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土木・建設業界の人手不足解決のカギを探る:人材確保・育成の最新戦略を徹底解説

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

日本の土木・建設業界は今、かつてない深刻な人手不足に直面しています。かつてピーク時の1997年には685万人いた建設就業者が、2025年には約477万人まで減少し、約30%もの人員がこの28年で失われました。一方で国土強靭化計画や震災復興需要など建設需要は増加傾向にあり、「需要増」と「人材供給減」のギャップが拡大しています。実際、有効求人倍率は2025年現在で約5倍と極めて高い水準に達し、型枠工や鉄筋工といった専門技能職では7倍以上に上る状況です。この人手不足の影響で、工期の遅延や受注辞退、コスト上昇が各所で発生し、企業経営にも大きな打撃となっています。また建設技能労働者は高齢化が進み、55歳以上が全体の35%超を占める一方、29歳以下はわずか12%前後という年齢構成のいびつさも将来の技術継承に不安を投げかけています。


本記事では、こうした土木・建設業界の人手不足という背景・課題を踏まえ、業界各社や行政が取り組む最新の人材確保・育成戦略を網羅的に解説します。若手人材の確保育成高齢者・女性の活躍推進外国人材の受け入れ働き方改革ICT・DXによる省人化・効率化技能継承と教育研修の最適化といったテーマごとに、「背景・課題」「現場の実例」「活用技術・仕組み」「得られた効果」「今後の展望」の順で紹介します。記事の最後では、特に最新技術の活用事例としてスマホ+高精度GNSS受信機による簡易測量(LRTK)の導入が、人材不足解消にどのように寄与し得るかにも触れます。経営層から現場管理者まで、持続可能な建設業の未来を切り拓くヒントとしてぜひご一読ください。


若手人材の確保・育成

背景・課題

建設業界では若年層の入職者減少と早期離職が大きな課題です。長時間労働や厳しい職場環境、「3K(きつい・汚い・危険)」なイメージから、若者の建設業離れが進んできました。その結果、新規入職者が減少し、現場の高齢化に拍車がかかっています。企業にとって「将来の担い手」をどう確保するかが喫緊の経営課題となっており、若手が定着しない限り事業の持続性が危ぶまれる状況です。若者が仕事に求めるもの(働きやすさや成長機会など)と従来の建設現場の実態とのギャップも指摘され、ミスマッチ解消が求められています。


現場の実例

ある中堅建設会社(東京都)の事例では、「5年後には若手がいなくなる」という危機感から採用手法を抜本的に見直しました。同社は従来、紹介会社経由で人材を採用していましたが、スキル優先の採用では社風に合わず定着しない若者が多かったため、SNSを活用した直接採用に切り替えました。具体的には、自社の魅力や理念を発信する採用サイトを刷新し、SNS上で自社に共感しそうな層に情報発信できるツールを導入しました。その結果、わずか1か月で会社の価値観にマッチした若手人材の採用に成功し、入社後の定着率も大きく向上する見込みとなりました。応募者自らが会社の理念や文化を深く理解した上で入職してくれたことで、現場の先輩からも「積極的で将来が有望」と高く評価されています。このようにデジタル時代に即した新しい採用戦略によって、ミスマッチを減らし優秀な若手の確保に成功する企業が現れています。


活用技術・仕組み

若手確保のために活用されている技術・仕組みとして、デジタルマーケティングを応用した採用手法が注目されています。上記の事例のように、企業の理念や魅力をWebやSNSで発信し、共感した人材を直接採用する試みはその一つです。特に近年は採用プラットフォームやAIマッチングを活用して、求人媒体では出会えなかった層にアプローチするケースも増えています。また、人材育成面ではeラーニングやオンライン研修の導入も進んでいます。若手社員が好きな時間に基礎知識を学べる動画教材や、VRを使った仮想施工体験など、デジタル技術を活かして効率的に技能習得できる環境を整備する企業もあります。さらに、厚生労働省と国土交通省による支援策として、未経験者を対象に職業訓練カリキュラムを業界団体が提供する事業が実施されています。こうした公的支援も活用しながら、企業は若手の早期戦力化とキャリア形成をサポートしています。


得られた効果

デジタル時代の採用・育成戦略によって、若手人材の応募者数と定着率の向上という効果が現れ始めています。SNS経由の採用では、企業文化に共感した質の高い人材と出会えるため、早期離職のリスクが低減しました。またオンライン研修の活用により、新人が現場に出る前に基本的な安全知識や作業手順を習得でき、OJTの負担軽減と新人の早期戦力化につながっています。さらに、若者にとって魅力的な最新技術(ICTやDX)を導入し現場のイメージを刷新することで、「建設業は古い」という印象が和らぎ、入職意欲の向上という効果も期待できます。実際に、デジタルツールを駆使する現場では若手社員から「ITスキルが活かせて面白い」「効率的に働ける」と肯定的な声が聞かれ、仕事への満足度向上にも寄与しています。


