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ダムの変位監視を効率化 ドローン点群活用の手順と精度目安

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

目次

ダムの変位監視の重要性と課題

ドローンを用いた点群測量とは

ダム変位監視におけるドローン点群活用の手順

ドローン点群測量の精度目安

ドローン活用による変位監視の効率化

まとめ


ダムの変位監視の重要性と課題

ダムは膨大な水を支える社会基盤であり、その安全を確保するため定期的な変位監視が欠かせません。コンクリートダムや土質ダムは長年の運用や季節的な水位変動に伴って、ごくわずかな変形や沈下(変位)が生じることがあります。もしダム本体に異常な変位が発生すれば、漏水や構造的な損傷につながりかねず、早期に発見して対処することが重要です。そのため管理者は計画的に堤体の挙動を監視し、健全性を評価する必要があります。


従来、ダムの変位監視は現地において職員が水準器や光学測量機器を用いて基準点の高さや位置の変化を測定したり、ダム内部の観測所でプラムライン(水準糸)による傾き・変位計測を行ったりする方法が一般的でした。しかし、これら従来手法ではダムの数カ所の「点」もしくは垂直断面といった「線」での計測に限られるため、堤体全体の「面」で起きている変化を把握することができません。その結果、観測点以外で進行している変状を見逃してしまい、気付かぬうちに損傷が拡大するといったリスクも指摘されています。また高所での作業や山間部への移動を伴う点検は人手と時間がかかり、人員不足が深刻化する中で効率的な維持管理が課題となっています。さらに、日本には高度成長期以降に建設されたダムが多数存在しており、築後数十年が経過した構造物の老朽化対策も大きな課題です。そのため法令に基づく定期点検や観測が義務付けられており、管理者は日常的にダムの挙動データを収集して安全性を確認しています。早期に異常を検知できれば小規模な補修で済むものが、発見が遅れて損傷が進行すれば大規模工事が必要になる可能性もあります。適切な監視はダムの長寿命化と重大事故の未然防止に直結すると言えるでしょう。こうした背景から、近年ではICT技術や無人航空機(ドローン)を活用し、より省力的かつ網羅的にダムの変位を監視する試みが注目されています。


ドローンを用いた点群測量とは

ドローンを使った点群測量とは、無人航空機に搭載したカメラやレーザースキャナーで対象物の三次元データを取得する計測手法です。ここで得られる「点群データ」とは、空間内の多数の測定点をXYZ座標として集めたもので、ダムの表面形状を無数の点の集合体として精密に再現できます。従来は陸上のレーザースキャナーや人力による測点で部分的に形状を把握していましたが、ドローン測量を用いれば広範囲を短時間でカバーし、ダム全体の精細な三次元モデルを生成することが可能です。


具体的な方法としては、大きく二つが挙げられます。一つはドローンに搭載した高解像度カメラで多数の空中写真を撮影し、そこからソフトウェア処理(写真測量、いわゆるフォトグラメトリ)によって3D点群を復元する手法です。もう一つはドローンに小型のレーザースキャナーを搭載し、飛行しながらレーザー光で直接対象までの距離を測定して点群を取得する方法(UAVレーザ測量)です。前者の写真測量は機材コストが比較的低く扱いやすいため現在広く普及しており、後者のレーザ測量は樹木に覆われた斜面や夜間の測定などカメラでは難しい場面で有効とされています。どちらの場合も取得できる点群はダム表面の微細な凹凸や形状を捉えており、そのデータを解析することでひび割れや変形の位置、大きさを把握したり、断面図を任意の場所で切り出して変位量を計測したりといった幅広い活用が可能です。また得られた三次元モデルはパソコン上で自由な視点から確認でき、従来は目視や2次元図面では分かりにくかった変状も直感的に把握できます。国土交通省もi-Constructionなどを通じてインフラ維持管理へのICT活用を推進しており、ドローン点群のような三次元データはダム管理の高度化に欠かせない技術となりつつあります。


