top of page

BIM vs CAD 徹底比較!建設DXをリードするのはどっち?

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均4分45秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

建設業界では近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せています。その中心的な存在として注目されるのが BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と、それ以前から長く使われてきた CAD(コンピュータ支援設計)です。図面作成ツールとして普及したCADに対し、BIMは建物情報を3次元モデルに集約する次世代の手法として登場しました。では、両者には具体的にどのような違いがあり、建設DXを牽引するのはどちらなのでしょうか。本記事ではBIMとCADを徹底比較し、それぞれの特徴やメリット・デメリット、そして建設業界のDXに与えるインパクトについて解説します。


CADとは?

まずはCADについて確認しましょう。CADとは「Computer Aided Design」の略で、日本語では「コンピュータ支援設計」と訳されます。もともと手作業で行われていた図面作成や設計作業を、コンピュータの力で効率化する目的で生まれた技術です。1960年代に初期的な2次元CADシステムが登場し、1970年代には3次元CADの原型が開発されました。本格的に建築設計の現場へ普及したのは1990年代以降で、以降20年以上にわたり建設業界の設計手法の中心を担ってきました。


CADソフトウェアを使うことで、建築図面(平面図・立面図・断面図など)を正確かつ素早く描けるようになり、製図板と製図ペンでの作業に比べ生産性が飛躍的に向上しました。また、図形のコピーや修正が容易になり、設計変更への対応スピードも改善しています。当初は2D CADが主流でしたが、近年では3Dモデリング機能を備えたCADソフトも登場し、建物の形状を立体的に表現することも可能です。ただし、CADは基本的に図面作成ツールであり、描かれた線や形状そのものに付随する情報(素材やコストなど)は持っていません。設計図面の作成・編集に特化したツールと言えるでしょう。


BIMとは?

続いてBIMについて解説します。BIMは「Building Information Modeling」の略称で、建築物に関するあらゆる情報を3次元モデルに統合して管理するデジタル技術のことです。平たく言えば、「コンピュータ上に建物そのものを仮想構築する」イメージです。BIMソフト上で柱・梁・壁・設備機器といった要素を配置して建物全体のモデルを作成すると、そのモデルには形状だけでなく部材の仕様、数量、材質、コスト、工期など様々な属性データが紐付いて格納されます。


BIMの大きな特徴は、一つの3Dモデルから図面や数量表などあらゆる成果物を自動生成できる点です。例えばBIMモデルから平面図や立面図を切り出すと、常にモデルと一致した図面が得られます。設計内容に変更が生じても、3Dモデル上で修正すれば、関連する平面図・立面図・断面図・仕上表などが一括して更新されます。これにより図面間の不整合が起きず、従来CADで起こりがちだった"平面図では直っているのに立面図が古いまま"といったミスを防げます。また、BIMモデルには属性情報が豊富に含まれるため、設計から施工、維持管理まで建物ライフサイクル全体で情報を共有・活用できるプラットフォームとなります。


BIMとCADの違い

BIMとCADには様々な相違点がありますが、特に重要なのは扱う情報の範囲設計プロセスのアプローチの違いです。以下に主な違いをまとめます。


データの情報量: CADが管理するのは線や形状といったジオメトリ情報が中心で、部材の意味や属性は人間が図面を読み取って理解するものでした。一方BIMでは、モデル要素ごとに材質・寸法・性能・コストなどの情報をデータとして保持しています。例えばCAD図面上の一本の線は単なる線分に過ぎませんが、BIMモデル上の壁は「鉄筋コンクリート造・厚さXXmm・耐火構造」といった具合にオブジェクトとして情報を持つのです。これによりBIMモデルは設計だけでなく積算や維持管理のデータソースにもなり得ます。