今後の展望

今後、少子化で国内の若年労働力自体が減る中、限られた若者をいかに建設業に呼び込むかが引き続き重要課題です。各社は引き続き採用チャネルの多様化とブランディングに力を入れ、学生や未経験層に建設業のやりがいを発信していく必要があります。また働きやすい職場づくり(後述の働き方改革や処遇改善)とセットで取り組むことで、入職した若手が長く定着し成長できる環境を整えることができます。国も「魅力ある建設業界」の実現に向けた広報や教育機関との連携を強めており、高校や専門学校での土木・建設教育の充実、インターンシップの推進など裾野拡大の取り組みが期待されます。デジタルネイティブ世代である若者の発想やITスキルを業界に取り込むことは、生産性向上にも繋がる好循環を生むでしょう。若手が憧れを持って飛び込める業界へと変革していくことが、人手不足解決の根本的なカギとなります。


高齢者・女性の活躍推進

背景・課題

建設現場の第一線を担ってきた技能者の多くが50代~60代となり、大量退職時代が目前に迫っています。団塊の世代を中心に今後10年で多数のベテランが引退すると予想され、現場では技術・ノウハウの継承が喫緊の課題です。一方で、建設業に従事する女性の割合は約17%程度と他産業に比べても低く、潜在的な人材プールが十分に活かされていない状況があります。女性が少ない背景には、重筋作業や長時間労働など肉体的・時間的負担の大きさ、そして現場環境が女性にとって働きにくいという問題(例えば仮設トイレや更衣室の未整備など)がありました。高齢者の戦力低下女性人材の活躍不足という二つの課題に対し、業界全体で高齢者・女性が働きやすく貢献しやすい環境を整える必要があります。


現場の実例

ある総合建設会社では、定年後も嘱託として継続雇用する制度を拡充し、65歳を超えても健康で意欲のある技能者には現場指導役として働き続けてもらっています。実際に長年の経験を持つ職人が若手のメンターとして配置されることで、新人の技能習得が格段にスムーズになり、ベテラン自身も「まだ若い世代の役に立てる」と生き生きと活躍しています。また、女性技術者の活躍にも注目が集まっています。たとえばある地方ゼネコンでは女性の現場監督を積極登用し、女性社員が安心して働けるよう現場事務所に女性専用休憩室やトイレを設置するなど職場環境の改善を行いました。その結果、女性監督が中心となって工期短縮や安全管理の向上に寄与したケースも報告されています。「女性だから無理」とされていた重機オペレーションの分野でも、最新機種ではパワーステアリングや自動制御の導入で操作負荷が軽減され、女性オペレーターが誕生するなど、新たな風が吹き始めています。これらの例は、高齢者や女性が十分に能力を発揮できる場を用意すれば、現場力向上に大きく貢献し得ることを示しています。


活用技術・仕組み

高齢者・女性の活躍を促進するために、まず制度面の整備が進められています。定年延長や再雇用制度の拡充によって、希望する高齢社員が長く働けるようにする企業が増えています。同時に、高齢者が無理なく働けるよう短時間勤務制度作業内容の選別(例えば技能指導や検査業務を中心に担当するなど)も導入されています。女性活躍のためには、国土交通省や業界団体が中心となって「けんせつ小町」という愛称で女性技術者を応援するキャンペーンを展開し、各社で現場環境の整備マニュアルが共有されています。具体的な整備策としては:


女性専用の仮設トイレ・更衣室の設置

ハラスメント防止措置の徹底と相談体制の整備

産休・育休取得と復職支援制度の充実


などが挙げられます。さらに、重筋作業の負担軽減策としてパワーアシストスーツや軽量化された工具の導入、ICTを活用した遠隔操作施工(離れた場所から重機等を操作する技術)も有望です。例えば、遠隔操作や機械化施工により現場の力仕事を機械が担えば、体力に自信がない人でも参加しやすくなります。このように技術と制度の両面から、多様な人材が働ける環境を構築する取り組みが進んでいます。


