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ダムの維持管理を省力化 ドローン点群で把握する劣化兆候6選

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

ひび割れの効率的な検出と記録

剥離・欠損箇所の立体的把握

堤体変形の定量モニタリング

漏水痕・変色の広範囲可視化

ダム表面の植生繁茂箇所を遠隔で確認

基礎・周辺部の浸食状況を安全に点検

まとめ


近年、日本ではダムの老朽化が進んでいます。日本全国には大小合わせて数千基のダムがありますが、その多くは高度経済成長期前後に建設され、既に供用開始から半世紀以上が経過しています。安全な水供給や防災機能を維持するため、定期的な点検と適切な維持管理が欠かせません。しかし、ダムの点検作業は広範囲かつ高所での作業を伴い、人手と時間がかかる上に危険も伴うのが現状です。従来は足場を組んだりロープで吊下がったりして作業員がダムの壁面に接近し、目視や打音検査を行っていました。これらの方法では大きな労力が必要なだけでなく、点検範囲に制約があり、異常の見落としにつながるリスクもありました。


こうした課題に対し、近年はドローンを活用した点検が注目されています。空撮用ドローンに高性能カメラやレーザースキャナーを搭載し、ダム全体を俯瞰・近接撮影して3次元の点群データを取得することで、離れた場所からでも精密な状況把握が可能になりました。ドローンによる点検は、人が立ち入れない危険な場所にも安全にアクセスでき、短時間で広範囲をカバーできるため、作業の省力化と安全性向上に大きく貢献します。また取得した点群データを解析することで、従来は見つけにくかった微細な劣化兆候を捉えたり、経年変化を定量的に把握したりすることも可能です。その結果、ダムの維持管理において早期の補修計画や予防保全が実現し、重大な事故の未然防止につながります。


国土交通省が提唱するi-Constructionやインフラ管理DXの流れもあり、ダム点検へのドローンや3Dデータ技術の導入は各地で加速しています。実際にダム管理の現場では、人手不足の解消や点検精度向上を目的に、ドローンで撮影した画像をAIで解析してひび割れを自動検出したり、遠隔地からリアルタイムで監視できる仕組みを試行するなど、先進的な取り組みも始まっています。最新技術を活用したスマートメンテナンスによって、限られた人的資源でもインフラの安全を確保しようという動きが今後ますます重要になるでしょう。


本記事では、ドローンで取得した点群データを活用して把握できるダムの劣化兆候を6つ厳選して紹介します。これらの兆候を効率的に検出・監視することで、点検業務の省力化と信頼性向上が期待できます。それぞれの症状がどのように点群から判別でき、維持管理の現場でどのように役立つのかを詳しく解説します。


1. ひび割れの効率的な検出と記録

ダムのコンクリート表面に発生する「ひび割れ」は、代表的な劣化兆候の一つです。微細な亀裂でも放置すれば内部に水が浸入して構造劣化を促進するため、早期発見と記録が重要です。従来は肉眼での確認やクラックスケールによる幅測定が行われてきましたが、高所では作業が困難な上、人的な目視には限界があります。


ドローンで撮影した高解像度の画像と点群データを組み合わせれば、広大なダム表面に生じたひび割れも漏れなく検出できます。点群上に画像をマッピングすることで、ひび割れ位置を正確に3次元座標で記録し、その長さや幅をデジタルに計測することが可能です。例えば、数ミリ幅程度の細かなひび割れでも、至近距離から撮影した高精細画像を用いることで見逃さず捉えられます。人が直接近づけない場所でもドローンなら安全に接近でき、ダム全体をくまなく調査できるため、ひび割れの見落としリスクが大幅に低減します。さらに、検出されたひび割れの分布や方向はダムにかかる応力のかかり方や劣化要因の推定にも役立ちます。3Dモデル上でそれらを可視化すれば、構造全体の挙動を総合的に評価しやすくなるでしょう。


