目次
• ドローン測量で夜間飛行は可能か
• 条件1 法令上の区分と必要手続きを整理する
• 条件2 飛行場所と時間帯の扱いを誤解しない
• 条件3 夜間でも安全確認できる機体と離着陸環境を整える
• 条件4 測量の目的に対して夜間が適しているか見極める
• 条件5 操縦者・補助者・記録体制を先に固める
• 夜間飛行が向く現場と見送るべき現場
• まとめ
ドローン測量で夜間飛行は可能か
結論からいえば、ドローン測量で夜間飛行を行うこと自体は可能です。ただし、昼間の飛行をそのまま夜に置き換えればよいわけではありません。無人航空機の飛行は、原則として昼間に行うものとされており、夜間飛行は規制対象となる飛行方法です。しかも、ここでいう昼間は感覚的な「明るいうち」ではなく、国立天文台が発表する日の出から日の入 りまでを指します。つまり、現場でまだ薄明るく見えていても、法令上はすでに夜間に入っている場合があります。夜間飛行を検討するなら、まずはこの前提を正しく理解する必要があります。
実務で重要なのは、夜に飛ばせるかどうかだけではありません。測量として意味のある成果を安定して作れるか、現場の安全を十分に確保できるか、必要な手続きを予定日に間に合わせられるかまで含めて判断することが重要です。特に、夜間の目視外飛行や、人や家屋が密集している地域の上空における夜間飛行は、場所を特定した申請が必要とされる扱いです。さらに、人や家屋が密集している地域の上空で夜間に目視外飛行を行う場合は、場所だけでなく日時も特定した申請が必要になります。夜間飛行は「申請さえ取れば何でもできる」というものではなく、飛行形態に応じて条件が一気に厳しくなると捉えたほうが実務に合っています。
そのため、ドローン測量の担当者が夜間飛行を考えるときは、単に作業時間を後ろにずらす発想ではなく、法令、現場、機体、成果物、運用体制の5つを同時に確認する必要があります。どれかひとつでも曖昧なまま進めると、飛行そのものはできても、成果が使えない、申請が間に合わない、現 場責任者が許可しない、第三者対応が組めないといった形で止まりやすくなります。夜間飛行の可否は、機体性能より前に、運用設計でほぼ決まると考えておくと失敗しにくくなります。
条件1 法令上の区分と必要手続きを整理する
最初に確認すべきなのは、その飛行がどの法的区分に入るかです。現在、重量100g以上の機体は航空法上の無人航空機として規制対象になっており、登録や各種ルールの対象になります。そのうえで、夜間飛行は特定飛行の一つです。さらに、飛行の形態はリスクに応じて区分されており、第三者の上空を飛ばさないよう立入管理措置を講じて行う飛行か、それとも第三者上空を含む飛行かで、必要な手続きや要求水準が変わります。夜間飛行だから一律に同じ申請というわけではなく、飛行場所、第三者管理の有無、機体の認証状況、操縦者の技能証明の有無を組み合わせて整理しなければなりません。
ここで誤解されやすいのが、「資格があるから夜でも自由に飛ばせる」という考え方です。実際には、一定条件を満たしたカテゴリーⅡ飛行の一部では、技能証明を受けた者が機 体認証を受けた無人航空機を使い、必要な安全措置と飛行マニュアルを整えることで、夜間飛行の許可・承認が不要になる場合があります。ただし、それは立入管理措置を講じた上で、総重量25kg未満で、さらに必要な限定変更を受けていることなど、条件がそろった場合の話です。夜間飛行を許可・承認不要で行うには、技能証明上も夜間飛行の限定変更が必要とされています。現場ごとに飛ばし方が違う測量業務では、この条件を満たせないケースも多く、結局は個別の確認や申請が必要になることが少なくありません。
また、夜間飛行の中でも、人や家屋が密集している地域の上空での夜間飛行や、夜間における目視外飛行は、包括的にざっくり許可を取っておく発想では進めにくい領域です。国の標準的なマニュアルでも、こうした飛行は「場所を特定した申請」として扱う必要があると整理されています。つまり、都市部の造成現場、周辺に住宅がある工区、夜間の自動飛行ルートなどは、早い段階から場所条件を洗い出し、現場図面と飛行経路をセットで整理しなければなりません。実務上は、夜間飛行を思いついた時点で申請準備に入るくらいでちょうどよく、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までの提出、できれば3〜4週間程度の余裕を見て動くのが安全です。許可・承認申請では第三者賠償責任保険の記載も必須とされているため、保険の有効期間や補償範囲の確認も前倒しで必要です。
条件2 飛行場所と時間帯の扱いを誤解しない
夜間飛行を考える際に、意外と見落とされるのが「いつから夜間なのか」と「どこなら飛ばせるのか」の2点です。時間帯については、現場の体感ではなく、国立天文台が発表する日の出・日の入り時刻が基準になります。季節や地域によって時刻は変わるため、冬場の都市部と夏場の地方部では、同じ感覚で動くと判断を誤ります。夕方の短時間だけ飛ばしたい場合でも、日の入りをまたげば夜間飛行の扱いになるため、現場工程表に書かれた「17時以降」や「18時開始」といった表現だけで判断するのは危険です。測量班の感覚ではなく、当日の天文時刻を基準に工程を切ることが必要です。
