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BIM/CIMの導入を成功に導く──LRTKが変える次世代インフラDX

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万能の測量機LRTKの説明

はじめに

建設業界では慢性的な人手不足や生産性低下が深刻な課題となっており、業務のデジタル化による解決が急務です。こうした状況で注目を集めているのが BIM/CIM と呼ばれる3次元モデル活用の手法です。BIM/CIMの導入はインフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引し、設計から施工、維持管理までの 業務効率化と品質向上 に大きく寄与すると期待されています。本記事では、BIM/CIMの定義や導入メリット、直面しがちな課題とその克服法、さらには国の政策動向やインフラDXとの関連性について解説します。その上で、現場DXを支える新技術として LRTK を紹介し、他製品にはない強みや具体的な活用シナリオを提示します。BIM/CIM導入を成功に導くポイントを押さえ、未来の建設現場へ踏み出す一助となれば幸いです。


BIM/CIMとは何か──定義と国内外の動向

BIM/CIMの定義 BIMは「Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の略で建築分野の3Dモデル活用、CIMは「Construction Information Modeling(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)」と称され土木分野の3Dモデル活用を指します。日本では建築にはBIM、土木にはCIMという言葉を使い分けてきましたが、本質的には共通する概念であり、建設プロジェクト全体で共有する詳細な3次元デジタルモデルと付随情報を意味します。企画・設計段階で作成した3Dモデルに設計情報や部材属性、コストや工期など様々なデータを一元的に紐付けることで、施工から維持管理まで一貫して活用することを目的としています。その結果、関係者間で常に最新かつ正確な情報を共有でき、ミスや手戻りの削減、工期短縮などプロジェクトの生産性向上に寄与します。


国内外の普及動向 世界的にはBIMが建設業界のデジタル革新の中心技術となっており、多くの国で公共事業へのBIM適用が進んでいます。欧米やアジア各国では既にBIM活用が当たり前となっており、例えばシンガポールでは国家プロジェクトとして都市全体を3Dモデル化する「バーチャル・シンガポール」計画が推進され、2022年には完了しています。そのモデルは気候変動シミュレーション等にも活用され、日本でいうCIM的な用途まで包含しています。一方で日本はこれまでBIM/CIMの普及が海外に比べて遅れていると指摘されてきました。しかし近年は状況が大きく変わりつつあります。国土交通省は2023年4月から原則として直轄の全ての公共事業・詳細設計業務でBIM/CIMを適用する方針を実施しました(当初計画の2025年から前倒し)。この背景には、建設業でのDX促進やコロナ禍によるリモートワーク推進、人材不足の深刻化といった要因があります。2025年には時間軸を含めた4Dやコストを含めた5Dの実現、BIM/CIM標準のJIS規格化も目標に掲げられており、日本も世界に追いつくべく急速に歩みを進めています。


BIM/CIM導入がもたらすメリット

BIM/CIMを導入すると、従来の2次元図面主体の業務と比べて 様々なメリット が得られます。主な効果を整理すると次のとおりです。


設計の精度向上と合意形成の促進 3Dモデルにより設計意図を詳細まで可視化できるため、図面だけでは見落としがちな干渉や不整合を事前に発見できます。また発注者・施工者間や地域住民への説明でも直感的な理解を得やすく、関係者全員が同じ完成イメージを共有して認識ズレを減らせます。例えば住民説明会で橋梁や道路の完成予想を3Dモデルで示せば、「百聞は一見に如かず」でスムーズな合意形成につながります。

業務効率化と生産性向上 BIM/CIMではプロジェクト全体で単一のモデルを使い回すため、各工程ごとに図面を作り直す手間が削減されます。いわゆるフロントローディング効果により上流の設計段階で手戻りを防ぎ、下流の施工・検査では追加作業が減ります。その結果、工程全体の効率化と工期短縮が期待できます。実際に国交省の調査では、ICT施工導入で土工の作業時間が約3割削減され、舗装・浚渫では約4割短縮されたとの報告があります。特にBIM/CIM活用に限ると1日あたりの作業量が最大60%削減され、数量計測業務で54%もの効率化が実証されています。土工現場では導入後に全体の 77%もの業務削減効果 が得られたケースもあり、BIM/CIMの生産性向上効果の大きさが伺えます。

