はじめに
近年、土木・建設業界では、脱炭素社会の実現に向けたCO2排出削減や環境負荷低減への取り組みが急務となっています。同時に、深刻化する人手不足や資材・燃料価格の高騰といった課題に対応するため、生産性向上によるコスト削減も避けて通れません。従来、環境への配慮と施工の効率・コストはトレードオフの関係にあると考えられがちでした。しかし、技術革新や施工手法の工夫によっ て、環境負荷低減と施工効率化・コスト削減を両立できるケースが増えています。
本記事では、ゼネコン(ゼネラルコントラクター)から地方自治体、建設コンサルタント、中小施工会社の技術者・環境管理担当者まで幅広い読者を対象に、土木・建設分野における環境対応の最新動向を解説します。特に省エネ施工(施工段階でのエネルギー消費削減)と環境アセスメント対応(環境影響評価への的確な対応と効率化)に焦点を当て、それぞれの具体的な取り組み事例とその効果、導入時のコストや課題と解決策を紹介します。
省エネ施工では、低燃費・低排出型の建設機械導入やICT活用による重機稼働の最適化、資材リサイクルの推進、工期短縮によるエネルギー削減などを取り上げます。一方、環境アセスメント対応では、制度的背景から最新の評価手法、省力化のための技術、LCAやBIMとの連携、施工段階でのフィードバック活用、さらに地方自治体の先進事例まで幅広く見ていきます。記事の最後には、スマートフォンと高精度GNSS受信機を組み合わせた新しい測量技術にも触れ、こうしたDX(デジタルトランスフォーメ ーション)が省エネ施工や環境負荷低減に寄与する可能性を紹介します。
省エネ施工における最新の取り組み
土木・建設工事の施工現場では、大型建設機械の稼働や資材輸送などに大量のエネルギーが使われ、CO2をはじめ様々な環境負荷が生じます。このため、現場でのエネルギー消費そのものを減らす「省エネ施工」が脱炭素化の柱となっています。ここでは、省エネ施工につながる主な最新取り組みとして、建設機械の省エネ・脱炭素化、ICTの活用による施工効率化、建設副産物の再利用、そして工期短縮によるエネルギー削減について具体例を見てみましょう。
低燃費・脱炭素型の建設機械導入
建設現場で使用される油圧ショベルやブルドーザーなどの重機はディーゼル燃料を大量に消費し、多くのCO2や排気ガスを排出します。そのため、重機そのものを省エネ型・低排出型に切り替えることが、有効な環境対策となります。近年、大手建機メーカー各社は脱炭素に向けて重機のハイブリッド化・電動化を加速して おり、実用化された機種も増えてきました。例えば、2023年にはコマツがバッテリー式電動ショベルなど電動建機7機種で国土交通省の「[GX建設機械認定](https://www.komatsu.jp/ja/newsroom/2023/20231225)」を取得するなど、業界全体で本格的な電動化への動きが見られます。日立建機も中型クラスまで電動ショベル「ZE」シリーズを展開し、タダノは世界初となる全電動クレーンを発売するなど、省エネ重機の開発・導入が進んでいます。
電動式やハイブリッド式の重機を導入すれば、稼働中の燃料消費とCO2排出を大幅に削減できます。実際、油圧ショベル1台あたりではハイブリッド化によって燃費・排出量が従来比で約20~40%改善した例が報告されています。また、スウェーデンのある採石場で重機群をディーゼル車から電動車に置き換えた実証では、現場全体のCO2排出量が約98%削減されたとの驚くべき報告もあります。もちろん電力の発電段階でのCO2はありますが、再生可能エネルギー電力の活用などと組み合わせれば、施工現場での排出を実質ゼロに近づけることも可能です。さらに電動重機は排ガスが出ず騒音も小さいため、周辺環境への影響も抑えられます。例えば夜間作業への制約が緩和されるなど、施工の柔軟性向上による効率面のメリットも期待できます。
