top of page

88条申請で構造計算書は必要?添付判断の5つの基準

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均7分15秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

88条申請を進めるとき、実務担当者が迷いやすい論点の一つが「構造計算書を添付するべきか」です。足場、型枠支保工、架設通路、荷受け構台、解体・改修時の仮設補強などは、図面や工程表だけで説明できる場合もあれば、強度や安定性の根拠まで求められる場合もあります。


まず押さえたいのは、法令上は「88条申請」ではなく、労働安全衛生法第88条に基づく「計画の届出」として扱うのが基本だという点です。本記事では、現場で一般的に使われる「88条申請」という呼び方を使いながら、構造計算書を添付するかどうかを判断するための5つの基準を整理します。


目次

88条申請と構造計算書の関係を先に整理する

添付判断の基準1:届出対象設備・工事に該当するか

添付判断の基準2:構造安全を図面だけで説明できるか

添付判断の基準3:高さ・支間・設置期間などの規模が大きいか

添付判断の基準4:標準仕様から外れる条件や特殊荷重があるか

添付判断の基準5:現場条件による追加リスクがあるか

構造計算書に記載すべき内容と整合確認のポイント

構造計算書を添付しない判断をする場合の注意点

申請前の現地確認と記録化で補正を減らす

まとめ:迷う88条申請ほど早めに構造根拠をそろえる


88条申請と構造計算書の関係を先に整理する

88条申請とは、労働安全衛生法第88条に基づく計画届を、建設現場で便宜的に呼ぶ言葉です。足場設置届、型枠支保工の設置届、架設通路の設置届、一定規模以上の建設工事計画届などをまとめて「88条申請」と呼ぶ場面があります。ただし、正式には許可を求める「申請」ではなく、一定の計画を事前に届け出る手続きです。


ここで重要なのは、88条申請に該当するからといって、すべての案件で「構造計算書」という名称の書類が一律に法定添付書類として必要になるわけではないことです。労働安全衛生規則では、対象となる機械等の種類に応じて、構造、材質、主要寸法、組立図、配置図、平面図、側面図、断面図などの提出内容が定められています。一方、個別の構造計算書や強度計算書をどこまで添付するかは、対象物、規模、標準仕様からの逸脱、所轄労働基準監督署の確認方針などを踏まえて判断する必要があります。


構造計算書の役割は、単に書類の枚数を増やすことではありません。計画された仮設物や設備が、想定荷重、風、作業条件、部材の許容性能、支持条件に対して安全に成立することを、第三者が追える形で示すことです。平面図や立面図は「どこに何を組むか」を示す資料であり、構造計算書は「その計画が力学的に成立するか」を示す資料です。


そのため、図面、部材資料、標準組立図、作業計画だけで安全性を十分に説明できる場合は、個別の構造計算書を大きく作り込まなくても足りることがあります。反対に、足場、型枠支保工、荷受け部、張出し部、全面養生、既存建物への支持、解体途中の仮設補強など、倒壊・崩壊・落下・過荷重に直結する計画では、構造計算書または強度検討資料を添付する前提で準備したほうが安全です。


また、88条申請は建築確認申請とは目的が異なります。建築確認は建築物そのものの法適合を確認する手続きですが、88条申請は施工中の労働災害を防止するため、工事や仮設計画の安全性を事前に確認できる状態にする手続きです。建築確認で建物本体の構造審査を受けていても、足場や型枠支保工などの仮設計画については、別途、施工中の安全性を説明する資料が必要になることがあります。


添付判断の基準1:届出対象設備・工事に該当するか

構造計算書の要否を考える前に、まず確認すべきなのは、その設備や工事が88条申請の届出対象に該当するかどうかです。届出対象外であれば、法定の添付書類として提出する場面は通常ありません。ただし、届出対象外だから構造検討も不要という意味ではありません。現場の安全管理上は、届出の有無とは別に、危険性が高い仮設物の強度や安定性を確認する必要があります。


建設現場でよく問題になるのは、型枠支保工、架設通路、足場などです。労働安全衛生規則別表第7では、型枠支保工は支柱の高さが3.5メートル以上のもの、架設通路は高さおよび長さがそれぞれ10メートル以上のもの、足場はつり足場・張出し足場のほか、それ以外の足場では高さ10メートル以上の構造のものが届出対象として整理されています。


