災害復旧における出来形管理の重要性
土木工事における出来形管理とは、完成した構造物が設計図通りの形状・寸法で施工されているかを確認する品質管理プロセスです。道路や橋梁、ダムなどの土木構造物では、施工後に測量記録や写真をもとに寸法をチェックし、設計値との誤差が許容範囲内か検証します。出来形管理は安全性・耐久性の保証に直結し、公共工事では厳格な検査対象となる重要な工程です。
災害復旧の現場でも出来形管理の重要性は同様です。豪雨や地震で崩壊した道路・法面(のりめん)などを復旧する際、被災前の状態にどれだけ正確に戻せるかが安全な復旧の鍵を握ります。被害箇所の現況を正確に測量し 、復旧工事で設計形状に適合させることが必要です。例えば崩壊した斜面を再構築する場合、設計通りの勾配や高さになっているか出来形を確認しなければ、再度の崩落リスクが残るかもしれません。また、復旧工事後には行政に提出する出来形図書や報告書の作成が求められます。災害復旧測量の初動段階で正確なデータを取得し、復旧過程で適切な出来形管理を行うことが早期復旧と安全確保の両面で極めて重要なのです。
従来の災害測量の課題:時間・人手・安全性
しかし、従来の災害現場における測量手法には多くの課題がありました。一般的にトータルステーションやレベルといった光学測量機器を用いる場合、高精度な測定が可能な反面、据え付けや操作に手間がかかります。測量には通常2人以上の人員が必要で、1人が機器を操作しもう1人がスタッフ(標尺)を持って目標点に立つなど、人手と協働作業が前提でした。大規模な被災現場では測点も多数にのぼるため、ポイントごとに丁寧に測る従来法では莫大な時間がかかり、広範囲の被害状況を短時間でカバーするのは困難でした。被災箇所が点在するケースでは、限られた測量スタッフでは全現場を回りきれず対応が後手に回るリスクもあります。
時間と人手の問題に加え、災害測量では安全性の課題も見逃せません。地盤が緩んだ斜面や崩落現場に測量班が立ち入るのは二次災害の危険を伴います。重い機材を担いで足場の悪い場所へ向かうだけでも負担であり、豪雨後の土砂崩れ現場などでは追加の崩壊や転落のリスクと隣り合わせでした。また、大災害では停電や道路寸断で測量機器の電源確保・輸送が難しかったり、基準点となる既知の測量標が流出してしまうこともあります。従来のRTK測量機器は据え付けに時間がかかり、操作も専門的で、非常時に誰もがすぐ使えるとは限らないという制約もありました。このように「時間がかかる」「人員が必要」「危険が伴う」といった従来の災害復旧測量の課題を解決するためには、新しい技術による抜本的な効率化と安全確保が求められていました。
スマホ測量LRTKが現場にもたらす機動力
こうした課題を解消するソリューションが、スマホ測量に対応した「LRTK」です。LRTK(エルアールティーケー)はiPhoneやiPadに装着して使用する小型のRTK-GNSS受信機で、スマートフォンをセンチメートル級の高精度測位が可能な測量機器に変える革新的デバイスです。重さは約165g、厚さわずか1cmほどのコンパクト設計で、ポケットに入れて持ち運べる手軽さながら、測位精度は水平±1~2cm・垂直±3cmと従来の測量機にも匹敵します。スマホの背面に装着して電源を入れ、専用アプリを起動すれば数十秒で初期化が完了し、高精度GNSSによる測位が即座に始まります。専門的な設定は一切不要で、現場に着いてすぐに測量を開始できる機動力と即時性は、まさに時間との勝負である災害対応において大きな強みです。
LRTKはまた、災害現場で必要とされる自立性にも優れています。日本の準天頂衛星みちびきが提供するセンチメータ級測位補強サービス「CLAS」に対応しており、携帯電話の電波が届かない山間部や通信インフラがダウンした被災地でも、衛星から直接補正情報を受信してリアルタイムにcm精度の測位が可能です。つまり、基地局やネット接続がなくても単独で高精度GNSS測位を継続できるため、大規模災害時でも確実に位置を把握できます。内蔵バッテリーで約6時間稼働し、モバイルバッテリーからUSB給電しながらの運用も可能なので、長時間の復旧作業でも安心です。従来の重い測量機材と異なり片手で持ち歩けるスマホ+LRTKは、瓦礫の山や急斜面を踏破する必要がある災害現場でも運用しやすく、必要な場所へ素早く到達して測量できる圧倒的なフットワークをもたらします。
崩壊斜面の体積算出や道路寸断の出来形把握が即座に可能に
LRTKスマホ測量の威力は、従来は時間と手間のかかった測量成果を即座に得られる点にあります。例えば大雨で山腹が崩壊した現場では、被災直後に斜面崩落の規模(体積)を迅速に把握することが復旧計画立案の第一歩です。LRTKを装着したスマホで現場を歩きながら3D点群スキャンを実施すれば、わずか数分で崩壊斜面の詳細な立体モデルが取得できます。iPhoneのLiDARセンサーが捉えた周囲地形の点群データに、LRTKの高精度な位置座標がリアルタイムで付与されるため、スキャンによって得られる点群は絶対座標系で位置合わせされた高精度なものです。こうして生成した3D点群モデルに対して、その場で体積計算を行うことも可能です。崩落土砂の点群から土砂の容積を算出すれば、搬出すべき土量を即座に見積もることができます。従来は測量後にオフィスで図面化し解析していた工程が、スマホ上でリアルタイムに完結するため、初動対応のスピードは飛躍的に 向上します。
