top of page

ARで避難経路を現地に示す5つの防災活用法

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均6分30秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

災害時の避難経路は、図面や掲示物で決めているだけでは十分に伝わらないことがあります。平常時には理解できているつもりでも、停電、煙、混雑、道路冠水、施設内の動線変更などが重なると、どちらへ進むべきか判断に迷う場面が生まれます。ARは、現地の風景に避難方向、危険箇所、集合場所、通行止め情報などを重ねて示せるため、防災訓練や施設管理、工事現場、地域防災の説明で役立つ可能性があります。ただし、ARだけに頼るのではなく、掲示、放送、誘導員、紙の地図、非常灯、避難標識などと組み合わせ、実際の避難行動を支える補助情報として設計することが大切です。


目次

ARで避難経路を現地表示する基本的な考え方

活用法1 現地の風景に進行方向を重ねて迷いを減らす

活用法2 危険箇所と通行できない場所を事前に共有する

活用法3 避難場所と一時集合場所までの距離感を伝える

活用法4 訓練時の確認記録として避難行動を見直す

活用法5 災害種別ごとに経路を切り替えて説明する

AR防災活用で注意したい運用と安全確認

まとめ


ARで避難経路を現地表示する基本的な考え方

ARで避難経路を示す目的は、現地で「どちらへ進めばよいか」を直感的に理解しやすくすることです。従来の避難案内では、平面図、館内図、掲示板、口頭説明、訓練時の誘導などが中心になります。これらは重要な情報源ですが、図面上の位置と実際に立っている場所を頭の中で対応させる必要があります。建物に慣れていない来訪者、広い敷地にいる作業員、複数の棟を行き来する職員、地下や立体駐車場の利用者にとっては、図面を見ても現在地と進行方向をすぐに判断できないことがあります。


ARを使うと、スマートフォンやタブレットなどの画面を通して、目の前の通路、階段、出入口、交差点、広場などに矢印や注意表示を重ねて見せることができます。たとえば、廊下の分岐点で進む方向を矢印で示したり、非常口の位置を強調したり、通常は見落としやすい段差や狭い通路に注意喚起を出したりできます。これにより、現地の状況と避難情報が結び付き、説明する側も受け取る側も同じ風景を見ながら確認できます。


ただし、ARは万能な防災手段ではありません。災害時には通信障害、停電、端末の電池切れ、画面の視認性低下、利用者の混乱などが起こり得ます。そのため、ARは避難標識や非常放送の代わりではなく、平常時の訓練、事前説明、危険箇所の共有、施設利用者への案内補助として位置付けるのが現実的です。実際の避難誘導では、法令や施設ごとの防災計画、自治体のハザード情報、消防計画、管理者や誘導員の判断を優先する必要があります。


ARで避難経路を示す場合は、まず「誰に、どの場所で、どの災害を想定して、何を判断してもらうのか」を明確にします。従業員向けなのか、来訪者向けなのか、工事関係者向けなのか、高齢者や子どもを含む地域住民向けなのかによって、表示すべき内容は変わります。施設内避難、屋外避難、津波避難、水害時の垂直避難、火災時の避難、地震後の一時退避など、想定する場面によって安全な経路も異なります。


また、避難経路をAR化するときは、見せたい情報を増やしすぎないことも重要です。画面上に矢印、文字、距離、危険表示、現在地、集合場所、注意事項を同時に詰め込むと、かえって見づらくなります。災害時に必要なのは、複雑な情報ではなく、次に取る行動がすぐ分かる表示です。分岐点では進行方向、危険箇所では立ち入り回避、集合場所付近では到着確認というように、場所ごとに表示の役割を絞ることで実用性が高まります。


活用法1 現地の風景に進行方向を重ねて迷いを減らす

ARの防災活用で最も分かりやすい方法は、避難経路の進行方向を現地の風景に重ねて表示することです。建物内では、廊下の分岐、階段の入口、非常口の前、エレベーターホール、地下通路、倉庫や機械室の出入口など、判断に迷いやすい場所があります。屋外では、敷地内道路、駐車場、門扉、仮設通路、建設現場の動線、地域の細街路などで、どちらに進むべきか分かりにくくなることがあります。


平面図では一本の線で表される避難経路も、現地に立つと見え方が大きく変わります。曲がり角の先が見えない、同じような扉が並んでいる、夜間は目印が分かりにくい、工事中で通常の通路が変わっている、駐車車両や資材で視界が遮られている、といった状況では、利用者が一瞬判断に迷います。ARで床面や壁面、進行方向の空間に矢印を重ねると、図面と現地の対応関係を考える負担を減らせます。