また、一度取得した点群データと写真を保存しておけば、次回の点検時に過去データと比較することでひび割れの進展状況を把握できます。定期的な3Dモニタリングにより、「以前よりひび割れが長くなっている」「新たな亀裂が発生している」といった変化を定量的に捉え、劣化の傾向を早期に察知できます。最近では、撮影画像をAIで解析して自動的にひび割れを抽出し、点群モデル上にマッピングする技術も登場しており、人手による判読作業の負担軽減にもつながっています。ドローン点群を活用することで、ひび割れの検出と記録が飛躍的に効率化され、補修計画の立案にも役立ちます。点群モデル上でマッピングされたひび割れ情報を参照すれば、どの箇所から優先的に補修すべきかを事前に検討でき、限られた資源を効率的に配分する助けにもなります。結果として、ダムの健全性を継続的に監視しやすくなります。


2. 剥離・欠損箇所の立体的把握

コンクリートの表層が剥がれ落ちる「剥離」や、塊となって落下する「剥落」もダムで頻繁に見られる劣化現象です。寒暖差による凍結融解や、長年の風化によりコンクリート表面が劣化すると、コンクリート片が浮きやすくなり、最終的に欠損部が生じます。こうした剥離・剥落は構造物そのものの耐久性低下につながるだけでなく、落下したコンクリート片が人や設備に被害を与える危険性も孕んでいるため、早期の発見と対策が求められます。


ドローンで取得した点群データは、ダム表面の微妙な凹凸まで正確に反映しているため、剥離や欠損による凹み箇所を立体的に把握できます。肉眼で見ると分かりづらい小規模な剥離でも、3Dモデル上では健全部との高さの違いとして明瞭に確認できます。またカメラ映像と組み合わせれば、表面の変色や鉄筋の露出など、剥離の兆候となるサインも見逃しません。たとえば、雨水が染み込んでコンクリート内部で鉄筋が腐食すると、その膨張圧で周囲のコンクリートが浮き上がり、ひび割れや錆汁跡が発生しますが、ドローン点検によりこうした異常を早期にキャッチできます。


点群モデルを用いれば、剥落によって生じた欠け穴の大きさや深さを計測することも容易です。これにより、損傷の程度を客観的に評価し、補修の優先度を判断する材料とすることができます。従来は双眼鏡や望遠レンズで遠方から観察していた箇所でも、ドローンなら間近で撮影できるため、小さな剥離箇所や高所の欠損も見逃しが減ります。点検作業員が危険な高所に登らずとも、剥離・剥落の状況を安全に把握できる点も大きな利点です。こうしてドローン点群による立体的な観察を行うことで、剥離や欠損の発生箇所を的確に洗い出し、早めの補修や落下防止ネット設置など適切な対策を講じることができます。また、定期的に点群データを取得して過去と比較することで、新たな剥離・剥落箇所の発生や既存の欠損拡大の有無を追跡でき、補修時期の判断材料とすることも可能です。


3. 堤体変形の定量モニタリング

ダム全体がわずかに変形・変位していく現象は、長年の荷重や地盤変動、地震などによって徐々に進行します。コンクリートダムでは温度変化やアルカリ骨材反応(ASR)による膨張で堤体が膨らんだり、ロックフィルダムや土質ダムでは経年沈下や局所的な滑動によって堤頂部が沈下・傾斜することがあります。これらの変形を早期に捉えることは、安全なダム管理の上で極めて重要です。


従来、ダムの変形監視には基準点を設置しての測量や、ダム内部に埋設した計測器による計測が用いられてきました。しかし測点が限られるため、全体の変状を面的に把握することは困難でした。ドローンで取得した高密度点群を用いれば、ダム表面全域の形状を過不足なく計測できるため、ごく小さな変位も見逃しません。例えば、現状の点群モデルと過去に取得したモデルや設計時の基準モデルを重ね合わせて比較すれば、各部の変化量をカラーマップで可視化することができます。堤体中央付近が数センチ突出していればその膨らみを検知でき、左右岸との相対変位も明らかになります。人の目視では気づかない微細な歪みも、3Dデータ解析により定量的に把握できます。近年ではドローン搭載の高精度センサーや測量技術が進歩し、ミリ単位の微小変位を捉える試みも始まっています。


なお、ドローンで取得した面的な変形データは、ダムに設置された傾斜計や伸縮計など従来の点的モニタリング装置のデータと組み合わせることで、監視精度を一層高めることができます。センサーによる連続計測結果とドローン点群の俯瞰データを相互に補完すれば、異常の兆候を見逃さない万全な監視体制を構築できるでしょう。