3次元モデル作成の手順: CADではまず2Dの図面を描き、その後必要に応じて断面を起こしたり3Dモデルを組み立てたりします。基本的には2Dから3Dの流れです。そのため設計後半に変更が出ると、2D図面から描き直しになるケースがあり手戻りが生じやすい構造でした。対してBIMでは最初から3Dモデルを構築し、2D図面はモデルから自動生成するというアプローチを取ります。常に3Dが原本のため、一部を修正しても即座に他の図面へ変更が反映され、手戻り作業を大幅に削減できます。

コラボレーション方法: CAD時代は図面ファイル(例えばDWGやDXFなど)を設計者ごと・分野ごとに個別に作成し、整合チェックは人手で行っていました。各担当者が別々の図面を管理するため、情報共有や版管理にも気を遣う必要がありました。BIMでは一つのモデルを複数人で同時に編集したり、構造・設備モデルを統合して干渉チェック(クラッシュチェック)を自動で行ったりできます。クラウド上でBIMモデルを共有すれば、リアルタイムに全員が最新情報を把握でき、設計・施工チーム全体での協調作業が容易になります。

活用範囲: CADは主に設計図書の作成ツールであり、完成した図面は施工段階で利用されますが、その後の維持管理フェーズでは図面が参照される程度でした。BIMは施工中の進捗管理や出来形検査、竣工後の設備管理・改修計画立案などにも活用でき、建物のデジタルツインとして機能します。例えばBIMモデルから数量を算出して見積もりに利用したり、センサーと連携して運用中の建物の性能をモニタリングするといった応用も可能です。


以上のように、BIMとCADは単なるツールの違いに留まらず、設計・施工プロセス全体の考え方に違いがあります。CADが製図作業のデジタル化だったのに対し、BIMは建設プロジェクトの情報連携そのものをデジタル化・一元化する点で、より踏み込んだ変革をもたらす技術と言えるでしょう。


BIMのメリット

BIMを導入・活用することで得られる主なメリットを見てみましょう。


図面の不整合が解消される: 前述の通り、一つのBIMモデルから図面を生成するため、平面・立面・断面の齟齬が生じません。設計変更時も修正漏れがなく、ヒューマンエラーによる手戻りを削減できます。結果として設計品質が向上し、施工段階でのミスや手直しも減少します。

情報共有とコラボレーションの促進: BIMモデル内に設計意図や仕様情報が集約されているため、関係者間でデータを共有しやすくなります。クラウド対応のBIMプラットフォームを使えば、建築主・設計者・施工者が同じモデルを参照しながら打ち合わせでき、コミュニケーションロスが大幅に低減します。結果として意思決定の迅速化や、設計変更による影響範囲の即時把握が可能になります。

生産性とコストの向上: BIMの活用によって設計から施工のプロセスを効率化できる事例が多く報告されています。例えば複数の設計者が同時にモデルを編集できるため設計期間を30%程度短縮できたケースや、干渉チェックの自動化で施工現場の手戻り削減につながった例があります。また数量拾い出しや積算作業をBIMソフトが自動で行うことで、見積作業のスピード・精度が向上し、コスト管理の精度も高まります。

可視化による合意形成: BIMは高度な3Dビジュアルを提供するため、建築主や非技術者に対しても完成イメージを分かりやすく提示できます。設計段階でのパースやウォークスルーによって早期にクライアントの合意を得やすくなり、変更による無駄を防ぎます。さらにVR/AR技術と組み合わせれば、計画中の建物を仮想空間で体験するといったプレゼンも可能です。

ライフサイクルでの効率化: BIMモデルに蓄積された情報は施工や維持管理にも活用できます。施工段階では4Dシミュレーション(3D+時間)により工事工程を可視化して段取りを最適化でき、完成後は設備情報をBIMに紐付けておけば維持管理システムとして機能します。設備の点検履歴や部材の交換時期をBIM上で管理し、将来の改修計画に役立てることも可能です。


BIMのデメリット

一方で、BIMには導入・運用にあたって注意すべき課題も存在します。


導入コスト・学習コストが高い: BIMソフトウェアのライセンス費用は従来型のCADに比べて高額な場合が多く、また高性能なPCや周辺機器への投資も必要になることがあります。さらにBIMを使いこなすには専門知識とスキルが要るため、社員教育や社内の運用ルール整備にもコストと時間を要します。初期導入時のハードルが高いことが、中小企業などでBIM普及が進みにくい一因となっています。

