(イントロダクション) 建設業界では今、デジタル技術による施工管理の効率化、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きな潮流となっています。特に注目を集めているのが、スマートフォンなどを活用したAR(拡張現実)技術の現場導入です。ARとは、スマホやタブレット越しに現実の映像に3Dモデルや情報を重ね合わせる技術で、施工現場での直感的な情報共有やミスの予防に効果が期待されています。国土交通省が推進する*i-Construction*(アイ・コンストラクション)の流れの中でも、3次元データやICT活用の一環としてAR技術への期待が高まっています。
例えば、これまで施工管理者は図面や測量データを基に現場の出来形や品質を確認していましたが、ARを使えば設計モデルを実際の現場に重ねて表示し、その場で完成イメージや誤差を視覚的に確認できます。これは、熟練者でなくとも直感的に扱えるため、現場の生産性向上やヒューマンエラー削減につながる革新的な手法です。本記事では、i-Constructionの概要と背景を踏まえ、施工管理の主要4分野(出来形・品質・工程・安全)におけるAR活用の可能性を探ります。さらに、iPhoneに小型GNSS受信機を組み合わせた「LRTK」による高精度AR技術の仕組みと導入効果について解説し、最後に現場への導入方法をご紹介します。
i-Constructionが目指す建設DXとは
日本の建設業界では深刻な人手不足や技術者の高齢化が進んでおり、生産性向上が喫緊の課題となっています。そこで国土交通省は2016年より*i-Construction*と呼ばれる施策を推進し、測量・設計から施工・検査・維持管理に至るまで建設プロセス全体にICT技術を全面活用する取り組みを進めてきました。具体的には、ドローンを用いた3次元測量、BIM/CIMによる3D設計データの活用、建機のマシンガイダンス(ICT施工)導入、電子納品の推進など、従来人力に頼っていた作業をデジタル化・自動化することで生産性を向上させる試みです。その成果もあり、国交省の調査ではICT活用により土工事の作業時間が平均で約3割削減 できたとの報告もあります(※)。i-Constructionは単なる技術導入に留まらず、週休2日制の推進や発注方式の見直しなど働き方改革も含めた総合的な生産性革命と位置付けられています。
こうした背景から、近年は建設現場で得られる膨大な3DデータやIoTデバイスを活用して、施工管理を高度化・効率化する動きが活発です。中でもARは、データを「現場で見える化」する手段として注目されています。従来、図面や数値だけでは掴みにくかった完成形や進捗状況も、ARを使えば現地で立体的に共有できるため、認識のズレを減らし円滑なコミュニケーションに役立ちます。i-Constructionの掲げる*「魅力ある建設現場」*の実現には、ベテランの経験に頼らずとも誰もが正確に現場を把握できる仕組みづくりが重要であり、ARはその鍵を握る技術の一つなのです。
*(※国土交通省「i-Construction」関連資料より。一例として、ICT施工導入現場で平均30%程度の工数削減を報告)*
ARで広がる施工管理の可能性(出来形・品質・工程・安全)
AR技術を活用すると、施工管理の「出来形管理」「品質管理」「工程管理」「安全管理」という4大項目それぞれに新しいアプローチが生まれます。現場でスマホやタブレットをかざすだけで、今まで見えなかった情報が見える化されることで、従来手法の課題を解決しうる具体例を以下に紹介します。
出来形管理へのAR活用
出来形管理とは、完成した構造物や地形が設計図書どおりの形状・寸法に仕上がっているか確認し記録する業務です。従来は巻尺やレベルを用い、人力で要所の寸法を測定していましたが、この方法では限られた点しかチェックできず、見落としや測り忘れのリスクがありました。そこで登場したのが3次元点群データによる出来形管理です。レーザースキャナーやドローン写真測量で取得した点群を活用すれば、構造物全体を高密度に測定でき、微小な不陸まで把握可能となります。ARはこの点群活用を現場でさらに活かす手段です。例えば、iPhoneのLiDARスキャナや写真測量機能で取得した出来形点群モデルを、その場で設計3Dデータと重ね合わせて表示できます。ARヒートマップ機能を使えば、点群上の各点と設計面とのずれ量を色分けで可視化でき、設計との差異を一目で把握可能です。実際、出来形検査用に生成したヒートマップをARで現場に重ねることで、どの箇所が規格に合致していないか即座に特定でき、早期の手直しにつながっています。従来は図面上でのチェックや現場へのマーキング作業が必要でしたが、ARならその手間を省き、出来形管理の精度とスピードを飛躍的に高めることができます。
品質管理へのAR活用
