公共工事の現場では、施工物が設計どおりに仕上がっているか確認する出来形管理が品質保証の要となります。しかし従来の出来形管理には多大な手間がかかる上、カバーできる範囲にも限界がありました。本記事では、国交省の新しい出来形管理要領にも対応するスマート施工技術LRTKに注目し、出来形管理の基礎から高精度測量への活用方法、一人で効率良く測量を行う手順までを詳しく解説します。
施工現場で完成した構造物が設計どおりに出来上がっているか確認し、品質を保証するプロセスを「出来形管理」と呼びます:contentReference[oaicite:0]{index=0}。平たく言えば、出来形管理とは発注者が定めた規格値に対 して仕上がりが適合しているかを実測して確認する品質保証の工程です。出来形管理は工程管理・品質管理と並ぶ施工管理の重要な柱であり、契約規範に照らして施工精度をチェックする役割を担います:contentReference[oaicite:1]{index=1}。一度施工してしまうと後戻りが難しい部分も多いため、施工途中でしか測れない箇所は確実に計測・記録し、特に埋設部など完成後に見えなくなる部分も写真や測量データで証拠を残して検証できるようにします:contentReference[oaicite:2]{index=2}。こうした出来形管理は公共工事において細かな基準の下で厳格に行われてきましたが、従来の方法には人手と時間がかかり、測定点が限られるため全体把握が難しいといった課題も指摘されています:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
国交省の出来形管理要領とICT施工の推進
日本の建設業界でも近年、測量や施工管理へのICT・3次元技術の活用が急速に進んでいます。国土交通省は2016年頃から*i-Construction*と呼ばれる政策を推進し、ドローン計測やマシンガイダンスなどデジタル技術の導入を強力に後押ししてきました:contentReference[oaicite:4]{index=4}。その一環として、従来は墨尺やレベルで行っていた出来形管理にも3次元計測技術を取り入れる動きが進み、国交省は「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」を策定して現場へ適用を始めています:contentReference[oaicite:5]{index=5}:contentReference[oaicite:6]{index=6}。例えば令和7年(2025年)3月には、土工や舗装、法面、河川浚渫、擁壁など工種別に「3次元計測技術を用いた出来形管理の監督・検査要領(案)」が一斉に改訂され、デジタル計測の活用範囲が大幅に拡大しました:contentReference[oaicite:7]{index=7}:contentReference[oaicite:8]{index=8}。これらの要領ではRTK-GNSSや地上型・UAVレーザースキャナー、写真測量などによる高精度測定を用いて出来形を面的に把握し、設計データとの比較で出来形の適否を判断する手順が示されています。実際、取得した3次元点群データを設計モデルと重ねて差分を自動解析し、色分けしたヒートマップで現況を可視化するといった高度な検査も可能になりました:contentReference[oaicite:9]{index=9}。このようにICTと3次元データを出来形管理に活用することで、限られた人員でも品質を確保しやすくなり、施工管理の効率と精度が飛躍的に向上すると期待されています:contentReference[oaicite:10]{index=10}。
GNSSとRTK測位の基礎知識
出来形管理に3次元データを活用する上で、基盤となるのがGNSS測位技術です。GNSSとは人工衛星を利用して地球上の位置を測る全球測位衛星システムの総称で、米国GPSやロシアGLONASS、日本のみちびき(QZSS)など複数の衛星群が存在します。通常のGNSS測位では、衛星信号のわずかな遅延誤差などにより数m程度の測位誤差が生じます。しかし、建設現場で求められる出来形管理には数センチ以下の精度が必要なため、その誤差を打ち消す補正技術が不可欠です。そこで活用されているのがRTK測位(Real Time Kinematic、リアルタイムキネマティック)と呼ばれる高精度測位法です。RTKでは既知の位置に置いた基準局と移動局の間で誤差要因をリアルタイムに補正し、高精度な相対位置を算出します。その結果、平面・高さとも数センチの誤差範囲に収まる測位が可能となり、ほぼ即時に高精度座標を得ることができます。
RTKの運用には基準局から移動局へのデータ通信が必要ですが、近年は携帯通信網を介して全国の電子基準点網から補正情報を配信するネットワーク型RTK(VRS方式など)が普及し、現場で手軽にセンチメートル級測位が行える環境が整っています。さらに日本では、準天頂衛星「みちびき」が提供するセンチメートル級補強サービス(CLAS)を利用すれば、インターネット接続がない山間部などでも衛星からの信号受信のみでcm級精度を確保することも可能です:contentReference[oaicite:11]{index=11}。このようにRTK-GNSSを用いれば、基準点をあらかじめ設置したり測量後に座標変換したりする手間を省き、現場で即座に全球座標系の高精度測量結果を得られます。出来形管理でも、設計図面の座標系に合致した測定値をその場で取得できるため、データ処理の効率と精度が飛躍的に向上します。
スマート施工の進展と“一人測量”の時代
