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出来形管理とは?LRTKで誰でもできる測量の新常識

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万能の測量機LRTKの説明

土木・建設現場では、完成した構造物が設計どおりにできているかを確認する 出来形管理 が欠かせません。「出来形」とは工事中の構造物のうち完成した部分を指し、出来形管理とは施工物が発注者の意図する規格基準に達しているかどうかを測定データに基づいて確認・管理するプロセスです。公共工事では出来形管理の結果が検査合格や引き渡しの前提となり、品質確保の要として非常に重要です。また長期に及ぶ工事では、あとで見えなくなる部分(埋設物など)の出来形を途中で記録しておかないと、完成後に証明できなくなる恐れがあります。このため各工程の完了ごとに測定・記録を行い、必要に応じ是正措置をとることが求められます。出来形管理は施工品質を保証し、後戻りできない工事を着実に進めるための重要な管理業務なのです。


従来の出来形管理手法と現場の課題

出来形管理はこれまで主に直接測定写真記録によって行われてきました。測量士や現場技術者が水糸(墨出し用の糸)や巻尺、スタッフ(標尺)、レベル(測量器)などの道具を用いて、施工箇所の要所要所で高さ・厚さ・幅を一つひとつ実測し、設計図書の規格値と照合します。例えば道路工事では路盤の幅や厚み、高さを工事完了後に何箇所も計測し、所定の許容範囲内かチェックするといった具合です。測定結果は「出来形管理図表」や写真帳などに整理して記録し、発注者に提出します。


しかし従来の手作業中心の出来形管理には、多くの課題が指摘されてきました。


人手と時間の負担が大きい: 現場での寸法測定作業は多数の人員と長時間の作業を要し、測定結果を図面や表にまとめる事務作業も含めて現場技術者の大きな負担となっていました。熟練の測量担当者を手配する必要があり、人材不足の中で工期内に効率良く進めるのが難しい場合もあります。

測定点が限定され見落としのリスク: 人力による計測では物理的に測れる点の数に限りがあるため、出来形を全て網羅的に把握することは困難でした。限られた測点では設計図と微妙に食い違う部分を見逃す恐れがあり、検査段階で「図面と違う」と指摘を受けて慌てて是正するリスクもありました。特に規模の大きな構造物ほど人力測定には限界があり、出来形のばらつきやわずかな不陸(凸凹)を見逃しがちです。

記録漏れなどヒューマンエラー: 忙しい現場では写真の撮り忘れや測定データの記録ミスなどヒューマンエラーも起こり得ます。たとえば埋設して見えなくなる配管等を埋める前に撮影し忘れると、完成後に証拠が残らず最悪の場合やり直し施工や紛争に発展しかねません。このように従来手法には「点でしか測れない」「人為ミスが起きる」といった弱点があり、現場担当者にとって大きなストレスとなっていました。


以上の課題から、出来形管理をもっと効率よく確実に行う手法が現場で切望されてきました。


DXによる出来形管理の進化とLRTKの登場

こうした中、近年は建設業界にもデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せ、出来形管理の手法にも大きな変化が生まれています。国土交通省が提唱する *i-Construction* 政策の後押しもあり、ICT(情報通信技術)を活用した施工管理が普及し始めました。特に3次元計測技術(点群データ)の導入が進みつつあり、出来形管理でもレーザースキャナーやドローン写真測量によって構造物や地形を非接触で高密度に計測する手法が実用化しています。点群(ポイントクラウド)とは無数の測位点からなる現場のフルスケール3Dデータで、一度に広範囲を短時間でスキャンできるため、出来形管理への点群活用は今や「新常識」になりつつあります。


一方で、3Dレーザースキャナーなどの高度な機材は依然高価で専門オペレーターが必要な場合も多く、中小規模の現場にはハードルがありました。そこで注目されている解決策の一つが、スマートフォンとRTK測位技術の融合です。スマホ内蔵のカメラやセンサーを活用しつつ、衛星測位の高精度化技術であるRTK(Real Time Kinematic)によって誰でも手軽にセンチメートル級測位を行えるソリューションが登場しています。このスマホRTK技術により、これまで高額で専門技能者に任せきりだった測量・出来形計測作業を大幅に効率化し、生産性向上につなげることが期待されています。