データが重い: BIMモデルは情報を盛り込むほどデータ容量が大きくなり、扱うファイルも巨大化しがちです。建物規模によっては数百MBから数GBに及ぶモデルデータとなり、快適に操作するには高スペックPCや高速ネットワーク環境が必要です。対策としてプロジェクトを分割してファイルを分ける、不要な詳細情報を簡略化する、といった運用上の工夫も求められます。

定着に時間がかかる: BIMは従来の設計プロセスを大きく変えるため、現場への定着に時間がかかります。部門横断的な協力体制や、新しいワークフローへの理解が必要で、社内調整や試行錯誤の期間を見込まなければなりません。また、まだ一部ではBIMに対応できていない協力会社もあり、プロジェクトによっては完全にBIMだけで進められず部分的にCAD図面に頼るケースもあります。


CADのメリット

次に、従来から使われるCADにも依然として利点があります。


操作や導入が手軽: CADは何十年にもわたり使われてきたため、使い慣れた技術者が多く存在します。インターフェースも洗練されており、基本的な2D製図であれば短期間の習熟で誰でも描けるようになります。またBIMソフトと比べると価格が安価な製品が多く、中には無償のCADソフトも存在します。導入コスト・教育コストの低さは小規模事業者にとって大きな魅力です。

軽快な動作とファイルの小ささ: CADデータは主に線と図形情報のみで構成されるため、ファイルサイズが小さく処理も軽快です。普通のパソコンでも問題なく動作し、メール添付等で図面データをやり取りするのも容易です。BIMのように高度なGPUや大容量メモリを必要としないため、ハードウェア要件が低くて済みます。古いPCしかない現場やネット環境が限られる場合でもCADなら対応できるという強みがあります。

用途に応じた柔軟な使い方: CADソフトには建築専用から汎用まで様々な種類があり、目的に応じて選択できます。2D図面で十分な作業(簡単なレイアウト変更や詳細図作成など)であれば無理にBIMを使わずCADで素早く対応する方が効率的です。特に図面枚数が少ない小規模案件では、BIMモデルを構築するよりCADで直接図面を引いた方が早いケースもあります。こうした状況に応じた使い分けができる点も、CADの依然強みと言えるでしょう。


CADのデメリット

しかし、CADにも弱点があります。


図面修正の手間とミス: 複数の図面が別々に存在するCADでは、設計変更のたびに関連する全ての図面を人手で修正しなければなりません。その過程で修正漏れやミスが起こりやすく、図面間の不整合につながります。特に建物が複雑になるほど整合性チェックは大変になり、設計者の負担増大やヒューマンエラーのリスクが高まります。

情報活用範囲の限界: CAD図面には描かれた内容以外の情報が含まれないため、図面を見ただけでは数量集計や性能分析は行えません。例えば材料数量を算出するには図面から手作業で拾い出す必要があり、時間がかかるだけでなく漏れや読み違いの可能性もあります。また出来上がった図面は主に施工に使われるだけで、その後の維持管理では紙図面として保管される程度で、データが継続的に利活用されることはあまりありません。

3D対応の遅れ: 最近では3次元CADもありますが、伝統的にCADといえば2次元図面が主体でした。そのため立体的・複雑な形状の検討や可視化プレゼンでは限界があります。BIMであればモデルを回転させてあらゆる角度から建物を検討したり、即座に断面を切って中身を確認したりできますが、2D CADではどうしても表現力に制約があります。結果として、設計意図の共有や合意形成に時間がかかる場面も出てきます。


建設DXにおけるBIMの役割

こうした比較を踏まえ、建設DX(デジタル変革)をリードするのはBIMであると断言してよいでしょう。DXとは単なるデジタル化ではなく、デジタル技術によって業務プロセスやビジネスモデルを抜本的に変革することです。BIMはまさに建設プロジェクトの進め方を根本から変える可能性を持っています。


