目次
• 盛土体積計算の重要性と課題
• 従来の盛土体積計算方法(平均断面法・メッシュ法)
• ICT活用による盛土体積計算の革新
• 出来形管理と土量管理を現場で実践するポイント
• ICTツール導入がもたらすメリット
• まとめ
• FAQ
盛土体積計算の重要性と課題
盛土(もりど)とは、造成工事や道路工事などで地面をかさ上げするために土を盛り立てることを指します。盛土の体積計算は、こうした工事に必要な土砂の量を正確に見積もるために欠かせない作業です。必要な土量を誤れば、土が不足して工事が滞ったり、余剰土の処分費用が発生したりするため、施工計画やコスト管理の面で重大な影響を及ぼします。また、盛土や切土(土を掘削すること)のプロジェクトでは、盛土と切土のバランスを取って発生土(余った土)を極力減らすことが理想です。そのため、工事の初期段階で正確な盛土体積の計算方法を把握し、適切な土量計画を立てることが求められます。
しかし、盛土体積の算出にはいくつかの課題もあります。第一に、土は掘削・運搬・締固めと状態が変わるごとに体積が変化する性質を持っています。山や現地の地盤にある土(地山)は密実ですが、掘削して運搬すると土粒子が緩み体積が増加します(ほぐれ)。逆に、盛土として敷き均し転圧(ローラーなどで締め固め)すると密度が上がり、地山よりも体積が減少します(締め固め)。この掘削時と盛土完成時の体積変化の度合いを土量変化率と呼び、掘削土の状態での体積増加率をほぐし率(L)、盛土後に締め固められた状態での体積減少率を締固め率(C)と表現します。たとえば一般的にL=1.2、C=0.9程度などとされ、100㎥の土を盛土で使用するには、地山から約1.2倍の120㎥を掘削し、締固めによって出来上がりは元の0.9倍の90㎥程度になる、という計算になります。このように土量は状態によって変わるため、必要土量を見誤らないようL値・C値を踏まえて計算することが重要です。
第二の課題は、盛土体積を算出する測量や計算作業そのものが手間と時間を要す る点です。大規模な造成現場では、施工前後や途中経過で何度も現況地形を測量し、その都度盛土・切土量を計算し直す必要があります。従来の方法では人手による測量作業が中心で、広い敷地や複雑な地形を測るには多大な労力がかかりました。さらに、得られた測量データから図面を起こし、断面ごとに面積計算をして体積を算出する工程は専門知識が必要で、作業ミスや計算誤差のリスクもあります。頻繁に土量を計測したくても、人員や時間の制約で思うようにできず、結果として出来形(仕上がった地形)の把握が遅れてしまうこともありました。こうした課題に対し、近年はICT(情報通信技術)を活用した新たな計測手法が登場し、盛土体積の計算方法にも変革が起きつつあります。
従来の盛土体積計算方法(平均断面法・メッシュ法)
ICT技術の前に、まず従来から現場で用いられてきた盛土体積の計算方法について押さえておきましょう。代表的な手法として平均断面法とメッシュ法(点高法)があります。
平 均断面法は、道路や堤防など細長い形状の土工で昔から用いられてきた最も基本的な土量算出法です。やり方はシンプルで、まず一定間隔ごとに現地で横断測量を行い断面図(横断面形状)を描きます。そして各測点における断面の面積Aを計算し、隣接する2つの断面積の平均にそれらの間隔距離Lを掛けて区間ごとの体積Vを求めます(両端面積法とも呼ばれます)。計算式で表せば `V = (A1 + A2) / 2 × L` という形です。例えば地点A1とA2の横断面積がそれぞれ20㎡と30㎡、間の距離が10mであれば、その区間の体積Vは(20+30)/2 * 10 = 250㎥となります。このように区間ごとの土量を合算していくことで、全体の盛土量・切土量を算出できます。平均断面法は計算が簡単ですが、測量箇所の間隔が粗いと精度が落ちるため、地形の変化が大きい現場では注意が必要です。
メッシュ法(柱状法・点高法)は、広い敷地や不規則な地形の土量計算によく用いられる手法です。平面図上で対象エリアを格子状のメッシュ(例えば10m×10mなど)に区切り、メッシュの各交点で高さ(地盤面の標高)を測定します。各メッシュ内での高さの平均値とメッシュ面積から直方体や四角錐台(上面と底面が平行四辺形の立体)として体積を求め、全メッシュ分を合計して全体の土量を算出します。メッシュ法は細かく高さを測る分、平均断面法より手間はかかりますが、面的に地形を捉えるため大規模工事や起伏の多い現場でも比較的精度良く土量を推定できる利点があります。従来はこのメッシュ法のために丁張(ちょうはり:基準高さを示す糸)を張り、測量スタッフが平板やレベルを使って高さを読み取る、といった作業が必要でした。
これらの手法以外にも、設計図の等高線から体積を計算する等高線法や、平均断面法の精度を上げるためにシンプソン公式を用いる方法などもありますが、基本的には測量データに基づき断面積や区画ごとの高さを割り出し、それを積み重ねることで土量を求める考え方は共通しています。従来の盛土体積計算方法では、人力での測量と手計算(あるいは表計算ソフトへの入力)が主体であったため、どうしても作業時間と人件費がかさむ上、主観的な判断や経験に頼る部分もありました。次章では、こうした土量算出作業にICTを取り入れることで何が変わるのかを見ていきます。
ICT活用による盛土体積計算の革新