中でも注目を集めているデバイスが、東京工業大学発のスタートアップ企業レフィクシアが開発した LRTK です。次章では、このLRTKについて概要と従来手法との違いを解説します。


LRTKとは何か?(スマホで使える新しい測量ツール)

写真:iPhoneに装着したLRTKデバイスの例。ポケットに収まるサイズで、スマホを高精度な測量機に変えることができる。


LRTK(Lefixea RTK) は、スマートフォンやタブレットに取り付けて使用するポケットサイズのRTK-GNSS受信機です。専用のスマホアプリ「LRTK」と連携し、衛星測位の誤差補正技術RTK(リアルタイムキネマティック)を活用することで、いつでもどこでもリアルタイムにセンチメートル精度の測位が可能になります。重量わずか約125g・厚さ13mmという超小型軽量ボディながらバッテリーを内蔵し、現場で持ち歩いて必要なときにすぐ使える実用的な端末です。スマホと一体化するこのデバイス1台で、位置座標の取得から点群スキャン、墨出し(位置出し)や写真記録、さらにはARを使ったシミュレーションまでこなすことができ、取得データはその場でクラウドに同期・共有できます。価格も従来の測量機器と比べて非常にリーズナブルに設定されており、「1人1台」の現場ツールとして各所で導入が進んでいます。実際、現場の施工管理者や作業員の間で静かなブームとなっており、その手軽さと有用性が高く評価されています。


LRTKの登場により、それまで高価な機器と熟練技術者が必要だった出来形測量を誰でも手軽に実践可能にしました。従来はトータルステーションや大型GNSS受信機を用いて2人1組で行っていた測量作業も、LRTKなら1人でスマホ片手にこなすことが可能です。以下に、従来手法との主な違いをまとめます。


上表のように、LRTKは低コスト・高機動・簡便さで従来の測量スタイルを一新し、現場DXを力強く後押しするツールとなっています。国土交通省が推進するICT施工にも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションといえるでしょう。


LRTK活用事例:道路・法面・造成での出来形管理

LRTKを導入すると具体的に現場でどのようなメリットがあるのか、道路工事法面(のり面)造成工事それぞれの出来形管理での活用例を見てみましょう。


道路工事における出来形管理の効率化

道路の出来形管理では、路盤や舗装厚・幅、高さの計測が重要になります。従来は前述のとおり完成後に代表点を何箇所も人力で測り、図面と照合していました。LRTK導入後はこの作業が飛躍的に効率化します。例えばある建設会社では、トータルステーションで半日かかっていた道路の出来形測定をLRTKに置き換えたところ、測定時間が大幅に短縮され即日中にクラウド共有まで完了するようになりました。またLRTKアプリのAR機能により、これまで「2人1組」が当たり前だった丁張設置や基準点の墨出し作業も一人で正確にこなせるようになっています。このようにLRTKは道路延長の長い現場でも機動力を発揮し、多点測定やその場での出来形データ確認を可能にするため、見落とし防止と迅速な検査対応に役立ちます。


法面の出来形計測と安全性向上

法面(斜面)の出来形管理では、従来は斜面上部・下部からの高さ測量や角度測定などを行っていましたが、険しい斜面での作業は転落など危険を伴いました。LRTKを使えば、測定者が斜面や高所など危険な場所に立ち入らず安全に計測できます。例えば法面の仕上がり形状を確認する場合、LRTKデバイスを装着したスマホを用いて斜面を見通せる位置から点群スキャンを行えば、離れた場所から斜面全体の3D形状を取得できます。取得した点群データを解析すれば、斜面勾配や表面の凹凸も詳細に把握でき、崩落防止工事などの品質検証に役立ちます。広範囲を素早く測りたい場合にはドローンにレーザースキャナやカメラを搭載して上空から測量する手法も有効で、LRTKシリーズをドローンに組み合わせればリアルタイム補正を効かせた高精度な空中測量も可能です。いずれにせよ、LRTKによる非接触・リモート計測により作業員の安全確保と省力化が図れる点は、法面管理において大きなメリットと言えるでしょう。


