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越境物の覚書と境界確認|後でもめにくくする5つの記載事項

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

越境物が見つかったとき、現場では「今すぐ撤去するのか」「当面はそのままにするのか」「将来建て替えるときに解消するのか」といった判断が必要になります。境界確認によって境界付近の状況を整理しても、塀、庇、雨どい、配管、排水設備、樹木、基礎、工作物などが境界を越えている場合、その扱いをあいまいにしたままにすると、売買、建築、相続、解体、隣地の所有者変更のタイミングで再び問題になりやすくなります。そこで重要になるのが、越境物の状況と今後の扱いを覚書として残すことです。


目次

越境物の覚書は境界確認の結果を前提に作成する

記載事項1:境界線と越境物の位置関係を具体的に書く

記載事項2:越境物の所有者と管理責任を明確にする

記載事項3:現状維持を認める範囲と期間を定める

記載事項4:撤去・改修・建て替え時の対応を決める

記載事項5:承継、再確認、記録保管の扱いを入れる

覚書作成時に避けたいあいまいな表現

境界確認と越境物管理を実務で進める手順

まとめ:越境物の覚書は将来の説明資料として残す


越境物の覚書は境界確認の結果を前提に作成する

越境物の覚書は、単に「隣地にはみ出している物を当面そのままにする」というメモではありません。境界確認によって土地の境界付近の状況を関係者間で確認し、その境界に対して何が、どの程度、どちら側からどちら側へ越えているのかを整理したうえで、将来の扱いを文書化するものです。境界の位置や対象範囲が不明確なまま越境物だけを話し合っても、後から「そもそもどこを前提に合意したのか」という問題に戻ってしまいます。そのため、越境物の覚書は境界確認と切り離さず、境界線の確認結果、現地の測量成果、関係者の立会結果と整合させて作成することが重要です。


ここで注意したいのは、当事者間の覚書だけで筆界そのものを変更したり、すべての権利関係を確定したりできるとは限らない点です。一般に、土地の境界という言葉には、登記や筆界の問題と、所有権の及ぶ範囲の問題が含まれることがあります。覚書は、当事者間の認識や越境物の扱いを整理する資料として有効ですが、筆界、登記、建築上の制限、行政手続き、第三者への効力については、必要に応じて専門家や関係機関への確認が必要です。


実務では、古い塀の一部、屋根の軒先、雨どい、フェンスの基礎、ブロック、排水管、給水管、桝、樹木の枝や根、擁壁の一部など、さまざまな越境物が問題になります。なかには、長年そのまま使われており、隣地同士で大きなトラブルになっていなかったものもあります。しかし、所有者が変わったり、土地を売却したり、新築や解体を行ったりすると、これまで黙認されていた状態が改めて確認対象になります。買主、金融機関、設計者、施工者、隣地所有者など、関係者が増えるほど、口頭の説明だけでは足りなくなります。


境界確認の場で越境物が見つかった場合、すぐに撤去できるものと、すぐには撤去できないものがあります。簡単に移動できる物置や鉢植えであれば、その場で是正できる可能性があります。一方、建物の一部、基礎、配管、擁壁、排水設備などは、撤去や改修に工事が必要であり、費用、工期、建物の安全性、近隣への影響を考慮しなければなりません。このような場合、現時点では現状を確認し、将来一定のタイミングで是正する、または次回改修時に協議するという整理をすることがあります。その内容を後から説明できる形にするのが覚書の役割です。


ただし、覚書を作成したからといって、すべての越境が当然に許されるわけではありません。覚書は、当事者間の認識を整理し、将来の対応方針を明確にするための文書です。土地の権利関係、建築上の制限、行政手続き、第三者への説明などには別途確認が必要になる場合があります。また、越境の内容によっては、単なる隣地間の合意では済まないこともあります。したがって、覚書は「問題を隠すための文書」ではなく、「問題を正確に見える化し、将来の紛争を防ぎやすくするための文書」として扱うことが大切です。