省エネ型重機の導入に際しては、従来型に比べてイニシャルコスト(購入費用)が高い点が課題です。しかし、長期的に見れば燃料代の節約やオイル交換頻度の減少などランニングコストの低減によって元が取れる可能性が高いです。導入事例でも、燃料コスト低減により数年で投資を回収したケースが報告されています。また日本では国土交通省や経産省による補助金・税制優遇制度が整備されつつあり、例えば低炭素型建設機械やGX建設機械の認定制度を通じて導入補助が受けられる場合があります。こうした支援策も活用しながら、可能な範囲で重機の脱炭素化を進めていくことが望ましいでしょう。
ICT活用による施工効率化(アイドリング・搬送の最適化)
ICT(情報通信技術)を活用して施工プロセスを最適化することも、現場のムダなエネルギー消費を削減する大きなポイントです。 重機や車両の動き、作業工程、資材の搬出入などをデジタル技術で「見える化」し、自動制御や効率的な計画立案につなげることで、アイドリング(待機時の無駄なエンジン稼働)を減らし、最小の動きで施工を完了できます。これは国土交通省が提唱する「i-Construction」や建設DXの柱の一つであり、環境負荷の低減と生産性向上に大きな効果を発揮する取り組みです。
具体的なICT活用の例として、次のようなものがあります。
• マシンガイダンス・マシンコントロール(MG/MC):GPSや3次元の設計データを用いて、油圧ショベルなどの重機のブレードやバケットの動きを自動制御する技術です。ベテランオペレーターの勘に頼らなくても精密な掘削・造成が可能となり、丁張り設置や逐次測量を省略できるため作業時間を大幅短縮できます。ある実験では、ICT対応の油圧ショベルを使ったところ、従来工法に比べて直接作業時間が約43%短縮され、人員も従来の1/3(オペレーター1人だけ)で済んだという結果が報告されています。この効率化はそのまま燃料消費量とCO2排出量の削減につながります。
• 重機稼働状況の見える化:現場内の重機にGNSS発信機やIoTセンサーを取り付け、クラウド上の電子地図や3Dモデルにリアルタイムで各重機の位置・軌跡を表示するシステムがあります。例えば戸田建設では「[重機稼働見える化システム](https://www.toda.co.jp/tech/cutting/machinery.html)」を導入しており、ブルドーザーやダンプトラックの走行経路、待機時間を一目で把握して重機の最適配置や台数調整に役立てています。その結果、作業当たりの燃料使用量を削減し、工期短縮やコスト減にも寄与しています。
• 資材搬入出のルート最適化:協力会社や運送業者ともリアルタイムで連携し、ダンプや資材トラックの走行ルート・スケジュールを最適化します。地図アプリや物流管理システムを用いて渋滞を回避し、待ち時間の少ない時間帯を指定することで、トラックの総走行距離やアイドリング時間を短縮可能です。また、近隣の複数現場で資材や残土の輸送を共同化すれば、空荷の回送(荷物のない復路走行)を減らし、トラック台数自体を削減することもできます。こうした工夫により無駄な燃料消費だけでなく運行コストも抑えられます。
• 施工計画のデジタルシミュレーション:着工前に、施工手順や重機の動きをソフト上で3Dシミュレーションし、最も効率の良い施工計画を立てます。工程間の待機時間や重複作業を削減し、必要最小限の移動・稼働で完了できる計画に最適化します。シミュレーション結果に基づきオペレーターに作業手順を周知すれば、現場での試行錯誤が減って燃料と時間のムダを防止できます。
このようにICTを活用した施工最適化によって、重機や車両の余計な稼働が減り、その分燃料消費量・CO2排出量を削減できます。同時に、作業時間短縮による人件費や機械経費の節減といったコストメリットも得られます。さらに、施工管理がデジタル化され「経験や勘に頼らない施工」が可能になることで、熟練オペレーターの不足が懸念される現場でも品質と効率を維持できる副次的な効果も重要です。導入にはドローンによる測量やGNSS機器、専用ソフトウェアなど初期投資が必要ですが、政府や自治体がICT活用工事に対して補助金の交付や入札加点制度を設けて支援する動きもあります。それらを活用しつつ、まずは一部工程から段階的に導入して効果を検証してみると良いでしょう。
