目次
• ARドリフトとは?
• ARドリフトの主な原因
• スマホGPSの誤差とARへの影響
• センサー精度や環境要因によるズレ
• ARドリフトを解消する方法
• RTKによる高精度測位とは
• LRTKでスマホGPS誤差を解消
• LRTKによる簡易測量とは
• まとめ
• FAQ
ARドリフトとは?
近年、スマートフォンを使ったAR(拡張現実)アプリが増え、現実空間に仮想オブジェクトやナビゲーション情報を表示できるようになりました。しかし、「ARドリフト」と呼ばれるAR表示のずれに悩まされるケースも少なくありません。例えば、地図ア プリのARナビで矢印の位置が実際の道路からずれて表示されたり、ARゲームで出現するキャラクターの位置が合わなかった経験はありませんか。建設現場でも、設計図や配管のモデルをARで表示した際に位置がずれてしまい、正しく重ならないといった問題が起こりえます。このように、ARで表示される仮想対象が現実の位置と食い違って見えてしまう現象が「ARドリフト(AR表示のずれ)」です。本記事では、ARドリフトがなぜ起こるのか、その主な原因と解決策について詳しく解説します。
ARドリフトの主な原因
ARの表示位置が現実と合わなくなる原因はいくつか考えられます。主な要因として次のようなものが挙げられます。
• スマホGPSの位置情報誤差 – スマートフォン内蔵のGPSには数メートル以上の誤差が生じることがあり、ARオブジェクトの位置ずれの最大の要因となります。
• スマホのセンサー精度の限界 – ジャイロセンサーや電子コンパス(地磁気センサー)の精度不足により、端末の向きや傾き検出に誤差が入り、AR表示の向きや位置に影響を及ぼします。
• アプリの処理や環境要因 – ARアプリの位置合わせアルゴリズムの限界や、利用環境(高層ビルによるGPS信号の反射、磁気を乱す鉄製品、暗所などの照明条件)によってもズレが発生します。
これらの要素が組み合わさることで、スマホ画面に表示されたARの映像は現実世界での本来の位置から微妙にずれて見えてしまいます。中でも特に影響が大きいのが、スマートフォンGPSによる現在地情報の誤差です。以下では、このGPS誤差がARドリフトにどのように影響するかを詳しく見てみましょう。
スマホGPSの誤差とARへの影響
スマートフォンが現在位置を知るために使うGPS(Global Positioning System)には、避けがたい測位誤差が存在します。一般的なスマホ内蔵GPSの精度は、理想的な条件下 でも水平方向に数メートル(およそ5~10 m程度)の誤差があると言われています。市街地や高層ビルの谷間では衛星信号が建物に反射(マルチパス)したり遮られたりするため、誤差が10数メートルから場合によっては30 m以上に達することもあります。また、高度(高さ)方向の誤差も大きく、10 m前後ずれるケースも珍しくありません。
このようなGPS精度の限界は、ARに致命的な影響を与えます。位置情報に基づいて現実空間にオブジェクトを表示する位置合わせ型のARでは、スマホが認識している「現在地」がずれていれば、仮想オブジェクトを配置すべき現実座標も狂ってしまうからです。例えば、本来は目の前の地面に設置されるはずのバーチャルオブジェクトが、GPS誤差のせいで数メートル横の位置に浮かんで見えたり、建物の内部に入り込んで表示されてしまうことがあります。また、スマホGPSの高さ誤差により、本来地面に置くはずのARオブジェクトが空中に浮いてしまったり、逆に地面下に沈んで見えるといった垂直方向のズレも発生します。
多くのARアプリでは、スマホのGPSから取得した現在地をもとにARコンテンツの初期配置を決定し、その後はスマホ内蔵の加速度センサーやジャイロセンサーで端末の動きを追跡して 表示を更新します。しかし、最初に設定された位置が数メートルずれていれば、その後どんなにセンサーで追跡しても、AR表示の絶対的な位置が現実と合うことはありません。結局のところ、スマホGPSの誤差がARドリフトの根本的な原因となっている場合が非常に多いのです。
センサー精度や環境要因によるズレ