こうした定量モニタリングによって、ダム堤体の異常兆候を早期に発見し、必要に応じて補強や監視強化といった対策を講じることができます。特に大規模な変形が発生する前に前兆を捉えられれば、事前に減災策を検討する余裕も生まれます。また、点群データで得られた数値情報は、点検報告書に客観的な根拠を与える資料にもなります。ドローン点群を活用した変形監視は、ダムの長期的な健全性評価とリスク管理に大きく貢献します。


4. 漏水痕・変色の広範囲可視化

ダムからの漏水や滲み出しによって生じる「シミ(染み)」やコンクリート表面の変色も、劣化兆候として重要な観察ポイントです。堤体の裏側に水が回ると、コンクリート表面に水が浸み出して黒っぽい湿潤跡や白い析出物(エフロレッセンス)を生じることがあります。これらの漏水痕は内部での水の経路やひび割れの存在を示唆しており、放置すると漏水が拡大して構造の弱体化や浸透破壊につながる恐れがあります。


ドローンによる点検では、広範囲を一度に撮影した高精細な画像から、ダム全体の表面変色やシミの分布を見渡すことができます。人間の目で下から見上げるだけでは見落としがちな細かな漏水痕も、ドローンが近接空撮した写真や生成したオルソ画像上で容易に確認できます。例えば、堤体中央部に細長い黒い染みが発生していれば、上流側からの水がその付近で浸み出している可能性が高く、同じ地点の裏側を詳しく調査すべきだと判断できます。また、白色の結晶状析出が多数見られる場合は、コンクリート内部で水分が蒸発してミネラル分が沈着している証拠であり、目に見えない微細ひび割れからの漏水を示唆します。


ドローン点群に色付きのテクスチャ画像を重ね合わせれば、3Dモデル上で漏水による変色箇所を正確にマーキングすることができます。これにより、シミの位置関係や広がり具合を立体的に把握し、異常が発生しているエリアを特定しやすくなります。さらに必要に応じてドローンに赤外線カメラを搭載すれば、表面温度の変化から目視ではわからない湿気の分布を検知することも可能です。こうした広範囲かつ詳細な可視化により、漏水に起因する劣化兆候を早期に察知し、止水工の検討や監視強化といった措置につなげることができます。また、オルソ画像として保存した変色マップを時系列で比較すれば、シミが拡大・縮小している傾向も分析でき、補修後の経過観察にも役立ちます。


5. ダム表面の植生繁茂箇所を遠隔で確認

コンクリート表面に雑草や小さな樹木が根づいている光景は、ダムの維持管理上見逃せないサインです。通常、コンクリート構造物には植物が生えないよう管理されていますが、ひび割れの隙間や常に湿気のある箇所に土埃が溜まると、そこから雑草が発芽し繁茂することがあります。植物の根はコンクリートの割れ目を広げ、劣化を加速させる恐れがあるため、早期に除去する必要があります。一方、土質やロックフィルのダム斜面では、大きな樹木の成長は内部への浸透や動物の巣穴と同様にリスク要因となり、こちらも定期的に確認して除草・伐採することが求められます。コンクリート上に根付いた植物は小さなものであっても構造物を傷める可能性が高く、発見次第速やかに除去することが肝要です。ドローン点検によってこうした植生を漏れなく発見できれば、除草・清掃作業の計画も確実に遂行でき、ダムの健全性維持に寄与します。


広いダム全体の中から、こうした植生の繁茂箇所を人力で探し出すのは容易ではありません。ドローンで空撮すれば、ダム表面を俯瞰した映像や画像から緑色に変色したエリアや草木の影を容易に見つけることができます。高所や斜面に自生した草木も、遠隔撮影によって安全にその状況を把握可能です。点群データにテクスチャとして航空画像を貼り付ければ、3次元空間上で植生の位置を正確にマッピングでき、作業員は問題箇所を事前に特定した上で現地対応に臨めます。