場所については、航空法だけを見ていても足りません。国の飛行許可・承認とは別に、小型無人機等飛行禁止法の対象施設周辺、都道府県や市区町村の条例、各施設管理者の利用ルールなどが重なります。重要施設周辺では平時から飛行が禁止されている区域があり、災害や要人対応などで臨時の飛行禁止区域が指定されることもあります。さらに、緊急用務空域が指定された場合は、その空域では原則として飛行できません。国のルール上は飛ばせそうに見えても、施設管理者の許可が必要だったり、夜間利用そのものが制限されていたりする現場は少なくありません。したがって、夜間飛行を決める前に、法令上の可否、管理者協議、現場周辺の制限情報を一本化して確認する必要があります。
測量の現場では、昼間より夜間のほうが人通りや車両通行が減るため、かえって飛ばしやすいと思われがちです。この発想自体は間違いではありませんが、夜間なら自動的に安全になるわけではありません。重要なのは、第三者の立入りを確実に制限できるかどうかです。夜間は周囲から機体が見えにくく、通行人が飛行範囲に気づきにくいこともあるため、単に人が少ないだけでは不十分です。工事ヤード内で完結しているのか、隣接道路や歩道、駐車場、河川管理用通路に人が入る可能性はないか、近隣からの苦情対応や誘導体制はどうするかまで詰めてはじめて、夜間飛行の現実性が見えてきます。
条件3 夜間でも安全確認できる機体と離着陸環境を整える
夜間飛行では、機体性能そのものよりも、 夜間で安全確認が成立する環境を作れるかが核心になります。国の標準マニュアルでは、夜間飛行を行う際には、目視外飛行は実施せず、機体の向きを視認できる灯火が装備された機体を使用し、灯火が容易に認識できる範囲内での飛行に限定するとされています。加えて、飛行させようとする経路と周辺の障害物件は、日中のうちに事前確認し、適切な飛行経路を選定することが求められています。つまり、夜に初見で現場へ入り、その場でルートを決めて測るという進め方は、夜間飛行の基本的な考え方と相性がよくありません。夜間に飛ばすなら、下見は昼間、飛行は夜間、という二段構えが前提になります。
さらに、離着陸場所の照明確保も必須です。標準マニュアルでは、夜間の離発着場所において、車両のヘッドライトや照明機材等で十分な照明を確保することが求められています。これは単に離着陸を見やすくするためだけでなく、周辺障害物、地面状態、関係者位置、緊急停止時の対応を確実にするためでもあります。測量現場では、仮設資材、ケーブル、段差、水たまり、土砂の不陸があることも多く、日中には問題にならない足元条件が、夜間には大きな事故要因になります。夜に飛ばすなら、上空の安全だけでなく、地上の運用スペースづくりまでが準備の範囲です。
気象条件も、夜間は昼間以上に慎重に見る必要があります。標準マニュアルでは、5m/s以上の突風など安全に飛行できなくなる不測の事態が発生した場合は即時に飛行を中止すること、十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させないことが示されています。夜は風の変化や霧の発生に気づきにくく、照明の反射や遠近感の低下で実際より安定して見えてしまうこともあります。夜間飛行をする現場ほど、風速計の確認、退避判断の基準、離脱ルート、緊急着陸地点を事前に決めておかなければなりません。安全確認は経験で補うのではなく、夜間用に判断基準を明文化しておくことが重要です。
条件4 測量の目的に対して夜間が適しているか見極める
ここが、測量担当者にとって最も重要な条件です。夜間飛行が法令上可能で、現場の安全も確保できそうであっても、その飛行が本当に測量成果につながるかは別問題です。夜間飛行が向きやすいのは、狭い範囲での状況記録、周辺立入管理がしやすい施設内の確認、昼間は車両や作業員が多くて飛行範囲を切りにくい現場などです。要するに、夜間にすることで第三者管理がしやすくなり、飛行ルートが明確になり、短時間で必要な情報を取得できる場合には、夜間飛行を検討する意味があります。逆に、何となく昼間の代替として夜に回すだけでは、準備コストだけ増えて成果が不安定になりがちです。
特に注意したいのが、写真を主材料にする測量です。夜間では、無人航空機の位置や姿勢、周囲の障害物の把握が難しくなることが、そもそも夜間飛行が規制対象になっている理由の一つです。この前提に立てば、可視画像を多数取得してオルソ画像や写真ベースの点群、形状復元成果を安定して作る作業は、昼間より不利になりやすいと考えるのが自然です。現場に十分な照明があっても、被写体の見え方、陰影、ブレ、標定点や基準点の識別性、地表面のテクスチャの確保といった点で、昼間の条件をそのまま再現するのは簡単ではありません。夜に飛ばせるかではなく、夜に必要精度の成果が作れるかで判断しなければ、後工程でやり直しが発生します。
