2025年現在、建設業界においてBIM(Building Information Modeling、ビルディング・インフォメーション・モデリング)は革新のキーワードとなっています。BIMは建物の形状に加え、構造・設備・材料・コストなどのあらゆる情報を3Dモデル上で一元管理できる技術であり、従来の2次元図面では困難だった高度な情報共有・連携を可能にします。BIMを中核に据えたデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進み、プロジェクトの計画・設計から施工・維持管理に至るまで、業務プロセスに大きな変革が起きています。政府の推進策や技術革新により、中小企業を含めた幅広いプレイヤーがBIM導入に乗り出し、新たな潮流が次々と生まれています。AIの活用やデジタルツイン、クラウド協働、VR/ARとの連携、さらには環境配慮など、2025年のBIMを取り巻くトレンドは多岐にわたります。本記事では、2025年版のBIM最新動向を紐解き、今後の未来予測について考察します。これらの動きが業界にどのような変化をもたらすのか、具体例やデータを交えながら解説していきます。
2025年のBIM最新動向
2025年に注目すべきBIMの最新トレンドとして、以下の5つが挙げられます:
• AIの統合(生成AIとBIMの融合): 建築の設計プロセスにAI(人工知能)を取り入れる動きが加速しています。生成AIが設計パラメータをもとに多数のプランを自動提案することで、これまで数週間かかっていた基本設計の検討が数日に短縮されるなど、設計業務の劇的な効率化が実現しつつあります。AIが設計者のアイデアを支援し、繰り返し作業を自動化することで、設計者はより創造的な業務に注力できるようになります。
• デジタルツイン(IoT連携によるリアルタイム管理): BIMモデルとセンサーなどIoTデバイスを連携させ、建物やインフラのデジタルツイン(双子のデジタルモデル)を構築する取り組みが進んでいます。リアルタイムで設備の稼働状況や環境データをモニタリングし、異常の予兆を検知したりエネルギー消費を最適化したりすることで、維持管理の効率化とコスト削減が可能になります。例えばビルディングオートメーションとBIMを組み合わせ、遠隔から建物の状態を管理するスマートビルディングの事例も登場しています。
• クラウドBIMによるリモート協同作業: インターネット上のクラウドプラットフォームを介してBIMデータを共有し、地理的に離れたチームでもリアルタイムに共同作業ができる環境が整いつつあります。クラウドBIMを活用することで、設計者・施工者・施主といった関係者全員が常に最新のモデルにアクセスでき、図面やファイルのやり取りによるタイムラグを解消できます。リモートワークの普及も相まって、クラウド上でBIMを運用するスタイルが新たな標準となりつつあります。
• VR/AR技術との融合: BIMモデルをもとに、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を活用するケースも増えています。VRによって完成後の建物内部をウォークスルー形式で体験でき、施主へのプレゼンやデザイン検証に役立っ ています。さらに、ARグラスやタブレットを用いて施工現場でBIMモデルを現実空間に重ねて表示することで、配管や配筋の位置を現物合わせする手間が減り、施工ミスの防止に直結します。安全教育や技術者の訓練にもVR/ARの活用が期待されており、実際に新人作業員の安全訓練にVRで高所作業や災害シミュレーションを疑似体験させる試みも始まっています。
• 環境配慮とLCA連携: 脱炭素やSDGsへの関心の高まりを受け、BIMを環境分野に活用する動きも注目されています。BIMモデルのデータを用いて建材の炭素排出量やエネルギー消費を算出・シミュレーションし、LCA(ライフサイクルアセスメント)に組み込むことで、環境負荷を定量的に評価できます。設計段階から省エネ性能やカーボンフットプリントを見える化し、環境に優れた建物づくりに反映させる取り組みが広がっています。今後、環境性能の評価は行政からの要請も強まると予想され、BIMを通じた持続可能な設計手法が業界標準となっていくでしょう。
BIM普及を促進する政策と市場動向
