表面で水分が蒸発する条件が関係します。したがって、白華が確認されたということは、少なくとも過去のある時点で、その部分に水分移動があった可能性を示しています。
ただし、水分の由来は一つではありません。施工時に材料内部へ含まれていた水分が乾燥する過程で発生することもあれば、降雨、地面からの吸水、結露、設備からの漏水などによって繰り返し発生することもあります。新築後や補修後の比較的早い時期に一度だけ現れ、その後増えない白華と、築年数が経過した建物で雨のたびに再発する白華とでは、検討すべき内容が異なります。
外壁検査では、白華を原因ではなく、水分移動の結果として捉えることが基本です。白華が付着している位置を清掃すれば見た目は改善しますが、水分の供給源が残っていれば再発する可能性があります。反対に、白華が残っていても、すでに材料内部の乾燥が進み、水分供給が止まっている場合もあります。
また、白く見える付着物がすべて白華とは限りません。土ぼこり、工事粉じん、清掃後の洗浄成分、塗膜表面の変化、鳥や昆虫による汚れなどが白く見える場合もあります。現場では、色だけで断定せず、発生位置、手触り、形状、降雨との関係、清掃後の再発状況を組み合わせて判断します 。
粉状で触れると落ちやすいものもあれば、表面に固く付着した状態のものもあります。白華が厚く堆積している場合は、その下にある仕上げの状態が見えにくくなりますが、確認のために無理に削ると表面を傷める可能性があります。除去する場合は、対象材料への影響を考え、清掃前の写真と状態を記録しておく必要があります。
白華自体の量だけで劣化の重大性を決めることもできません。白華が広範囲にあっても一時的な乾燥過程による場合があります。一方、白華の範囲が小さくても、ひび割れや浮きを伴い、同じ場所で繰り返している場合は、継続的な水分供給を疑う必要があります。
つまり、外壁検査で重要なのは白さの強弱ではなく、白華が生じた背景を読み取ることです。ここからは、そのために確認したい6つのポイントを順番に見ていきます。
1. 白華の位置と広がり方を読む
最初のポイントは、白華がどこにあり、どのような形で広がっているかを確認することです。白華の位置と分布は、水分が移動した方向や乾燥した場所を考えるための重要な手掛かりになります。
外壁と基礎巾木の境目に沿って、白華が横方向へ長く連続している場合は、その高さに共通する納まりや水分条件が関係している可能性があります。外壁下端を流れた雨水が境目で滞留している場合や、基礎巾木上端の形状によって水が残りやすくなっている場合、同じ高さに施工上の打継ぎや材料の切替部がある場合などが考えられます。
横方向に連続していても、建物の一面全体に出ているのか、数メートルの範囲だけに出ているのかによって見方が変わります。面全体に共通している場合は、方位、雨掛かり、外壁下端の納まりなどを確認します。限られた範囲だけの場合は、その上部や周囲に局所的な水分供給源がないかを調べます。
白華が縦方向の筋になっている場合は、上部から下方へ水が移動した可能性を考えます。筋の下端だけでなく、上端をたどることが重要です。白華の真上に窓、庇、換気口、配管貫通部、外壁目地、雨樋の継ぎ目などがある場合は、それらとの位置関係を確認します。
ただし、水分が外壁の表面だけを真下へ流れるとは限りません。仕上げ材の背面や外壁内部を横方向に移動し、離れた場所から表面へ現れることもあります。そのため、白華の直上だけに原因を限定せず、左右や上方を含む広い範囲を確認する必要があります。
基礎巾木の下部から上方へ白華が広がっている場合は、地面側からの水分供給も検討します。地盤面が高く、基礎巾木に土や湿った砂利が接している場合、舗装と基礎の隙間に水がたまっている場合、植栽帯から水が回っている場合などは、基礎側へ水分が移動する可能性があります。