造成現場での出来形管理と土量確認

宅地造成や盛土工事などでは、完了時に地形の出来形を記録しておくことで、出来形検査だけでなく出来高数量(盛土・切土量)の算出や将来の改変計画にも役立ちます。LRTKを用いれば、広い造成地でも多数のポイントを短時間で測定でき、地表面の高さデータを面的に取得できます。さらにはスマホ搭載のLiDARを活用して造成地全体を点群スキャンし、完成直後の地形を丸ごと3Dデータ化してクラウドに保存しておくことも容易です。点群化された現場データがあれば後から任意の場所で断面を切ったり、体積を計算したりと自由自在に計測できます。従来は人手で一箇所ずつ測っていた作業も、LRTKなら一度の計測で広範囲をカバーできるため抜け・漏れがありません。また取得データを使ってその場で土量計算を行うことも可能で、盛土・切土の体積が設計通りか即座に確認できます。これにより、出来形管理と同時に出来高(工事数量)の把握・検算まで一人でこなせてしまう点も画期的です。


LRTK導入のメリットまとめ

以上のように、LRTKを導入することで出来形管理は格段に効率アップし、安全・確実になります。主なメリットをまとめると次のとおりです。


作業時間の大幅短縮と生産性向上: 従来半日かかっていた測量・出来形チェックが短時間で完了し、待ち時間なく即座に次工程へ移れます。専門業者への外注を減らし、現場スタッフ自身で迅速に測定・判断できるため生産性が飛躍的に向上します。

人員削減と人手不足への対応: スマホとLRTKが1人1台で使えるため、測量のために複数人を割く必要がなくなります。測量のために他部署から人手を借りたり熟練者の応援を呼ぶ手間も減り、慢性的な人手不足解消に寄与します。場合によっては外注測量に頼っていたコストも削減できます。

コスト削減(初期投資・運用費用): LRTKは安価なデバイスで既存のスマホを活用できるため、トータルステーション等を新規購入するより初期導入コストを大幅に抑えられます。またクラウド共有により紙の図面や写真現像コスト、郵送費等も減らせ、総合的にコストダウンが可能です。

測定精度と網羅性の向上: RTKにより位置精度は数センチ以内と極めて高く、しかも点群スキャンを使えば施工物を丸ごと高密度に計測できるため、見落としや測り忘れを防げます。出来形のばらつきや微小な不陸もデータ上で容易に発見でき、品質管理レベルが向上します。

安全性の向上: 前述のとおり危険箇所でのリモート測量が可能になるため、交通量の多い道路上や急斜面、高所などでの危険な立ち入り作業を減らせます。作業員の安全確保と、測量中の第三者災害リスク低減にもつながります。

データ即時共有と一元管理: 測位データはその場でクラウドにアップロードでき、オフィスのスタッフや発注者ともリアルタイムで情報共有できます。これにより現場と社内のコミュニケーションロスが減り、測定データをすぐ検査資料や報告書作成に活用できます。図面や写真帳のデジタル管理も容易になり、将来の維持管理データとしても役立ちます。

習熟の容易さ(誰でも使える): スマホアプリで動作するため操作が分かりやすく、直感的に測量できます。測量の専門知識がない現場スタッフでも短期間で扱えるようになったという報告もあり、教育コストをかけず現場へのICT導入を実現できます。ベテラン技術者が不在でも若手だけで測量をこなせるようになり、組織全体の技術継承にもプラスです。


このようにLRTKは時間・コスト・労力の削減安全・品質の向上を同時に実現する画期的なツールです。では、実際にLRTKを使い始めるには何をすれば良いのでしょうか。最後に、導入から運用開始までのおおまかな流れを紹介します。


LRTKによる出来形測量の始め方(導入手順)

機材の準備: まずLRTK端末本体と、それに対応するスマートフォンまたはタブレットを用意します。LRTK端末(代表的な製品:LRTK Phone)はアンテナ・GNSS受信機・バッテリーが一体となった小型デバイスで、iPhoneまたは一部Android端末に装着して使用します。事前にスマホ側に専用の「LRTKアプリ」をインストールし、LRTK端末・スマホ双方のバッテリーを充電しておきましょう。必要に応じて現場で使用する一脚やポール、気泡水平器(レベル)なども準備します。