日本におけるBIM推進の背景には、国主導の政策と市場環境の変化があります。国土交通省は2023年度以降、一部の小規模工事等を除くほぼ全ての公共事業でBIM/CIMの原則適用を進めています。設計段階では3Dモデルによる空間検討、施工段階では干渉チェックや数量積算、維持管理では属性情報の活用といったBIM活用が求められ、国直轄工事を中心に段階的に実装が進みました。また、監督・検査のデジタル化も推進されており、紙の図面提出に代わる電子納品や、遠隔から現場状況を確認するリモート臨場(オンライン立会い)の実証も進んでいます。これにより、現場管理の効率化が進むとともに、人手不足への対応策としても期待されています。こうした政府主導の取り組みは民間にも波及し始めており、大手ゼネコンでは施工BIM専門チームの設置や社内マニュアル整備が進み、今後は地方自治体や中小企業にもBIM活用が広がると見込まれます。
さらに、2025年度からは建築確認申請の電子化が本格的にスタートします。建築確認の審査手続においてBIMモデルで図面審査を行える環境整備が進められており、まずは2026年春から一部の自治体でBIMデータを用いた確認申請が始まる予定です。2029年にはBIMを活用した図面審査が本格導入される見通しで、行政手続にもBIMが組み込まれることで、設計から申請まで一貫したデジタルフローが実現しようとしています。
また、BIM活用を後押しするための補助金制度も整備されています。2024年度まで実施された「建築BIM加速化事業」は、2025年度から内容を拡充した「建築GX・DX推進事業」へと移行しました。この制度では、BIMを導入し業務効率化に取り組む企業に対し、設計業務で最大3,500万円、施工業務で最大5,500万円(条件あり)の補助金が交付されます。中堅・中小企業や地方自治体も対象となっており、申請にはBIM活用計画書の提出やIFC形式でのデータ連携方針の明記が必要ですが、BIMに消極的だった小規模プレーヤーでも導入に踏み切りやすい環境が用意されています。こうした支援策により、業界全体でBIM活用の底上げが図られている状況です。
国はまた、長期的なビジョンとして「i-Construction 2.0」を掲げ、2040年までに建設現場の生産性を1.5倍、高齢化に対応しつつ人手を30%削減する目標を示しました。この中核技術としてBIM/CIMが位置づけられており、3Dモデルで設計・施工・維持管理の情報を一貫管理することや、現場のデジタルツインを用いてリアルタイムに進捗や安全状況を把握する仕組みの導入が想定されています。これにより、将来的には現場の見える化・省力化・高度な予測保守が可能になると期待されています。
市場動向としても、BIMは成長分野です。ある調査によれば世界のBIM市場規模は2025年に約100億ドル、2030年には約1.9倍の190億ドルに達する見通しで、年率10%以上の高成長が続くとされています。日本のBIM市場も今後急拡大が予測されており、2025年から2033年にかけて年平均14%超で成長し、2033年には約26億ドル(約3900億円)規模に達するとの分析があります。2025年には国土交通省が「BIM活用促進ポータルサイト」を開設し、最新情報やガイドラインを共有するなど官民連携した普及促進の動きも活発化しています。海外ではイギリスやシンガポールなど、公共プロジェクトでいち早くBIMを義務化した国もあり、それらの国々ではBIMが当たり前の存在となっています。日本もこうした世界の流れに沿って、業界全体でBIMの活用を推進している段階と言えるでしょう。
BIMがもたらす主なメリット
• 完成イメージの可視化と合意形成: BIMにより施主・設計者・施工者が共通の3Dモデルをリアルに共有できるため、認識のずれを防いで合意形成をスムーズにします。完成予想をVR等で体験したり、計画段階で細部まで視覚 化できることで、施主の要望を正確に反映した設計が可能になります。
• 設計・施工の効率化とコスト削減: 設計から施工まで情報が一元化されているため、図面の描き直しや現場での手戻りが減少します。BIMモデル上で干渉チェックを行うことで施工前に衝突や不整合を発見でき、施工ミス防止につながります。その結果、工期短縮や人件費削減が期待でき、実際に工事コストを約20%削減し、設計作業時間を30%短縮できた事例も報告されています。
• 品質向上とミスの低減: BIMにより建物情報が詳細かつ正確に管理されるため、設計や施工の品質が向上します。構造・設備間の干渉を事前に解消し、複雑な設計変更もデータ連携により漏れなく反映できるため、ヒューマンエラーが減少します。結果として、構造計算ミスが50%減少したとのデータもあり、安心・安全な建築物の実現に寄与します。