特に避難訓練では、参加者が実際に端末を向けながら経路を確認することで、「この角を曲がる」「この階段を使う」「この扉は通常時と違い避難時に使う」といった具体的な行動を体験できます。紙の資料を見て説明を聞くだけの場合に比べて、身体の向き、視線、歩行動線と情報が結び付きやすくなります。新入社員、施設の新規利用者、短期作業員、イベントスタッフなど、普段その場所に慣れていない人への説明にも向いています。


表示内容は、できるだけ単純にします。進行方向の矢印、避難先の名称、次の確認地点までの目安、注意が必要な場所だけに絞ると、実際に歩きながら確認しやすくなります。避難経路全体を一度に表示するよりも、現在いる場所から次の分岐までを段階的に示す方が、混乱を抑えやすいです。長い説明文を画面に出すより、「階段へ進む」「この出口を使用」「屋外集合場所へ」など、短く行動につながる表現にすることが大切です。


一方で、ARの矢印表示は位置ずれが起きる場合があります。屋内では衛星測位が使いにくく、端末の向き、周辺環境、照明条件、壁やガラス面の反射などによって表示が安定しないことがあります。屋外でも、高い建物の近く、樹木の多い場所、狭い路地、地下出入口付近では位置精度が不安定になることがあります。そのため、AR表示だけを信じて避難させるのではなく、実際の標識や誘導員の案内と矛盾しないように確認する必要があります。


実務では、避難経路の要所に基準となる地点を設定し、そこで表示内容を確認する運用が効果的です。たとえば、階段前、非常口前、敷地出口、集合場所入口など、避難判断の節目になる場所を確認点としておきます。現地で端末を向けたときに、矢印が壁の中や立入禁止区域を指していないか、段差や障害物を避ける案内になっているか、車両動線と交差していないかを確認します。防災担当者だけでなく、施設管理者、現場責任者、警備担当、利用者代表など複数の目で見ると、見落としを減らせます。


なお、エレベーターホールを表示対象にする場合でも、火災時や地震時の避難でエレベーター利用を促す表示にならないよう注意します。エレベーター周辺は人が集まりやすい場所ですが、避難経路として使えるかどうかは災害種別、施設の計画、管理者の指示によって異なります。AR表示では「階段へ進む」「管理者の指示を確認」など、誤解の少ない表現にしておくことが重要です。


活用法2 危険箇所と通行できない場所を事前に共有する

避難経路を示すときは、安全な方向だけでなく、避けるべき場所を分かりやすく伝えることも重要です。災害時には、普段通れる場所が危険になることがあります。火災時には煙が流れやすい通路や防火扉の閉鎖箇所、地震時にはガラス面や転倒物の多い場所、水害時には冠水しやすい低い通路や地下への入口、土砂災害のおそれがある場所では斜面側や沢沿いの動線など、状況によって注意点が変わります。


ARでは、現地の風景に危険箇所を重ねて表示できます。たとえば、段差、狭い通路、天井の低い場所、転倒しやすい備品の周辺、浸水しやすい入口、通行止めになる扉、車両との交差箇所などに注意表示を出すことで、避難経路上のリスクを事前に共有できます。紙の図面に危険箇所を書き込むだけでは、実際の高さ、奥行き、見通し、周囲の混雑状況までは伝わりにくいですが、ARで現地に重ねると、参加者が自分の視点で確認できます。


防災訓練では、危険箇所を実際に見ながら「ここでは立ち止まらない」「この扉は使わない」「この階段は下り方向専用にする」「この場所は車両進入の可能性があるため横断時に確認する」といった具体的な行動を説明できます。特に、工場、倉庫、建設現場、学校、病院、商業施設、公共施設のように、利用者の属性や動線が多様な場所では、危険箇所の見える化が有効です。現場に慣れている人には当たり前の注意点でも、初めて来る人には見落としやすいからです。


通行できない場所の表示にもARは使えます。災害時の想定に応じて、使用禁止の階段、閉鎖される扉、浸水時に危険な地下通路、落下物のおそれがある外周部、工事中で使えない仮設動線などを重ねて示すことで、避難経路の選択ミスを減らせます。通常時に便利な近道が、災害時には危険になる場合もあります。その違いを現地で示せると、利用者の理解が深まります。


ただし、危険表示は強すぎても弱すぎても問題があります。画面上の多くの場所に警告を出しすぎると、どこが本当に重要なのか分からなくなります。反対に、危険箇所を省略しすぎると、ARを見た人が安全だと誤解するおそれがあります。表示の優先順位を決め、命に関わるリスク、避難方向を誤りやすいリスク、転倒や混雑につながるリスクを整理しておくことが大切です。