建設副産物の再利用と再生資材の活用
土木・建設工事では、掘削によって生じる残土や、解体で生じるコンクリート塊・アスファルト塊、木材や金属スクラップなど、さまざまな建設副産物(いわゆる建設廃棄物や建設発生土)が発生します。従来はこれらを産業廃棄物として処分場へ運搬・埋立てするケースも多く、処分や輸送に伴うエネルギー消費やCO2排出が問題となっていました。そこで近年は、可能な限り副産物を有効活用・リサイクルして資源循環型の施工を行う取り組みが広がっています。副産物を再利用すれば、新規資材の調達量を減らせるため製造時の環境負荷を低減でき、同時に廃棄物処理費用や運搬コストの削減にもつながります。
具体的な再利用の例をいくつか挙げます。
• 発生土の有効利用:トンネル掘削や造成工事で出た大量の土砂(建設発生土)は、現場内の埋め戻し材や盛土材と して再利用します。また他の近隣工事で埋め立てや盛土が必要な場合に提供するマッチングも進められています。不要土の長距離運搬や処分を減らすことで、燃料消費とCO2排出を大幅に削減できます。
• コンクリート塊のリサイクル:解体で発生したコンクリート塊は、破砕して再生砕石(リサイクルクラッシャーラン)や再生砂に加工し、道路の路盤材や埋め戻し材として再利用します。これにより、新規に砕石を採取する量を減らせるほか、廃棄物処理費用も削減可能です。品質管理を徹底した再生砕石は、公共工事にも積極的に活用され始めています。
• アスファルト廃材の再生:道路の改修などで剥がした古いアスファルト舗装は、加熱して再度溶融することで再生アスファルト合材として新品に近い品質で舗装に再利用できます。再生アスファルトの利用率を高めることで、石油由来の新規アスファルトの使用量を削減し、製造エネルギーも節約できます。
• その他資材のリユース:木材の端材を合板やチ ップとして再利用したり、鋼材スクラップを電炉で溶解して新たな鋼材にリサイクルするなど、素材に応じた再資源化も進んでいます。仮設資材などは再利用可能な製品をレンタル利用することで廃棄物を減らす取り組みもあります。
このように「出たものを可能な限り現場で活かす」工夫によって、廃棄物として処分・輸送する量を減らし、ひいてはエネルギー消費と排出ガスの削減につなげることができます。再利用を成功させるポイントは計画段階からリサイクル前提で段取りすることです。例えばBIM/CIMなどデジタルツールで施工全体の土量・資材量をシミュレーションし、発生が見込まれる副産物の保管場所や利用先を事前に検討しておきます。また関連する協力会社や他現場との調整も重要です。こうした準備により、「出たものを活かす」施工フローを現実的に組み込み、環境負荷低減とコスト削減の両面で効果を上げることができます。
もっとも、リサイクル材の品質確保や一時保管スペースの確保など、現場で再利用を実践する上での課題もあります。これについては、国の建設リサイクル法に基づく仕組みや、自治体が運営する余剰土のマッチングシステムを活用するなどの解決策があります。近年は公共工事で再生材の使用を評価ポイントにする動きもあり、環境面の取り組みが受注にもプラスに働くケースが増えています。現場規模に応じて無理のない範囲からでも、資源循環型の施工を取り入れていく意義は大きいでしょう。
工期短縮によるエネルギー消費削減
工期(施工期間)の短縮も、省エネ施工において見逃せない要素です。工事の期間が長引けば長引くほど、その間ずっと重機や現場照明、仮設事務所の空調・電気などが稼働し続けるため、総エネルギー消費が増えてしまいます。逆に、工期を短縮できれば、その分だけ重機の稼働時間や仮設設備の稼働日数が減るため、トータルのエネルギー使用量とCO2排出量を削減できます。
工期短縮というと人員や作業時間を単に増やすことを連想しがちですが、ここで目指すのは効率化による短縮です。無駄な待ち時間や重複作業を省き、施工プロセスを最適化することで「早く終わらせる」ことが省エネに直結します。前述のICT活用も工期短縮に寄与しますが、その他にも次のような工夫が有効です。