同様に、地震や土砂流出で道路が寸断された箇所でも、スマホ測量により現場の出来形を即座に記録・把握できます。寸断された道路の断面形状や欠損部分の寸法を点群データから正確に計測できるため、仮設道路の計画や復旧工法の検討に必要な情報をすぐ得ることができます。必要に応じて被災前の設計データや地形図と現況の点群を重ね合わせれば、どの程度のズレや欠損があるかを詳細に特定することも可能です。例えば崩落前の斜面設計ラインと現在の地形を比較して差分体積を計算すれば、復旧のために埋め戻すべき土量や削り取るべき土量を即座に算出できます。スマホ測量によって、従来は現地で数点を抽出して推定していた出来形計測が、現場全体を網羅する高精度データに基づき即時に行えるのです。
測ったその場で共有:クラウドで変わる災害対応スピード
LRTKシステムはクラウド共有機能を備えており、現場で取得したデータをその場で関係者と共有できます。測位点・写真・点群などほぼ全ての種類の測量データは、専用アプリからワンタップでクラウ ドにアップロード可能です。アップロード後に発行される共有リンクを関係者に伝えれば、離れたオフィスのメンバーでも即座に現地の情報を閲覧できます。例えば、被災現場で撮影した高精度な測位写真(位置と方位が記録された写真)をクラウド経由で共有すれば、本部にいながら被害状況を空間的に把握できます。写真には撮影場所の緯度経度とカメラの向きがタグ付けされているため、「どの地点をどの方向から撮影したのか」が一目で分かり、後から見返す際の混乱も防げます。テキストメモやタイトルを添えてアップロードすれば、写真が自動的に地図上に整理されるため、担当者間で状況認識を共有しやすくなります。
クラウド上にアップした点群データを活用すれば、遠隔地のスタッフがオフィスから3次元モデルを見ながら対策会議を行うことも可能です。2次元の図面や写真だけでは掴みにくい被害の全貌も、3D点群なら直感的に理解できます。実際にLRTK導入現場では、現地で取得した点群や測量データをリアルタイムで本社と共有し、それをもとに設計変更の協議や工事工程の調整を即断即決で進める運用も実現しています。これにより災害対応における意思決定のスピードと的確さが飛躍的に向上します。クラウド共有は単なる便利機能にとどまらず、災害対応フロー全体を変革しうる力を持っているのです。
一人でも安全・迅速に:LRTKによる省人化と記録性
LRTKスマホ測量最大のメリットの一つは、一人で安全かつ迅速に作業を完結できる点です。スマホとLRTKさえあれば大型の三脚や重機材、補助スタッフを必要とせず、一人で測量から記録まで一貫して行えます。例えば専用の伸縮式モノポッド(一脚)にスマホを取り付ければ、従来は2人がかりだった高さの測定も、一人で簡単に狙った地点の標高を測ることができます。アプリ内でモノポッドの長さ(機器高)を設定すれば自動でオフセット補正がかかるため、複雑な計算も不要です。危険な現場に複数人が立ち入る必要がなくなる分、安全性も向上します。万一足場が悪い場所で転倒や事故が起きた場合でも、一人であれば被害は最小限ですみますし、そもそも離れた安全な位置から測量できるケースも増えます。LRTKにはカメラで離れた対象物の位置を測る被写体測位機能もあり、近づけない場所の座標を遠隔から取得することもできるため、測定者が危険区域に踏み込む必要が減ります。
また、LRTKによるスマホ測量は測定結果の記録性にも優れています。手作業で数値を書き留める従来手法と異なり、測ったポイントの座標値や写真データはすべてデジタルに自動保存されます。人の手によるメモ取りが不要なためヒューマンエラーが大幅に低減し、後でデータを見返したときに記録漏れや読み違いが起こる心配もありません。取得した高密度の点群データは現場全体を網羅するデジタル記録となり、見落としていた微細な変状も解析によって発見できます。測量データや出来形写真がクラウド上に蓄積されていれば、災害対応の検証や復旧工事の成果確認にも役立ちます。例えば復旧前後の点群を比較してどれほど地形が復元されたかを定量的に示したり、出来形管理資料として写真と測点データをそのまま活用したりできるのです。一人で効率良く安全に測りつつ、同時に緻密な記録を残せることが、LRTKスマホ測量による省人化と品質確保の両立なのです。
LRTKによる簡単な測量フローと導入のすすめ(自然な紹介)
