はじめに
近年、土木・建設業界ではCO2排出削減や省資源化といった環境対策が求められています。同時に、人手不足やコスト高騰への対応として施工の効率化も避けて通れない課題です。従来は環境配慮と効率・コストはトレードオフと考えられがちでした。しかし、最新の技術や工夫を活用すれば、環境負荷の低減と施工効率・コスト削減を両立できるケースが増えています。
本記事では、ゼネコンから中小建設会社、自治体技術者、建設現場の管理者・環境担当者まで、幅広い方々を対象に、建設現場でCO2とコストを同時に削減する具体的な5つの方法を紹介します。省エネ型の重機導入から建設副産物リサイクル、ICT活用による施工最適化、脱炭素型の資材採用、そしてスマート測量による管理効率化まで、それぞれ効果や実施例、導入コストと効果、関連技術について詳しく解説します。
1. 省エネ型重機の導入と稼働効率向上
最初の方法は、燃費性能に優れた省エネ型の建設機械を導入し、重機の稼働効率を高めることです。建設現場で使用される油圧ショベルやブルドーザなどの重機はディーゼル燃料を大量に消費し、多くのCO2を排出します。そこで、エンジンの省エネ化技術を備えた最新モデルや、ハイブリッド式・電動式の重機への切り替えが効果的です。
例えば、大手メーカー各社は脱炭素に向けて重機の電動化を加速しています。コマツは2023年、「バッテリー式電動油圧ショベル」など電動建機7機種で国土交通省のGX建設機械認定を取得しました。このような電動建機は稼働時のCO2排出を実質ゼロにできるだけでなく、燃料コスト削減や低騒音・低振動による周辺環境へのメリットももたらします。また日立建機は中型クラスまで電動ショベル「ZE」シリーズを展開し、タダノは世界初の全電動クレーンを発売するなど、業界全体で省エネ型重機が広がりつつあります。
省エネ型重機は従来機より導入費用が高めですが、長期的には燃料代の削減やメンテナンス費用の低減によってコストメリットが期待できます。実際、スウェーデンのある採石現場で電動式の重機群を導入したところ、従来比でCO2排出量を約98%削減できたとの報告もあります。さらに、騒音が小さいため夜間作業が可能になるなど施工の柔軟性向上による効率メリットも見逃せません。
加えて、手持ちの重機でも運用の工夫で燃費効率を上げることができます。例えば:
• アイドリングストップの徹底: 待機時にはエンジンを停止し、無駄な燃料消費と排出を削減。
• エコドライブの実践: 急発進・急加速・急ブレーキを避け、作業に応じて適切な出力で操作して燃費向上。
• 適切なメンテナンス: オイルやエアフィルターの定期交換、タイヤ空気圧の管理など、日常的なメンテナンスも大切です。機械の性能低下や燃費悪化を防ぐことが、CO2の排出削減につながります。
• 稼働管理のデジタル化: 重機にIoTセンサーやテレマティクス装置を付け、稼働時間・アイドリング時間を見える化して管理改善を図ります。
こうした最新重機の導入と運用改善の組み合わせにより、燃料由来のCO2排出を大幅に削減しつつ、燃料コストの削減や作業時間の短縮といった効率アップが実現できます。補助金や税制優遇制度を活用すれば初期導入費用も抑えられるため、積極的に検討してみましょう。
2. 建設副産物の再利用と資源循環型施工
2つ目の方法は、工事で発生する建設副産物を再利用し、資源循環型の施工を行うことです。土木・建築工事では、掘削で生じる残土や、解体で出るコンクリート塊・アスファルト塊、廃材(木材・金属等)など多種多様な副産物が発生します。これらを単に産業廃棄物として処分せず、可能な限り現場内外で有効活用することで、環境負荷とコストの両面で大きな効果が得られます。
具体的には、以下のような再利用策が取られています。
• 発生土の有効利用: 掘削で生じた大量の土砂(建設発生土)は、現場内の埋め戻しや盛土材に再利用します。他の造成工事や埋立事業に提供するマッチングも行われており、不要土を運搬・処分する費用とCO2を削減できます。
• コンクリート塊のリサイクル: 解体コンクリートは破砕して再生砕石(リサイクルクラッシャーラン)や再生砂として道路路盤材や埋戻し材に利用します。新規採石の採取量を減らし、廃棄物処分費用も削減可能です。
• アスファルト廃材の再生: 剥がしたアスファルトも加熱再融解して再生アスファルト合材として舗装に再利用できます。再生率を高めることで新規アスファルト混合物の使用量を減らせます。