地面に近いほど白華が濃く、上へ行くほど薄くなっている場合は、雨水の跳ね返りだけではなく、地面や舗装の湿気も確認します。反対に、境目付近だけが濃く、その下側にはほとんど白華がない場合は、外壁下端や境目の納まりから水分が供給されている可能性を考えます。
白華が円形や不規則な輪郭として現れている場合は、局所的に濡れた範囲の外周で水分が蒸発し、成分が集まった可能性があります。輪郭が時間とともに拡大しているのか、同じ大きさを保っているのかを確認することで、水分供給が続いているかを判断しやすくなります。
建物の方位との関係も記録します。風を伴う雨を受けやすい面だけに白華が集中している場合は、雨掛かりの影響が考えられます。日照が少なく乾燥しにくい面に集中する場合は、同じ量の水分でも長く残ることが白華の目立ちやすさにつながっている可能性があります。
局所写真だけでは、後から白華の位置を特定できないことがあります。検査では、建物全体のどの部分かが分かる写真、窓や設備との関係が分かる写真、白華の状態を確認できる近接写 真を組み合わせます。建物の面、通り、地面からのおおよその高さ、境目からの距離も記録すると、再確認が容易になります。
白華の長さや高さは、可能な範囲で寸法を記録します。初回に範囲を測っておけば、次回検査で広がったのか、縮小したのかを客観的に比較できます。「白華あり」という短い記録だけでは、進行性の判断に必要な情報が残りません。
2. 雨天後と乾燥時の変化を読む
二つ目のポイントは、白華が天候や乾燥状態によってどのように変化するかを見ることです。白華は水分の移動と蒸発に関係するため、晴天時の一度だけでは、現在も水分供給が続いているのか、過去の痕跡が残っているだけなのかを判断しにくい場合があります。
雨が降った直後は、表面が濡れて白華が目立たなくなることがあります。濡れた範囲が乾燥するにつれて、再び白い粉や筋が現れる場合は、雨水によって材料 内の成分が移動している可能性があります。降雨のたびに白華が濃くなったり、範囲が広がったりする場合は、継続的な水分供給を検討する必要があります。
雨天後に境目だけが長時間濃く変色している場合は、周囲より乾燥が遅れている可能性があります。水分が内部に保持されている場合や、境目の形状によって水がたまっている場合、日照や通風が不足している場合などが考えられます。白華だけでなく、濡れ色が消えるまでの時間も観察すると有用です。
検査当日が晴れていても、直前の天候を確認します。前日に強い雨が降ったのか、数週間乾燥が続いているのかによって、外壁の状態は異なります。降雨後すぐの状態と、数日乾燥した後の状態を比較できれば、水分の移動や再発の傾向を把握しやすくなります。
散水や清掃による水も考慮します。植栽への散水が毎朝行われている場所や、定期的に外構を水洗いする場所では、雨が降っていなくても基礎巾木が濡れます。白華のある位置と散水範囲が一致している場合は、降 雨以外の水分供給を疑います。
設備から排出される水も同様です。空調設備などの排水が舗装面へ落ち、建物側へ流れていると、晴天時でも基礎付近に水分が供給されます。設備の稼働時だけ濡れる場合は、検査時に乾いていても、管理者への聞き取りによって状況を把握できることがあります。
季節による違いも見逃せません。気温が低く日照時間が短い時期は、外壁や基礎巾木が乾きにくくなります。高温で風通しのよい時期は表面が早く乾くため、白華の析出が急に目立つこともあります。特定の季節だけ再発する場合は、降雨量だけでなく、気温、湿度、日照、結露の可能性も含めて考えます。
白華を清掃して経過を見る場合は、清掃前の状態を必ず記録します。清掃した日、天候、除去した範囲、その後の降雨状況を残し、同じ構図で再撮影します。再発までの期間も重要な情報です。清掃後の最初の降雨で再び現れるのか、数か月後に少量だけ現れるのかによって、水分供給の継続性に対する見方が変わります。
長期間変化しない白華は、過去の水分移動の痕跡である可能性があります。しかし、変化がないことだけで内部が乾燥しているとは判断できません。塗膜の膨れや仕上げの浮きが進んでいないか、周辺の含水状態に変化がないかを併せて確認します。