境界確認と越境物の整理を同時に行う場合は、現地で見た印象だけに頼らず、図面、写真、測量成果、立会記録をそろえておくと実務が進めやすくなります。越境物の位置や範囲が図面上で確認でき、写真でも現況が分かり、関係者の確認経緯が残っている状態であれば、後日説明する際の根拠が増えます。逆に、覚書に「越境物あり」とだけ書いてしまうと、何が越境しているのか、どちらの所有物なのか、どの範囲まで認めたのかが分からず、かえって紛争の火種になることがあります。


記載事項1:境界線と越境物の位置関係を具体的に書く

越境物の覚書で最初に重要になるのは、境界線と越境物の位置関係を具体的に記載することです。単に「塀が越境している」「雨どいが隣地に出ている」と書くだけでは、将来の確認資料としては不十分です。どの土地の、どの境界部分で、どの工作物が、どちらからどちらへ、どの程度越境しているのかを分かるようにする必要があります。境界確認の成果と照合できるように、対象となる土地の所在、地番、隣接する土地、境界点、境界線の位置、越境物の種類を明確にすることが基本です。


越境の程度については、可能な範囲で数値や図面を使って整理します。たとえば、境界線からおおむね何センチメートル越えているのか、越境している長さがどの範囲に及ぶのか、地上部分なのか地下部分なのか、上空部分なのかを区別します。地上の塀であれば現地で視認しやすいですが、基礎や配管のように地中にあるものは、見える範囲だけでは判断できません。その場合は、確認できた範囲と確認できていない範囲を分けて記載することが重要です。「地中部分の全容は未確認であり、確認できる範囲ではこの部分に越境の可能性がある」といった整理をしておけば、後から過度な断定をしたと受け取られにくくなります。


図面を添付する場合は、覚書本文と図面が対応していることが必要です。本文に「別紙図面の赤色で示す部分」などと書く場合でも、その図面がどの測量成果をもとにしたものか、作成日がいつか、どの範囲を示しているのかを確認しておきます。図面だけが差し替えられたり、写真だけが別管理になったりすると、後でどの資料を前提に合意したのか分からなくなることがあります。覚書の本文、添付図、写真、測量成果、境界確認書が一体として読める状態にすることが望ましいです。


写真を添付する場合も、撮影方向や撮影日を残しておくと有効です。越境物は、現地を知らない人が写真だけを見ても位置関係を理解しにくいことがあります。写真には、境界標、塀、建物、道路、隣地側の目印などが一緒に写るようにすると説明しやすくなります。近接写真だけでは、対象物の細部は分かっても、境界との関係が伝わりません。全景写真と近接写真を組み合わせ、どの写真がどの箇所を示しているのかを覚書や別紙で対応させておくことが大切です。


越境物の種類も正確に書く必要があります。たとえば「塀」と書いた場合でも、塀本体だけなのか、基礎を含むのか、控え壁を含むのかで意味が変わります。「建物」と書いた場合も、外壁、庇、雨どい、基礎、設備配管など、どの部分が対象かを区別しなければなりません。樹木の場合は、枝葉の越境なのか、幹の位置なのか、根の問題なのかによって対応が異なります。ひとつの言葉でまとめず、対象物をできるだけ具体化して記載することが、後日の認識違いを防ぎます。


また、越境物が複数ある場合は、それぞれを分けて記載します。現場では、塀の一部、雨どい、配管、植栽が同時に問題になることがあります。このとき、すべてを一文でまとめてしまうと、どの越境物についてどの合意をしたのか分かりにくくなります。各越境物ごとに、位置、範囲、所有者、扱い、将来の対応を整理することが望ましいです。覚書の中で項目を分けなくても、文章として「対象となる越境物は次のとおりである」と説明し、その後に個別の内容を丁寧に書くことで、後から読み返しやすくなります。