ただし、足場や架設通路では、組立てから解体までの期間が60日未満の場合に届出を要しない扱いがあります。高さ10メートル以上であれば常に届出対象と断定するのではなく、足場の種類、高さ、設置期間、変更の有無を合わせて確認することが重要です。型枠支保工については、支柱高さ3.5メートル以上かどうかが大きな確認点になります。


また、解体工事や大規模な建設工事についても、すべての解体・改修が一律に88条申請の対象になるわけではありません。高さ31メートルを超える建築物または工作物の建設等、一定規模以上の橋梁、ずい道、地山の掘削、圧気工法など、労働安全衛生法および労働安全衛生規則で定める範囲に該当するかを確認します。大規模工事では、厚生労働大臣への30日前の届出や、所轄労働基準監督署長への14日前の届出が関係する場合があります。


実務では、様式第20号の機械等設置・移転・変更届として扱うのか、様式第21号の建設工事・土石採取計画届として扱うのかを早い段階で切り分ける必要があります。外部足場だけを見ていたところ、実際には型枠支保工や架設通路も同時に対象になる場合があります。対象設備が複数あるときは、それぞれについて届出対象性と構造根拠の要否を確認しなければなりません。


この基準での結論は明確です。届出対象に該当し、かつ労働者や重量物を支える構造物であれば、構造計算書または強度検討資料を添付する前提で準備したほうが安全です。最終的に個別計算書の添付を省略できる場合でも、判断材料としての構造検討は早い段階で行うべきです。


添付判断の基準2:構造安全を図面だけで説明できるか

第二の基準は、構造安全を図面だけで説明できるかどうかです。88条申請に添付する図面は、設置箇所、範囲、寸法、部材の配置、作業床、昇降設備、壁つなぎ、控え、筋かい、支柱、根がらみ、養生材などを示すために不可欠です。しかし、図面は配置と形状を説明する資料であり、安全率、応力度、許容荷重、転倒、座屈、たわみ、滑動、支持面への反力まで自動的に説明してくれるものではありません。


図面だけで足りる可能性があるのは、構造が単純で、標準仕様に沿っており、荷重条件も明確で、部材の許容性能や施工条件を別資料で確認できる場合です。たとえば、標準組立図、部材一覧、メーカーの許容荷重資料、施工手順書、現場条件の記録により、安全性の前提が明確に示せる場合は、個別の構造計算書を詳細に作成しなくても説明できることがあります。


反対に、図面を見ただけでは判断者が安全性を追えない場合は、構造計算書を添付するべきです。足場であれば、壁つなぎ間隔が通常より広い、全面にシートやパネルを張る、建物形状が複雑で一部に張出しがある、道路や隣地上にかかる、荷受けステージや昇降設備を取り付ける、といった条件では、図面だけでは危険要因を説明しきれません。


型枠支保工でも、スラブ厚が大きい、梁が深い、支柱高さが高い、支柱間隔が広い、コンクリート打設順序によって偏荷重が生じる、水平つなぎや筋かいの配置が複雑である、といった場合には計算根拠が重要になります。単に支柱を多めに入れるという説明ではなく、どの荷重がどの部材に伝わり、許容値内に収まるのかを示す必要があります。


構造計算書は、図面と一体で読まれる資料です。計算書では建地間隔を1.8メートルとしているのに、図面では一部が2.0メートルになっているような不整合があると、構造計算書を添付していても信頼性が下がります。逆に、図面に寸法を細かく書き込んでも、荷重条件や許容値との比較がなければ、なぜ安全といえるのかは伝わりません。


添付判断では、「図面で形が分かるか」ではなく、「図面と根拠資料で安全性を追えるか」を基準にすることが重要です。現場担当者以外の人が書類を見たときに、この足場はなぜ倒れないのか、この支柱はなぜ座屈しないのか、この作業床は想定荷重に耐えるのかを説明できない場合は、構造計算書を添付する方向で検討しましょう。


添付判断の基準3:高さ・支間・設置期間などの規模が大きいか

第三の基準は、規模です。高さ、支間、長さ、設置期間、施工範囲、支持点間隔、支柱高さ、作業床の面積、積載荷重が大きくなるほど、構造計算書の必要性は高まります。仮設物は恒久構造物と異なり、現場ごとの条件に合わせて組み立てられます。部材自体は標準品でも、組み合わせ方、緊結状態、支持方法、地盤条件、建物との取り合いによって安全性が変わります。