スマホGPSの誤差以外にも、AR表示のズレ(ARドリフト)を引き起こす要因はいくつか存在します。まず、スマホ側のセンサー精度の問題です。ARではカメラ映像に合わせてオブジェクトを表示するため、スマホの向き(方位)や傾きを把握するジャイロセンサー・加速度センサー、電子コンパスの精度が重要になります。しかし、これらのセンサーも完全ではありません。例えば、電子コンパス(地磁気センサー)は周囲の磁場の影響を受けやすく、近くに鉄塔や大型の金属製品、強力な電気機器があると示す方角がずれてしまいます。コンパスの指す北が5°狂えば、100 m先では約8~9 mも位置がずれる計算になります。また、ジャイロセンサーも長時間使用すると微小なドリフト(ゼロ点のずれ)が蓄積し、ARオブジェクトが少しずつズレていく原因となりえます。
次に、アプリ側の処理や周囲環境の要因です。高度なARアプリでは、カメラ映像の特徴点を活用して自己位置を補正するVPS(ビジュアルポジショニングシステム)やARクラウドといった技術が登場しています。しかし、こうした仕組みを使っていない場合や、壁が真っ白で模様がない・暗所であるなど周囲に特徴が乏しい環境では、アプリ側で正確な位置合わせを行うことが難しくなります。スマホのGPSが数メートル単位でずれている状態で、周囲にも位置合わせの手がかりがなければ、アプリはそのズレを補正しようがありません。さらに、スマホの処理能力の限界やアプリのアルゴリズム上の誤差も、ごくわずかではありますがAR表示の位置精度に影響しうるでしょう。
総合すると、AR表示のずれ(ARドリフト)は「位置情報(GPS)の誤差」と「センサー・アルゴリズムの誤差」が重なって発生します。では、こうしたズレを解消してARを現実とピタリ一致させるには、どうすればよいのでしょうか?次の章では、その具体的な解決策について考えてみます。
ARドリフトを解消する方法
ARの位置ズレをなくし、現実空間に正確に仮想オブジェクトを表示するためには、前述した原因ごとに対策を講じる必要があります。主な対策をいくつか挙げてみましょう。
• GPS精度を向上させる: 最も効果が高いのは、スマホの位置情報精度(GPS精度)を劇的に改善することです。これには後述するRTKという測位技術を活用する方法が有効です。
• センサーを適切にキャリブレーションする: コンパスの指向が狂っている場合は、スマホを「∞」の字に振って較正する、ジャイロのドリフトを抑えるには定期的にアプリを再起動する、といった基本的な対処も有効です。
• 特徴点を活用した位置補正を使う: ARアプリ側に機能があれば、周囲の建物や風景をカメラで認識して自己位置を補正するVPS(Visual Positioning System)やARクラウドの技術を利用するのも一つの手です。
• 利用環 境を選ぶ: 極端にGPSやコンパスに不利な環境(高圧線の真下、高層ビル街、強い磁場が発生する場所など)では誤差が大きくなりがちです。もし可能であれば、少しでも開けた場所に移動してARを利用するだけでも安定性が増す場合があります。
中でも鍵となるのは、やはり位置情報(GPS)の精度向上です。従来数メートルあったGPS誤差を数センチまで劇的に縮小できれば、AR表示のズレは大幅に軽減できます。その切り札となる技術がRTK(リアルタイムキネマティック)による高精度測位です。
RTKによる高精度測位とは
RTK(Real Time Kinematic)とは、衛星測位(GPSなど)の誤差をリアルタイムに補正する技術です。具体的には、正確な座標が分かっている基準局(固定局)と、移動しながら測位する移動局(ローバー、今回の場合はスマホ)との間で衛星からの信号データを比較し、基準局で得られた誤差情報を移動局へ送信します。移動局側ではその補正情報を自分の測位結果に適用し、衛星測位に伴う誤差を大幅に減らします。
RTKを利用すると、通常は数メートルの誤差があるGPS測位を一気に数センチメートル以内という非常に高い精度まで高めることができます。もともと土木測量など専門分野で使われてきた技術ですが、近年は機器の小型化・低価格化が進み、一般のスマートフォンでもRTKによる高精度測位が可能になりつつあります。例えば日本国内では、準天頂衛星システム「みちびき」が提供するセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)に対応したスマホ向けRTKソリューションも登場しています。これは山間部などネット接続が難しい場所でも、衛星から補正情報を直接受信してスマホでRTK測位を実現できる仕組みです。