なお、点群計測の手法は対象の状況に応じて使い分けることが重要です。コンクリート表面に模様や特徴が少ない場合には、写真測量では特徴点の検出が難しくなるため、あらかじめ壁面にマーカー(目印)を設置して撮影しておくといった工夫が行われます。一方、草木が生い茂る土質ダムの斜面など地表が直接見えにくい場面では、レーザ測量であれば樹木の隙間から地面の点群を取得できるという強みがあります。このように被写体の材質や環境に応じてカメラとレーザを適切に使い分けることで、効率的かつ高品質な三次元データを得ることが可能です。


ダム変位監視におけるドローン点群活用の手順

それでは、ドローンで取得した点群データを用いてダムの変位を監視する際の大まかな手順を確認しておきましょう。まず初めに実施するのは計画立案です。監視対象となるダムの部位や範囲、要求される精度に応じて、ドローン飛行の計画を策定します。例えばダムの表と裏(上流面と下流面)の両側を監視する必要があれば、それぞれの面を十分な画角で撮影できる飛行ルートや高度を設定します。また変位を精密に捉えるには高い解像度のデータが必要なため、撮影間隔を細かくして写真の重複率(オーバーラップ)を80%以上確保する、あるいはレーザ測量の場合はスキャンの密度を上げるなどの工夫を行います。事前に現地の気象条件や風の状況も確認し、安定した飛行が可能なタイミングを選定します。また、ドローンの飛行に際しては航空法等の関連法規に定められた許可・承認手続きや安全対策を事前に確認し、遵守することが前提となります。さらに、後述する精度確保のために、必要に応じて地上に基準点(ターゲット)を複数設置し正確な座標値を計測しておきます。専用の高精度GNSS測量機器がなくても、最近ではドローン自体に高精度な測位装置を搭載した機種も登場しており、こうした機体を用いれば基準点の数を減らすことも可能です。


準備が整ったら実際にドローンを飛行させてデータを取得します。自動航行プログラムを使って設定したルートを飛ばしながら、対象のダムを上空や斜め方向から撮影・スキャンしていきます。広いダムでも短時間で全面の状況を記録でき、人が立ち入れない急斜面や高所の部分も安全にデータ取得が可能です。撮影が完了したら、その画像データあるいはレーザの計測データを専用のソフトウェアで処理し、三次元の点群データを生成します。写真測量であればソフト上で多数の写真から特徴点を合致させて空間座標を復元し、カラー付きの点群やオルソ画像(真上から見た歪みのない写真)を出力します。レーザ測量の場合は取得した多数のレーザ点に対して飛行時の位置姿勢データを組み合わせ、三次元座標に変換した点群を得ます。いずれの方法でも、高精度に測位された基準点(既知点)を用いて座標のずれを補正し、点群全体を実世界の座標系に合わせ込みます。こうすることで、異なる時期に取得した点群同士を正確に比較できるようになります。


こうして出来上がったダム全体の点群モデルを基準データとして保存し、以降は定期的に同様の手順で追加の点群データを取得していきます。変位監視の頻度はダムの種類や重要度によりますが、年次点検に合わせて年1回程度計測するケースから、大規模ダムでは季節ごとの変動を追うために年数回実施する例、さらには地震直後や豪雨後に臨時で測量することもあります。新たな点群データが得られたら、前回のデータと重ね合わせて差分を解析します。具体的には、点群処理ソフト上で二つの三次元モデルの対応する位置を比較し、表面がどの程度移動したかを算出します。ダム表面全体についてカラーマップで変位量を可視化したり、特に重要な断面(例えば堤体中央の鉛直断面や天端の水平線)に沿って高さや位置の変化量をグラフ化したりすることが可能です。その結果、例えば「ダム下流側の中央部で前回比+20mmの膨らみが生じている」といった具体的な変位を検出できます。検出された変位が許容範囲内であれば引き続き経過観察とし、想定を超える異常な変動が見られる場合には現地で詳しい調査を行うなど、適切な維持管理判断につなげていきます。