危険箇所の情報は、現地の変化に合わせて更新する必要があります。什器の配置変更、改修工事、仮囲い、通路幅の変更、駐車場の運用変更、資材置き場の移動、防火区画の変更などがあると、以前作ったAR表示が現状と合わなくなることがあります。古い情報のまま使うと、かえって危険な誘導になる可能性があります。AR防災表示を運用する場合は、定期点検のタイミング、防災訓練前、工事開始前、レイアウト変更後などに、現地確認と表示更新を行う仕組みを作っておくと安心です。


活用法3 避難場所と一時集合場所までの距離感を伝える

避難経路を理解するうえで、目的地までの距離感をつかむことは重要です。図面上では近く見えても、実際には階段を下りる必要がある、遠回りしなければならない、屋外に出てからさらに移動する、坂道や段差がある、混雑時には時間がかかる、といったことがあります。ARを使うと、現地の風景に避難場所や一時集合場所の方向を重ねて示し、どこを目指すのかを視覚的に共有できます。


施設内では、最終的な避難場所だけでなく、一時的に集まる場所を分かりやすく示すことが大切です。従業員や来訪者がいきなり最終避難場所へ向かうのではなく、まず屋外の安全な集合場所に集まり、人数確認や状況確認を行う運用もあります。ARで「この先の屋外広場へ」「正面門を出て右側の集合場所へ」「建物から離れた待機位置へ」といった表示を出すと、建物を出た後の動線まで説明しやすくなります。


屋外の地域防災では、指定緊急避難場所、指定避難所、津波避難ビル、高台への経路、一時集合場所、広域避難場所など、役割の異なる目的地が関係することがあります。名称だけを伝えても、土地勘のない人には方向が分かりにくい場合があります。ARで現在地から見た方向や、次に向かう交差点を示せば、地図を読むのが苦手な人でも理解しやすくなります。特に観光地、イベント会場、駅周辺、広い公園、海岸部などでは、来訪者が地域の地名や避難場所名を知らないことが多いため、現地表示の効果が期待できます。


距離や所要時間を表示する場合は、慎重な扱いが必要です。歩行速度、混雑、天候、夜間、段差、車いす利用、子どもや高齢者の移動、道路の被害状況によって、実際にかかる時間は変わります。そのため、「必ず何分で到着できる」と断定するのではなく、平常時の確認目安として扱うのが安全です。画面に表示する場合も、細かい数値を過信させるより、「次の角まで進む」「坂を上がる」「建物から離れる」など、段階的な行動に結び付ける表現が向いています。


また、避難場所の表示では、災害種別による違いを明確にする必要があります。地震時に安全な広場が、水害時にも安全とは限りません。津波、洪水、土砂災害、火災、地震では、適した避難先が異なる場合があります。AR上で目的地を示すときは、「どの災害を想定した避難先なのか」を表示または事前説明で補うことが欠かせません。ひとつの避難場所を万能な場所のように見せると、誤解につながるおそれがあります。


避難場所までの距離感を伝えるARは、防災教育にも使いやすい方法です。参加者が自分の職場、教室、売り場、作業場所、駐車場から実際に端末を向けて確認すれば、「思ったより遠い」「この出口から出ると近い」「この階段は混みそうだ」といった実感を得られます。その気付きは、避難計画の改善にもつながります。単に決められた経路を覚えるのではなく、現地の条件を見ながら、より安全で分かりやすい誘導を検討できる点がARの強みです。


活用法4 訓練時の確認記録として避難行動を見直す

ARは、避難経路を示すだけでなく、防災訓練の振り返りにも活用できます。訓練では、参加者が予定どおりの経路を通ったか、分岐点で迷わなかったか、集合場所に集まりやすかったか、危険箇所の説明が伝わったかを確認する必要があります。しかし、訓練後に口頭で感想を集めるだけでは、具体的にどこで迷ったのか、どの表示が分かりにくかったのかが残りにくいことがあります。


ARを使った訓練では、確認地点ごとに写真やメモを残す運用が考えられます。たとえば、非常口前で表示の見え方を記録する、階段前で参加者の流れを確認する、屋外集合場所で到着位置を記録する、危険箇所の説明後に分かりにくかった点をメモする、といった使い方です。現地の写真と位置情報、表示内容、確認コメントが紐付くと、後から関係者で見直しやすくなります。