経過観察を行うときは、単に次回の定期検査を待つのではなく、再確認する条件を決めておくことが大切です。強い雨の後、梅雨時期、散水設備の稼働後、一定期間の乾燥後など、原因を切り分けやすい時期を選びます。白華は時間の情報を加えることで、初回の目視だけでは分からなかった水分経路を推定しやすくなります。
3. 外壁下端と基礎巾木の納まりを読む
三つ目のポイントは、外壁下端と基礎巾木上端の取り合い形状を確認することです。基礎巾木との境目は、単なる線ではなく、雨水を外へ流し、内部へ入った水分を排出し、材料同士の動きを受けるための機能が集ま る部分です。
まず、外壁表面を流れた雨水がどこへ落ちるかを確認します。外壁下端から水が壁面を離れて落ちる形状になっていれば、基礎巾木へ伝わる雨水を抑えやすくなります。一方、下端部の変形や施工ずれ、汚れの堆積などにより、水が裏側へ回り込んだり、境目に沿って流れたりすることがあります。
境目に水平な段差がある場合は、その上面に水や土ぼこりがたまっていないかを見ます。外側へ水が流れる形状ではなく、建物側へわずかに傾いていると、少量の雨でも水が残る可能性があります。降雨後の水たまり跡、藻、泥、変色などがあれば、乾燥しにくい状態が続いている手掛かりになります。
外壁と基礎巾木の間に隙間が見える場合は、すぐに充填すべき不良と判断しないことが重要です。建物の構法によっては、壁体内へ入った水分を排出したり、通気を確保したりするために必要な空間が設けられていることがあります。設計意図を確認せずに隙間をふさぐと、内部の水分が排出できなくなるおそれがあります。
境目にシーリング材が施工されている場合は、表面のひび割れ、接着面からの剥がれ、肉やせ、欠損などを確認します。ただし、シーリング材の劣化と白華が近接しているからといって、そこを雨水の入口と断定することはできません。内部へ入った水分が別の位置へ移動し、基礎巾木側から出ている場合もあります。
外壁下端に設けられた部材や仕上げの状態も確認します。変形、浮き、腐食、固定不良、異物の詰まりなどがあると、予定されていた排水機能が低下する可能性があります。特に、後から取り付けた設備、配管、看板、外構部材などが外壁下端と干渉している場合は注意が必要です。
基礎巾木の表面が部分的に補修されている場合は、その境界と白華の位置を比較します。補修材と既存材では吸水性や乾燥速度が異なることがあり、補修境界に白華が集中する場合があります。補修材そのものだけでなく、補修前から残っていた水分や、補修後も続く水分供給を考慮します。
仕上げの塗り重ねがある場所では、表面の塗膜によって水分の蒸発が妨げられ、別の弱い部分から白華が現れることもあります。白華の発生箇所だけを再塗装すると、水分の出口が移動し、周囲に膨れや剥がれが生じる可能性があります。
配管貫通部、換気口、固定金具、設備架台などが境目付近にある場合は、それらの周囲も確認します。貫通部の隙間や固定穴から雨水が入る可能性があるほか、設備から排出された水が基礎巾木に当たり続ける場合もあります。
正面から見るだけでは分からない小さな段差や隙間もあります。安全に確認できる範囲で、斜め方向や下方から観察すると、水の通り道や雨だれ跡が見つかることがあります。必要に応じて照明を使い、境目の奥が塞がれていないか、異物が詰まっていないかを確認します。
設計図書や改修履歴がある場合は、現況と照合します。外 壁下端の本来の納まり、基礎巾木の仕上げ、過去の防水補修、外構工事の時期などを把握すると、白華が発生した背景を整理しやすくなります。納まりの機能を理解したうえで、不具合なのか、経過観察すべき現象なのかを判断することが重要です。
4. ひび割れや浮きなどの周辺症状を読む
四つ目のポイントは、白華の周囲にある劣化現象を併せて確認することです。白華だけが単独で発生している場合と、ひび割れ、浮き、剥離、欠損などを伴う場合では、調査や対応の優先度が異なります。