ドローン点群測量の精度目安

ドローンを用いた点群測量で得られる精度は、近年の技術向上により実用上十分な高さに達しています。一般に、空撮写真から生成した点群データの位置精度は、適切に手順を踏めば水平方向・鉛直方向ともに数センチメートル程度に収まります。例えば、ある実証実験ではドローン写真測量で生成した3Dモデル上で構造物の位置を測定したところ、従来の地上測量と比較して誤差が約3cm程度であったと報告されています。また撮影画像の地上解像度(GSD)が1cm/pixelであれば、点群の誤差もおおむね1〜3cm程度(画像解像度の1〜3倍以内)に納まることが多いとされています。ドローン自体にRTK-GNSSと呼ばれる高精度測位機能を搭載した機種であれば、飛行中に数センチ以内の測位誤差で写真に位置情報を付与できるため、標定点(地上制御点)を大幅に減らしても高精度な成果が得られます。逆にこれらの対策を講じない場合、例えば通常のGPS付きドローンで基準点も用えずにモデル化すると数メートル単位のずれが生じてしまい、変位監視には使えない精度となってしまいます。確実にcm級の精度を得るためには、RTK対応ドローンや十分な数の既知点を活用し、処理段階で精度検証を行うことが重要です。


点群の精度には絶対精度(座標系に対する正確さ)と相対精度(点群内部での一貫性)の二つの側面があります。ダム変位の監視では、経年で比較するための絶対的な座標の一致精度と、同一データ内で形状を捉える相対的な精度の双方が要求されます。前者は前述の通り適切な測位で数cm以内に抑えられますが、後者についても点群内部のノイズが小さいほど微小な変化を読み取ることができます。実際には各点にミリ単位の誤差が含まれていても、周囲の多数の点から面をフィッティングすれば平均化によりその面の傾きや移動量をミリオーダーで検出できる場合があります。つまり、点群データは一点ごとの精度では従来の精密測量に劣ることがあっても、点の数が非常に多い利点を活かし統計的に精度を向上できる可能性があります。ただし微小変位を論じる場合には測定ノイズの除去や厳密な座標合わせが不可欠です。撮影時の風や光の具合、レーザー測定時の反射率の影響など、現場環境も精度に大きく影響を与えるため、データ取得はできるだけ安定した条件で行い、取得後はノイズ点のフィルタリングや対になる点群間の丁寧な位置合わせ(ICPアルゴリズムによる微調整など)を実施するといった工夫が求められます。


例えば、取得した点群から堤体表面の平面をフィッティングし、その法線方向の傾斜角度や位置の変化を追跡することで、堤体全体のわずかな傾きや膨らみを高精度に検出するといった分析手法も研究されています。以上を踏まえると、ドローン点群測量によって得られたデータでも、適切な方法であればダムの変位監視に耐えうる十分な精度が期待できます。実用上は数センチの変位量を確実に検出でき、条件が良ければ数ミリ程度の違いを識別できるケースもあります。一方で、ひび割れ幅1mmといった極めて微小な変化の直接検出は写真やレーザーの分解能上困難であり、そのような場合は高倍率カメラによる詳細点検やセンサー計測を併用する必要がある点には注意が必要です。しかし、通常のダム維持管理において兆候を見逃さないという目的であれば、ドローン点群の精度で十分に目的を果たすことができるでしょう。


ドローン活用による変位監視の効率化

ドローンによる点群計測を導入することで、ダムの変位監視作業は飛躍的に効率化されます。まず、現地作業にかかる時間と人手が大幅に削減されます。従来はダムの所定の観測点ごとに測量機器を据えて順次計測するといった手間があり、大規模なダムでは測定箇所が多いため丸一日以上を要することもありました。ドローン測量であれば、機体を飛行させるだけでダム全体のデータを一度に取得でき、撮影自体は数十分から1時間程度で完了します(準備や撤収を含めても半日とかからないでしょう)。これにより現場作業時間が短縮され、人員も少数で済むため、監視業務にかかる負担とコストを低減できます。また高所での作業や危険な急斜面への立ち入りが不要になるため、作業員の安全性も向上します。万一大地震や豪雨の直後に緊急点検が必要な場合でも、人が近寄れない状況下でドローンを飛ばしてダムの状況を素早く把握できるため、初動対応の迅速化にもつながります。