• 建設発生木材のリユース: 解体木材はチップ化して合板原料や製紙原料、バイオマス発電の燃料などに利用されます。仮設工事で使う支保工や型枠材も極力繰り返し使い、新規木材の消費と廃棄を抑制します。
• その他廃材の分別と3R: 金属くずやガラス・陶器くず等も丁寧に分別し、鉄スクラップやガラス原料などリサイクル可能なものは資源として売却・再利用します。混合廃棄物も現場での分別ヤード設置により再資源化率を高めます。
日本では2002年に「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」が施行され、一定規模以上の工事において、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材などの特定建設資材廃棄物の再資源化が義務化されました。その背景もあり、ゼネコン各社は現場ごとに「建設副産物利用計画」を立て、再生資源利用率向上に努めています。また、国土交通省が開発した建設副産物情報交換システム(COBRIS)では、副産物のリアルタイム情報交換や利用可能施設の検索が可能で、発生土や廃材を必要とする別現場とのマッチングが支援されています。
環境面の効果は明確で、新たな資源採掘や産廃処理に伴うCO2排出削減はもちろ ん、不法投棄防止や最終処分場延命にも寄与します。経済面でも、残土処分費・新規材料費の削減、廃材売却益などが見込め、総工費の圧縮につながります。例えば、大規模トンネル工事で発生した100万立方メートルの建設汚泥を大阪湾の埋立事業に活用したケースでは、数十億円規模の処分コスト削減が報告されています。
資源循環型施工を成功させるポイントは、計画段階から再利用を織り込むことです。BIM/CIMを活用して工事全体の資材投入量と副産物発生量をシミュレーションし、再利用先や保管場所を事前に検討します。協力会社や他現場との連携調整も重要です。これにより、「出たものを活かす」施工フローを確立し、環境とコストの両面で持続可能な工事を実現できます。
3. ICTによる施工最適化(重機配置・ルート最短化)
三つ目の方法は、ICT(情報通信技術)を活用して施工プロセスを最適化することです。重機の動きや配置、資材の搬出入ルートなどをデジタル技術で見える化 ・自動化し、ムダな動きや待ち時間を削減します。これは国土交通省が推進する「i-Construction」や建設DXの取り組みとして注目されている分野であり、環境負荷低減と生産性向上に大きな効果を発揮します。
具体的なICT活用例をいくつか挙げます。
• マシンガイダンス・マシンコントロール(MG/MC): GPSや3D設計データを用いて重機のブレードやバケットを自動制御し、精密な造成や掘削を可能にします。人手による丁張り設置や逐次検測を省略でき、作業時間を短縮します。ある実験では、ICT油圧ショベルを使った場合、従来工法に比べ直接作業時間が約43%短縮され、重機オペレーター1人で作業が完結したため人員も3分の1で済んだという結果が報告されています。これは燃料消費とCO2排出の大幅削減にもつながります。
• 重機稼働の見える化: 現場内の重機にGNSS発信機を取り付け、クラウド上の3D現場モデルにリアルタイムで各重機の位置・軌跡を表示するシステムがあります。戸田建設では「[重機稼働見える化システム](https://www.toda.co.jp/tech/cutting/machinery.html)」を活用しており、ブルドーザやダンプの走行経路や待機時間が一目で把握でき、最適な重機配置や台数調整に役立てています。その結果、作業あたりの燃料使用量を削減し、工期短縮・コスト減を実現しています。
• 資材搬入出のルート最適化: 協力会社とも連携し、ダンプトラックの走行ルートやスケジュールをICTで最適化します。地図アプリや物流管理システムを用いて、渋滞や待ち時間を減らす経路・時間帯を指示することで、トラックの走行距離やアイドリング時間を短縮できます。また近隣現場と調整して共同で資材配送を行えば、空荷の回送を減らしトラック台数そのものを削減することも可能です。
• 施工計画のシミュレーション: 施工ステップや重機の動きを事前にソフト上でシミュレーションし、効率の良い施工手順を組みます。工程間の待機や重複作業を減らし、必要最小限の動きで完了する計画とします。シミュレーション結果に基づき重機オペレーターに指示を出せば、現場での試行錯誤が減り燃料と時間の浪費防止につながります。