訓練記録として有効なのは、成功した経路だけでなく、迷いやすかった場所を残すことです。参加者が立ち止まった場所、逆方向に進みそうになった場所、表示が見づらかった場所、標識とAR表示の印象がずれていた場所、複数の人が同じ質問をした場所は、改善の手がかりになります。AR上の表示があることで、どの情報を見て判断したのかを検証しやすくなります。


防災担当者は、訓練後に記録を確認し、表示内容や経路設定を見直します。矢印の向きが分かりにくい場合は表示位置を変える、文字が長い場合は短くする、危険表示が目立たない場合は優先度を上げる、集合場所が分かりにくい場合は到着地点の表示を追加する、といった改善ができます。紙の図面だけで修正を考えるより、現地写真や実際の視点をもとに検討できるため、実務的な改善につながりやすくなります。


また、訓練記録は引き継ぎにも役立ちます。防災担当者や施設管理者が交代すると、過去にどの場所で課題があったのかが分からなくなることがあります。ARの確認記録として、経路、危険箇所、表示内容、修正履歴、訓練時の気付きが残っていれば、次の担当者も現地の課題を把握しやすくなります。特に複数拠点を管理している組織では、拠点ごとの避難経路の違いを写真付きで整理できる点が有効です。


ただし、訓練記録を残す場合は、個人情報や安全管理に配慮する必要があります。参加者の顔、名札、車両番号、施設の詳細なセキュリティ情報、避難計画の機密性が高い部分などが記録に含まれる場合があります。共有範囲を決め、必要に応じて写り込みを避ける、閲覧権限を管理する、外部公開しないといった運用が必要です。防災のための記録であっても、扱いを誤ると別のリスクになるため、保存方法と共有方法をあらかじめ決めておくことが大切です。


活用法5 災害種別ごとに経路を切り替えて説明する

避難経路は、災害の種類によって変わることがあります。火災では煙を避けて避難階段や非常口へ向かう必要がありますが、水害では地下や低い場所へ下りることが危険になる場合があります。地震後は落下物やガラス破損を避ける必要があり、津波のおそれがある地域では高台や高い建物への避難が優先されることがあります。土砂災害のおそれがある場所では、斜面や沢沿いから離れる動線が重要になります。


ARを使うと、災害種別に応じた経路を切り替えて説明しやすくなります。平常時の防災教育では、同じ場所に立った状態で、火災時の経路、水害時の経路、地震後の退避方向などを比較できます。これにより、「いつも使う出口が常に安全とは限らない」「災害によって目指す場所が違う」「地下への移動が危険になる場合がある」といった重要な考え方を現地で伝えられます。


たとえば、施設内の一階ロビーで訓練する場合、火災時は最寄りの非常口へ、水害時は上階への一時退避へ、地震後は屋外の安全な広場へ、といった複数の行動パターンが考えられます。これを口頭だけで説明すると混乱しやすいですが、ARで表示を切り替えると、同じ場所から見た方向の違いが分かりやすくなります。参加者は、自分が立っている場所を基準に判断できるため、災害種別ごとの避難行動を理解しやすくなります。


地域防災でも、災害種別ごとの経路切り替えは重要です。水害時に低地を避ける経路、津波時に海側へ戻らない経路、地震後にブロック塀や狭い路地を避ける経路、火災延焼時に風向きや危険区域から離れる考え方など、地域ごとに注意点があります。ARで現地表示を行う場合は、自治体の防災情報や地域の避難計画、最新のハザードマップと整合させながら、誤解のない表示にする必要があります。


災害種別ごとの表示では、色やアイコン、文字表現の使い分けが効果的です。ただし、色だけに頼ると、見え方に個人差がある場合や、屋外の明るさによって判別しにくい場合があります。色、文字、形、方向、音声案内などを組み合わせ、誰でも理解しやすい表示にすることが大切です。また、緊急時に細かな切り替え操作を求める設計は避け、訓練や事前学習で理解を深める用途から始めるのが現実的です。


災害種別ごとの経路は、作成した後も定期的に見直します。ハザード情報の更新、道路や建物の改修、周辺開発、避難場所の変更、工事による通行制限、施設レイアウトの変更などによって、安全な経路は変わる可能性があります。AR表示が分かりやすいほど、利用者はその情報を信頼しやすくなります。だからこそ、古い経路や未確認の情報を残さない運用が重要です。