得られた効果

高齢の熟練者を継続雇用した企業では、技能伝承の円滑化現場品質の維持という効果が現れています。ベテランの知見を活かして若手を指導することで、若手だけの現場よりもミスが減り、安全面・技術面で安定する傾向が報告されています。また、女性技術者の採用・登用を進めた企業では、これまで人手不足だった職種に新たな人材源を確保できただけでなく、職場の雰囲気が明るくなりコミュニケーションが円滑になったという声もあります。男女が協働することで多角的な視点が生まれ、問題解決や顧客対応の質が向上したケースもあります。さらに、職場環境を改善し誰もが働きやすくなった結果、既存社員の満足度向上や離職率低下といった効果も確認されています。高齢者・女性が安心して働ける職場は、結局のところ全ての労働者にとって働きやすい職場でもあり、従業員全体の定着や採用力アップにつながる好循環が生まれています。


今後の展望

日本全体で高齢化が進行する中、建設業界でも70歳までの就業機会確保やさらなる高年齢者の技能活用が検討課題となっていくでしょう。国の方針としても定年引上げや高年齢者の雇用促進策が議論されており、将来的には生涯現役社会の一翼を建設業が担う可能性もあります。また女性に関しても、政府は女性就業比率向上を重要施策に掲げており、建設業でも今後女性比率20%超えを目指す動きが予想されます。機械の進化やDXの進展により、性別や年齢に関係なく活躍できる現場が今以上に実現しやすくなるでしょう。例えばAI搭載の建設ロボットや自動運転重機が普及すれば、筋力や経験の差をテクノロジーで補完できます。多様な人材が長く安心して働ける環境づくりは、人手不足解消のみならず創造性と持続力のある建設産業への進化につながるはずです。


外国人材の受け入れ

背景・課題

深刻な国内人材不足を補う現実的な選択肢として、外国人労働者の受け入れ拡大がここ数年で進んでいます。建設業では以前から技能実習制度によりベトナムや中国などから研修生を受け入れてきましたが、2019年には新たに「特定技能」の在留資格が創設され、一定の技能と日本語力を持つ外国人の労働参加が認められました。厚生労働省の調査によれば、建設業に従事する外国人労働者数は過去最高を記録中であり、特に人手不足が深刻な中小建設企業でその活用が顕著です。ただし外国人材の受け入れには、言葉や文化の壁、技能水準の差、受け入れる企業側のサポート体制整備といった課題も伴います。十分な準備なく雇用した場合、コミュニケーション不全や早期離職を招きかねません。即戦力として期待される外国人材をいかに戦力化し定着させるかが鍵となります。


現場の実例

首都圏のある建設会社では、2010年代から技能実習生を継続的に受け入れ、延べ数十名の外国人材を育成・雇用してきました。初期には文化や言語の違いから定着に苦労したものの、現在では社内に先輩外国人スタッフが増えたことで、新人外国人労働者が安心して相談できる環境が整っています。同社では日本人社員が簡単な現場日本語を教える勉強会を開いたり、ベトナム人スタッフがリーダーとなって母国語で作業手順をフォローしたりするなど、チームで支える体制を築きました。その結果、技能実習を修了後に新たな在留資格(特定技能)へ移行して引き続き就労するケースも多く、戦力として長期定着する外国人技術者が着実に育っています。また地方のある建設会社では、人材紹介会社と提携して海外から有資格の技能者を直接採用しました。来日した技能者には社宅を提供し、生活面のサポート担当を配置することで、日本での暮らしに早く慣れてもらう工夫をしました。その結果、数名の外国人技能者が地方の現場の中核となって働いており、地元では確保が難しい鉄筋工や型枠工の貴重な戦力になっています。このように、企業ごとに工夫を凝らしながら外国人材を受け入れ、現場の穴を埋めている実例が増えています。


活用技術・仕組み

外国人材活用を成功させるためには、制度とサポート体制の両面が重要です。まず制度面では、特定技能外国人を雇用する場合に必要となる「建設特定技能受入計画」の認定や、技能実習から特定技能への円滑なステップアップがあります。これらは国土交通省所管の一般財団法人(JAC:建設技能人材機構)が窓口となり、企業はJACへの加入や計画認定を経て外国人を受け入れます。制度を正しく踏めば外国人も日本人と同等の賃金・待遇で働ける仕組みが整っています。次に現場でのサポート体制では、以下のポイントが重要とされています。


日本語教育とコミュニケーション支援:業務上必要な日本語を教える研修や通訳スタッフ配置で意思疎通を円滑にする。

適切な労働条件の整備:労働時間や安全管理など日本人と同等の環境を整え、不公平感や不安を解消する。

技能向上の研修機会提供:資格取得支援や技能講習への参加を促し、キャリアアップの道筋を示す。

異文化理解の促進:日本人社員への異文化研修や交流イベントを実施し、お互いの文化を尊重しあう職場風土を醸成する。


例えば簡単な現場用語集を配布したり、多言語対応の安全マニュアルを用意する企業もあります。最近では翻訳アプリやチャットツールを活用してリアルタイムに意思疎通を図るといったデジタル技術による支援も行われています。さらに、外国人社員が働きやすいよう住居や生活相談、日本の社会保険手続きのサポートまで企業が包括的に支援する例も増えています。