基礎巾木にひび割れがある場合は、白華との位置関係を記録します。ひび割れに沿って白い析出物が続いていれば、そのひび割れを通じて水分が表面へ移動している可能性があります。しかし、ひび割れが水分の入口とは限りません。内部から水分が出る経路として機能している場合もあるため、周囲や上部を含めて確認します。
ひび割れは、幅だけでなく長さ、方向、段差、分岐、過去からの変化を見ることが重要です。細いひび割れでも、降雨のたびに水が供給されれば白華が繰り返し現れることがあります。反対に、比較的目立つひび割れでも乾燥しており、長期間変化がない場合があります。
水平に続くひび割れ、斜めに伸びるひび割れ、外壁と基礎巾木の境目に沿うひび割れでは、想定される要因が異なります。ひび割れの形だけで原因を確定することはできませんが、建物の変形、材料の収縮、施工境界の動き、局所的な応力などを検討する材料になります。
仕上げの浮きが疑われる場合は、白華の原因調査だけでなく、剥落の危険性を考えます。特に、人が通る場所、建物の出入口、避難経路、駐車場所などでは、浮きや剥離の安全上の優先度が高くなることがあります。
打診や触診を行う場合は、対象の仕上げを傷めない方法を選び、必要な技能を持つ担当者が実施します。白華が厚く付着していると、表面の浮きや細かなひび割れが見えにく い場合があるため、無理のない範囲で状態を確認します。
塗膜の膨れや剥がれがある場合は、塗膜の背面に水分が存在する可能性を考えます。水分の供給源を確認しないまま再塗装すると、同じ場所や周囲で膨れが再発する場合があります。表面の白華だけでなく、塗膜端部の浮き、変色、光沢の違いなども確認します。
表面が粉状になり、触れると下地まで崩れるような場合は、単なる白華の付着だけではなく、仕上げ材や下地の脆弱化が進んでいる可能性があります。清掃時に健全な部分まで削ってしまわないよう注意し、必要に応じて専門的な調査を検討します。
赤褐色の筋やさび汁を伴う場合は、内部の金属や鉄筋の腐食に関係している可能性があります。さび汁、ひび割れ、浮き、欠損が同じ位置にある場合は、表面清掃だけで対応せず、劣化範囲を確認する必要があります。ただし、外部金物から流れたさびが付着している場合もあるため、上部の金属部材も確認します。
白華の周囲に藻やかび状の汚れがある場合は、長期間湿った状態が続いている可能性があります。藻の発生は白華とは別の現象ですが、乾燥しにくい環境を示す情報になります。植栽や障害物で日照と通風が妨げられていないかも確認します。
基礎巾木に段差を伴うひび割れがある場合や、短期間で範囲が拡大している場合は、表面仕上げだけの問題ではない可能性があります。周辺地盤の沈下、建具の開閉状態、床の変化など、建物全体に関連する兆候がないかを確認し、必要に応じて専門担当者へつなげます。
白華、ひび割れ、浮き、剥離などを別々の記録として扱うのではなく、位置関係が分かるように整理することが大切です。白華の上側に浮きがあるのか、ひび割れの下端から白華が始まっているのかによって、水分経路の推定が変わります。
5. 地盤面と排 水環境から水分の供給源を読む
五つ目のポイントは、建物の足元にある地盤、舗装、排水、植栽などを確認することです。基礎巾木との境目に出る白華は、外壁上部からの雨水だけでなく、地面側から供給される水分によって生じる場合があります。
まず、舗装や地盤が建物側へ傾いていないかを確認します。建物に向かって水が流れる状態では、基礎まわりに雨水が集まりやすくなります。わずかな勾配は目視だけで判断しにくいため、雨天後の水たまり跡、泥の流れ、砂の堆積、藻の発生などから水の流れを読み取ります。
基礎巾木に土や砂利、落ち葉が直接接していないかも確認します。植栽の追加や客土、舗装の重ね施工、砂利の補充などによって、完成時より地盤面が高くなることがあります。地面が高くなると、基礎巾木が乾きにくくなるだけでなく、本来は地上に露出していた外壁下端が埋まる可能性もあります。