とはいえ、スマホ単体でRTK測位を行うのは簡単ではありません。RTKには複数の周波数帯に対応した高感度なアンテナが必要ですが、スマホ内蔵のGNSSチップやアンテナは小型で性能に限界があります。また、RTK用の基準局データ(インターネット経由のNtrip配信や衛星のCLAS信号)を受信して処理するためのアプリや設定も複雑で、専門知識がなければ扱いにくいのが実情でした。そこで登場し たのが、スマホに外付けデバイスを装着し、誰でも簡単にRTK測位を利用できるようにしたソリューションです。それが「LRTK」と呼ばれるシステムになります。
LRTKでスマホGPS誤差を解消
LRTKとは、スマートフォンと組み合わせて使用する高精度GNSSソリューションです。ポケットサイズの専用デバイス(RTK対応のGNSS受信機)をスマホに装着し、Bluetoothなどで接続することで、手軽にセンチメートル級の測位精度を実現します。例えばスマホにLRTK受信機を取り付けて専用アプリを起動すれば、スマホ内蔵GPSでは数メートルずれていた現在位置が、瞬時に数センチの精度まで向上します。
LRTKデバイスには高性能なマルチバンドGNSSモジュールとアンテナが搭載されており、GPSだけでなくGLONASSやGalileo、みちびき(QZSS)など複数の衛星信号を同時に捉えます。さらに、ネットワーク経由で基準局からの補正情報(Ntrip方式)を受信したり、みちびきのCLAS信号を直接受信したりして、リアルタイムに位置補正を行います。その 結果、従来スマホGPSでは避けられなかった誤差をほぼ消し去り、常に安定したcm精度(約半インチ精度)でスマホ自身の位置を把握できるようになるのです。
この高精度な自己位置情報を活用すれば、AR表示の位置ズレ(ARドリフト)が解消されるのは言うまでもありません。LRTKを装着したスマホは、自分の位置を常に正確に把握し続けます。先ほどまで数メートルずれていた現在地が正しく補正されれば、ARアプリで表示する仮想オブジェクトも本来あるべき現実世界の位置にぴたりと一致するようになります。
例えば、3Dの設計データを現地でAR表示する場合でも、LRTKによる高精度な座標に基づいて投影すれば、そのモデルは地面や構造物と完璧に重なった位置に現れます。作業者が歩き回って視点を変えても、LRTKのおかげで自己位置が狂わないため、途中でARオブジェクトがふらついたりズレたりすることもありません。
言い換えれば、LRTKを使えば位置ズレのない安定したAR体験が可能になるのです。煩雑だった事前の位置合わせ作業や、表示ズレによるストレスから解放され、ARコンテンツ本来の価値を現場で最大限に引き出せるようになるでしょう。
LRTKによる簡易測量とは
LRTKの利点は、AR表示の精度向上だけに留まりません。スマホとLRTKを組み合わせることで、これまで専門の測量機器や熟練の技術が必要だった位置測定作業を、誰でも手軽に行えるようになります。言わばスマートフォンが「簡易測量機」に早変わりするのです。
具体的には、LRTKを装着したスマホで現地の任意の地点の座標を取得したり、連続的に位置を測定して移動経路(軌跡)を記録するといったことが可能です。取得したデータはその場でスマホ画面の地図上にプロットしたり、クラウドにアップロードして共有・解析することもワンタッチで行えます。また、現場で撮影した写真に、その瞬間の高精度な緯度・経度・高さ・方位情報をタグ付けして保存することも可能です。後からオフィスに戻って写真の撮 影地点やカメラの向きを正確に確認できるため、現場記録の精度と効率が飛躍的に向上します。
さらにLRTKを活用すれば、測量で必要となる基準点出し(墨出し)や出来形確認といった作業もARで支援できます。例えば、図面で指定された位置に仮想の杭(いわゆる「AR杭」)を表示し、現地で杭打ちすべきポイントのガイドに使うことができます。また、施工前の完成イメージである3Dモデルをその場に投影し、関係者と直感的に共有するといったことも容易です。これらは従来、測量士がトランシットやGNSS機器を据えて位置を出し、紙の図面と見比べながら行っていた手間のかかる作業ですが、LRTK対応のスマホが1台あれば即座に実現できます。
このようにLRTKによる簡易測量は、土木・建設の現場から地図作成、インフラ設備管理、さらには娯楽分野のARゲームまで、幅広い分野での活用が期待できます。位置情報の精度がボトルネックとなっていた様々なシーンで、LRTKがその課題を解決し、現場の生産性向上や新たな体験の創出に貢献していくでしょう。
