建築計画の中で、駐車場スペースは後回しにされやすい部分です。建物本体の配置、間取り、外構、設備計画が優先され、「車が置ければよい」と考えてしまうケースもあります。しかし実際には、駐車場の寸法は暮らしや業務の使いやすさに直結します。完成後に「ドアが開けにくい」「切り返しが多い」「来客車が入らない」「将来の車種変更に対応しにくい」と気づいても、建物や塀、門柱、設備配管の位置が決まっていると簡単には直せません。
この記事では、建築実務で駐車場スペースを検討する際に押さえておきたい寸法目安を、5つの観点から解説します。戸建住宅、小規模施設、共同住宅、事務所、店舗など、用途や敷地条件によって調整は必要ですが、計画初期に確認すべき考え方は共通しています。
なお、ここで扱う寸法は一般的な検討目安です。駐車場の計画では、設計対象車両、前面道路、自治体条例、附置義務、駐車場法、バリアフリー関係基準などにより必要寸法が変わる場合があります。特に不特定多数が利用する駐車場や一定規模以上の路外駐車場では、法令・条例・所管行政庁の基準を必ず確認してください。
目次
• 駐車場スペースは建築計画の初期段階で決めるべき理由
• 目安1 車1台分の基本寸法は幅2.5m・奥行5.0mを出発点にする
• 目安2 乗り降りを考えるなら幅2.7mから3.0mを検討する
• 目安3 前面道路と駐車角度に合わせて必要な通路幅を確保する
• 目安4 玄関・道路・設備との干渉を避ける余白寸法を見込む
• 目安5 将来の車種変更や使い方の変化を想定して余裕を残す
• 建築実務で駐車場寸法を確認するときの進め方
• まとめ
駐車場スペースは建築計画の初期段階で決めるべき理由
駐車場スペースの計画は、建物配置が固まる前に検討することが重要です。建築では、建物の面積、採光、道路斜線、隣地との離隔、アプローチ、排水計画など、多 くの条件を同時に整理します。その中で駐車場は外構の一部として後から調整できるように見えますが、実際には建物の位置、玄関の向き、道路との接道状況、敷地内の高低差に強く影響されます。
たとえば、敷地の道路側いっぱいに建物を寄せると、駐車場の奥行が足りなくなる場合があります。反対に、駐車スペースを広く取りすぎると、建物の有効面積や庭、歩行者動線が圧迫されます。駐車場は車を置く場所であると同時に、人が乗り降りし、荷物を運び、雨の日に移動し、来客を迎える場所でもあります。そのため、車体寸法だけではなく、人の動きや周囲の工作物との関係を含めて設計する必要があります。
建築実務では、敷地図に車両の外形だけを描いて収まるかどうかを確認することがあります。しかし、これだけでは十分とはいえません。実際の利用では、ドアを開ける、後部座席から子どもが降りる、荷物を積み下ろす、隣の車との間を歩く、ベビーカーや車椅子を使う、宅配や清掃の動線が重なるといった場面が発生します。平面図上では問題なく見えても、完成後に狭さを感じる理由は、こうした動作の寸法が反映されていないからです。
また、駐車場は道路との関係も大きな要素です。前面道路が広ければ比較的スムーズに出入りできますが、道路幅が狭い場合や交通量が多い場合は、敷地内での切り返しや待機スペースが必要になることがあります。道路に対して直角に駐車するのか、並列に駐車するのか、斜めに駐車するのかによっても、必要な寸法は変わります。
さらに、駐車場スペースは完成後の変更が難しい場所です。舗装、排水勾配、門柱、塀、植栽、照明、屋外設備、給排水管、電気配管などが絡むため、単にラインを引き直すだけでは済まないことがあります。駐車場の不足や使いにくさは日常的なストレスになりやすく、建築後の満足度に大きく影響します。だからこそ、計画初期の段階で寸法目安を押さえ、図面上だけでなく実際の使い方を想像しながら検討することが大切です。
目安1 車1台分の基本寸法は幅2.5m・奥行5.0mを出発点にする
駐車場スペースを検討する際、まず出発点となるのは車1台分 の基本寸法です。戸建住宅などの初期検討では、車室1台あたり幅2.5m、奥行5.0m程度を仮置きして、敷地全体の配置を検討することがあります。これは多くの小型車や一般的な乗用車を想定する際に使いやすい実務上の目安です。