これらICTによる施工最適化の効果は、CO2排出削減とコスト縮減が表裏一体で得られる点にあります。余計な動きが減ればその分燃料消費が減少し、作業時間短縮による人件費・機械経費の節約にもなります。また、デジタル化によって経験や勘に頼らない施工が可能になるため、熟練者不足の中でも品質と効率を維持できるという副次的効果も重要です。導入には測量用ドローンやGNSS機器、専用ソフトウェアなど初期投資が必要ですが、国や自治体のICT活用工事に関する補助金・加点制度もありますので、活用しながら段階的に導入を進めると良いでしょう。
4. 脱炭素材料の採用とBIM連携
四つ目の方法は、建設資材そのものを脱炭素型に切り替え、BIM技術と連携して効果を最大化することです。建設現場のCO2排出要因の中には、実は資材の製造段階で排出されるものが大きな割合を占めます。特にセメント製造や鉄鋼生産はエネルギー多消費型で、これら建設材料のエンボディド炭素(製造時排出CO2)を削減することが カーボンニュートラルに向けた重要課題です。
近年、各社から様々な低炭素型の建設材料が開発・提供されています。例を挙げると:
• 低CO2セメント・コンクリート: セメントに高炉スラグやフライアッシュ(石炭灰)を混和したエコセメントは、従来比で製造時CO2を30~40%削減できます。また、硬化過程でCO2を吸収する特殊なコンクリート(CO2吸着型コンクリート)も実用化が進んでいます。
• グリーン鉄鋼: 製鉄時に石炭の代わりに水素を利用してCO2排出を大幅低減する「グリーンスチール」の開発が進んでいます。建物や橋梁の鋼材を将来こうした製法の鋼材に置き換えることで、間接的なCO2削減効果が期待できます。
• 木材利用の促進: 木材は成長過程でCO2を吸収固定しており、「炭素貯蔵」効果があります。中大規模建築で鉄骨やコンクリートの代わりに集成材(CLT等)を使う動きも広がっています。土木分野でも、仮設構造物や景観施設で木材を積極活用することでコンクリート使用量を減らせます。
• 再生材の活用: 先述の建設リサイクル材を新規資材の一部として積極利用します。例えば再生骨材コンクリートは新品の骨材使用量を減らせ、品質基準を満たせば建築構造物にも適用可能です。再生アスファルトも新規原料の重油由来アスファルトを削減できます。
もっとも、これら低炭素素材は現状コストが高く、普及には「公共工事での優先採用」「カーボンプライシング収益の活用」など支援策が必要です。また、単に素材を使うだけでなく、サプライチェーン全体で需要喚起を担うことも求められます。将来的に価格低下や環境規制の強化が見込まれるため、今のうちから試験的にでも採用を始めてノウハウを蓄積しておくことが重要です。
そこで活用したいのがBIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)です。BIM/CIM上で建物・インフラの3次元モデルに材料情 報を紐付けることで、設計段階から各部材のCO2排出量(エンボディドカーボン)を可視化できます。例えば、鉄筋コンクリート造から木造への変更によるCO2削減量をシミュレーションしたり、別の低炭素コンクリートに置き換えた場合の効果を比較検討することが容易です。前田建設はBIMデータと連携するLCA評価システム「[CO2-Scope](https://www.maeda.co.jp/news/2024/07/05/5504.html)」を開発し、設計段階でカーボンフットプリントを迅速に算出して最適な材料選択に役立てています。
さらにBIMを活用すれば、適切な資材量の発注と施工計画にも寄与します。詳細な数量を算出し過剰発注を防ぐことで無駄な材料生産を減らし、部材のプレハブ化や規格化を進めることで現場廃材の発生抑制にもつながります。BIM上で設計者・施工者・メーカーが情報共有することで、新しい脱炭素材料の特性(強度や施工条件)を事前に把握し、施工段取りを最適化できる点も大きなメリットです。
要するに、材料とデジタル技術の両面からのアプローチで脱炭素と効率化を同時に推進しようということです。低炭素材料の採用は、製造時だけでなく将来の廃棄・リサイクルまで含めたライフサイクルで 環境負荷を下げます。そしてBIM連携により、それを現場で無理なく実践できる形に落とし込むことができるのです。
5. スマート測量と管理効率化(LRTKによる簡易測量)