記載事項2:越境物の所有者と管理責任を明確にする

越境物の覚書では、その越境物が誰の所有物で、誰が管理するのかを明確にすることが欠かせません。越境している物が見えていても、所有者があいまいなままだと、修繕、撤去、事故対応、費用負担の場面で問題になります。たとえば、塀が境界付近に立っている場合、一方の所有物なのか、共有物なのか、前所有者が設置したものなのか、記録が残っていないことがあります。覚書を作る際には、分かる範囲で所有者を確認し、少なくとも当事者間でどのように認識しているかを記載しておく必要があります。


所有者の記載では、「甲所有のブロック塀」「乙所有建物の雨どい」「甲が管理する排水管」など、対象物と責任主体が対応するように書きます。所有権が明確でない場合に無理に断定すると、後で別の問題が生じる可能性があります。そのため、資料上の確認が難しいときは、「当事者間では甲が管理する工作物として取り扱う」など、所有権の断定と管理上の取り扱いを区別する表現を検討します。重要なのは、現実に誰が点検し、修繕し、必要な対応を行うのかを明らかにすることです。


管理責任を記載する際は、通常時の維持管理だけでなく、損傷や事故が起きた場合の対応も考えておくと実務的です。越境している雨どいが破損して隣地に水が流れ込む、古い塀が傾いて危険になる、樹木の枝が伸びて隣地の利用を妨げる、といった状況は十分に起こり得ます。このような場合、誰が連絡を受け、誰が現地を確認し、誰の負担で応急対応や修繕を行うのかをあらかじめ整理しておけば、感情的な対立を避けやすくなります。


特に注意したいのは、「越境を当面容認すること」と「管理責任を免除すること」は別であるという点です。隣地所有者が現状の越境を当面容認する場合でも、それは越境物の所有者が維持管理をしなくてよいという意味ではありません。むしろ、相手方の土地に影響を及ぼしている状態である以上、越境物の所有者または管理者は、点検や配慮を継続する必要があります。覚書には、現状維持を認める場合でも、越境物の安全管理、修繕、損傷時の対応は所有者または管理者が行う旨を入れておくと、責任の所在が分かりやすくなります。


費用負担についても、必要に応じて書いておきます。越境物を撤去する費用、修繕する費用、将来の改修時に境界内へ収める費用などは、当事者間の協議事項になりやすい部分です。すべてを細かく決めきれない場合でも、原則として誰が負担するのか、例外的な事情がある場合は協議するのか、第三者に損害が生じた場合はどのように対応するのかを文章にしておくと、後日の説明がしやすくなります。金額そのものを書く必要はありませんが、負担の考え方は残しておくべきです。


また、越境物の所有者が土地所有者と異なる場合にも注意が必要です。借地、賃貸、共有、相続未了、親族間利用など、実際の現場では権利関係が単純でないことがあります。土地の所有者が覚書に署名していても、越境物を設置または管理している人が別にいる場合、その人の協力がなければ実際の撤去や改修が進まないことがあります。覚書の当事者を誰にするか、関係者の同意をどこまで得るかは、越境物の内容と将来のリスクを踏まえて慎重に検討する必要があります。


記載事項3:現状維持を認める範囲と期間を定める

越境物の覚書では、現状維持を認める場合の範囲と期間を明確にすることが重要です。越境物が見つかっても、建物の構造、工事の難しさ、費用負担、隣地利用への影響を考えると、すぐに撤去できないことがあります。そのため、当事者間で「当面は現状のままとする」と合意することは実務上あり得ます。しかし、この「当面」という表現は注意が必要です。いつまで認めるのか、どの状態まで認めるのか、修繕や更新まで許されるのかが不明確なままだと、将来大きな争いにつながります。


現状維持を認める範囲は、対象となる越境物の現在の状態に限定して書くのが基本です。たとえば、既存の雨どいが境界を越えている場合、現在確認された雨どいの位置と形状については当面撤去を求めないが、増設、延長、交換、移設により越境範囲を広げることは認めない、という整理が考えられます。既存の塀であれば、現在の塀をそのまま維持することは認めても、建て替え時に同じ位置へ再設置することまで認めるのかは別問題です。覚書では、現状維持と将来の更新を分けて書く必要があります。