得られた効果

適切な受け入れ体制の下で外国人材が活躍している現場では、慢性的な人手不足が大きく緩和されています。特に地方や中小企業では「外国人なくして現場が回らない」という声も聞かれるほど、彼らは不可欠な戦力となっています。即戦力として配置することで工期の遅延解消や社員の過重労働緩和にもつながり、結果的に日本人社員の負担軽減・定着率向上にも寄与しています。また、多国籍のチームが生まれることで職場に国際的な視点や活気が生まれるという副次的効果もあります。例えば安全管理や作業手順について母国のやり方を共有し合い、より良い方法を模索するなど、異なるバックグラウンドを持つ人材同士の協働がイノベーションをもたらす可能性も秘めています。さらに、技能実習から特定技能へ移行し長期雇用される外国人が増えれば、将来的には現場リーダーとして日本人を指導する立場になる人材も出てくるでしょう。そうなれば人材不足解消のみならず、建設現場の国際化・高度化にもつながると期待されています。


今後の展望

日本の労働人口減少が避けられない中、建設分野での外国人材活用は今後さらに重要性を増すでしょう。政府は特定技能制度の拡充や在留期間の延長など制度改善を進める可能性があり、受け入れ枠が広がればより多くの外国人労働者が国内インフラ整備を支えることになるかもしれません。同時に、日本語教育や資格取得支援など受け入れ支援策への公的助成も拡大が検討されています。企業側でも、単に人手を埋める存在としてではなく、戦略的人材として外国人を位置付け、将来の現場を担うリーダー候補として育成する視点が求められます。文化や国籍の壁を超え、誰もが働きやすい現場を構築することは、結果的に日本人含めた全従業員の職場環境向上にもつながります。グローバルな人材とともに働くことで、日本人若手にとっても刺激や学びが増え、業界全体の活性化に寄与するでしょう。多様性を受け入れた建設業界は、新しい発想と技術を取り入れる柔軟性を持ち、持続可能な発展への道を切り拓いていくはずです。


働き方改革による職場環境の改善

背景・課題

建設業界は昔から長時間労働休日の少なさが常態化しており、これが人材流出の一因となってきました。他産業と比べても労働時間が長く、プライベートの時間が取りにくいという声は根強く、若年層だけでなく中堅層の離職理由にも挙がるほどです。こうした状況を改善すべく、2024年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制(いわゆる「2024年問題」)が適用されました。法的にも長時間労働是正が避けられない転換点を迎え、業界全体で働き方改革が急務となっています。具体的な課題としては、「週休2日制の未整備」「工期に余裕がない過密工程」「残業に頼った人海戦術」などが挙げられ、これらを解消して労働者の健康確保とワークライフバランス改善を図る必要があります。また、給与水準や昇進機会への不満も働き方に影響するため、処遇改善も含めた総合的な改革が求められています。


現場の実例

ある土木工事会社では、法改正に先んじて週休二日制(完全週休2日)の実現に挑戦しました。当初は「人手が足りないのに休みなど取れない」との声もありましたが、工程管理の見直し作業の平準化によって対応しました。具体的には、工期に余裕を持たせるため発注者と協議して工程を再編成し、天候リスクなども考慮して計画的に休日を確保しました。またICTを活用して一部業務を効率化し、残業ゼロでも回る現場運営を模索しました。その結果、同社では現場スタッフの月平均残業時間を大幅に削減しつつ、土日休みの現場を実現しています。現場からは「家族と過ごす時間が増えた」「疲労が減って作業に集中できる」と好評で、離職する社員が激減しました。また別の建築会社では、給与制度を見直し若手でも技能や成果に応じて昇給できる仕組みに変更しました。能力や保有資格に見合った賃金が得られるようになったことで社員のモチベーションが向上し、「長く働いてキャリアを積みたい」という意識が根付いています。このように各社が試行錯誤する中で、労働環境改善による人材定着と生産性維持の両立に成功する事例が徐々に増えてきています。


活用技術・仕組み

働き方改革を推進する上で、有効な施策や仕組みがいくつかあります。国土交通省も「建設業働き方改革加速化プログラム」を掲げ、以下のようなポイントを業界に奨励しています。


週休2日制の導入: 週休二日を確保する企業はまだ一部ですが、公発注工事で計画的な週休2日を促す動きが強まっています。現場ごとにカレンダーを設定し、必ず週2日は休めるよう工程調整を行います。