近年、建設業界では「i-Construction」や「ICT土工」といったキーワードのもと、測量・施工・管理の各プロセスでICT技術を積極的に導入する動きが加速しています。盛土体積の計算方法も例外ではなく、ドローン(UAV)測量や地上型レーザースキャナー、さらにはスマートフォンを使った3次元計測技術などが現場に普及しつつあります。これら最新技術を活用すると、従来は人力で行っていた測量から体積算出までの流れが大きく効率化されます。
たとえばドローン測量の場合、上空から現場全体を自動航行で撮影するだけで、高密度な点群データやオルソ画像を取得できます。専用ソフトウェア上で現況の地形モデル(3次元地形モデル)を生成し、設計時の地盤面データと比較することで、盛土および切土の体積を自動的に計算可能です。人が立ち入るのが危険な急斜面や広大な造成地でも、短時間で安全に測量でき、取得したデータから面積・体積を高速に算出できる点が大きなメリットです。地上型のレーザースキャナーでも同様に、地表面の形状を精密にスキャンして点群化し、体積差を求めることができます。従来は数日かかっていた出来形計測と土量算出が、ICTの力で大幅にスピードアップするのです。
さらに注目すべきは、近年登場したモバイル端末 を利用した3次元測量です。高性能なスマートフォンやタブレットに搭載されたLiDAR(光検出と測距)センサーと、高精度GNSS受信機を組み合わせることで、誰でも手軽に現場の3次元測量ができる時代になりました。例えばLiDAR対応のスマホにアンテナ一体型の測位デバイスを装着すれば、1人で歩きながら周囲の地形をスキャンするだけで、その場で点群データを取得できます。取得データには緯度・経度・標高の絶対座標が付与されているため、現地ですぐに距離・面積・体積を計測したり、設計モデルとのズレを確認したりすることも可能です。これまで測量専門技術者に任せきりだった作業が、現場の施工管理技術者自身で短時間にこなせるようになるのは革命的と言えるでしょう。
ICTを活用した土量計算の利点は、単にスピードが上がるだけではありません。3次元計測によって得られる詳細な地形データは、出来形管理にも大きな付加価値をもたらします。従来は限られた測点から推定していた盛土の形状も、点群データを用いれば全面的に「見える化」されます。盛土の高さや勾配が設計通りか、所定の盛土量が確保されているか、といった情報をビジュアルに把握できるため、品質管理・出来形管理の精度が飛躍的に向上します。また、データはデジタルに保存・共有できるため、後日必要になった際に再計算や別断面での評価をすることも容易です。例えば、一度取得した点群から任意の範囲を区切って追加の土量計 算を行うことも可能で、柔軟な分析が現場で完結します。ICTによる盛土体積計算は、効率化と高度化を同時に実現する新たなステージに入っているのです。
出来形管理と土量管理を現場で実践するポイント
盛土工事を成功させるには、盛土の出来形管理(出来形=完成した形状・寸法が設計通りか確認すること)と土量管理(土の量の計画・消費を管理すること)の両方を的確に行う必要があります。ここでは、現場で出来形・土量管理を実践する上でのポイントをいくつか紹介します。
• 初期測量と計画立案: 施工前に現地の地形を詳細に測量し、設計図面と突き合わせて必要な盛土量・切土量を算出します。この段階で土量変化率(L値・C値)も考慮し、切盛バランスが取れた土工計画を立てましょう。事前の綿密な計画が余剰土や不足土の発生を最小限に抑え、コスト削減と工期短縮につながります。
• 丁張設置と高さ管理: 盛土を施工する際は、所定の高さや勾配を確保するために丁張や測量機器で基準高さを示しながら進めます。各層ごとに敷均し後の高さを確認し、必要に応じて追加の土を投入したり削ったりして設計断面に近づけます。出来形管理要領に沿って、要所での高さ・傾斜などをチェックすることが重要です。
• 中間出来形の測定: 盛土工事では、一度に全て盛り上げるのではなく層状に締め固めながら施工します。各層の締固め後や工事途中の節目で、中間出来形の状態を測量しておくと安心です。従来は人手での部分的な測定が中心でしたが、ICT機器を使えば中間段階でも面的な出来形データを取得できます。途中経過を把握することで、設計との誤差が大きくなる前に手直しを行えるため、手戻りの防止に役立ちます。
• 出来形検査と土量確認: 盛土完了後は最終出来形を計測し、設計通りの形状・標高になっているか検査します。同時に、出来形の実測データをもとに最終的な盛土体積を算出し、当初計画との差異を確認します。もし不足があれば追加盛土、余剰が出た場合は場外搬出の手配など、適切な対応につなげます。最近では完成検査用の出来形計測にも3次元スキャナやドローンが活用され、短時間で精度の高い検査結果が得られるようになっています。
以上のように、計画から施工、完成後の確認まで各段階で出来形・土量を管理していくことが、品質確保とムダのない土工事の鍵となります。特にICT技術を導入すれば、これらの管理プロセスを省力化しつつ精密に行えるため、現場担当者の負担軽減とデータに基づく的確な判断が可能になります。
ICTツール導入がもたらすメリット
ICT活用によって盛土体積計算や出来形管理が容易になる具体的なメリットを整理してみましょう。
• 測量作業の省力化と安全性向上: ドローンやGPS測量機器の導入で、人が広い敷地を歩き回って測点を取る手間が大幅に削減されます。危険な法面や足場の悪い場所もリモートで計測できるため、作業員の安全確保にも寄与します。
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