期間についても、できるだけ具体的に定めます。一定の日付までとする方法もありますが、越境物の場合は「建物の解体時」「塀の改修時」「工作物の更新時」「土地の売却時」「隣地で建築工事が行われる場合」など、特定の出来事をきっかけに対応を見直す形が実務に合うこともあります。たとえば、建物の庇がわずかに越境している場合、すぐに切断するよりも、将来建物を建て替える際に境界内へ収めるという合意が現実的なことがあります。この場合は、どのような工事を「建て替え」や「大規模改修」とみなすのかをできるだけ明確にしておくと安心です。


現状維持を認める場合は、隣地の利用を妨げないことも記載しておきたい点です。越境物が存在していても、隣地側が通常どおり通行、点検、建築、修繕を行える状態であれば大きな問題になりにくい場合があります。一方、越境物が隣地の建築計画、外構工事、排水計画、足場設置、車両通行などに支障を与える場合は、現状維持を認める範囲を再検討する必要があります。覚書には、越境物により相手方の土地利用に具体的な支障が生じた場合は協議する、必要に応じて是正方法を検討する、といった条項を入れておくと実務上の余地を残せます。


ただし、協議条項だけに頼りすぎるのも危険です。「必要があれば協議する」とだけ書いてあると、いざ問題が発生したときに協議がまとまらず、結局何も決まらないことがあります。そのため、協議する場面と、原則として対応すべき方向性をセットで書くことが大切です。たとえば、越境物の更新時には境界内に収める、相手方の建築工事に支障が出る場合には撤去または移設の方法を協議する、危険が生じた場合には管理者が速やかに安全措置を行う、といった考え方です。


また、現状維持を認める合意は、将来の権利関係に影響する可能性があるため、軽い気持ちで作成しないことが大切です。相手との関係が良好なときほど、「細かく書かなくても大丈夫」と考えがちですが、将来の所有者や相続人は当時の事情を知りません。覚書は、今の当事者だけでなく、将来その土地に関わる人が読んでも意味が分かるように作る必要があります。そのため、現状維持を認める理由、範囲、期間、見直し条件を丁寧に記載することが後の紛争予防につながります。


記載事項4:撤去・改修・建て替え時の対応を決める

越境物の覚書で特に重要なのが、撤去、改修、建て替え時の対応です。越境物の問題は、発見時点ですぐに解消できない場合でも、将来の工事のタイミングで解消できることがあります。逆に、そのタイミングを逃すと、再び長期間そのままになり、次の所有者や隣地所有者に問題が引き継がれてしまいます。そのため、覚書には「将来どの時点で、どのように是正するのか」をできるだけ具体的に書いておくことが大切です。


建物の一部が越境している場合、建て替え時には越境部分を解消し、新たな建物や付属設備を境界内に収める旨を記載することが考えられます。ここで注意したいのは、建物本体だけでなく、庇、雨どい、室外設備、配管、基礎、外構、排水設備なども含めて確認することです。建物本体を境界内に収めても、付属設備が再び越境すれば問題は残ります。覚書では、将来の建築や改修において、同種の越境を再発させないことを明記しておくとよいです。


塀やフェンスの越境では、撤去または改修のタイミングが問題になります。老朽化した塀を補修するだけなのか、いったん取り壊して作り直すのかで、境界内へ収めるべきかどうかの判断が変わることがあります。覚書では、既存の塀を通常の維持補修として修理する場合と、撤去して再築する場合を分けて考えることが有効です。再築する場合には、原則として越境状態を解消し、境界確認の結果に基づいて自己の敷地内に設置する、といった記載があると分かりやすくなります。


配管や排水設備の越境は、地上の工作物よりも注意が必要です。地中の設備は普段見えないため、問題が発覚するのは掘削工事、解体工事、排水不良、漏水、隣地の建築工事の際であることが多いです。覚書を作成する段階で配管の全容が確認できていない場合でも、確認できた範囲、推定される範囲、今後掘削等により判明した場合の対応を記載しておくと、後からの協議がしやすくなります。将来、配管を更新する場合には、原則として越境しない経路に改める、やむを得ず隣地を使用する必要がある場合には事前に書面で協議する、といった整理が考えられます。