• 工程の平準化(タクト施工など):作業を細分化し、均等なペースで連続的に進めるタクト施工を採用すると、各作業が待ちなくスムーズに流れ、全体工期を短縮できます。例えば鹿島建設は、ある大規模現場でタクトタイムを取り入れて作業所内物流を効率化し、資材搬入車両の削減や工期短縮を実現していますが、これらは同時にCO2排出削減策にもなっています。
• プレハブ化・モジュール工法の活用:現場での作業量を減らすため、事前に工場でユニット化・プレハブ化できる部分は極力工場生産し、出来合いの部材を現場で組み立てる工法を採用します。現場作業の日数自体が減るため、仮設設備や重機の稼働期間短縮に直結します。例えば鉄骨の溶接を工場で行い現場ではボルト接合だけにするといった工夫で、建方工期を数割短縮できた事例もあります。
• 段取りの事前徹底と並行作業:工事開始前に綿密な工程検討を行い、可能な部分は並行して同時施工する計画とします。地上工事と地下工事を同時進行させる、基礎工事中に上部工の製作を進めておく、などの工夫で全体期間を圧縮します。ただし安全面や品質面の管理が重要となるため、BIMによる干渉チェックや現場管理の高度化とセットで進める必要があります。
工期を短縮することは、省エネ=経費節減に直結します。例えば工期を1ヶ月短縮できれば、その間に消費するはずだった燃料や電力が不要となり、CO2排出削減効果はもちろん数百万円単位の経費節減にもなり得ます。また、早く竣工すればそれだけ早く施設稼働による社会的利益を生み出せるため、発注者・地域にとってもプラスです。もっとも無理な工期圧縮は品質低下や安全リスクを招きかねないため、あくまで効率化による適切な短縮を追求することが重要です。ICTやBIMを活用した精緻な計画立案、協力会社との緊密な連携による段取りの徹底など、前準備に時間をかけることが結果的に工期短縮と省エネに繋がります。
環境アセスメント対応の最新動向
大規模な土木・建設プロジェクトを進める上で、環境影響評価(環境アセスメント)は避けて通れない重要なプロセスです。環境影響評価とは、事業着手前にその事業が自然環境や地域社会に与える影響を事前に調査・予測・評価し、必要な環境保全措置を検討する一連の手続きのことです。日本では1997年に環境影響評価法が制定され、一定規模以上の開発事業にはアセスメントの実施が義務付けられています。また各都道府県や政令市でも独自の環境影響評価条例を定めており、国の法律対象外の中規模事業について環境配慮を求めるケースもあります。ここでは、環境アセスメント制度の概要と、近年の効率化のための技術的取り組み、さらにはLCA・BIM連携による先進的な環境評価手法、施工段階での環境フィードバックの事例、自治体レベルでの先行事例について解説します。
環境影響評価制度の背景と目的
環境影響評価(EIA: Environmental Impact Assessment)は、事業計画段階でその事業が環境に与える影響 を事業者自らが調査・予測・評価し、その結果を行政や地域住民に公表して意見を聴き、計画に反映させる一連の手続きです。その目的は、開発による環境への悪影響を未然に防止し、可能な限り低減することにあります。対象となる事業は法律で定める第一種事業(必須対象)および第二種事業(規模等に応じ個別判断で対象)で、具体的には大規模な道路建設、ダム・発電所建設、大規模造成やニュータウン開発など多岐にわたります。
環境アセスメントの手続きの流れは、一般に以下の通りです。
• 計画段階配慮書の作成・提出:事業計画の構想段階で、環境に配慮すべき事項をまとめた配慮書を作成し、公衆縦覧と意見募集を行います(法律では任意手続きですが、多くの自治体条例では義務化)。
• 方法書の作成・提出:環境影響を調べる項目や調査方法を定めた方法書を作成し、行政や有識者、住民からの意見を聴いて調査計画を確定させます。