• 維持管理・リノベーションへの活用: 施工後もBIMモデルは価値を持ち続けます。引き渡し後の建物管理では、BIMデータを設備管理や定期点検に活用することで、維持管理業務の効率化が図れます。また、既存建物の改修や増築の際には、現況をBIMで再現し、新旧のプランを3Dで比較しながら検討できます。これによりリノベーション計画の精度が高まり、将来的な建物のライフサイクルコストの最適化にもつながります。
BIM導入の課題
• 人材育成と運用スキル: BIMソフトの操作には従来の2D CADとは異なる専門知識が必要で、人材育成が大きな課題です。経験豊富な技術者でもBIMの習得には時間を要し、中小企業では研修のための時間や人的余裕が不足しがちです。BIMを使いこなせる人材の確保・育成が業界全体のボトルネックとなっています。
• 導入コストとROI: BIM対応のソフトウェアライセンスや高性能PCの導入費用、社員研修のコストなど、初期投資が大きい点も普及の妨げです。小規模事業者にとっては、導入コストに見合う十分な効果(ROI)が得られるか不安があり、現状のまま2D図面で問題なく業務が回っていることから様子見とするケースもあります。
• 従来業務との両立: BIMへ一足飛びに完全移行するのは難しく、当面は従来のCADとBIMを併用する必要があります。このため設計データの二重管理や、担当者間での情報伝達に手間が増えるなど、一時的に生産性が低下する懸念があります。また、協力会社や職人がBIMに対応していない場合、折角の3Dデータを活かしきれず、データ連携のメリットが発揮されないこともあります。
• 社内文化とワークフローの変革: BIMを真に活用するには、単にツールを導入するだけでなく、社内の設計・施工フロー自体を見直す必要があります。部署間の連携強化や情報共有のルール作りなど変革が求められますが、こうした文化・プロセス改革には時間とマネジメント層のコミットメントが必要です。現場からは「日常業務に追われて切り替えの余裕がない」という声もあり、トップダウンでDX推進を後押しする組織的な取組みが鍵となります。
こうした課題に対処すべく、国土交通省や業界団体はBIM活用ガイドラインの策定や人材教育プログラムの充実を進めており、環境整備が着実に進行しています。課題を乗り越えた先には、BIMが当たり前に使われる新時代の建設プロセスが実現するでしょう。
まとめと今後の展望
BIMの最新動向を踏まえると、今後ますますBIMは建設プロジェクトの中核に据えられていくと考えられます。各種テクノロジーとの融合や業務プロセスの変革を通じて、設計・施工から維持管理まで一貫したデジタルな情報連携が実現すれば、建設業界は生産性の飛躍的な向上と働き方の大きな変化を迎えるでしょう。図面や書類中心だったコミュニケーションは3Dモデルとデータ共有が当たり前となり、現場ではタブレットやARグラスでモデルを確認しながら施工する姿が一般化するかもしれません。さらに、BIMモデルを活用した建設ロボットや自動施工の技術も現実味を帯びてきています。将来的には、ロボットがBIMデータを参照しながら配筋や溶接を行うなど、現場作業の一部が自動化されることで、生産性と安全性が飛躍的に向上する可能性もあります。さらに、BIMデータを直接活用して建築部材を工場生産し、現場で効率的に組み立てるプレハブ工法(モジュール工法)の普及も見込まれます。設計段階から精密な製造情報を盛り込むことで、部材の無駄削減や工期の大幅短縮が期待できます。
こうしたBIM時代の到来に合わせて、現実世界の情報を的確にデジタル化する技術も重要性を増しています。 例えば、スマートフォンに装着できる小型GNSS端末のLRTKを使えば、誰でも簡単に高精度な測量(RTK測位)を行うことができます。高額な専用機器を用意しなくても、手のひらサイズのデバイスでセンチメートル単位の測位が可能になるのです。ドローン空撮やLIDAR計測と組み合わせた簡易測量のソリューションを活用すれば、現地の地形や出来形を迅速にデータ化してBIMモデルに反映でき、設計の初期段階から正確な現況情報を踏まえた検討が可能になります。BIMと現場をシームレスにつなぐこのような技術は、今後一層注目を集めるでしょう。
2025年以降、BIMを取り巻く環境はますます進化し続けます。業界全体がこれらの流れに乗り遅れず、積極的にBIMと関連技術を活用していくことで、生産性向上だけでなく安全性や持続可能性も飛躍的に高まる未来が期待できます。BIM最新動向と未来予測をしっかりと把握し、新たな技術にも柔軟に対応することで、建設業界はこれから大きく変わっていくでしょう。私たちもこの波に乗り、未来のスタンダードとなるBIM活用に取り組んでいきたいものです。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