ただし、幅2.5m、奥行5.0mを「すべての普通乗用車に対応する法的基準」や「どの計画でも十分な寸法」と考えるのは避けるべきです。国土交通省の駐車場設計・施工指針では、駐車ますの大きさについて、小型乗用車は長さ5.0m・幅員2.3m、普通乗用車は長さ6.0m・幅員2.5mなど、設計対象車両ごとの値が示されています。したがって、普通乗用車まで余裕を見込む施設計画では、奥行5.0mだけで判断せず、6.0m程度を確認線にすることも重要です。([MLITT][1])
奥行については、車体が収まるかだけでなく、車の前後に何があるかを確認します。背後に塀や建物外壁、門扉、植栽、設備機器がある場合は、車体が枠内に収まっていても、荷室を開けるスペースが不足したり、前方に人が通れなかったりすることがあります。後部扉を上に開ける車両では、背後の余白だけでなく、屋根や梁、照明など上部の障害物も確認しておきたいところです。
幅についても、2.5mは初期検討に使いやすい一方で、日常的な使いやすさを考えると窮屈に感じる場合があります。運転席側だけで乗り降りするのか、助手席側や後部座席も頻繁に使うのかによって必要な余裕は変わります。住宅では家族構成によって使い方が変わり、施設や店舗では利用者の年齢層や荷物の有無によって快適性が左右されます。
建築図面で駐車場を検討する場合は、まず幅2.5m、奥行5.0mの枠を置き、そこから実際の用途に合わせて余裕を加えていく考え方が有効です。軽自動車のみを想定するのか、小型乗用車を中心に考えるのか、普通乗用車や来客車まで見込むのかを早い段階で整理しておくと、敷地全体の使い方を判断しやすくなります。
複数台を並べる場合は、単純に幅2.5mを台数分足せばよいわけではありません。隣り合う車のドア開閉、柱や壁との距離、車止めの位置、歩行者の通路を含めると、必要な幅は増えます。たとえば2台並列駐車の場合、5.0mで形式上は2台分になりますが、実際の使いやすさを考えると5.4mから6.0m程度を検討したい場面があります。特に毎日使う住宅や、利用者が入 れ替わる施設では、余裕のある寸法が安全性と快適性につながります。
基本寸法は、設計判断の基準線です。最小限で納めるための寸法ではなく、使い方に応じて増減を検討するための出発点として扱うことが、後悔しない駐車場計画の第一歩です。
目安2 乗り降りを考えるなら幅2.7mから3.0mを検討する
駐車場スペースで後悔しやすいのが、乗り降りのしにくさです。車を駐車できることと、無理なく乗り降りできることは別の問題です。毎日の利用で不満が出やすいのは、車体が入るかどうかよりも、ドアを開けたときに体を横にしないと通れない、荷物を持って降りにくい、後部座席を使いにくいといった動作の部分です。
この問題を避けるためには、車室幅を2.7mから3.0m程度で検討することが有効です。幅2.5mを基本寸法とした場合、車両の横に残る余白は限られます。車幅の広い車両では、ドアを少し開けるだ けでも隣の壁や車に接近します。幅2.7m程度にすると日常の乗り降りに余裕が生まれやすく、幅3.0m程度を確保できれば、荷物の積み下ろしや後部座席の利用もしやすくなります。
特に住宅では、運転席側だけでなく助手席側や後部座席側の使い方も考える必要があります。小さな子どもがいる家庭では、ドアを大きく開けて体をかがめる動作が必要です。高齢者が利用する場合は、乗り降りの際にドアを広めに開け、体を支えながら立ち上がることがあります。買い物袋や大きな荷物を持っている場合も、横方向の余裕が不足するとストレスになります。
一方で、車椅子利用者用の駐車区画やバリアフリー対応を想定する場合は、一般的な乗用車区画とは別に考える必要があります。国土交通省の指針では、車椅子利用者用駐車ますの幅は3.5m以上、そこから出入口等に至る通路のうち一以上は幅員1.75m以上とされています。該当する施設や不特定多数が利用する建築では、バリアフリー関係法令や自治体基準を確認してください。