• 現地調査・予測評価の実施:方法書で定めた内容に基づき、生物調査や大気・水質・騒音振動の測定など現況調査を実施し、さらに事業実施による将来の環境影響を予測・評価します。
• 準備書の作成・提出:調査結果と予測評価の内容、および環境保全措置の計画をまとめた準備書を作成し、公衆縦覧・意見募集や審査会での審査を経ます。
• 評価書の提出:準備書に対する意見や審査結果を踏まえて必要な修正を加えた最終報告書である評価書を取りまとめ、行政に提出します。評価書の認証または届出をもって環境影響評価手続きは完了となります。
このように環境アセスメントは、計画策定から事業開始までに数年単位を要することもある長期かつ大規模な調査・調整プロセスです。例えば、大規模ダム建設の事例では、生態系への影響を四季を通じて調べるために1年 以上の現地調査を実施し、全ての手続き完了まで計画発表から3~4年を費やすケースもあります。しかしそれだけの時間と費用をかけても、事前に環境への影響を的確に把握し対策を講じておくことは、事業後に問題が発生してから対処するよりもはるかに重要です。環境アセスメントは事業者にとって法的義務であると同時に、持続可能な開発のためのリスクマネジメントとも言えます。
環境アセスメント業務の効率化に向けた技術
環境アセスメントは環境専門家による膨大な調査・分析作業を伴うため、手間とコストがかかるという課題があります。近年、このプロセスを効率化・省力化するために様々な技術的アプローチが模索されています。
一つはリモートセンシング技術の活用です。従来、人が現場に出向いて行っていた自然環境の調査を、ドローン空撮や衛星画像解析で代替・補完する試みが進んでいます。例えば上 空から植生分布を把握したり、赤外線画像で動物の生息域を推定したりといったことが可能になり、人手によるフィールド調査の範囲を絞り込めます。また、センサー技術の発達により、騒音・大気質・水質などを一定期間自動連続測定してデータ収集する手法も広まりつつあります。これにより、担当者が毎日採取・分析していた作業が自動化され、より長期間で精度の高いデータを効率的に得ることができます。
次に、シミュレーションソフトやAIの活用も注目されています。環境アセスでは、事業による将来影響の予測が重要なステップですが、例えば騒音の伝搬シミュレーションや、大気汚染物質の拡散モデル、水環境への影響モデルなど、高度なシミュレーションソフトウェアが実用化されています。これらを駆使することで、より精緻な予測評価を比較的短時間で実施できます。さらに、過去の膨大な環境データや事例をAIが分析し、影響が出やすい箇所や対策の有効性をアシスト提案してくれるような研究も進んでいます。例えば、ある地域の生態調査データをAIが解析し、絶滅危惧種の出現確率が高い地点をピンポイントで示して重点的に調査する、といった効率化が期待されています。
また、情報共有プラットフォームの整備も効率化に寄与します。国の環境影響評価情報支援ネットワークでは、全国の環境アセス事例や各種環境データをデータベース化して公開しており、事業者やコンサルタントが過去事例を参考にしやすくなっています。これにより、調査項目の重複を避けたり、地域特性に応じた評価ポイントを事前に把握しておけるなどのメリットがあります。さらに、最近では環境アセスの各プロセス自体を電子化・オンライン化する動きもあります。書類のオンライン提出・共有や、住民説明会のオンライン開催、Web上での意見募集など、DXの観点から手続きを効率化する取り組みが一部で始まっています。
これらの技術により、環境アセスメントにかかる時間と労力を削減しつつ、評価の質を維持・向上させることが期待されています。ただし、環境影響評価は地域ごとの細かな環境条件に配慮する必要があるため、最後は人間の専門的判断が欠かせません。テクノロジーはあくまで支援ツールですが、上手に活用することで従来より短期間で充実した環境配慮計画を策定できる可能性が広がっています。
LCA・BIMデータとの連携による環境評価