例えば、従来は設計図書と口頭のやり取りに頼っていた施工者への情報伝達も、BIMを使えばモデル上で詳細まで共有できます。部材の発注やプレハブ化もBIMデータを元に自動化が進められます。さらに、IoTセンサーで取得した建物の実際の稼働データをBIMのデジタル模型に反映させることで、デジタルツインによる運用最適化や予防保全も実現しつつあります。こうした取り組みは、単に効率化に留まらずビジネスそのものの変革(トランスフォーメーション)につながっています。


日本においても、政府主導でBIMの活用が推進されています。国土交通省は建築確認申請の電子化の一環として、2026年から「BIMによる図面審査」を開始し、2029年にはBIMデータ自体を提出・審査する仕組みを導入する計画を発表しました。これは行政手続にもBIMを本格導入する動きであり、業界全体でBIM活用が前提となっていくことを意味します。また、大手ゼネコンの多くは既に社内標準をBIM中心に移行しつつあり、関連企業や設計事務所にもBIM対応が求められる場面が増えています。こうした潮流からも、建設DXの主役はBIMであるといえます。


BIMとCADの使い分け

とはいえ、現実のプロジェクトではBIMとCADを状況に応じて併用するのが一般的です。すべてをいきなりBIMに切り替えるのは難しく、プロジェクト規模や目的によって適材適所で使うのが賢明でしょう。例えば、図面枚数が少ないリフォーム工事や簡易な構造物の設計では、無理にBIMモデルを作るより従来型の2D CADでさっと図面を起こした方が早い場合があります。一方で、意匠・構造・設備が絡む大規模建築や、将来的な施設管理まで見据えた案件ではBIMなしで進めると後々非効率になりかねません。


移行期である現在は、CADで作成したデータを部分的にBIMに取り込むケースや、その逆にBIMモデルから必要な図面だけを書き出してCAD形式で納品するといったハイブリッド運用も行われています。重要なのは、BIMとCADそれぞれの強みと弱みを理解した上で、自社やプロジェクトの状況に適した手法を選択することです。徐々に社内のBIMスキルを高めていき、扱えるプロジェクトの範囲を広げつつ、必要に応じてCADも活用することで、無理なくDXを進めることができます。


おわりに:建設DXを加速するために

BIM vs CADの比較を総括すると、建設DXをリードするのはBIMであるものの、CADにも依然役割があり、両者をうまく使い分けることが現場の実情に即したアプローチだと言えます。BIMは情報集約とプロセス革新により、これまでにない効率化と価値創出を可能にします。一方CADは軽快さと手軽さで今なお有用なツールです。重要なのは目的(何をDXで実現したいか)に応じて最適な手段を選ぶことです。


また、BIM導入を成功させるには現場のデジタルデータをいかに取得するかも鍵になります。例えば既存建物の改修でBIMを作成するには、現況を正確に計測してデジタル化する作業が不可欠です。近年、この点で画期的なソリューションとして登場したのが LRTK(エルアールティーケー) です。LRTKはスマートフォンに装着して使える小型の高精度GNSS受信機で、誰でも簡単にセンチメートル精度の測位が可能になります。専用アプリを使えば、スマホひとつで測点の計測や3Dスキャンができ、そのデータをクラウドで共有するといったことも実現します。従来は高価な機材や専門知識が必要だった測量作業を手軽にすることで、現場DXのハードルを大きく下げるツールと言えるでしょう。


BIM活用と現場測量技術の進化は、車の両輪のように建設DXを前進させます。もし「まずは小さなステップからデジタル化を試してみたい」とお考えなら、スマホで始められる[LRTKによる簡易測量](https://www.lrtk.lefixea.com/)に挑戦してみるのも一案です。最新技術を上手に取り入れつつ、自社のペースでDXを推進していきましょう。本記事がBIMとCADの理解を深め、皆様の建設DXへの取り組みのヒントになれば幸いです。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page