AR防災活用で注意したい運用と安全確認

ARで避難経路を示すときは、分かりやすさだけでなく、安全性と運用性を重視する必要があります。まず確認したいのは、AR表示が既存の避難標識、非常灯、掲示物、放送内容、誘導員の案内、防災計画と矛盾していないかです。現地の標識は右を示しているのに、AR表示が左を示しているような状態は非常に危険です。ARを導入する前に、既存の防災情報を整理し、どの情報を正とするのかを明確にしておく必要があります。


次に、端末利用を前提にしすぎないことが大切です。災害時には、全員が端末を持っているとは限りません。電池残量が少ない人、画面を見る余裕がない人、視覚や聴覚に配慮が必要な人、子どもや高齢者、外国人来訪者など、利用者はさまざまです。ARは情報を補助する手段として有効ですが、端末を見ないと避難できない設計にしてはいけません。標識、掲示、音声、誘導員、訓練で覚えた行動と組み合わせることが前提です。


表示の見やすさも重要です。屋外では日差しが強いと画面が見づらくなり、雨天時や夜間では端末操作が難しくなることがあります。屋内でも煙、停電、混雑、照明不足があると、画面を確認しながら移動すること自体が危険になる場合があります。歩きスマートフォンのような状態にならないよう、ARの確認は平常時の訓練や立ち止まって確認できる場所を中心に設計し、実災害時には安全な行動を優先する考え方を徹底する必要があります。


位置精度の確認も欠かせません。避難経路のAR表示では、少しの位置ずれが誤解につながることがあります。矢印が隣の扉を指している、危険箇所の表示がずれている、集合場所の表示が道路側に寄っている、といった状態は避けるべきです。特に屋内や高層建物周辺では位置が不安定になりやすいため、現地で複数回確認し、必要に応じて目印となる地点やQRコード、図面上の基準点、座標情報などを組み合わせて補正する方法を検討します。


情報更新の担当者と更新手順も決めておきます。ARコンテンツは一度作って終わりではありません。避難経路の変更、工事区画の変更、出入口の閉鎖、集合場所の変更、設備配置の変更、危険箇所の追加があったときに、誰が確認し、誰が更新し、誰が承認するのかを明確にしておく必要があります。更新されないARは、古い掲示物と同じようにリスクになります。防災訓練前の点検項目にAR表示の確認を入れると、運用に組み込みやすくなります。


さらに、表示文言は断定しすぎないようにします。たとえば、「この経路なら必ず安全」といった表現は避けるべきです。災害時の安全は状況によって変わります。表示では「避難経路の目安」「訓練時の確認経路」「管理者の指示に従う」「通行できない場合は別経路へ」といった考え方を持たせ、現場判断と組み合わせる余地を残すことが大切です。防災情報は分かりやすさが必要ですが、過度な断定は避ける必要があります。


AR防災活用を進めるなら、最初から大規模に展開するより、限定した範囲で試すと導入しやすくなります。たとえば、施設内の主要避難経路、工事現場の一時退避場所、学校や工場の訓練ルート、イベント会場の来場者動線など、目的と範囲を絞って表示を作ります。そのうえで、訓練参加者の反応、現地での見やすさ、位置ずれ、更新のしやすさ、既存表示との整合を確認し、少しずつ対象範囲を広げる方が失敗を抑えられます。


まとめ

ARで避難経路を現地に示す防災活用は、図面や掲示だけでは伝わりにくい「今いる場所からどちらへ進むか」を分かりやすくする方法です。進行方向を重ねて示す、危険箇所を現地で共有する、避難場所までの距離感を伝える、訓練記録として見直す、災害種別ごとに経路を切り替えるといった使い方により、防災教育や施設管理の説明を具体化できます。


一方で、ARは避難誘導のすべてを代替するものではありません。災害時には端末が使えない、通信が不安定になる、表示がずれる、現地状況が変わるといった可能性があります。そのため、ARは平常時の訓練や事前説明、現地確認を支える補助手段として使い、避難標識、非常放送、誘導員、紙の地図、防災計画と組み合わせることが重要です。表示内容は簡潔にし、既存の案内と矛盾しないように確認し、現地変更に合わせて更新する運用を整える必要があります。


実務でARを防災に活用する際は、まず避難経路の要所を現地で確認し、分岐点、危険箇所、集合場所、災害種別ごとの経路差を整理するところから始めると進めやすくなります。現地の位置情報や確認記録を正確に残せれば、AR表示の精度確認や訓練後の改善にもつなげやすくなります。避難経路を現地で分かりやすく示し、防災訓練や施設管理の記録まで一体で整えたい場合は、スマートフォンやタブレットなどの端末を使って、現地確認と記録を同時に行える運用を検討するとよいでしょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page