適正な工期設定の推進: 不測の天候や資材遅延にも対応できる余裕ある工期を発注段階で設定することが重要です。無理な工期圧縮は結局、早出・残業や追加人員の投入を招き、長時間労働につながります。

技能や経験に見合った処遇の実現: 建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用して技能者の経験・資格を見える化し、それに応じた給与や役職を与える取り組みも進んでいます。技能に見合う適正な処遇は働き甲斐と定着率向上につながります。


こうした施策を支えるツールとして、勤怠管理システム工程管理ソフトの導入が進んでいます。クラウド上でリアルタイムに各現場の作業進捗を管理し、人員配置を最適化することで無駄な残業を減らす取り組みもあります。また、遠隔臨場システム(ウェアラブルカメラ等で現地確認をリモートで行う技術)により、複数現場を一人の監督者が管理できるようになれば、監督者不足の中でも休日確保が可能になります。さらに、労働者の健康管理にIoTデバイスを用いて異常を早期発見し休養を促すなど、働き過ぎ防止のテクノロジー活用も期待されています。


得られた効果

働き方改革に真剣に取り組んだ企業では、労働環境の改善に比例して人材の定着率が上がる傾向が明らかになっています。週休2日や残業削減を実現した結果、「この業界でもちゃんと休める」という認識が広まり、求人応募者が増えたという報告もあります。また社員の健康面・精神面の状態改善により、労災事故の減少や生産性向上といった効果も見られています。疲労が蓄積しないことで作業ミスが減り、結果的に品質も向上するという好循環が生まれています。給与制度改革によって能力主義・公平な評価が浸透すると、若手でも将来に希望を持って働けるようになり、離職防止に大きく貢献します。加えて、働き方改革に取り組む企業は世間から「ホワイト企業」と評価されやすく、企業イメージの向上学生の就職人気向上といった波及効果も期待できます。総じて、従来「きつい」と敬遠されがちだった建設現場のイメージ改善にもつながり、人材確保にプラスの影響を与えています。


今後の展望

2024年の残業規制完全施行はあくまでスタートであり、今後さらに建設業の働き方改革を深化させることが重要です。国は公共工事の発注において週休2日確保や平準化施工を評価する仕組みを拡充する方向で、民間工事にも波及していくでしょう。将来的には完全週休2日が業界の標準となり、夜間工事の削減一斉休暇取得(例えば年末年始や夏季休暇の長期連休化)など、より踏み込んだ取り組みも考えられます。またテレワークや在宅勤務が難しいと言われる建設業ですが、設計や施工管理の一部はリモートで行える可能性があり、例えば現場事務作業のリモート化やオンライン会議の定着などにより現場常駐時間を減らす工夫も進むかもしれません。働きやすさが向上すれば人材不足は徐々に緩和されるはずであり、業界としても「少ない人員で高い価値を生み出す」持続可能なモデルへの転換を図りつつあります。働き方改革を土台として、次に述べるICT・DXの活用と組み合わせることで、生産性向上と人材確保の両立をさらに推進していくことが期待されます。


ICT・DXによる省人化・業務効率化

背景・課題

建設業界は長らく生産性の伸び悩みが指摘され、慢性的な人手不足を乗り切るには一人当たりの生産性向上=業務効率化が不可欠です。他業界に比べIT化・自動化の導入が遅れていた面もあり、デジタルトランスフォーメーション(DX)による現場改革が急務となっています。国土交通省は2040年度までに建設現場の生産性を1.5倍に引き上げる目標を掲げ、2024年4月にはその具体策として「i-Construction 2.0」を策定しました。これは深刻化する人手不足に対応し、建設生産プロセス全体を抜本的にオートメーション化する取り組みです。DXの推進によって少人数でも安全かつ高品質な施工が可能となれば、結果的に労働環境も改善し、若年層や多様な人材の確保にもつながるという狙いがあります。


現場の実例

実際にICT・DXを先進的に導入した現場では、劇的な省人化と効率化の成果が報告されています。例えば国土交通省の事例では、従来10人で行っていた土工事をICT建機を導入することで6人で完了させた現場や、ドローンによる自動測量で作業時間を60%短縮したケースがあります。また、BIM/CIM(3次元の建築・土木情報モデル)を活用して設計と施工を一元管理したプロジェクトでは、設計変更時の手戻り作業を80%削減できたとの報告もあります。具体例として、福島県のある工場建設では建物のBIMモデルを基盤に、敷地の3次元測量データや重機のマシンコントロール技術を統合活用しました。その結果、現場作業の大幅な省力化と工期短縮が実現し、品質も安定したといいます。このように、デジタル技術をフル活用した現場では少人数でも従来以上の成果を上げており、「人がいないからできない」を「人が少なくてもできる」に変える好例となっています。