実際に、ドローン点検を採用した現場では目覚ましい効率向上が報告されています。従来5名の測量チームが1日がかりで実施していたダム変位の観測が、ドローン導入後は担当者2名で数時間の飛行と撮影を行うだけで完了し、かつ取得データの精度も従来手法と遜色なかったという事例があります。さらには得られた点群モデルをもとに変位量だけでなく表面の損傷箇所も同時に洗い出すことができ、一度の現地作業から複数の成果を引き出せた点も評価されています。


さらに、ドローン点群データの活用は単に速いだけでなく、監視業務の質も向上させます。従来の限られた点の測定では見逃していた異変も、全面的な3Dデータからであれば発見しやすくなります。取得した点群やオルソ画像はデジタルデータとして保存されるため、過去との比較や詳細な解析を何度でも行うことができます。たとえば数年前のデータと最新データを見比べて、変位の進行傾向を定量的に追跡するといった長期モニタリングも容易です。また点群データは関係者間で共有しやすく、現場に来られない専門家でもオフィスでモデルを確認し助言するといった遠隔協議も可能になります。ただし点群ファイルは容量が大きく扱いも難しいため、クラウドサービスの活用やデータ管理の仕組みづくりも重要です。近年ではドローンで撮影した高精細な写真をAIで解析し、コンクリート表面のひび割れや劣化変状を自動検出する試みも進んでおり、こうした技術と組み合わせることで点検プロセスのさらなる省力化が期待できます。総じて、ドローンを活用した変位監視は「短時間で安全にデータ収集ができ、しかも網羅的な情報に基づいて的確な判断が下せる」点で、従来手法に比べて大きなメリットがあると言えるでしょう。なお、ダム内部に設置された傾斜計や伸縮計などの常時計測計器による監視ともドローン点群計測は両輪となり得ます。定点センサーが示す数値データに加え、ドローンで取得した全面の可視化データを突き合わせることで、より確実な健全性評価が可能となります。


さらに、通信ネットワーク技術の発展と組み合わせることで、遠隔地からダムの状態を監視できる時代も近づいています。ドローンによる撮影データを無線通信で即座にクラウド送信し、離れたオフィスで専門技術者が確認するといった運用が実現しつつあります。また、高精度センサーや衛星通信を融合し、1~2mmの微細な変位を24時間連続で遠隔監視する先端的な実証事例も登場しています。これらはまだ実験段階ですが、将来的には人が現場に行かずとも異常を察知できる仕組みへと発展していく可能性を秘めています。


まとめ

従来の手法では困難だったダム全体の面的な変位監視も、ドローンを活用した点群測量によって効率的かつ高精度に実現できるようになりました。ダム管理者にとって、短時間で安全に現況を把握できるドローン点群は、維持管理の強力な武器となります。初期投資や習熟のための教育は必要ですが、一度導入すればデータ取得から解析までのワークフローを自社内で完結できるようになり、継続的なモニタリングが容易になります。網羅的なデータに基づいて変位の有無を客観的に判断できるため、補修工事のタイミングや追加の詳細調査が必要かどうかといった意思決定も的確になるでしょう。ドローン点群技術はダムのみならず様々なインフラ点検に応用され始めており、今後ますます普及が進むことが予想されます。こうした技術革新はインフラ管理におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも合致しており、現場の省力化と高度化の両立に大きく寄与するものです。


さらに今後は、ドローンと組み合わせて現場での精度管理をサポートする新たな計測ツールの活用も効果的です。例えばLRTKというiPhone装着型のGNSS高精度測位デバイスを用いれば、専門的な測量機器がなくても現地で基準点座標を数センチの精度で測定できます。手のひらサイズの受信機とスマホだけで数センチ精度の測位が可能になるため、現場作業の機動性が飛躍的に高まります。こうした手軽な高精度測位技術を併用することで、ドローンで取得した点群データをその場で迅速に検証・補正したり、追加のチェックポイントを測ったりすることが可能となり、現場での即応性が高まります。なお、LRTKはその一例であり、今後もスマートフォンを活用した高精度測位技術や自律飛行ドローンなど、維持管理を支えるツールは一層進化していくでしょう。ドローンによる点群測量とスマートフォン連携の高精度測位デバイスを上手に活用して、ダムの変位監視業務をより効率的かつ確実なものへと進化させていきましょう。


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