環境アセスメントが対象とするのは主に事業実施による周辺環境への影響ですが、近年それと並行して注目されているのが、事業自体のライフサイクルでの環境負荷を評価・低減する取り組みです。特に建設業界では、LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて、建設材料の製造から施工、運用、最終解体・処分に至るまでのCO2排出量(カーボンフットプリント)を定量的に算出し、可能な限り削減しようという動きが活発化しています。
このLCAによる環境評価を効率的かつ実践的に進める鍵として、BIM(Building Information Modeling)/CIMなどのデジタルデータとの連携が挙げられます。BIMとは建築物やインフラを3次元モデル上で設計・管理する手法ですが、そこに環境に関する属性情報(各部材のCO2排出量や断熱性能など)を統合することで、設計段階から環境性能を「見える化」できます。例えば、鉄筋コンクリート造で設計した場合と木造に変更した場合で、製造時CO2排出量がどれだ け変わるか、といった比較を瞬時にシミュレーションできるのです。
実際の事例として、前田建設はBIMデータと連動する独自のLCA評価システム「[CO2-Scope](https://www.maeda.co.jp/news/2024/07/05/5504.html)」を開発し、建物の設計段階でカーボンフットプリントを迅速に算出して最適な材料選択に役立てています。また住友林業では海外製の「One Click LCA」というツールを活用して、建築資材のCO2排出量と木材による炭素固定量を可視化し、建物全体のエンボディドカーボン(二酸化炭素排出量換算)の見える化に取り組んでいます。こうしたデジタルツールにより、設計者は複数の設計案の環境性能を短時間で比較検討でき、環境とコストのバランスが取れた最適案を導き出しやすくなります。
さらにBIMを活用すれば、環境負荷低減のための施工計画や発注の最適化にも寄与します。3Dモデルから正確な数量積算を行うことで過剰発注を防ぎ、資材生産や輸送におけるムダを削減できます。また、BIM上で設計者・施工者・資材メーカーが情報を共有することで、新しい環境配慮型資材の特性(強度や施工条件)を事前に把握し、現場で無理 なく活用する計画を立てることも可能です。例えば従来より固まるのに時間がかかるエコセメントを使用する場合でも、BIM上で工程シミュレーションを行いながら適切な養生日程を組むことで、工期への影響を最小限に抑えつつ利用できるようになります。
要するに、デジタル技術と環境評価を融合させることで、定量的根拠に基づいた環境配慮設計が実現してきているのです。環境影響評価の場面でも、こうした設計段階からのCO2見える化や資材選択の工夫は、将来的な環境影響を減らす有効な対策と位置付けられます。国も今後、公共事業でライフサイクルCO2の算定や報告を求める動きを強める可能性があり、業界としてもBIM・LCA連携によるカーボンニュートラル対応は避けて通れないでしょう。
施工段階での環境フィードバックとモニタリング
環境影響評価書で計画された環境保全措置を机上で終わらせず、施工中にしっかり実践し、状況に応じてフィードバックすることも重要です。大型工事ではしばしば環境監理計画が策定され、施工 段階での環境モニタリングが義務付けられます。近年、これにICTやIoTを活用して効率化しつつ精度を高める取り組みが増えています。
例えば、工事現場周辺に環境センサーを設置し、騒音、振動、粉じん濃度、水質(濁度)などを24時間体制で自動計測・記録するシステムがあります。従来は人手による定点観測や分析が必要でしたが、リアルタイムでデータを取得できるため、基準値を超えるような兆候があればすぐにアラームで知らせ、現場で迅速に対策を講じることができます。例えば、あるトンネル工事現場では騒音モニターを周辺住宅地との境界に設置し、深夜帯に基準を超えそうな場合は即座に作業を中断・緩和して苦情発生を未然に防いだケースがあります。このようにPDCAサイクルを現場で回すことで、環境影響を実効的に低減できます。