活用技術・仕組み

ICT・DXによる省人化のため、様々な技術・仕組みが投入されています。主なものを挙げると:


ICT建機・マシンコントロール: GPSやセンサーで制御された油圧ショベルやブルドーザが、自動で造成や掘削を行います。オペレーターの熟練度に依存せず高精度作業が可能となり、重機オペレーター不足を補います。

ドローン測量・3Dスキャナ: 人が何日もかけて行っていた測量を、ドローンやレーザースキャナで短時間に実施できます。地形データを自動取得し、即座に3Dモデル化して施工計画に反映できます。

BIM/CIMとデジタルツイン: 建築・土木物件のデジタルモデル(BIM/CIM)を作成し、施工中も常にそれを更新して実物と同期させることで、進捗や出来高をリアルタイムに把握します。施工の衝突チェックや工程シミュレーションもデジタル上で行い、無駄やミスを事前に排除できます。

クラウド型現場管理: 図面や工程表、日報などをクラウド上で共有し、関係者がタブレットやPCからいつでも閲覧・更新できるようにします。これにより打合せや書類作成の手間が減り、現場代理人一人当たりの管理可能範囲が広がります。

遠隔監視・IoT: 作業現場にカメラやセンサーを設置し、オフィスから遠隔で安全状況や進捗を確認できます。ベテラン監督者が複数現場をリモート監督したり、危険エリアに人を立ち入らせず機械でデータ収集したりできます。

AI活用: AIによる画像解析で出来形を自動検査したり、過去の工事データから最適な工程計画を提案したりといった試みも始まっています。単純反復作業や判断業務の一部をAIが担うことで、人間はより創造的な業務に注力できます。


これらの技術導入を後押しするため、国や自治体は補助金制度を設けており、ICT機器導入費用の最大2/3を補助する支援策も展開されています。中小企業でも手が届くよう資金面のハードルを下げ、業界全体のDXを底上げしようという動きです。


得られた効果

ICT・DXの活用によって得られる効果は多岐にわたりますが、共通しているのは生産性の飛躍的向上人的負担の軽減です。省力化によって必要人員の削減が可能となり、人手不足でも工事を完遂できる確度が高まります。また、機械・デジタル技術はヒューマンエラーを減らし、品質の均一化・向上にも寄与します。たとえば自動制御の重機ならミスなく施工でき、測量や出来形確認もデータで厳密に行えるため、手戻り工事の削減クレーム防止につながります。安全面でも、危険作業を遠隔実施したり重筋作業を機械化したりすることで労働災害リスクの低減が期待できます。効果は現場だけに留まりません。クラウド管理で事務作業が効率化すれば、残業削減や休日増加にも直結しますし、DXによるスマートな働き方は業界全体のイメージアップにもつながります。「泥臭い現場」から「スマート建設現場」へと変貌を遂げることで、若い世代やIT人材が興味を持ち、人材流入促進という副次的効果も生まれています。


今後の展望

今後さらにDXが進めば、2040年頃には今より格段に自動化・省人化が進んだ工事現場が実現しているでしょう。i-Construction 2.0が目指すように、データ連携と施工オペレーションがフルオートメーション化されれば、極端な話、現場にほとんど人がいなくても遠隔から工事が進む未来もあり得ます。加えて、ロボット技術の進化も見逃せません。鉄筋結束ロボットや自動施工ロボットなど、現在は一部試験導入段階ですが、実用化が進めば労働集約的な作業を機械が代行できるようになります。そうなれば、もはや「人手不足」は生産にブレーキをかける絶対的要因ではなくなるでしょう。一方で、DX推進には人材のデジタルスキル向上も不可欠です。新旧世代問わず社員がICTを使いこなせるよう教育訓練を充実させることも重要な課題となります。政府や業界団体は「スマート建設人材」の育成計画を掲げ始めており、DXを扱える人材自体を増やすことで技術導入を加速させる考えです。つまり、技術進化と人材育成の両輪で未来の現場を創ることが求められています。ICT・DXは人手不足解決の切り札であり、今後の建設業界の競争力を左右する鍵となるでしょう。


技能継承と教育研修の最適化

背景・課題

人手不足と高齢化が同時進行する中で、技能継承の断絶が大きなリスクとなっています。長年培われた熟練技能がベテランの引退と共に失われ、結果として品質低下や事故リスクが高まる懸念があります。特に職人技が求められる型枠工事や左官、配管などでこの傾向が顕著です。一方、従来の徒弟制的OJTには限界が来ています。新人の数自体が減っている上、現場も忙しくマンツーマンで手取り足取り教える余裕がないケースが多いのです。また中小企業では体系的な研修制度がないことも多く、「教えるノウハウの不足」も指摘されています。人材育成を属人化に頼らず効率よく行うにはどうすべきか、業界全体で模索が続いています。