足場では、高さ10メートルという基準が届出対象性を確認するうえで大きな目安になります。つり足場や張出し足場は形式そのものに注意が必要であり、通常の外部足場でも高さが上がるほど、風荷重、水平力、壁つなぎの負担、建地の座屈、転倒に対する検討が重要になります。組立てから解体までの期間が60日未満で届出対象外となる場合でも、強風を受ける場所や全面養生を行う場合は、安全検討を省略できるとは限りません。


型枠支保工では、支柱の高さ、支柱間隔、スラブ厚、梁成、打設高さ、コンクリートの単位重量、施工荷重、作業荷重、型枠材の重量、打設時の偏荷重が重要です。支柱が高くなると座屈の問題が大きくなり、水平つなぎや筋かいの配置が安全性を左右します。支柱高さ3.5メートル以上の計画では、届出対象性だけでなく、計算条件を明確にすることが欠かせません。


架設通路や荷受け構台のように、労働者が通行する、または資材を載せる仮設物でも同じです。高さや長さが大きい場合、通行荷重、手すり、床材、支持部、転倒防止、揺れ、たわみ、昇降部との取り合いを説明する必要があります。計画上は軽荷重としていても、実際には資材の一時置場や作業場所として使われるおそれがあるなら、その条件を反映させるべきです。


規模の判断で注意したいのは、一部分だけが基準に近い、または基準を超えるケースです。建物全体ではそれほど高く見えなくても、敷地に段差がある、地下掘削部の周囲に足場を設ける、塔屋や屋上設備まわりだけ足場が高い、道路側に張出し部がある、吹抜け内部に高い支保工を組む、といった条件では、特定範囲だけ構造リスクが高くなることがあります。


規模が大きい案件では、構造計算書は単なる提出書類ではなく、計画の妥当性を早期に確認するための実務ツールにもなります。提出直前に計算を始めると、部材配置の見直し、壁つなぎの追加、支柱ピッチの変更、養生条件の変更が発生したときに工程全体へ影響します。規模が大きいと分かった時点で、構造根拠をそろえる前提で準備を進めるほうが結果的に安全です。


添付判断の基準4:標準仕様から外れる条件や特殊荷重があるか

第四の基準は、標準仕様から外れているかどうかです。仮設計画では、標準的な組立方法や部材の許容条件に沿っているかが重要になります。標準仕様に収まっていれば、標準組立図や部材性能資料で説明できる部分があります。しかし、現場条件に合わせて標準から外れる箇所がある場合は、構造計算書で個別に安全性を確認する必要性が高まります。


足場でよくあるのは、建物形状に合わせた変則的な組み方です。外壁に凹凸がある、庇やバルコニーを避ける、設備配管をかわす、道路側に作業床を張り出す、荷受けステージを設ける、シートを全面に張る、屋上部で控えが取りにくい、壁つなぎを十分に取れない、といった条件では、標準図だけで安全性を説明するのが難しくなります。


特に壁つなぎの間隔が広がる場合や、支持点が偏る場合は、全体の安定性に影響します。見た目は一般的な足場でも、荷重の流れが標準と異なるなら、代表断面や最も厳しい箇所について計算根拠を示す必要があります。荷受けステージ、昇降階段、朝顔、防音パネル、養生シートなどを取り付ける場合も、通常の外部足場とは条件が変わります。


型枠支保工でも、標準仕様からの逸脱は多く発生します。梁下だけ支柱が密になる、設備開口のために支柱を抜く、段差スラブを同時に打設する、高さの異なる支保工を連続させる、斜面や段差のある場所に支柱を立てる、支柱の支持面が均一でない、打設順序が複雑で偏荷重が生じる、といったケースです。これらは図面上では一部の調整に見えても、力の伝わり方や座屈長さに影響します。


特殊荷重も重要です。強風を受けやすい場所、海沿い、高層部、開けた敷地、山間部、ビル風の影響を受ける場所では、風に対する検討が必要になります。足場にシート、防音パネル、養生材、広告幕に類する面材を取り付ける場合、風圧を受ける面積が増えるため、壁つなぎ、控え、建地、緊結部への負担が大きくなります。