また、施工段階での環境フィードバックには可視化と情報共有も有効です。センサーで集めたデータや巡回監視の結果を、現場事務所のモニタで見える化したり、クラウド経由で発注者・監督官庁とも共有する仕組みが整いつつあります。地域住民に対しても、工事の環境モニタリング結果をWEBサイトで公開したり定期的に説明会で報告する例もあります。こうしたオープンな姿勢は信頼醸成につながり、ひいては工事の円滑な推進にも寄与します。
環境影響評価のフェーズでは予測に過ぎなかったものを、施工フェーズできちんと実測データで検証し、必要に応じて施工方法を調整することが、真に環境に配慮した施工と言えます。例えば、水質汚濁防止のために設定した濁水処理設備が期待通り機能しているかをモニタリングし、問題があれば処理プロセスを改善する、といった対応です。このように現場でのフィードバックループを回すことで、環境保全措置の実効性が高まり、結果的に将来の類似プロジェクトへの知見蓄積にもなります。
地方自治体における先進的な取り組み事例
国だけでなく、地方自治体レベルでも土木・建設分野の環境対応を積極的に推進する動きが見られます。自治体が主導して独自の施策を講じ、その地域ならではの先進事例を生み出しているケースもあります。
例えば長野県では、全国に先駆けてCIM(Construction Information Modeling)を県発注工事に導入し、施工計画段階から3Dモデル上で土量バランスや環境対策を検討する取り組みを進めています。これにより、発生土の有効利用計画を事前に立てて残土処理量を削減したり、地域の景観シミュレーションを行って環境に調和した設計案を採用するなど、プロジェクトの初期段階から環境配慮を具体化しています。また東京都は、2030年までに都内の温室効果ガス排出量を半減する「カーボンハーフ」目標の一環として、2024年度よりBIMを活用した省エネ建築設計や環境解析の研修事業を開始しました。これにより都内の設計事務所や施工会社に対し、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やLCA評価手法の普及を図っています。東京都はまた、独自の環境評価制度(環境アセス条例)で法対象外の中規模開発にも簡易アセスを求めたり、新築建築物に太陽光発電設備設置を義務化するなど、先進的な環境施策を打ち出しています。
他の自治体でも、例えば横浜市は公共工事の入札で環境負荷低減の提案に加点する制度を導入し、施工段階でのCO2削減計画やグリーン購入の取り組みを企業に促しています。福岡市では市内工事で電動建機や低騒音機材の試験導入を支援し、その成果を検証する実証事業を行っています。これらの先行事例は、自治体が自ら率先して環境に優しい工事手法を採用・推進することで、地域全体の施工環境水準を引き上げ、ひいては全国への波及効果も期待できるものです。建設業界としても、各自治体の動向を注視し、協働しながら持続可能な施工モデルを確立していくことが重要でしょう。
スマート測量「LRTK」の導入による省エネ・環境負荷低減
最後に、新技術による施工効率化の具体例としてスマート測量について触れておきます。測量や出来形管理、出来高管理といった作業は建設現場で頻繁に行われますが、これらには専門知識と手間がかかり、従来は人海戦術で多くの時間を要していました。近年、この分野でもDXが進み、ICTを活用して少人数・短時間で高精度な測量・計測を行うソリューションが登場しています。その代表的なものの一つが、スマートフォンと高精度GNSS(衛星測位)を組み合わせた手軽な測量システムです。
例えばスタートアップ企業レフィクシアが開発した「LRTK」というデバイスは、スマートフォンやタブレットに装着して使用するポケットサイズのRTK-GNSS受信機です。LRTKを用いることで、手持ちのiPhoneやiPadがセンチメートル級測位精度を持つ測量機器に早変わりします。これまではトータルステーションや高級GNSS機器を使い専門の測量士が行っていた基準点出し・出来形測定といった作業を、現場の施工管理担当者や作業員が1人で短時間に完了できるようになります。