現場の実例

あるインフラ系工事会社では、技能継承と新人研修を体系化するために社内研修センターを設立しました。ベテラン社員を研修専任担当に据え、現場から一定期間離して若手教育にあたらせることで、計画的な技能伝承を進めています。具体的には、入社後半年間は研修センターで基礎的な測量や図面の読み方、安全作業手順などをみっちり教育し、その後現場配属する仕組みです。この間、VR教材やシミュレーターも活用して重機操作や高所作業を仮想体験させ、安全意識と基本動作を叩き込んでいます。その結果、新人が現場に出てからの戦力化スピードが飛躍的に向上し、現場の負担も軽減されました。また別の企業では、引退間近の名人技能者の技能を動画で記録し、それを教材化する取り組みを行いました。熟練工の手元を撮影した高精細動画や作業手順の解説音声を残すことで、後進がいつでも学べる環境を作っています。実際に動画教材を見て勉強した若手が「実物を見る機会が少ないレア技能を理解できた」と話すなど、経験知の見える化は徐々に効果を上げています。さらに、業界横断の取り組みとして建設キャリアアップシステム(CCUS)が稼働していますが、これを新人教育とリンクさせ、自社の若手にキャリアプランを示す企業もあります。例えば、「3年でCCUSのレベル2取得、5年でレベル3」といった目標設定を行い、社員の成長ロードマップを明確にしています。


活用技術・仕組み

技能継承・教育研修の最適化には、計画的かつ効率的な教育システムの構築が鍵です。近年、建設業界向けの研修支援サービスやeラーニングプラットフォームが充実してきており、それらを活用する企業も増えています。主な仕組みとして:


オンライン研修・eラーニング: パソコンやスマホで学べる教材を用意し、時間や場所の制約なく知識習得が可能にします。動画で現場手順を学んだり、小テストで理解度を測定したりできます。特に中小企業では現場を止めずに教育できる手段として有効です。

VR/シミュレーション教育: 高所作業、重機操作、災害対応など、危険やコストが伴う実習はVRで代替し、安全に繰り返し練習できます。新人が現場で即戦力となるための実践的スキルを仮想空間で身につけることができます。

メンター制度: 若手社員に1対1で先輩指導員をつける制度です。ただし従来と違うのは、指導員に教えるための研修キット(教科書や進捗チェックリスト)を渡し、教え方も標準化する点です。これにより指導内容のばらつきを減らし、一定水準の技能習得を保証します。

資格取得支援とキャリアパス: 各種技能講習や施工管理技士など資格取得を会社が支援し、取得者には報奨金や昇進機会を与える仕組みを整えます。目に見える目標ができることで社員のモチベーションが上がり、自発的な学習を促します。加えて、CCUSを活用して社員一人ひとりの経験と資格を見える化し、人事評価や配置に反映することで、公平で納得感のあるキャリアパスを示します。


国の支援としては、前述のように厚生労働省と国交省が連携し、業界団体による職業訓練実施に補助金を出すなどの策があります。また、建設業振興基金などが作成した共通教材(安全教育動画や技能テキスト)も公開されており、そうしたオープンな資源を活用することも効果的です。


得られた効果

教育研修を最適化した企業では、新人の定着率向上戦力化の早期化という明確な成果が出ています。体系だった研修を受けた新人は現場配属後も落ち着いて業務に入れ、指導する側の負担も軽減されました。結果として新人が「仕事についていけない」と辞めてしまうケースが減り、離職率の改善につながっています。また、継続的にスキルアップできる環境があることで社員のモチベーションアップや社内における技能尊重の風土醸成といった効果もあります。動画教材等で匠の技を学んだ若手が実際の作業で成果を出すなど、見える化した知識が技能伝承に役立つ例も出てきました。さらにCCUSの活用により技能者の経験値が数値化・可視化されることで、適切な人材配置処遇改善が進み、「頑張れば評価される」という意識が社内に根付いています。これは企業へのロイヤリティ向上にも直結し、結果として人材流出の防止、ひいては将来の人材不足リスク低減に寄与しています。