舗装と基礎の境目 に隙間がある場合は、水のたまり方を確認します。隙間があること自体を直ちに異常とは判断できませんが、舗装の沈下によって建物側に水が集まり、隙間へ繰り返し流れ込んでいる場合は、基礎側への水分供給が続く可能性があります。
雨樋の竪管や排水口が近くにある場合は、接続部から漏れていないか、排水先が詰まっていないかを確認します。竪管の破損や外れ、排水口の閉塞があると、降雨時に大量の水が基礎まわりへ流れることがあります。晴天時には漏れが確認できなくても、壁面の雨だれ、土の掘れ、泥の飛散などから推定できます。
屋根や庇の雨水が一箇所へ集中して落ちていないかも見ます。雨水が地面へ強く落ちると、跳ね返りによって基礎巾木や外壁下端が繰り返し濡れます。白華の高さが泥はねや雨水の跳ね返り範囲と一致する場合は、足元の水処理を確認する必要があります。
植栽帯では、散水設備や手作業による水やりの影響を確認します。散水の向きが外壁側へ変わっていたり、植物の葉に当たった水が 基礎へ流れたりすることがあります。雨が降らない時期でも白華が増える場合は、散水の時間帯や頻度を管理者へ確認します。
植木鉢、収納物、仮設物、機器などが基礎巾木の前に置かれていると、通風と日照が妨げられます。物の背面は目視しにくく、濡れた状態が長く続きやすいため、白華や藻が局所的に発生する場合があります。移動可能であれば安全に配慮しながら背面を確認します。
設備排水も見落としやすい要因です。空調設備などから排出された水が直接基礎付近へ落ちたり、舗装を伝って建物側へ戻ったりする場合があります。排水量が少なくても、長期間同じ場所へ供給されれば、白華が繰り返し現れる可能性があります。
基礎付近に水道設備や給排水管がある場合は、漏れの有無を確認します。配管からの漏水は常に表面へ現れるとは限らず、地中や床下を通って基礎へ影響することがあります。地面が局所的に湿っている、晴天が続いても水たまりが消えないなどの兆候があれば、設備側の調査を検討します。
外壁検査の報告では、白華の位置だけでなく、地盤の高さ、舗装勾配、排水設備、散水状況なども記載します。壁面の表面処理だけを行っても、周辺環境から水分が供給され続ければ再発する可能性があるためです。
ただし、排水経路を変更すると別の場所へ水が集中することがあります。目の前の白華だけを止めるのではなく、敷地全体で雨水がどこから来て、どこへ流れるのかを確認したうえで対策を検討します。
6. 室内側と床下の情報を重ねて読む
六つ目のポイントは、白華が発生している位置に対応する室内側や床下の状態を確認することです。外壁に現れた白華であっても、水分の供給源が必ず屋外にあるとは限りません。
白華の位置に対応する室内側が厨房、洗面、浴室、便所、清掃用流しなどの水まわりである場合は、給排水設備の使用状況や漏水履歴を確認します。配管接続部や防水部分から少量の水が漏れ、時間をかけて基礎や外壁側へ移動することがあります。
外側の白華と室内側の異常が同じ位置にあるかを確認します。室内の壁や床に変色、かび、仕上げの浮き、においなどがあれば、水分移動との関係を検討します。ただし、外側と内側の位置が一致していても、同じ原因とは限りません。壁の構成や配管経路を確認する必要があります。
床下空間がある建物では、床下の湿度、地面の湿り、水たまり、結露、配管漏れ、換気状態などを確認します。床下に高い湿度や水分があると、基礎内部を通じて外側へ水分が移動し、白華が現れる場合があります。
床下が土のままになっている場合は、地面からの湿気が影響することがあります。防湿の状態や換気の状況によって、基礎周辺の含水状態が変わります。床下の一部だけが湿っている場 合は、地中からの水、設備漏水、外部排水の流入などを切り分けます。
室内清掃で多量の水を使う施設では、床と壁の取り合いから水が回っていないかを確認します。清掃時の水が排水口へ流れず、壁際へたまる状態が続くと、室内側から基礎へ水分が供給される可能性があります。清掃の頻度や方法を管理者へ聞き取ることも有効です。