施工管理の高度化(品質・安全向上) BIM/CIMモデルを用いることで、施工現場での進捗管理や検査が飛躍的にやりやすくなります。例えば施工中にタブレットやARデバイスで 最新の3D図面を常に確認 できれば、設計とのズレをその場で検知し是正できます。出来形(施工完了物)検査でも、完成モデルと現況を重ねて誤差を色分け表示するヒートマップを用いれば、追加施工すべき箇所が一目瞭然です。また属性情報を持つモデルから寸法・高さを直接読み取って現物と比較できるため、図面を逐一参照する手間も省けます。これらによりヒューマンエラーの防止や手戻り削減につながり、品質確保と安全性向上に寄与します。

維持管理・資産管理への活用 竣工後もBIM/CIMモデルは価値を発揮します。構造物の点検時に過去記録したひび割れ位置をモデル上にAR表示して現物と照合したり、将来的な補修計画を3D上で検討するといった応用も可能です。地下埋設物の位置をGISデータと組み合わせてAR透視表示すれば、掘削工事の際に既設インフラ損傷を防ぐ手助けになります。このように BIM/CIMはライフサイクル全般で情報共有を円滑にし、無駄やリスクを削減する 切り札といえます。


以上のように、BIM/CIM導入によるメリットは設計段階から施工、維持管理に至るまで幅広く及びます。日本でもBIM/CIM適用件数は年々増加傾向にあり、2012年に11件だったものが2017年には132件に達するなど、効果への確かな手応えから普及が加速しています。今やBIM/CIMは建設DX推進に欠かせない基盤技術となりつつあります。


BIM/CIM導入時の課題と克服へのアプローチ

メリットが大きいBIM/CIMですが、実際に導入運用するにはいくつかの 課題 に直面します。代表的な課題とその克服策を見てみましょう。


初期コストと運用負担 BIM/CIMを始めるには3D対応の設計ソフトウェアや高性能PC、クラウド環境などへの投資が必要です。また既存図面資産の3D化やデータ整備にも時間と費用がかかります。特に中小企業にとって初期費用の負担は重く、導入に二の足を踏む一因となっています。この克服には、国や業界団体による補助金・支援策の活用、段階的なスモールスタート(まず一部プロジェクトや特定業務で試行導入する)などが有効です。最近では安価なBIM対応ツールやクラウド型サービスも登場しており、無理のない範囲から部分的にDXを進めて効果を検証し、徐々に全社展開する アプローチが現実的でしょう。

人材・スキル不足 BIM/CIMを使いこなすには3DモデリングやICTに明るい人材が必要ですが、建設業界ではまだまだ経験者が限られています。社内に専門チームを設けようにも人材獲得・育成が追いつかず、宝の持ち腐れになるケースもあります。対策として、外部のBIMコンサルタントや技術者に協力を仰ぐ、ベンダーのトレーニング講習を活用する、若手社員のデジタルスキル育成に積極投資するなどが挙げられます。またツール面でも、専門知識がなくても扱えるユーザーフレンドリーなソリューションを選ぶことが大切です。例えば直感的な操作インターフェースや自動化機能を備えたツールを導入すれば、研修に時間をかけず即戦力として現場に投入できる でしょう。後述するLRTKのように、現場作業員でもすぐ使い始められるデバイスは人材不足解消の切り札となり得ます。

業務フローの変革への抵抗 長年2D図面と紙ベースで業務を行ってきた企業ほど、BIM/CIMによる業務プロセス変革への心理的抵抗が生じがちです。「現場に合うのか不安」「導入しても現場が追いつかないのでは」といった声も少なくありません。しかしBIM/CIMはあくまで手段であり、目的はより少ない人員で効率よく高品質な仕事をすることです。経営層から現場までがその目的を共有し、小さな成功事例を積み重ねることで社内の理解を得ることが重要です。トップダウンの推進だけでなく、現場からDXを盛り上げるボトムアップの取組みも奨励し、成功体験を社員同士で共有することで抵抗感は次第に薄れていくでしょう。


これら課題に対しては、政府もガイドライン整備や事例公開を通じて導入支援を行っています。例えば国交省はBIM/CIMモデルの作成・活用手順を示す「BIM/CIM導入ガイドライン」を最新版公開し、適用プロジェクトでの具体的な運用方法を提示しています。また業界全体で標準データ形式(IFCなど)の普及や、関係者間でデータ共有するCDE(共通データ環境)の整備も進んでいます。自社単独で抱え込まず、国や業界のリソースも活用しながら段階的にBIM/CIMを根付かせていく ことが、導入成功への近道といえるでしょう。


インフラDXとBIM/CIM──政策的背景と業界の潮流