今後の展望

建設業の教育・技能継承は、今まさに変革期を迎えています。今後は業界全体で人材育成ノウハウを共有し合い、企業の枠を超えたオール建設業で若手を育てていく仕組みも求められるでしょう。たとえば、地域の複数企業が合同で技能研修センターを運営したり、大手ゼネコンが協力会社向けに教育プログラムを提供したりする動きも出てきています。またDX時代の新しい技能(ICT活用スキル等)も教育メニューに取り入れ、デジタル世代の職人を育てる必要があります。そのために、ゲーム感覚で学べる教材や、SNSを使った若手同士の情報交換コミュニティなど、若い感性に響く教育手法も取り入れていくでしょう。国も「人づくり革命」として建設人材の育成予算を拡充する可能性があり、企業側はそれらの制度もフル活用して人材投資を行うことが重要です。人材育成は短期的にはコストですが、長期的に見れば未来への確実な投資です。技能継承と教育研修を最適化し続けることで、業界全体の技術力底上げと持続的発展が期待できます。


現場革新の未来:LRTKによる簡易測量が拓く可能性

本記事で紹介してきたように、人材不足を乗り越えるには人材面の戦略と技術面の革新を両輪で進めることが重要です。最後に、その融合とも言える最新技術導入の例として、簡易測量システム「LRTK」に触れてみたいと思います。LRTKとは、スマートフォンやタブレットに高精度GNSS受信機を組み合わせることで、誰でも手軽にセンチメートル級の測量を行えるようにした革新的なツールです。専用の小型受信機を端末に装着しボタンを押すだけで、緯度・経度・高さといった測位データがリアルタイムに取得でき、クラウド上で即座に共有されます。従来、測量といえば専門の測量士がトランシットやGPS装置を用いて行う手間のかかる作業でした。しかしLRTKの登場によって、現場の誰もがポケットからスマホを取り出してすぐ測量できる時代が訪れようとしています。


この技術導入が人材不足解消にどう寄与するか、ポイントを整理してみます。


まず、若手や未経験者でも扱いやすいことが挙げられます。複雑な計器操作や高度な計算が不要で、スマホアプリの画面指示に従えば測点の記録から図面への反映まで自動で行われます。デジタルネイティブ世代の若者にとって親しみやすいUIであるため、教育コストも低く、早期に戦力化できます。これにより「測量は専門職でないとできない」という垣根が崩れ、従来は測量経験のなかった若手・女性社員も積極的に現場計測業務に参加できるようになります。実際、LRTKを1人1台配備した現場では、若手スタッフ自らが丁張りの位置出しを行うなど、業務の幅が広がったという声もあります。


次に、省力化による余裕創出です。LRTKで効率化できる測量作業は多岐にわたり、例えば墨出し(位置出し)や出来形測定などもスピーディに行えます。ある現場では、2人1組で半日かかっていた出来形測定を、LRTKを使ったところ1人で1時間程度で完了できたとの報告があります。これほどの時間短縮・人員削減が実現すれば、限られた人員を他の重要作業に振り向けることが可能となり、全体の生産性向上につながります。結果として現場全体の残業削減や休日確保にも寄与し、働き方改革の後押しともなります。


さらに、技能補完と継承の観点でもメリットがあります。難しい測量計算や高度な熟練を要する作業をシステムが肩代わりしてくれるため、ベテラン測量士の引退による影響を緩和できます。新人でも機器に頼って高精度な成果を出せるので、熟練者の「勘と経験」に頼っていた領域をテクノロジーで補完できるのです。また、LRTKは測位データを全てクラウドに蓄積し、ベテランがチェック・指導できる環境も整っています。離れた場所にいる上司がクラウド上の測量結果を確認し、リアルタイムでアドバイスするといった遠隔指導も可能になります。これは技能継承の新しい形と言えるでしょう。


最後に、多様な人材の参加促進です。LRTKは重量わずか数百グラムの小型機器であるため、重い測量機材を担ぐ必要がなく、体力面でハンデのある人でも扱えます。女性や高齢者でも無理なく操作でき、現場作業の物理的・心理的ハードルを下げる効果があります。「機械が難しい計算は補助してくれるから、自分はフィールドワークに集中すればいい」という状況になれば、文系出身者やキャリア転向者でも現場で活躍しやすくなります。つまり、テクノロジーの力で人材プールを拡大できるのです。


以上のように、スマホ+高精度GNSSの簡易測量システムLRTKは、人材不足解決に向けた現場革新の象徴とも言える存在です。働き手の裾野を広げ、業務効率を高め、技能伝承を支援するその効果は、まさに本記事で述べてきた「人材戦略」の集大成とも重なります。建設業界は今、大きな転換期にありますが、人を育て、人を活かし、人を補う技術を導入することで未来を切り拓いていくことができるでしょう。若手からベテラン、日本人も外国人も、男性も女性も、多様な人々が協働し最先端技術を駆使する——そんな新時代の土木・建設業界が実現すれば、人手不足という課題もきっと克服できるはずです。豊かな発想と最新のテクノロジーを武器に、持続可能な建設業界の未来を皆で創造していきましょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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