室内外の温度差が大きい建物では、結露も検討します。結露は特定の季節や時間帯にだけ生じることがあり、検査時に表面が乾いていても否定できません。空調の運転状況、室内湿度、断熱状態、換気状況などを確認します。
白華が雨の少ない時期にも増える場合は、屋外の降雨以外の要因が疑われます。設備の使用量が増える季節、空調運転時期、床下湿度が上がる時期などと白華の変化を比較すると、原因を絞り込みやすくなります。
含水状態を測定する場合は、単一の数値だけで漏水の有無を断定しないことが大切です。測定結果は材料の種類、表面仕上げ、温度、塩分などの影響を受けることがあります。白華部分と健全部を比較し、複数地点を測り、時間を置いて再測定するなど、目視所見と組み合わせて評価します。
床下や狭い設備空間へ立ち入る場合は、安全管理が欠かせません。転落、感電、酸欠、害虫、鋭利物などの危険があるため、十分な準備のない状態で確認してはいけません。外壁検査の範囲を超える場合は、建物管理者と協議し、適切な専門担当者へ調査を依頼します。
外側の白華、室内の異常、設備、配管、床下の湿気を平面図や断面図上で重ねると、水分経路を整理しやすくなります。白華がある外壁面だけを見続けるのではなく、建物を断面として考えることが原因の切り分けにつながります。
白華を発見したときの記録方法
白華は天候や時間によって見え方が変わるため、記録の質が調査結果を左右します。発見時の状態を後から比較できるように、位置、範囲、形状、周辺環境を整理して残す必要があります。
写真は、発生箇所だけを大きく撮るのではなく、位置関係が分かるように撮影します。建物全体のどの面かが分かる遠景、窓や設備との関係が分かる中景、白華の状態が分かる近景をそろえると、後から原因を検討しやすくなります。
白華の長さ、高さ、境目からの距離を測り、記録します。正確な測定が難しい場合でも、おおよその範囲を残しておけば、次回の比較に役立ちます。粉状、筋状、膜状、塊状などの形状も記載します。
白華に触れて確認する場合は、表面を傷めないようにします。触れると簡単に落ちるのか、固く付着しているのかは判断材料になりますが、原因調査前に広範囲を除去すると、元の状態が分からなくなります。
周辺にあるひび割れ、浮き、剥離、膨れ、さび汁、藻、泥はねなども同じ記録に含めます。白華だけを切り取って記録すると、水分の入口や乾燥条件を考えるための情報が不足します。
地盤面、舗装、排水口、雨樋、植栽、設備排水など、足元の状況も写真に残します。白華と排水設備の距離や、散水範囲との位置関係が分かるようにすると、屋外環境による影響を検討しやすくなります。
検査当日と直前の天候を記録します。降雨後であれば、濡れている範囲と白華の範囲を分けて記載します。乾燥後に再確認する予定がある場合は、同じ位置と角度で撮影できるよう、撮影方向も残します。
過去の改修履歴や漏水履歴が分かる場合は、白華の記録と関連付けます。外壁補修後に発生し始めたのか、外構工事後に増えたのか、設備更新後に現れたのかといった時間的な関係が、原因を考える手掛かりになります。
報告書では、確認した事実と推定を分けます。「基礎巾木上端に白華が連続している」「上部の目地に開きがある」「降雨翌日に周辺が濡れていた」といった内容は確認事実です。「上部の目地から雨水が浸入している可能性がある」という内容は推定であるため、その根拠とともに記載します。
白華を清掃した場合は、清掃日、範囲、方法を記録します。清掃後に白華が見られなくなっても、自然に消えたのか、人為的に除去されたのかが分からなければ、経過を正しく評価できません。
再確認する条件も記載します。次の強い雨の後、一定期間の乾燥後、散水設備の運転後など、白華の原因を切り分けやすい時期を設定します。記録と再確認を一連の作業として考えることが、外壁検査の精度を高めます。