壁や塀に接する駐車場では、さらに注意が必要です。片側が完全に開けている駐車場と、両側に壁や柱がある駐車場では、同じ幅でも体感が大きく異なります。壁際に駐車する場合、ドアが壁に当たらないように車の位置を調整する必要があり、結果として反対側の余白が狭くなることがあります。柱型、雨樋、設備ボックス、外部水栓、メーター類など、小さな突起物も乗り降りの邪魔になりやすいため、図面上で見落とさないようにすることが大切です。
共同住宅や店舗、事務所など、不特定多数の人が利用する駐車場では、さらに余裕を見込むほうが安全です。利用者は駐車に慣れている人ばかりではありません。車両サイズもまちまちで、駐車位置が中央からずれることもあります。ぎりぎりの幅で計画すると、隣車への接触、乗降時のトラブル、歩行者との干渉が起きやすくなります。敷地条件が許すのであれば、幅2.7m以上を基本に検討し、利用者の性質に応じて3.0m程度まで広げる判断が望ましいです。
敷地面積に限りがある場合は、すべての車室を広くすることが難しいこともあります。その場合でも、建物側や壁側、端部の駐車区画、荷物搬入が想定される区画など、使いにくくなりやすい場所だけでも広めにする方法があります。車室幅を一律に考えず、利用頻度や配置条件に応じて幅を調整することが実務的です。
乗り降りのしやすさは、図面寸法だけでは伝わりにくい部分です。計画段階では、車を停めた状態でドアを開ける動作、人が横を通る動作、荷物を持って移動する動作を想像しながら寸法を確認することが必要です。駐車場の満足度を高めるには、車のための寸法ではなく、人の動作を含めた寸法として幅を考えることが欠かせません。
目安3 前面道路と駐車角度に合わせて必要な通路幅を確保する
駐車場スペースを考える際には、車室そのものの幅と奥行だけでなく、そこへ出入りするための通路幅を確認する必要があります。建築計画で見落とされやすいのが、車は入っているように見えるものの、実際には切り返しが多く、毎日の出入りがしにくいという問題です。特に前面道路が狭い敷地や、道路に対して駐車場が直角に配置される場合は、通路幅と回転スペースの検討が重要になります。
一般的に、車を道路から直角に入れる場合、前面道路や敷地内通路にはある程度の幅が必要です。道路幅が広ければ一度で入りやすくなりますが、道路幅が狭いと車の向きを変える余裕が不足し、何度も切り返すことになります。これは運転者の負担になるだけでなく、道路上での停車時間が長くなり、歩行者や自転車、他の車両との接触リスクも高まります。
敷地内に通路を設けて複数台の駐車場を配置する場合、車路幅は計画の使いやすさを大きく左右します。片側通行を想定するのか、対向通行を想定するのか、車室が片側だけなのか両側に並ぶのかによって必要な幅は変わります。駐車場設計・施工指針では、車室に面していない車路の幅員について、普通乗用車などの区分で一方通行3.5m、対面通行5.5mなどの目安が示されています。施設規模や法令適用の有無によって扱いは変わるため、小規模住宅では参考値として捉え、施設系では所管行政庁の基準を確認します。([MLITT][1])
また、路外駐車場については、規模や利用形態により駐車場法の技術的基準が関係する場合があります。国土交通省の資料では、自動車の出口・入口に関する技術的基準は、路外駐車場で自動車の駐車の用に供する部分の面積が500㎡以上のものに適用すると整理されています。無料で供用している場合でも、500㎡以上の路外駐車場では同施行令第7条から第15条までの技術的基準を満たす必要があるとされています。
駐車角度も大切です。道路に対して直角駐車にする場合は、土地を効率よく使いやすい一方で、出入りには一定の回転スペースが必要です。斜め駐車にすると、進入や退出がしやすくなる場合がありますが、区画の取り方や一方通行の動線計画が必要になることがあります。縦列駐車は奥行方向に長いスペースを活用できますが、出入りのしやすさや前後車両との関係を慎重に考えなければなりません。
住宅の駐車場でよくある失敗は、道路境界から建物外壁までの奥行だけを見て「5.0mあるから大丈夫」と判断してしまうことです。実際には、前面道路が狭いと車をまっすぐ入れるための角度が不足します。門柱や塀、隣地境界のフェンスが視界や回転を妨げることもあります。また、道路側に電柱、標識、側溝、縁石、植栽帯があると、図面上の道路幅よりも実際に使える幅が狭くなる場合があります。