まとめ
「AR表示がずれてしまう」という問題は、主にスマホGPSの誤差によって引き起こされていました。数メートル単位の誤差があれば、どうしても仮想オブジェクトが現実と食い違って見えてしまいます。しかし、高精度測位技術であるRTKをスマホで手軽に活用できるLRTKを使えば、そのズレを劇的に解消することが可能です。スマートフォンが自身の位置をセンチメートル単位で把握できるようになれば、AR表示はまるで現実と一体化したかのような正確さを帯びるでしょう。
AR分野に限らず、LRTKで実現する高精度な位置情報は様々な用途で威力を発揮します。専門知識がなくてもスマホひとつで簡易測量ができ、クラウドを通じて現場の情報を即座に共有でき、位置ずれのないARによる直感的な施工計画の確認(まさに建設DXの実践)も行えるなど、その応用範囲は非常に広範です。もし皆さんがAR表示のズレに悩んでいたり、現場で手軽に高精度の測位を行いたいと考えているなら、ぜひこのLRTKによるソリューションを試してみてはいかがでしょうか。
FAQ
Q: スマホのGPSだけでAR表示をすると、なぜ位置がずれてしまうのですか? A: スマートフォン内蔵GPSの位置精度には限界があり、数メートル以上の誤差が生じるためです。そのズレたままの現在地情報で仮想オブジェクトを現実空間に配置すると、どうしても表示位置が現実と食い違ってしまいます。さらに、GPS誤差にセンサーの精度不足や周囲環境の影響が重なることで、ズレが大きくなります。
Q: スマホGPSの精度はどの程度なのでしょうか? A: 一般的なスマートフォンでは、水平位置で5~10 m程度の誤差が珍しくありません。環境が悪いときには数十メートルずれる場合もあります。高度方向の精度はさらに低く、10 m以上の誤差が出ることもあります。ただし、最近の高性能スマホにはデュアル周波数GNSSに対応したものもあり、従来より精度が向上していますが、それでもセンチメートル級の精度には達しません。
Q: LRTKを使うと どれくらい高精度になるのですか? A: LRTKを使用すれば、スマホの測位精度は水平・垂直ともに数センチ程度まで向上します。実測でも水平位置で±1~2 cm、高さ方向で±数cm程度の誤差に収まるとの報告があります。通常のGPSと比べて何十倍も高い精度と言えるでしょう。
Q: RTKの仕組みを利用するには専門知識が必要ですか? A: 従来、RTK測位を行うには専門的な知識や複雑な設定が必要でした。しかしLRTKは、専門知識がなくても使えるよう設計されています。スマホにデバイスを装着し専用アプリでボタンを押すだけで、自動的に補正情報サービスへ接続してRTKによる高精度測位が開始します。難しい操作や設定は一切不要です。
Q: LRTKはどんな場面で活用できますか? A: AR表示の高精度化はもちろん、土木・建設現場での測量や出来形管理、地理情報の高精度な収集、農業分野での圃場管理、自動運転の実証実験など、位置情報の高精度化が求められる様々な場面で活用できます。また、災害現場の記録や屋内外の位置計測など、従来GPSでは難しかったシーンでも、みちびきのCLASを活用したLRTKなら高精度測位が可能です。
Q: 屋内でのARにもLRTKは有効ですか? A: 屋内では通常GPS信号が届かないため、一般的なARはマーカーやVPS(カメラ映像の特徴検出)による相対的な位置合わせが中心になります。ただし、LRTKの屋内測位機能を使えば、屋外で取得した正確な現在地を維持したまま建物内に入って測位を続けることも可能です。トンネル内や橋の下といった、通常であれば位置を見失いやすい場面でも役立つ手法として注目されています。
Q: LRTKデバイスの大きさ・重さはどのくらいですか? A: LRTKの外付けGNSS受信機は非常にコンパクトで軽量です。厚さは約1 cm、重量も150 g前後とスマートフォンに装着しても負担にならないサイズです。ポケットに入れて持ち運べるため、必要なときにすぐ取り付けて高精度測位を開始できます。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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