上記のようなICT・高精度測位技術の進展により、建設現場の作業スタイルも大きく変わろうとしています。従来、測量作業はトータルステーション(TS)やレベルを使い、2人1組で行うのが一般的でしたが、現在ではドローンやモバイル端末による3次元測量が主流となりつつあります:contentReference[oaicite:12]{index=12}。例えば、数ヘクタール規模の造成地測量にTSで3日かかっていた作業が、ドローン写真測量では半日ほどで完了したという報告もあります:contentReference[oaicite:13]{index=13}。熟練測量技術者の不足や働き方改革への対応が求められる中、少人数で 効率的に計測できる“一人測量”は重要なキーワードとなっています。実際、近年は1人で操作できるロボティックTSや自動追尾ドローンなども登場し、現場の省力化が進んでいます。そして今、スマートフォンとGNSSを組み合わせた手軽な高精度測量ツールが新たな潮流となりつつあります。その代表例が次に紹介するLRTKです。
LRTKとは:スマホで実現する高精度測量
近年注目を集めているLRTK(エルアールティーケー)は、スマートフォンを用いた革新的な高精度測量システムです。東京工業大学発のスタートアップであるレフィクシア社が開発したポケットサイズの万能測量デバイスで、iPhone/iPadに超小型のRTK-GNSS受信機を装着するだけでセンチメートル級精度の測位や3D点群計測、墨出し(位置出し)、さらにはARによる出来形検査まで行えます:contentReference[oaicite:14]{index=14}。
:contentReference[oaicite:15]{index=15} *LRTK Phoneデバイスを装着したiPhone。これ一つで高精度測量が可能になります。現場で気軽に持ち歩けるサイズ感も特長です*
取得したデータは専用クラウドに即時アップロード・共有でき、いつでもどこでも1人1台で高精度な出来形管理が行える環境を実現します:contentReference[oaicite:16]{index=16}。従来のGNSS測量機や3Dスキャナーに比べ導入ハードルが低く(価格もリーズナブルに設定されているため)、現場の技術者全員がポケットに入れて持ち歩ける時代が目前に来ています:contentReference[oaicite:17]{index=17}:contentReference[oaicite:18]{index=18}。
LRTKデバイス本体は重量約125g・厚さ13mmほどの薄型軽量設計でバッテリーも内蔵しており:contentReference[oaicite:19]{index=19}、煩雑な配線や大掛かりな機器を必要としません。専用スマホケースにワンタッチで受信機を着脱するシンプルな構成で、オプションの一脚ポールを利用すればスマホと受信機を分離して据え置き型のGNSS測量機のように使うこともできます:contentReference[oaicite:20]{index=20}。小型ながら測位精度も非常に高く、単独測位でも約1~2cm程度の誤差に収まり、短時間データを平均化すれば水平方向で1cm未満の精度まで高めることも可能です:contentReference[oaicite:21]{index=21}。LRTKアプリ上では測位した点の緯度・経度・高さがリアルタイムで表示され、平面直角座標系への換算やジオイド高の自動計算なども行われます:contentReference[oaicite:22]{index=22}。例えば作業員がLRTKを装着したスマホ片手に現場を歩き回り、その場で周囲を3Dスキャンして即座に設計データと比較し出来形を確認するといった使い方も可能です:contentReference[oaicite:23]{index=23}。点群計測だけでなく墨出しやAR機能にも対応しており、設計モデルをスマホ画面上に重ねて出来形とのズレを視覚的にチェックすることができます:contentReference[oaicite:24]{index=24}。さらにLRTKには準天頂衛星みちびきのCLAS信号を受信できるモデルも用意されており、通信圏外の山間部や離島の現場でも安定してセンチメートル級測位が可能です:contentReference[oaicite:25]{index=25}。まさにスマホ測量という新常識を切り拓く画期的なツールであり、高価な専用機器に頼らずとも誰でもどこでも出来形測量ができる時代を到来させています:contentReference[oaicite:26]{index=26}。LRTKシリーズは国交省推進のi-Constructionにも対応したソリューションであり、建設業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)と出来形管理の効率化に大きく寄与すると期待されています:contentReference[oaicite:27]{index=27}。
LRTK活用のユースケース:土工・舗装・外構・埋設管
LRTKによる高精度測量は、様々な工種の出来形管理で威力を発揮します。代表的なユースケースをいくつか挙げてみましょう。
• 土工: 掘削や盛土の出来形測定では、LRTKで取得した地盤面の点群から任意の断面を切り出し、所定の幅や高さが確保されているかチェックできます:contentReference[oaicite:28]{index=28}。従来は限られた測点で判断していた盛土法面の勾配や整形状況も、面データにより漏れなく検証可能です。出来形測定と同時に土量算出へ活用することも容易で、施工管理全体の効率化につながります。
• 舗装: 道路舗装では、仕上がった路面の平坦性や厚みを点群データから詳細に分析できます。例えば、LRTKで舗装面をスキャンし、設計高との高低差をヒートマップ表示すれば、凹凸や舗装厚不足の箇所を一目で把握可能です:contentReference[oaicite:29]{index=29}:contentReference[oaicite:30]{index=30}。従来は定規や測定員の目視に頼っていた検査も デジタルに置き換わり、品質管理の信頼性が向上します。