最後に、LRTKスマホ測量を使った災害現場での簡単な測量フローを追ってみましょう。例えば土砂崩れが発生した現場では、担当者は急ぎ安全装備とともにスマホ 測量セット(iPhone+LRTK、一脚など)を持って出動します。現場到着後、スマホの背面にLRTKデバイスを装着し電源を入れて専用アプリを起動すると、自動的に衛星捕捉と初期化が始まり、約30秒ほどで「Fix」状態(RTKによる高精度測位の確立)になります。もし山奥で通信圏外でも、みちびきのCLAS信号を直接受信しているため問題ありません。煩雑な設定もなくボタン操作一つで準備完了です。これでスマホがRTK測量対応の高精度GNSS機器となり、即座に測量を開始できます。
次に、崩壊した斜面全体を把握するため周囲を歩きながら3Dスキャンを行います。iPhoneのLiDARセンサーを用いて斜面の上部から下部までゆっくり歩き、崩落土砂の山を取り囲むように移動すると、アプリ上に見る見るうちに現場の点群データが生成されていきます。数分ほどで被災現場の地形全体を反映した精密な3D点群モデルが取得できました。従来なら測量班が危険を冒して斜面上と下から何十点も観測し、図面化・土量計算に何日もかけていたであろう作業が、ほんの短時間で一人のスマホ操作だけで完了したわけです。
続いて要所ごとの状況を詳細に記録するため、高精度の測位写真を撮影します。崩落の起点となった斜面頂部や、流出土砂が堆積した箇所、損壊した道路の寸断部など、重要ポイントごとに写真を撮っていきます。各写真ファイルには撮影位置の正確な座標とカメラの向きが自動的にタグ付けされるため、「どの場所からどちらの方向を撮影した写真か」が後からでも一目瞭然です。アプリ上で写真に「○○地区土砂災害_A地点_東方向」などとタイトルやメモを付けて整理しておけば、クラウドにアップロードした際に関係者ともスムーズに情報共有できます。併せて、現地の基準となる測量ポイントも数点観測しておきます。例えば崩壊土砂の末端部の座標や、被災家屋があった場所の高さ(標高)などを測定して記録しておけば、後続の復旧設計に活用できるでしょう。これら単点の測定も、スマホを持って該当箇所でボタンを押すだけで瞬時に完了します。
ひと通り現場の測量が終わったら、集めたデータをクラウド経由で関係者と共有します。仮に現場が通信圏外でも心配ありません。測位点や写真・点群データは一旦スマホ内にオフライン保存されるため、車で市街地に戻り次第クラウドにアップロードすればOKです(もし現地でネット接続できる環境があれば即座にアップロード可能です)。クラウド上の共有リンクを通じ、事務所の技術者や上司もすぐに3Dモデルや写真を確認できます。その場にいなくても臨場感のある立体情報で被害状況を把握できるので、復旧方針の協議も迅速に行えます。このようにスマホ測量LRTKを導入すれば、災害直後の危険な状況でも最小限の人員で正確なデータ収集が可能となり、復旧計画の立案から工事管理まで一連の流れを劇的に効率化できます。
実際、福井県福井市ではこのLRTK Phoneを災害復旧の現場にいち早く導入し、従来手法と比べて復旧作業のスピードアップとコスト低減に成功したと[報じられています](https://news.yahoo.co.jp/articles/363a7f5dd8ee7b325503aa13d28fce0c600d67f9)。遠巻きに短時間で危険斜面の点群計測を行い、人海戦術では難しかった迅速な全容把握を可能にしたことが大きな要因です。こうした先進自治体の成果もあり、国の防災分野でもスマホ測量技術への注目が高まっています。総務省や国土交通省でも災害対応へのICT活用事例としてLRTKの効果が認められ始めており、自治体のDX計画に高精度GNSSを活用したスマホ測量体制の構築が盛り込まれるケースも出てきました。建設現場でも、大手ゼネコンや測量会社が出来形管理や用地測量にLRTKを活用し始めています。「一人で杭打ちまでこなせて人手不足対策になる」「新人でもすぐ使いこなせる」といった高評価の声も上がっており、現場作業の新たなスタンダードになりつつあります。
このように土木出来形管理の世界に現れたスマホ+GNSSという革新は、災害復旧のみならず日常の施工管理にも大きな恩恵をもたらしています。広い造成現場での盛土・切土量管理、橋梁工事での配筋位置チェック、出来形検査でのARによる設計モデルとの照合など、LRTKスマホ測量の活用範囲は多岐にわたります。省力化・高速化と高精度を両立するこの「新常識」の登場により、従来の常識を覆す施工DXが現場で実証され始めました。今後ますます多くの現場でLRTKが活躍し、限られた人員でも高品質な施工と早期の災害復旧を実現できる時代が訪れるでしょう。あなたの現場でも、スマートフォンを使った次世代の出来形管理をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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