接続設定と測位準備: 現場でスムーズに測位できるよう、LRTK端末とスマホをBluetoothで接続し、アプリ上で測位に必要な設定を行います。具体的にはGNSSの補正情報(RTK基地局データ)の受信設定です。一般的にはネット経由で国土地理院の電子基準点ネットワークや民間補正サービス(Ntrip)に接続して補正データを取得します。スマホのモバイル通信が圏外になる山間部などでは、準天頂衛星みちびきが配信する「センチメータ級補強サービス(CLAS)」対応のLRTK端末を使えばインターネット接続なしで補正を受けられます。現場状況に応じた補正方法を選び、アプリ内で座標系(世界測地系JGD2011など)や基準点情報の設定を確認します。

測量の実行: 準備が整ったら測定を開始します。使い方は簡単で、測りたいポイントにLRTK端末を据えてスマホのボタンを押すだけです。するとその地点の緯度・経度・高さが即座に計算され、日時や点名とともにスマホ画面に記録されます。平面直角座標系への変換やジオイド高の補正も自動で行われるため、現場で複雑な計算を意識する必要はありません。必要に応じて測点にメモや写真を添付することもでき、その場で追加の測定点を続けてどんどん取得していけます。点群スキャン機能を使えば、所定範囲を連続スキャンして多数の点を一括取得することも可能です。従来のように逐次測りながらメモを取る必要はなく、直感的な操作でどんどん出来形データを収集できます。

データの確認・共有: 測定が終わったら、アプリ上で取得データを確認します。測点が地図上にプロットされ、各点の座標値やメモを一覧できます。問題がなければワンタップでクラウドにアップロードし、データを社内や発注者と共有します。オフィス側ではウェブのLRTKクラウドページにアクセスするだけで、現場で取得された最新の測量データを即座に閲覧できます。必要に応じて測定点間の距離や面積を計算したり、図面や出来形管理表にまとめたりといった作業もクラウド上のデータをもとに効率よく行えます。以上の手順で、現場で測ったデータをすぐさま検査書類や報告書に反映させることができ、出来形管理のサイクルを大幅に短縮できます。


以上が基本的な始め方の流れです。実際には現場条件に応じた機器設定のコツや、点群処理ソフトとの連携方法など細かなポイントもありますが、「誰でもすぐ始められる」という点はご理解いただけたでしょうか。


まとめ:LRTKで始める新時代の出来形管理

出来形管理の定義や重要性から始まり、従来手法の課題とDXによる革新、そしてLRTKという新ツールの特徴と活用事例、メリット、導入手順まで一通り解説しました。ポイントを振り返ると、出来形管理は品質保証に不可欠なプロセスですが、人手不足や作業負荷の問題がありました。それを解決する手段として、スマホ×RTKの技術「LRTK」が登場し、測量の専門家でなくとも現場スタッフが高精度な出来形測定を行えるようになりました。LRTKの活用によって、測量作業は安全かつ迅速に、しかも低コストで実施でき、現場の生産性と信頼性を飛躍的に高めることが可能です。


今やLRTKは日本全国の様々な現場で活用が進み、ICT施工を支えるキーテクノロジーとして注目を集めています。出来形管理の新常識として、LRTKは「自分たちの手で出来形測量を完結できる」時代を切り開きました。土木施工管理技術者はもちろん、発注者や現場スタッフにとっても、LRTKを使えば測量が身近で手軽なものになります。もしあなたの現場で出来形管理に課題を感じているなら、ぜひこのLRTKによる新しい測量を試してみてはいかがでしょうか。きっと「LRTKなら自分でも出来形測量ができそうだ」という自信と、業務効率化の大きな成果を実感できるはずです。そして何より、正確なデータに基づく品質管理によってプロジェクトの信頼性が高まり、関係者すべてにとってポジティブな結果をもたらすでしょう。ぜひLRTKを活用して、あなたの現場を次のステージへと進化させましょう。


参考文献・情報源: 出来形管理の定義・従来手法に関する専門サイト、LRTK公式サイトの技術ブログおよび製品紹介ページ、建設ITメディアの記事などを参照しました。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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