• 外構: 建築物周りの外構工事(駐車場や歩道、公園整備など)でも、LRTKによるフレキシブルな計測が有効です。広範囲に点在する縁石やインレットの高さ・位置を一人で素早く測定し、所定の設計勾配になっているか確認できます。複雑な地形の造成や宅地造成の仕上がり具合も、その場で点群を取得して平坦さや排水勾配をチェックでき、手戻りを防止できます。完成後の地盤高や構造物配置を詳録するアーカイブ資料としても価値があります。
• 埋設管: 下水道管やケーブル管路の埋設工事では、埋設前後の地形や管の位置を記録する出来形管理が重要です。LRTKを使えば、埋戻し前に開削溝内の管渠の勾配や深度を容易に実測できます。人力では測りにくい深いトレンチ内も、ポール装着したGNSSで非接触に測定可能です。埋設後に不可視となる部分もしっかり3次元データで保存でき、後日の維持管理や増改築時にも役立ちます:contentReference[oaicite:31]{index=31}。
なお、LRTKによる非接触測量は危険箇所での作業安全性向上にも寄与します。急斜面や深い掘削部でも離れた場所から測れるため、従来は危険を伴った出来形計測も安全に実施できます:contentReference[oaicite:32]{index=32}。
LRTK導入による精度・効率・品質向上
LRTKを活用することで、出来形管理の様々な面で飛躍的な向上が期待できます。その主な効果を整理します。
• 精度の向上: 点群計測によりミリ単位まで現場の形状を捉えられるため、従来は見落としていた微小な凹凸や寸法誤差も検出可能です:contentReference[oaicite:33]{index=33}。またRTK-GNSSによる高精度な絶対座標が得られることで、全測点を設計座標系に正確にマッチさせた厳密な出来形検証が行えます。これにより設計値との差異を細部まで把握でき、施工精度の総合的な底上げに繋がります。
• 効率の改善: 1人で計測からデータ解析まで完結できるため、大幅な省力化が実現します。広い範囲の出来形も短時間で一括取得でき、手計算や図面への記録といった手間も自動化により削減されます:contentReference[oaicite:34]{index=34}。その結果、出来形検査に要する時間が短縮され、限られた人員でも複数現場を効率よく管理できるようになります。
• 品質管理の強化: 測点数が飛躍的に増え現場全体を漏れなく検証できるため、不良箇所の見逃しリスクが低減します。検出した問題はその場で是正し、再計測して確認するといったサイクルも迅速に回せるため、最終的な品質水準が向上します:contentReference[oaicite:35]{index=35}。さらに出来形データがデジタル記録として蓄積されることで、報告書や維持管理資料の信頼性も高まります:contentReference[oaicite:36]{index=36}。点群データ自体が確かなエビデンスとなり、将来の構造物点検や改良計画にも役立つ財産となります。
LRTKを使った一人測量の導入手順
最後に、LRTKを現場に導入して一人で出来形測量を行う際のおおまかな手順を示します。その簡便性を実感していただけるでしょう。
• 機器と測位環境の準備: スマートフォンにLRTK受信機を取り付け、専用アプリを起動します。測位に用いる座標系(例: 平面直角座標系の◯系)や補正情報の設定を行いましょう。インターネット経由でRTKネットワークに接続するか、CLAS利用の場合は対応モードを選択します。数十秒以内にGNSSの高精度測位が初期化され、端末画面に現在位置がcm精度で表示されます。
• 現場での測量作業: 測定したい箇所で測位を実行します。例えば地盤面全体を計測したい場合は、スマホを持って測区域を歩き回りながらLiDARスキャンを行います。点ごとの記録が必要な場合は、任意の測点に受信機を据えてアプリの測位ボタンを押すだけで、その地点の座標値が記録されます:contentReference[oaicite:37]{index=37}。必要に応じてポールを用いることで、従来のスタッフのように任意の高さの点も測定できます。写真を撮影しながら位置を記録することもでき、測量と写真記録を同時にこなすことが可能です。
• データのアップロードと解析: 計測が終わったら、アプリからワンタッチで測位データや点群データをクラウドにアップロードします:contentReference[oaicite:38]{index=38}。クラウド上で設計データ(3Dモデルや図面情報)と計測データを比較し、自動的に出来形寸法の差分が解析されます。各測点の設計値との差や、面データ間の高低差が算出され、規格値からの逸脱箇所が可視化されます。点群計測の場合は、数クリックで設計モデルとの差分ヒートマップを生成す ることもできます:contentReference[oaicite:39]{index=39}。
• 結果の確認と共有: クラウド上で生成された出来形データは、PCやタブレットからいつでも確認できます。現場ではスマホに差分ヒートマップをダウンロードし、AR機能で実景に重ねて不良箇所を直感的に特定することも可能です:contentReference[oaicite:40]{index=40}。検査結果は自動で保存・整理されているため、そのまま出来形検査の報告書として出力したり、発注者とオンラインで共有したりすることも容易です。以上のステップを一人でスムーズにこなせるのがLRTK導入の大きな利点です。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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