出庫時の視認性も重要です。車を道路へ出す際、歩行者や自転車が見えにくい配置は危険です。特に建物や塀が道路際にある場合、運転席から左右を確認しにくくなります。駐車場の寸法を確保するだけでなく、見通しを確保するための隅切りや低い外構、ミラーの設置位置、照明計画も合わせて検討する必要があります。
建築実務では、車両の軌跡を確認することが有効です。単に駐車枠を置くだけでなく、進入時と退出時にどのような軌道を描くのかを平面上で確認します。余裕がない敷地ほど、車両の外形だけではなく、内輪差や前端の振れ、後退時の視界も考慮する必要があります。大型の車両や来客車、業務用車両が入る可能性がある場合は、想定車両を明確にしてから計画することが大切です。
通路幅は、完成後の日常動作を大きく左右します。駐車できることを最低条件としながら、無理なく入れること、出やすいこと、見通しがよいこと、歩行者と干渉しにくいことまで確認することで、駐車場スペースの実用性は大きく高まります。
目安4 玄関・道路・設備との干渉を避ける余白寸法を見込む
駐車場スペースの後悔は、車室寸法の不足だけでなく、周辺要素との干渉によっても起こります。建築計画では、駐車場の周囲に玄関アプローチ、門柱、ポスト、宅配用の収納、外部水栓、排水桝、電気やガスのメーター、植栽、照明、設備機器などが配置されます。これらが車や人の動きと重なると、寸法上は駐車できても使いにくい空間になります。
特に玄関との関係は重要です。駐車場から玄関までの動線が短いと便利ですが、車の前や横を通らなければ玄関に行けない配置では、車が停まっていると歩きにくくなることがあります。雨の日に傘を差して移動する、荷物を持って帰宅する、子どもや高齢者が一緒に歩くといった場面では、わずかな通路幅の不足が大きな不便につながります。車と建物の間に人が通る場合は、最低限の通行幅だけでなく、日常の荷物や傘の幅も考えることが大切です。
道路側の構造物にも注意が必 要です。門柱や塀を道路際に配置すると、車の出入りや視界に影響します。駐車場の入口幅が狭いと、車を入れるときにハンドル操作が難しくなり、門柱や塀に接触するリスクが高まります。特に夜間や雨天時は視界が悪くなるため、日中の図面確認だけで判断しないほうがよいです。入口幅には、車体幅に加えて左右の余裕を見込み、運転者が安心して出入りできる寸法を確保する必要があります。
設備との干渉も実務上よく起こります。屋外設備機器を駐車場の近くに置く場合、車のドア開閉や歩行動線と重ならないようにしなければなりません。メーター類や点検口は、検針や維持管理のために人が近づける必要があります。車を停めると点検できない、荷物を置くと開けられない、排水桝の上に車が乗ると維持管理しにくいといった問題は、完成後に気づきやすい部分です。
また、駐車場には排水勾配が必要です。舗装面は完全に水平ではなく、水が流れる方向を考えて勾配を付けます。この勾配が玄関アプローチや建物の基礎、道路側の側溝とどのようにつながるかを確認しないと、水たまりや段差が発生することがあります。車止めの位置や舗装材の切り替え部分も、歩行時につまずきやすい場所になり得ます。寸法だ けでなく、高さ関係を含めた確認が必要です。
屋根付きの駐車場を検討する場合は、平面寸法だけでなく高さと柱位置にも注意します。柱が車室の端にある場合でも、ドア開閉やミラー、車の旋回に影響することがあります。屋根の高さが不足すると、背の高い車両や荷物を積んだ車両に対応できない場合があります。将来、車両サイズが変わる可能性があるなら、現時点の車だけに合わせてぎりぎりにしないことが重要です。
植栽も見落としやすい要素です。計画時には小さな低木でも、成長すると枝が車に当たったり、乗り降りの邪魔になったりすることがあります。落ち葉や樹液、鳥のふんなどが車に影響することもあります。外構として見栄えを整えることは大切ですが、駐車場まわりでは維持管理や車体との距離を考慮して配置する必要があります。
駐車場スペースは、車だけの空間ではありません。建物への出入り、設備の点検、郵便物や荷物の受け取り、来客対応、清掃、災害時の避難など、さまざまな行為が重なります。 周辺要素との干渉を避ける余白を見込むことは、使いやすさだけでなく安全性や維持管理性にもつながります。