樹木の越境では、枝、根、落葉、日照、管理の頻度などが問題になります。建築物や工作物とは異なり、樹木は成長するため、覚書作成時の状態がそのまま続くとは限りません。枝が境界を越えている場合、どの程度まで剪定するのか、今後どの頻度で管理するのか、隣地側に支障が出た場合に誰が対応するのかを記載しておくとよいです。根の越境は地中の状態確認が難しいため、被害や支障が生じた場合の協議方法を残しておくことが現実的です。枝や根の扱いは法律上のルールが関係することがあるため、具体的な切除や費用負担を決める場面では、現地状況と法令の確認を行うことが望ましいです。


撤去や改修の際には、事前通知の方法も決めておくと安心です。越境物を撤去する側にとっては自分の所有物を工事するだけでも、相手方の土地に接している場合や、隣地へ作業員が立ち入る必要がある場合は、事前の説明が欠かせません。覚書に、撤去、改修、更新、建て替えを行う場合は、相手方へ事前に内容と時期を通知し、必要に応じて作業範囲や安全対策を協議する旨を入れておけば、工事時のトラブルを減らせます。


また、将来の対応を決める際は、違反した場合の扱いまで細かく書くかどうかも検討します。実務上は、すべての罰則的な内容を入れるよりも、まずは是正義務、通知義務、協議義務、費用負担の原則を明確にすることが重要です。強い表現だけで相手に負担を求めると、覚書の締結自体が進まないことがあります。一方で、あいまいすぎると意味がありません。双方が履行できる現実的な内容にしながら、将来の対応方針が読み取れる文書にすることが実務上のポイントです。


記載事項5:承継、再確認、記録保管の扱いを入れる

越境物の覚書は、作成した当事者だけで完結するとは限りません。土地は売買、相続、贈与、会社の資産整理、事業承継などによって所有者が変わることがあります。越境物も、建物の建て替え、外構工事、設備更新によって状況が変わります。そのため、覚書には、将来の所有者や関係者にどのように内容を引き継ぐのか、いつ再確認するのか、どの資料を保管するのかを記載しておくことが重要です。


承継に関する記載では、当事者が土地を第三者に譲渡する場合、覚書の内容を買主や承継人に説明すること、必要に応じて関係資料を引き渡すことを定めます。特に売買の場面では、越境物の有無は買主の判断に影響する重要な情報になることがあります。売主が「昔からそのままだから問題ない」と考えていても、買主は将来の建築や売却を見据えて慎重に確認します。覚書があれば、越境物の存在、当事者間の確認内容、将来の対応方針を説明しやすくなります。


ただし、覚書の内容が当然にすべての第三者を拘束するとは限りません。そのため、承継に関する条項を入れる場合でも、「将来の所有者に内容を説明し、引き継ぐよう努める」「譲渡時には覚書の存在と内容を告知する」といった実務的な表現を用い、必要に応じて専門家に確認することが大切です。重要なのは、少なくとも当事者が覚書の存在を隠さず、次の関係者に伝える仕組みを作ることです。これにより、所有者変更後に「聞いていなかった」というトラブルを減らせます。


再確認のタイミングも記載しておくと有効です。越境物は、時間の経過によって状態が変わります。塀が傾く、樹木が成長する、雨どいが交換される、配管の位置が変わる、隣地で新たな工事が始まるなど、覚書作成時とは事情が異なることがあります。そのため、一定の工事や所有者変更があった場合には、必要に応じて現地を再確認することを記載しておくと、古い覚書に頼りすぎることを防げます。