さらに、植物が繁茂している場所は往々にして周辺が常に湿潤であったり、ひび割れや漏水が存在する場合が多くあります。そのため、植生の有無はダムの健全性を判断する一指標ともなります。ドローン点検によりダム全域の植生分布を定期的に記録しておけば、異常な場所での新たな草木発生にもすぐ気づくことができ、未然に原因調査や除去作業を行うことができます。人の手が届きにくい箇所の状況も遠隔で確認できるため、点検作業の省力化と安全性向上に大きく寄与します。


6. 基礎・周辺部の浸食状況を安全に点検

ダム本体だけでなく、基礎や周辺の地盤状況も維持管理上見逃せないポイントです。長年の放流水によりコンクリートダムの基礎岩盤が削られる「洗掘」や、土質ダムの下流斜面で発生する浸食・崩落は、ダムの安定に直接影響を及ぼします。例えば、洪水吐きからの激流が基礎部分の地盤をえぐり取って空洞を生じさせたり、ダム両岸の取付部で土砂が流出して段差が生じたりするケースがあります。また、長年見過ごされていた漏水がダム直下の地盤内部に空洞を形成し、大規模補修に発展した例も報告されています。さらに、ダム堤体下流の河床が徐々に洗掘され、基礎が露出してしまうと支持力が低下し危険です。こうした周辺部の異常は早期に発見し、適切な補強や埋戻し対策を施す必要があります。


従来、基礎や下流域の点検は、立ち入りが困難で危険を伴う作業でした。滑りやすい急斜面を歩いて目視確認したり、ボートで接近して観察したりする必要があり、十分に調査できる範囲が限られていたのです。ドローンを用いれば、人が踏み込めないような足場の悪い場所でも安全に近接撮影でき、基礎周りの地形や露出した岩盤の様子を詳細に記録できます。点群データにより岩盤表面の凹凸や侵食の深さを定量的に捉えられるため、以前のデータと比較することで浸食の進行具合も評価可能です。例えば、昨年から今年にかけて特定の箇所で地形がどの程度低下したか、点群同士の差分から数値で把握できます。


さらに、ダム湖側の法面や洪水吐き下流の流路など、人力での点検が困難な範囲もドローンであれば広域にわたって監視できます。必要に応じて水中ドローンや音波探査と併用することで、水面下の基礎や河床状況も含めた総合的な点検が可能です。いずれにせよ、従来は危険を伴った基礎・周辺部の状況把握が、ドローン技術の活用によって安全かつ効率的に実施できるようになり、点検作業中の転落事故や急な放流による危険も大幅に減らすことができます。そして、ダム全体の健全性確認に大きく貢献しています。


まとめ

ドローンと点群データを活用することで、ダムの維持管理は大きく省力化しつつ精度と安全性を向上させることができます。ひび割れや剥離といった劣化兆候を見逃さず検出し、3次元モデル上で定量的に監視することで、従来は困難だった広範囲の異常把握が容易になりました。さらに、デジタル技術の導入により点検頻度を柔軟に高めることも可能となり、状況変化をよりきめ細かく追跡できます。実際に、既に国内の一部ダムではドローン点検の実証が行われ、作業時間の大幅短縮やヒューマンエラー削減などの成果が報告されています。


さらに、ドローン点検と組み合わせて新たな測位技術を導入することで、データ取得の効率は一層高まります。例えば、iPhoneに装着できる高精度GNSS測位デバイス「LRTK」を用いれば、現地で手軽にセンチメートル級の位置座標を取得できます。重要な部位の基準点をLRTKで測量しておけば、ドローンで得た点群モデルに正確な座標基準を与えることができ、経年変化の把握や複数データセットの突合もスムーズに行えます。このように、最新技術を駆使して効率化を追求することで、限られた人員でもダムの安全を長期にわたり守っていくことが可能になります。


今後、ドローンと点群技術のさらなる発展により、ダムのみならず様々なインフラ施設の維持管理がよりスマートで省力的になることが期待されます。幸い、これらの技術は年々扱いやすくなっており、ドローン機体や測位装置の小型化・低価格化により、中小の管理主体でも導入しやすい環境が整いつつあります。ダムは人々の生活と安全を支える重要インフラです。これからも最新技術を積極的に取り入れ、スマートな維持管理を推進することで、次世代にわたってその安全性と機能を確保していくことが求められます。


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