目安5 将来の車種変更や使い方の変化を想定して余裕を残す
駐車場スペースを計画する際には、現在所有している車だけで判断しないことが大切です。建物は長期間使うものですが、車や利用者の状況は変わります。家族構成、働き方、来客頻度、車種、荷物の量、介助の必要性などが変化すると、駐車場に求められる寸法や機能も変わります。
現在は小型車や軽自動車を使っていても、将来は大きめの車に乗り換える可能性があります。子どもの成長や親との同居、趣味や仕事の変化によって、荷物を多く積める車が必要になることもあります。事務所や店舗では、来客車や納品車、社用車の種類が変わることがあります。建築時点の条件だけに合わせて駐車場をぎりぎりにすると、数年後に使いにくさが表面化することがあります。
将来対応を考える場合、まず有効なのは幅と奥行に少し余裕を持たせることです。敷地に余裕があるなら、基本寸法に加えて、乗り降りや荷物の積み下ろしに使える余白を確保しておくと安心です。特に奥行方向は、車体の長さだけでなく、後部扉を開けるスペース、前方を人が通るスペース、車止めから壁までの距離を考える必要があります。
将来の設備対応も検討したい点です。車に関連する設備は、時代や使い方によって変わります。屋外電源、照明、防犯設備、将来的な充電設備、配管や配線のルートなどは、建築時にある程度想定しておくと後から対応しやすくなります。現時点で設置しない場合でも、配線経路や分電盤からの距離、機器を取り付けられる壁面、車との位置関係を考えておくと、将来の工事負担を抑えやすくなります。
また、駐車場は車以外の用途にも使われます。自転車やバイクを置く、子どもの遊び道具を一時的に置く、庭作業の道具を出す、家具や家電を搬入する、災害時に物資を置くなど、生活や業務の中で多目的なスペースとして使われる場面があります。ぎりぎりの駐車寸法だけで計画すると、こうした一時利用ができず、玄関や道路にはみ出してしまうこと があります。
複数台駐車の場合は、将来の台数変化も検討します。現在は1台でも、将来2台必要になる可能性がある住宅では、最初から完全な2台分を確保できなくても、縦列駐車や一時駐車の可能性を残す配置にしておくと柔軟性が高まります。逆に、将来は車の台数が減る可能性がある場合でも、駐車場を庭や作業スペース、来客用スペースとして転用できるようにしておくと、敷地の価値を保ちやすくなります。
建築実務では、将来のすべてを正確に予測することはできません。しかし、ぎりぎりの計画にしない、障害物を固定しすぎない、設備経路を塞がない、車種変更に耐えられる寸法を検討するという基本姿勢を持つだけで、完成後の対応力は大きく変わります。駐車場は毎日使う場所でありながら、将来の変化を受け止める余地を持たせやすい外部空間でもあります。だからこそ、目先の納まりだけでなく、長期的な使いやすさを意識して計画することが重要です。
建築実務で駐車場寸法 を確認するときの進め方
駐車場寸法を実務で確認するときは、まず敷地条件を正確に把握することから始めます。接道の幅、道路との高低差、敷地の間口、隣地境界、既存工作物、電柱や側溝の位置、歩道の有無などを確認します。平面図だけでなく、現地で車の出入りを想像しながら見ることが大切です。道路幅が図面上は十分に見えても、実際には交通量が多い、見通しが悪い、道路端に障害物があるといった要因で使いにくい場合があります。
次に、想定する車両を明確にします。現在の所有車だけでなく、将来乗り換える可能性のある車両、来客車、業務用車両、搬入車両まで考えます。住宅であれば家族の使い方、施設であれば利用者層、店舗であれば来客の滞在時間や回転率、事務所であれば社用車や荷物の出入りを整理します。車室寸法は一般的な目安から始められますが、最終的には使う人と使う車に合わせて調整する必要があります。
そのうえで、平面図に車両だけでなく人の動線を重ねます。駐車した状態で運転席から玄関まで歩けるか、助手席側から降りられるか、後部座席を使えるか、荷室を開けられるか、雨の日 に傘を差して通れるかを確認します。通路や余白は、単なる空き寸法ではなく、実際の行為に対応する寸法として見ることが重要です。