記録保管については、覚書本文だけでなく、関連資料をまとめて残すことが大切です。境界確認書、測量図、現況図、写真、立会記録、関係者の連絡記録、工事前後の確認資料などが分散していると、後から探すのに時間がかかります。特に、会社や不動産管理の実務では、担当者が変わると過去の経緯が分からなくなりがちです。覚書を作成したら、対象地、作成日、当事者、越境物の内容、添付資料の一覧が分かるように保管し、必要なときにすぐ確認できる状態にしておくべきです。


電子データとして保管する場合も、ファイル名やフォルダ名に対象地と日付を入れ、最新版が分かるように整理します。写真だけを別の場所に保存していると、どの覚書に対応する写真なのか分からなくなることがあります。紙の原本がある場合は、原本の保管場所と写しの配布先を記録しておくと安心です。境界や越境物に関する資料は、一度必要になると短時間で提示を求められることがあります。日常的に整理しておくことが、将来の対応力を高めます。


覚書作成時に避けたいあいまいな表現

越境物の覚書では、あいまいな表現をできるだけ避ける必要があります。よくあるのは、「お互い異議を述べない」「今後も現状どおりとする」「必要なときに話し合う」「迷惑をかけないようにする」といった表現です。これらは一見すると柔らかく、合意しやすい文言に見えます。しかし、実際に問題が起きたときには、何をどこまで認めたのか、誰が何をするのかが分かりにくく、解釈の違いを生みます。


特に「現状どおり」という言葉は注意が必要です。現状とは、覚書作成時の状態なのか、将来多少変化しても含むのか、修繕や交換後も含むのかが不明確です。越境物が老朽化して一部を補修した場合、それは現状維持なのか更新なのかで意見が分かれることがあります。覚書では、現状維持を認める対象を具体的に書き、修繕、改修、交換、撤去、再築の場合の扱いを分けて記載することが望ましいです。


「迷惑をかけない」という表現も、単独では不十分です。何を迷惑と考えるかは人によって異なります。通行の妨げ、排水の流入、落葉、日照、工事の支障、心理的な圧迫感など、問題の種類は多岐にわたります。覚書では、相手方の土地利用に支障が生じた場合、越境物の破損や危険が発生した場合、修繕や撤去が必要になった場合など、具体的な場面を想定して記載するほうが実務的です。


「将来協議する」という表現も、使い方に注意が必要です。将来の事情をすべて予測することはできないため、協議条項自体は有効です。しかし、すべてを将来協議にしてしまうと、覚書を作成した意味が薄れます。少なくとも、現時点で決められることは決めておき、未確定の部分だけを協議事項として残すべきです。たとえば、撤去時期は建て替え時と定め、具体的な工事方法はその時点で協議する、という形であれば、基本方針と柔軟性の両方を確保できます。


また、越境物の覚書では、感情的な表現や相手を責める表現も避けるべきです。「無断で越境している」「違法な状態である」といった断定的な書き方は、相手との合意形成を難しくすることがあります。もちろん、事実関係として問題を明確にすることは必要ですが、覚書の目的は将来の紛争予防です。必要以上に対立的な表現を使わず、確認された事実と今後の対応を淡々と整理するほうが、実務では使いやすい文書になります。


一方で、相手に配慮しすぎて、重要な内容を書かないことも避けなければなりません。越境物の種類、範囲、所有者、管理責任、将来の是正時期、費用負担の考え方、承継時の説明などは、言いにくくても確認すべき事項です。覚書は相手を責めるためではなく、双方が後で困らないようにするための文書です。その前提を共有し、客観的な事実と実行可能な対応を中心に記載することが大切です。


境界確認と越境物管理を実務で進める手順

境界確認と越境物の覚書作成を実務で進める場合は、最初に資料の収集から始めます。公的な図面、過去の測量資料、建築時の図面、売買時の資料、過去の境界確認書、隣地との合意書、写真記録などを確認し、現地の状況と照合します。資料が古い場合や、現況と合っていない場合もありますが、過去の経緯を知る手がかりになります。最初から現地だけを見て判断すると、過去の合意や工事履歴を見落とすことがあります。