最後の5つ目の方法は、スマート測量技術を導入して施工管理の効率化を図ることです。建設現場で頻繁に行われる測量・出来形管理・品質検査などの作業を、最新のデバイスやソフトウェアによって簡便かつ高精度に行います。これにより、現場管理に要する手間と時間を大幅に削減でき、ひいては工期短縮やミス防止、コスト削減につながります。
近年特に注目されているのが、スマートフォンやタブレットを活用した手軽な測量システムです。例えば、スタートアップ企業レフィクシアが開発した「LRTK」というデバイスは、iPhone/iPadに装着するポケットサイズのRTK-GNSS受信機です。このLRTKを使うと、誰でもスマホがセンチメートル級の精度を持つ万能測量機器に変身します。 従来は測量専門技術者がトータルステーション等で行っていた作業を、現場の施工管理者や作業員が1人で短時間に完了できるようになります。
LRTKのようなスマート測量機器には次のような特徴・メリットがあります。
• 高精度な位置計測: RTK方式により誤差数センチ~数ミリの測位が可能です。これで基準点出しや出来形測定を行えば、手戻りの原因となる測量誤差が激減します。
• 操作が簡単: スマホアプリでボタンを押すだけの直感的な操作で測定できます。専門知識がなくても扱えるため、熟練測量員が不足する現場でも活用しやすいです。
• 携帯性・即応性: 重さわずか125g程度の小型機器なので常にポケットに入れて持ち歩き、必要な時にすぐ測れます。「測りたい時にすぐ測れる」ことで測定頻度が上がり、現場の進捗管理や検査が迅速化します。
• 多機能: 単なる座標測量だけでなく、スマホ内蔵のLiDARと組み合わせて点群計測をしたり、AR表示で設計位置にマーキング(墨出し)したりと、多彩な現場ニーズに応えます。例えば埋設物の位置をARで可視化しながら掘削することで、誤掘削防止と作業効率化が図れます。
• リアルタイム共有: 測ったデータはクラウドに自動アップロード可能で、オフィスや発注者ともリアルタイムに共有できます。紙の図面を持ち帰って手計算・報告していた従来に比べ、即座にデータを確認・活用できるため意思決定がスピーディーになります。
このように、スマート測量ツールの導入は現場管理のDXとも言え、環境対策という側面では直接的ではないように見えるかもしれません。しかし、測量や検査の効率化によって作業時間や人員を削減できれば、それはすなわち現場全体のエネルギー消費削減(重機や車両稼働時間の短縮)につながります。また、測量頻度が上がることでミスや手戻りが減り、不要なやり直し工事を防げる点も、結果的に資材や燃料のムダ使い削減に寄与します。
スマート測量以外にも、現場管理分野では様々なIoT・AI技術が登場しています。例えば、現場にセンサーを設置してコンクリート養生温度や騒音・振動、粉塵濃度など環境モニタリングを自動化したり、施工の進捗をドローン空撮画像からAI解析して出来形をチェックしたりといった取り組みです。こうした現場管理のスマート化も組み合わせて進めることで、管理業務の負担軽減と品質向上を両立し、結果的に省人化・省エネ化に貢献します。
おわりに
以上、建設現場でCO2排出量とコストの同時削減を実現する5つの方法を紹介しました。省エネ重機の導入による燃費改善、建設副産物リサイクルによる廃棄物削減、ICT活用施工によるムダ排除、脱炭素資材の採用による根本的なカーボンフットプリント低減、そしてスマート測量・管理による業務効率化——いずれも単独でも効果がありますが、組み合わせることで相乗効果が生まれます。
カーボンニュートラルやSDGsが叫ばれる中、環境対策はもはや企業の社会的責務であり、公共工事の入札でも環境配慮への取り組みが評価される時代です。しかし幸いなことに、デジタル技術の進歩や新素材の登場によって「環境に良いことは生産性も上げること」に繋げられるケースが増えています。本記事で取り上げた方法を参考に、自社の現場で取り入れられるものから「できることから」「見える化しながら」ぜひ実践してみてください。
環境と効率の両立は、持続可能な建設業への鍵です。CO2とコストを同時に削減できれば、自社の競争力強化にも直結します。未来の建設現場は、環境に優しくスマートであるのが当たり前になるでしょう。そうした未来に向けて、ぜひ一歩ずつチャレンジを始めてみましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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