一方で、距離取得を主体とする計測や、形状の大づかみな把握、限られた範囲の変化確認などであれば、夜間でも成立する余地はあります。ただし、その場合でも、飛行経路の事前確認、離着陸場所の照明、補助者や立入管理措置など、夜間特有の安全要件は消えません。つまり、センサー方式を変えれば夜間の準備が不要になるのではなく、あくまで成果物 の作り方が変わるだけです。測量の発注目的が土量算出なのか、出来形確認なのか、点検記録なのか、3次元モデル化なのかによって、夜間との相性は大きく変わります。夜間飛行を決める前に、必要成果を一度言葉で定義し直すことが、最も効果的な事前確認になります。
条件5 操縦者・補助者・記録体制を先に固める
夜間飛行では、機体よりも人の体制が重要になります。標準マニュアルでは、操縦者は夜間飛行の訓練を修了した者に限るとされ、補助者についても飛行させる無人航空機の特性を十分理解させておくことが求められています。技能証明を活用して許可・承認不要の枠組みで夜間飛行を行う場合には、夜間飛行の限定変更が必要です。逆にいえば、昼間の操縦経験が長いだけでは、夜間飛行の体制が整ったとはいえません。現場で必要なのは、夜間の操縦練習実績、補助者との役割分担、停止判断の共有、通報手順、誘導導線の確認です。夜間飛行は、上手い操縦者ひとりで成立する業務ではなく、チームで安全を作る業務だと理解することが大切です。
また、特定飛行を行う場合は、飛行計画 の事前通報と飛行日誌の記載が必要です。飛行計画の通報をせずに特定飛行を行った場合や、飛行日誌を備えない、必要事項を記載しない場合には罰則の対象になり得ます。飛ばした後の記録管理まで含めて運航ですから、夜間だけ特別扱いして現場判断で省略することはできません。さらに、許可・承認を受けた飛行では、飛行計画の通報や他の飛行予定の確認、事故等の報告、必要に応じた救護措置が求められます。夜間はトラブル時の状況把握が難しくなるため、記録体制が弱い現場ほど後処理で苦しみます。申請書類を作る担当者と、現場で飛ばす担当者が別れている会社ほど、夜間飛行前に情報の引き継ぎを確実にしておくべきです。
実務では、夜間飛行の直前に「今日は行けそうか」を相談するのでは遅すぎます。理想は、事前に中止基準を決めておくことです。たとえば、照明が不足したら中止、補助者を確保できなければ中止、霧や視程低下が見られたら中止、周辺道路に想定外の通行が生じたら中止といった形で、判断を個人の感覚から切り離します。非常時には警察署、消防署、関係機関への連絡体制を整えておくことも標準マニュアルで求められています。夜間飛行は「できる人が頑張る」方式にすると事故率が上がるため、誰が見ても同じ判断になる運用基準を先に作ることが重要です。
夜間飛行が向く現場と見送るべき現場
夜間飛行が向くのは、飛行範囲を明確に区切れる現場です。たとえば、関係者以外が入らない敷地内で、昼間は稼働中の設備や車両の影響が大きく、夜のほうが立入管理しやすい現場では、夜間飛行の合理性があります。短時間で現況確認を行いたい、施設停止中に上空から記録を取りたい、日中は第三者対応の負荷が高すぎるという事情があるなら、夜間飛行は十分に検討対象になります。つまり、夜間飛行が有効なのは、暗いからではなく、夜のほうが飛行条件を制御しやすい現場です。
反対に、夜間飛行を見送ったほうがよいのは、広範囲の写真測量を一気に行いたい現場、周囲に住宅や道路が多い現場、飛行経路下の第三者管理が難しい現場、初回調査で地形や障害物の把握が不十分な現場です。特に、オルソ画像や写真ベースの点群を主成果にしたい場合は、飛行の可否より成果品質の再現性を優先したほうがよい場面が多いはずです。夜間飛行を選ぶ理由が「昼間に時間が取れないから」だけであるなら、日中の短時間飛行、早朝や夕方の再設計、地上測量との組み合わせなど、別の解決策のほうが結果的に安定することも少なくありません。
まとめ
ドローン測量で夜間飛行は可能ですが、可能かどうかだけで判断すると失敗します。重要なのは、法令上の区分と必要手続きが整理できているか、飛行場所と時間帯の扱いを誤解していないか、夜間でも安全確認できる機体と離着陸環境があるか、測量の目的に対して夜間が本当に適しているか、そして操縦者・補助者・記録体制まで固められているかの5条件です。夜間飛行は、昼間の代替案ではなく、条件がそろったときにだけ選ぶべき運用手段です。
実務では、無理に夜へ寄せるより、地上側の位置管理や事前確認を強くしたほうが全体の精度と安全性が上がる場面も多くあります。飛行前の基準点確認、標定点管理、出来形確認、現況把握を確実に進めたいなら、空からの測量だけに頼らない運用設計が効果的です。そうした現場の基盤づくりには、LRTK(iPhone装着型GNSS高精度測位デバイス)のように、必要な地点を素早く高精度に押さえられる仕組みを組み合わせることで、夜間飛行を含む測量計画全体をより現実的に組み立てやすくなります。
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