さらに、建物と外構の要素を同時に確認します。玄関ポーチ、階段、スロープ、門柱、ポスト、照明、設備機器、植栽、排水桝、車止めなどが駐車動作や乗り降りに干渉しないかを確認します。建築図、外構図、設備図が別々に検討されていると、現場で干渉が判明することがあります。駐車場まわりは複数の図面情報が重なる場所なので、早い段階で総合的に確認することが大切です。
法令・条例の確認も欠かせません。戸建住宅の自家用駐車スペースと、不特定多数が使う路外駐車場、共同住宅や店舗の附置義務駐車場では、確認すべき基準が異なります。駐車場法、建築基準法、自治体の附置義務条例、バリアフリー関係基準、道路占用や乗入れに関する手続きなど、計画条件に応じて確認範囲を整理します。迷う場合は、設計者や行政窓口に早めに確認したほうが、後の手戻りを減らせます。
出 入りのしやすさについては、車両軌跡を確認すると判断しやすくなります。特に、前面道路が狭い敷地、間口が限られる敷地、複数台を縦列や並列で置く敷地では、駐車枠だけでは判断できません。進入時と退出時のハンドル操作、切り返し回数、視界、歩行者との交錯を確認することで、完成後の使い勝手を予測しやすくなります。
現場での実測も有効です。設計段階で数字を検討するだけでなく、実際に近い寸法を現地や別の駐車場で体感すると、2.5mと3.0mの違い、奥行5.0mと6.0mの違いが理解しやすくなります。実務担当者が施主や関係者に説明するときも、数字だけで伝えるより、乗り降りや荷物の積み下ろしの場面を示したほうが合意形成しやすくなります。
最終確認では、日常利用と非常時の両方を考えます。普段の駐車、来客時、荷物搬入時、雨天時、夜間、停電時、災害時など、条件が変わっても安全に使えるかを確認します。駐車場は建築物そのものではないように見えて、建物へのアクセスと安全性を支える重要な空間です。寸法目安を機械的に当てはめるのではなく、実際の利用場面に落とし込んで判断することが、建築実務での品質を高めます。
まとめ
建築で駐車場スペースを計画するときは、車室が図面に収まるかどうかだけで判断しないことが大切です。住宅などの初期検討では、車1台あたり幅2.5m、奥行5.0m程度を出発点にできますが、これはあくまで配置検討の目安です。普通乗用車まで見込む場合や、不特定多数が使う駐車場では、設計対象車両、法令、条例、行政基準を確認し、必要に応じて奥行6.0m程度や別の寸法を検討します。
日常の使いやすさを考えるなら、乗り降りや荷物の積み下ろしを含めて幅2.7mから3.0m程度を検討したい場面が多くあります。前面道路が狭い場合や駐車角度に制約がある場合は、通路幅や車両の軌跡を確認し、無理なく出入りできるかを見極める必要があります。車椅子利用者用区画やバリアフリー対応が必要な場合は、一般区画とは別に、法令・条例に沿った寸法を確認してください。
また、駐車場は建物や外構、設備と密接に関係します。玄関アプローチ、門柱、塀、照明、 メーター、排水、植栽、屋外設備などが車や人の動きと干渉すると、寸法上は成立していても使いにくい空間になります。さらに、将来の車種変更や家族構成、業務内容、設備対応の変化も考慮しておくことで、長く使いやすい駐車場になります。
後悔しない駐車場計画に必要なのは、最小寸法を覚えることだけではありません。車を停める、人が降りる、荷物を運ぶ、道路へ出る、設備を点検する、将来の変化に対応するという一連の動作を、建築計画の初期段階から重ねて考えることです。敷地に余裕がない場合でも、どこに余白を持たせるべきか、どの動線を優先すべきかを整理すれば、実用性の高い計画に近づけることができます。
駐車場寸法の検討では、現地確認や実測、図面上での車両配置、関係者との情報共有が欠かせません。現場で寸法や位置を正確に記録し、設計や施工の判断に反映することは、手戻りを防ぐうえで重要です。特定の数値を一律に当てはめるのではなく、敷地条件、使う人、使う車、将来の変化を重ねて確認することが、公開後にも誤解を生みにくい駐車場スペースの記事づくりにもつながります。
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