解体や改修工事では、既存建物との取り合いも特殊条件になります。壁つなぎを取りたい位置に十分な強度のある躯体がない、外壁材の撤去により支持条件が途中で変わる、作業の進行に伴って開口部が増える、既存図面と現況が一致しない、といった問題が起こります。このような場合は、施工段階ごとの条件変化を考えた検討が必要です。


この基準の結論は、標準仕様から外れるほど添付すべきということです。標準から外れること自体が直ちに問題なのではありません。問題は、外れた条件を図面、計算、作業計画で説明できないことです。88条申請で確認されるのは、理想的な標準図ではなく、その現場で実際に組む計画の安全性です。


添付判断の基準5:現場条件による追加リスクがあるか

第五の基準は、現場条件による追加リスクです。同じ高さ、同じ部材、同じ形式の足場や支保工であっても、現場条件が違えば安全性は変わります。88条申請では、書類上の一般論だけでなく、実際の設置場所に応じた危険要因を読み込むことが重要です。現場条件が複雑な場合、構造計算書は計画の妥当性を説明するための重要資料になります。


まず確認すべきは、設置地盤や支持面です。足場の建地や型枠支保工の支柱は、最終的に地盤、床、既存躯体、仮設基礎などに力を伝えます。支持面が水平でない、地耐力に不安がある、埋戻し部分に載せる、地下ピットやスラブ上に載せる、既存建物の床に支保工を立てる、といった場合は、部材そのものの強度だけでなく、支持先が荷重を受けられるかを考える必要があります。


次に、周辺環境です。道路に近い、歩行者通路に面している、隣地境界が近い、鉄道や交通量の多い道路に隣接している、学校や病院など人の往来が多い施設に近い、といった現場では、倒壊や落下物の影響が大きくなります。88条申請の目的は労働者の安全衛生にありますが、現場計画では第三者災害の防止も無視できません。


気象条件も追加リスクになります。風の通り道になる場所、上層階、海沿い、河川沿い、周囲に遮蔽物が少ない敷地では、風荷重の見込み方が重要です。雨により地盤が緩む、雪が積もる、凍結により足元条件が変わる、台風時に養生材が大きな力を受ける、といった条件もあります。構造計算書では、通常使用時だけでなく、設置期間中に想定される外力や管理条件を反映させる必要があります。


施工手順によってリスクが変わることもあります。完成形では安定していても、組立途中や解体途中に不安定になる仮設物は少なくありません。足場の一部解体後に壁つなぎが不足する、型枠支保工の一部を先に解体して荷重の流れが変わる、解体工事で既存躯体の支持条件が段階的に変化する、といったケースでは、完成形の計算だけでは安全性を説明できません。


現場条件に追加リスクがある場合、構造計算書を添付するかどうかで迷うより、どの条件を計算に反映させるかを検討することが大切です。すべての部材を詳細に計算する必要があるとは限りませんが、最も危険な箇所、標準から外れる箇所、荷重が集中する箇所、支持条件が弱い箇所については、根拠を明確にする必要があります。


構造計算書に記載すべき内容と整合確認のポイント

構造計算書を添付する場合、何を書けばよいのかも重要です。実務で使いやすい構造計算書は、計算式が多いだけの資料ではなく、計画条件、荷重条件、部材条件、検討結果、図面との対応関係が分かりやすく整理されています。確認する人が読み進めたときに、どの仮設物を、どの条件で、どのように安全と判断したのかが追えることが大切です。


まず必要なのは、対象範囲の明確化です。外部足場全体なのか、道路側の張出し部なのか、荷受けステージなのか、型枠支保工の特定階なのか、架設通路なのかを明示します。対象範囲が曖昧だと、図面との対応が取れず、計算書がどの部分を説明しているのか分からなくなります。平面図や立面図に検討範囲を示し、計算書の章立てと図面番号を対応させると確認がしやすくなります。


次に、設計条件を明確にします。足場であれば、高さ、幅、建地間隔、布材間隔、作業床の位置、壁つなぎ間隔、養生材の有無、積載荷重、風を受ける面積、使用期間を整理します。型枠支保工であれば、支柱高さ、支柱間隔、スラブ厚、梁寸法、型枠重量、コンクリート重量、施工荷重、打設順序、水平つなぎ、筋かい、支持面の条件を整理します。