次に、現地で境界標、塀、建物、設備、樹木、道路との位置関係を確認します。境界標が見つからない場合や、境界標の位置に疑義がある場合は、専門的な測量や関係者立会が必要になることがあります。越境物は、目に見える部分だけでなく、地中や上空にも存在する可能性があります。現地調査では、写真を撮るだけでなく、どの方向から撮影したのか、どの境界部分なのか、どの資料と対応するのかを記録しておくと後で整理しやすくなります。


境界確認の場では、越境物の有無を隠さず確認します。境界の話だけを先に進め、越境物を後回しにすると、署名後に「聞いていない」と言われる可能性があります。境界確認書と越境物の覚書を同じ日に作成する必要はありませんが、少なくとも越境物がある場合は、その存在を認識したうえで、別途覚書を作成するのか、境界確認書に付記するのか、後日協議するのかを決めておくことが望ましいです。


覚書の文案を作成する際は、当事者、対象土地、境界確認の経緯、越境物の内容、現状維持の範囲、将来の対応、管理責任、承継、添付資料を順に整理します。法律的な表現を難しくする必要はありませんが、誰が読んでも意味が分かる文章にすることが重要です。専門用語を使う場合は、現地の事実と対応させて記載します。たとえば、単に「越境物」と書くだけでなく、「甲所有建物の雨どいの一部」や「乙所有地側に越境している既存ブロック塀の基礎部分」など、具体的な対象を示します。


署名や押印を行う前には、当事者が同じ資料を見ているかを確認します。本文だけでなく、添付図面や写真の内容も確認し、どの資料が覚書の一部になるのかを明確にします。複数ページになる場合は、ページの抜けや差し替えを防ぐための管理も必要です。電子データで共有する場合でも、最終版がどれか分かるようにし、署名前の案と署名後の確定版を混同しないようにします。


覚書作成後は、関係資料と一緒に保管し、必要な関係者に共有します。土地の売却、建築計画、解体工事、隣地からの問い合わせ、相続手続きなどが発生したときに、すぐに確認できる状態にしておくことが重要です。越境物の覚書は作って終わりではなく、将来の説明や管理に使う資料です。作成時の担当者だけが内容を知っている状態では、組織や家族の中で引き継ぎができません。保管方法まで含めて実務フローに組み込むことが、長期的なトラブル予防につながります。


まとめ:越境物の覚書は将来の説明資料として残す

越境物がある土地では、境界確認だけで安心するのではなく、越境物の扱いまで整理することが大切です。境界線付近の状況が確認できても、塀、建物の一部、雨どい、配管、樹木、基礎などが境界を越えている場合、そのままでは将来の売買、建築、解体、相続、隣地所有者の変更時に問題が再燃する可能性があります。覚書は、そのような将来の場面で、当時の確認内容と対応方針を説明するための資料になります。


後でもめにくい覚書にするには、境界線と越境物の位置関係を具体的に書くこと、越境物の所有者と管理責任を明確にすること、現状維持を認める範囲と期間を定めること、撤去・改修・建て替え時の対応を決めること、承継や再確認、記録保管の扱いを入れることが重要です。これらが整理されていれば、今の当事者だけでなく、将来その土地に関わる人にも経緯を説明しやすくなります。


反対に、「現状どおり」「お互い異議なし」「必要なときに協議」といったあいまいな表現だけでは、いざ問題が起きたときに判断の基準になりにくいです。越境物の覚書は、相手を責めるための文書ではなく、双方が同じ事実を共有し、将来の対応を落ち着いて進めるための文書です。現地の状況、図面、写真、境界確認の結果をそろえ、対象物ごとに具体的に記録することが欠かせません。


境界確認の実務では、現場で見たことをその場限りの記憶にせず、後から確認できる記録として残すことが大きな意味を持ちます。越境物の位置や状態を写真、図面、測量成果、立会記録と合わせて整理しておけば、覚書作成や関係者説明の精度を高めやすくなります。越境物の覚書は、問題を先送りするための書類ではなく、確認した事実と将来の対応方針を共有するための実務資料として活用することが重要です。


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