LRTKのようなスマート測量ツールには、次のような特徴・メリットがあります。
• 高精度な位置計測:RTK(リアルタイムキネマティック)方式により、誤差数センチ~数ミリメートルという測位精度が実現します。これで丁張り位置出しや出来形測定を行えば、測量誤差による手戻り(測り直し・やり直し)を極限まで減らせます。
• 簡単な操作性:専用のスマホアプリ上でボタンを押すだけの直感的な操作で測定できます。専門知識がなくても扱えるため、熟練測量員が不足する現場でも導入しやすいです。
• 携帯性・即応性:重さ約120~130g程度の超小型機器なので、常に作業員がポケットに入れて持ち歩き、必要な時にすぐ測れます。「測りたい時にすぐ測れる」環境が整うことで測定頻度が上がり、現場の進捗管理や検査を迅速化できます。
• 多機能連携:スマホ内蔵のカメラやLiDARスキャナと連携し、点群データ計測やAR(拡張現実)による位置の可視化など、多彩な用途に対応できます。例えば図面上の設計位置を現地にAR表示して直接マーキングする、といったことも可能で、配管埋設位置の誤掘削防止など安全面・効率面でも効果があります。
• リアルタイムなデータ共有:測量データはスマホからクラウドに自動アップロードでき、オフィスの技術者や発注者とも即時に共有可能です。紙の野帳に記録して持ち帰り、後日報告書を作成していた従来手法に比べ、即座に データ確認・判断ができるため意思決定がスピーディーになります。
このようなスマート測量の導入は、施工管理の生産性向上(DX)に直結します。一見すると環境対策とは別分野に思えますが、測量や検査業務の効率化による省力効果は、結果的に現場全体の省エネ・環境負荷低減につながります。例えば、測量作業に必要な人員と時間が半減すれば、それに伴い測量のための車両・重機の稼働や移動も減り燃料消費が削減できます。また高精度化と頻測(ひんそく)によって誤差・ミスが減り、後工程での手直し工事や材料のムダ使いを防げる点も重要な環境メリットです。さらに、リアルタイムに現況を把握できることで、品質不良や施工ミスを早期に検知してすぐ修正でき、重大な手戻り(大規模な打ち直し等)を避けることにもつながります。
以上見てきたように、スマート測量をはじめ現場管理のスマート化は、人手不足の解消や品質確保だけでなく、結果的に省エネ施工の実現にも貢献するのです。建設業界では他にも、コンクリート養生日数の自動管理システムや、AIによるドローン画像の出来形判定など、様々な現場DXソリューションが登場しています。それらも組み合わせて活用することで、管理業務の負担軽減とミス防止、ひいては省人化・省エネ化を同時に達成できるでしょう。
おわりに
土木・建設業界の脱炭素・環境対応の最前線について、省エネ施工と環境アセスメント対応の観点から最新の取り組み事例を見てきました。省エネ型重機の活用からICT施工による効率化、建設リサイクルの推進、工期短縮、そして環境アセスメントの高度化やスマート測量まで、様々な角度からの努力が進んでいます。
それぞれ単独でも効果がありますが、組み合わせて総合的に取り組むことで相乗効果が生まれ、施工現場の脱炭素化は一層加速するでしょう。今後、2050年カーボンニュートラルに向けた規制強化や社会的要請はますます高まる ことが予想されますが、同時に人材不足やコスト増といった課題も続いていきます。そうした中、本記事で紹介したような環境と効率を両立するソリューションを積極的に取り入れることが、企業の持続的な成長と社会的責任の両面で不可欠となるでしょう。土木・建設業界が培ってきた技術力にデジタル技術と環境配慮の視点を融合させ、新たな価値を創造していくことが期待されています。環境対応の最前線に立つ皆様が、これらの知見を活かし、それぞれの現場で持続可能な未来への一歩を踏み出す一助になれば幸いです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