荷重条件も重要です。仮設物に作用する荷重は、自重だけではありません。作業員、工具、資材、打設中のコンクリート、衝撃、偏荷重、風、養生材に作用する力など、計画に応じて考慮すべきものが変わります。構造計算書では、どの荷重を見込み、どの荷重を見込まないのかを明確にする必要があります。見込まない荷重がある場合は、その理由や運用上の制限も合わせて示します。


部材条件では、使用する部材の種類、寸法、許容荷重、接合方法、緊結金具、支持材、床材、支柱、控え材などを整理します。部材明細や仕様資料と計算書の名称が一致していないと、どの部材で計算したのか分からなくなります。現場では同じように見える部材でも、許容荷重や寸法が異なることがあります。計算書、図面、部材一覧、実際に使用する部材の名称をそろえることが重要です。


検討結果では、単に「安全」と書くのではなく、発生応力度、反力、軸力、曲げ、せん断、座屈、たわみ、転倒、滑動など、計画に応じた確認項目を許容値と比較します。すべての箇所を細かく掲載しない場合でも、代表箇所や最も厳しい箇所の選定理由を示すべきです。なぜその断面を検討すれば全体の安全性を説明できるのかが分かれば、計算書の説得力は高まります。


最後に、整合確認です。提出前に、図面、工程表、様式、作業計画、安全管理体制、部材明細を横断して確認します。着工日、組立開始日、解体予定日、設置期間、施工範囲、対象階、部材ピッチ、壁つなぎ位置、支柱間隔、荷重条件が一致しているかを見ます。ここで不整合を消しておくことが、補正を減らす最も現実的な対策です。


構造計算書を添付しない判断をする場合の注意点

構造計算書を添付しない判断をする場合でも、その判断には根拠が必要です。単に「以前の案件では不要だった」「他社が出していなかった」「小規模だからいらないはず」という理由だけでは不十分です。88条申請は、現場ごとの計画内容を見て判断されます。似たような工事であっても、高さ、設置期間、支持条件、周辺環境、作業内容、所轄の運用が違えば、必要書類も変わります。


添付しない場合でも、少なくとも、対象設備が標準仕様に収まっていること、届出対象の判断に誤りがないこと、図面で構造と寸法が明確に示されていること、部材の許容性能を確認できること、荷重条件が過大でないことを説明できるようにしておく必要があります。構造計算書という名称の資料を付けないとしても、仕様資料、標準組立図、部材性能資料、作業計画、現場条件の記録をそろえておくことが重要です。


特に注意すべきなのは、所轄労働基準監督署から構造根拠を求められた場合です。提出後に計算書や追加資料の提出を求められると、そこから計算条件の整理、図面修正、社内確認、再提出が必要になります。提出期限に余裕がない場合、これだけで工程に影響することがあります。添付しない判断をするなら、提出前に必要書類の考え方を確認し、確認した内容を社内で共有しておくと安全です。


また、添付しない判断をしたとしても、現場の安全管理上の検討まで省略してはいけません。届出書類として出さないことと、構造上の確認をしないことは別です。高さが届出基準に届かない足場であっても、強風を受ける場所に全面養生をするなら、壁つなぎや控えの安全性は確認すべきです。短期間の支保工であっても、支柱が高く、荷重が集中するなら、座屈や支持面の検討は必要です。


構造計算書を添付しない場合は、図面の品質がより重要になります。寸法のない図面、部材名が曖昧な図面、壁つなぎや控えが読み取れない図面、作業床と荷重の関係が分からない図面では、計算書がない分だけ説明力が落ちます。図面だけで説明するなら、図面に必要な情報を十分に入れ、部材資料や作業手順と矛盾がないようにする必要があります。


実務的には、迷うなら添付する方向で検討するほうが安全です。ただし、何でも一律に添付すればよいわけではありません。内容が薄い計算書や、現場条件と合っていない使い回しの計算書は、むしろ補正の原因になります。添付するなら現場条件に合わせて作る、添付しないならその理由を説明できる状態にする。このどちらかを徹底することが重要です。


申請前の現地確認と記録化で補正を減らす

88条申請で構造計算書の要否を判断するには、図面だけでなく現地情報が欠かせません。机上の図面では分からない段差、障害物、隣地との離隔、道路境界、既存躯体の状態、支持面の状況、搬入経路、作業スペース、周辺の風環境などが、実際の構造条件に影響するからです。現地確認が不十分なまま構造計算書を作ると、提出後または施工直前に条件違いが判明し、再計算や図面修正が必要になることがあります。


現地確認では、まず足場や仮設物を設置する範囲を明確にします。建物外周のどの面に設置するのか、どこからどこまでが届出対象範囲なのか、道路や隣地に近い部分はどこか、段差や傾斜はどこにあるかを確認します。次に、支持面の状態を見ます。地盤に直接立てるのか、既存舗装上なのか、スラブ上なのか、地下構造物の上なのかによって、検討すべき内容が変わります。


既存建物に壁つなぎや控えを取る場合は、取り付け位置の確認が重要です。図面上は均等に配置できるように見えても、実際には開口部、設備、外装材、劣化部、仕上げ材の関係で取り付けに制約が出ることがあります。取り付け位置が変われば、足場全体の安定性に影響します。構造計算書を作成する前に、実際に取れる位置を確認し、図面へ反映させることが補正防止につながります。


改修や解体の現場では、既存図面と現況が一致しないことも珍しくありません。増改築、設備更新、外装改修、過去の補修により、図面にない部材や開口がある場合があります。既存図面を前提に構造計算書を作った後で現況との違いが分かると、計算の前提が崩れます。特に支持点、荷重を受ける床、外壁の固定部、解体順序に関係する部分は、現地確認の重要度が高いです。


記録化も大切です。現地写真、寸法メモ、設置範囲のスケッチ、測定結果、確認日、確認者、判断メモを残しておくと、社内確認や協力会社との調整がスムーズになります。88条申請の書類は、提出時点だけでなく、施工中の安全管理にも使われます。申請時に整理した情報が現場に伝わっていなければ、計算書どおりに組まれないリスクがあります。


紙のメモだけに頼ると、写真の撮影位置、寸法の根拠、どの面の情報かが後で分からなくなることがあります。現地で撮影した写真に位置やメモを紐づけ、必要な寸法や注意点を整理できる仕組みを使えば、構造計算書を作る担当者への情報共有が早くなります。88条申請は提出書類の作成だけでなく、現地情報の正確な受け渡しが成否を左右します。


まとめ:迷う88条申請ほど早めに構造根拠をそろえる

88条申請で構造計算書が必要かどうかは、「88条申請だから必ず添付」「小規模だから不要」と単純に決められるものではありません。判断の出発点は、届出対象設備・工事に該当するかどうかです。そのうえで、構造安全を図面だけで説明できるか、高さ・支間・設置期間などの規模が大きいか、標準仕様から外れる条件や特殊荷重があるか、現場条件による追加リスクがあるかを確認します。


特に、足場ではつり足場・張出し足場かどうか、高さ10メートル以上かどうか、組立てから解体まで60日以上かどうかが重要です。型枠支保工では、支柱高さ3.5メートル以上かどうかが大きな確認点になります。架設通路では、高さと長さがそれぞれ10メートル以上かどうかを確認します。解体・改修工事についても、すべてを一律に対象とせず、法令上の規模や工事内容に該当するかを確認しましょう。


構造計算書は、88条申請のためだけに作る書類ではありません。足場や型枠支保工、架設通路、仮設設備が、想定される荷重や外力に対して安全に成立することを確認するための資料です。図面だけでは説明できない強度、安定性、支持条件、荷重条件を示し、現場関係者が同じ前提で施工できるようにする役割があります。


一方で、構造計算書を添付すれば必ず安心というわけでもありません。図面と計算書が不整合であったり、現地条件を反映していなかったり、標準仕様の資料を現場に合わせず流用していたりすると、補正や手戻りの原因になります。申請前には、対象範囲、設置期間、部材、寸法、荷重、支持条件、施工手順を横断して確認し、現場で実際に組む計画と書類上の計画を一致させる必要があります。


実務担当者にとって大切なのは、提出直前に「構造計算書はいりますか」と悩む状態を作らないことです。計画初期の段階で届出対象性を確認し、現地情報を集め、構造上のリスクがある箇所を洗い出し、必要な計算や図面修正を前倒しで進めることが、88条申請をスムーズに進める近道です。


88条申請の品質は、現地確認の精度に大きく左右されます。写真、寸法、支持面、壁つなぎ位置、周辺環境、危険箇所を正確に記録し、図面と構造計算書に反映できれば、補正の少ない申請につながります。迷う案件ほど、早い段階で所轄労働基準監督署や専門家に確認し、現場条件に合った構造根拠をそろえておきましょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page