品質管理では、材料や施工方法が所定の基準を満たしているか確認し、施工ミスを防ぐことが目的となります。ARは現場での検査・立ち会いを強力にサポートします。例えば、コンクリート打設前に鉄筋が図面通り配筋されているか確認する場面を考えましょう。従来はベテラン技術者が図面と見比べてチェックしていましたが、ARを使って鉄筋の設計モデルを現実空間に投影すれば、ずれや不足を一目で検知できます。同様に、埋設管やボルト位置など施工後に見えなくなる要素も、施工中にAR表示で確認・記録しておけば、後から「きちんと施工した証拠が無い」という事態を防げます。品質管理では何より「計画と結果の差異をなくす」ことが重要ですが、ARによりリアルタイムに設計通りか確認・是正できるようになれば、ヒュー マンエラー起因の手戻り作業を大幅に削減できます。実際にAR活用によって施工ミスが激減したとの報告もあり、品質確保の切り札として期待されています。さらに、AR上に施工手順書や検査チェックリストを表示してその場で確認するなど、現場での見える化された教育ツールとして使えば、若手技術者のスキルアップやヒューマンエラー防止にも役立つでしょう。
工程管理へのAR活用
工程管理では、工事の進捗状況を把握し計画通りに現場が進んでいるかを監督します。ARは進捗のリアルタイム可視化に威力を発揮します。例えば、工事現場にARで完成予定の3Dモデルを重ねて表示すれば、現在の出来高と完成形イメージを直接比較できます。出来上がっている部分と未施工部分が一目瞭然になるため、次に何をすべきか現場全員が共有しやすくなります。また、ある現場ではCIMモデルをAR表示してスマホ画面を撮影し、その画像を会議資料にそのまま活用したところ、図面作成や説明の手間が大幅に削減できた例もあります。このように必要な情報を即座に共有できるARは、打合せや報告の効率化にも貢献します。ひいては工程全体の短縮につながり、人員や重機の 稼働待ち時間の減少、ひいては工期短縮やコスト削減にも寄与するでしょう。さらに、クラウド連携したARシステムでは、現場で集めた進捗データや出来形情報を即座に本社や発注者と共有できます。遠隔地からでも現場の状況を3Dで確認できるため、検査立会いの簡素化や関係者間のリモート協調も容易になります。これは自治体職員や発注者技術者にとっても有益で、移動時間削減やスピーディな意思決定につながります。
安全管理へのAR活用
安全管理では、現場の危険要因を事前に洗い出し、事故を未然に防ぐことが求められます。ARは安全対策の事前シミュレーションに活用できます。例えば、クレーンの旋回範囲や重機の走行経路をAR上に表示し、危険エリアを視覚化すれば、作業員に直感的に注意喚起できます。立入禁止区域や保安施設の設置位置をARで地面にマーキング表示しておけば、現地での見落としを防ぎながら効率的に安全措置が施せます。また、ARゴーグルやスマホを用いた安全教育も効果的です。仮想的に再現した危険事象(高所からの墜落や重機との接触など)をARで体験することで、安全意識を高める訓練に役立ちます。加えて、点群スキャンとARを組み合わせれば、災害後の被災箇所をその場に再現して危険度を評価したり、老朽インフ ラの変状箇所を強調表示して補修計画に役立てたりと、インフラメンテナンス分野への応用も期待できます。遠隔地との情報共有の観点でも、AR記録は有効です。例えば、危険箇所を写したAR画像・動画を残せば、後日の原因分析や改善策検討の資料として説得力のあるエビデンスになります。このようにARは、安全管理においても現場のリアルを的確に伝える新たなツールとして注目されているのです。
iPhone+LRTKで実現する高精度AR技術
スマートフォン(iPhone)に取り付ける小型RTK-GNSS受信機「LRTK」。iPhoneの背面上部に装着して使用する。 ARを施工管理に本格的に活用するには、デジタル情報を現実の正しい位置に高精度で重ね合わせる必要があります。ここで鍵となるのが、iPhone+LRTKによる高精度測位技術です。LRTK(エルアールティーケー)とは、株式会社レフィクシアが開発したiPhone装着型のRTK-GNSS受信機で、スマホだけでは得られないセンチメートル級の測位精度を実現します。通常、スマートフォン内蔵のGPSでは精度は数メートル程度ですが、LRTKを用いることで数センチの誤差まで位置を補正できます。これは、国土地理院の電子基準点ネットワークや準天頂衛星「みちびき」のCLASといった補強情報を受信し、リアルタイムに測位誤差を補正するRTK技術によるものです。LRTKデバイスはアンテナとバッテリーを一体化した手のひらサイズの受信機で、BluetoothでiPhoneと連携して補正情報をやり取りします。これにより、面倒な配線や重たい三脚を必要とせず、スマホだけで高精度測位が可能になります。
一方、iPhone側では高性能なLiDARセンサーやカメラ、そしてAR表示のための強力なチップセットが搭載されています。最新のiPhoneはLiDARで周囲の形状を点群データとして取得したり、AR用に空間認識する機能(ARKit)を備えており、これらとLRTKのGNSSデータを組み合わせることで、現実空間での高精度な位置合わせが実現します。例えば、設計図の3Dモデルを現地に投影する場合でも、LRTKの位置情報に基づきずれることなく正確に配置されるため、現場での煩雑な位置合わせ作業が不要です。従来のARシステムでは現場で目印を置いて手動でキャリブレーションする必要がありましたが、LRTKならあらかじめ測量座標に紐付いた状態でモデルを表示できるため、スマホをかざすだけですぐにARが使える手軽さがあります。これは現場のスピード感にマッチした大きな利点です。
さらに、iPhone+LRTKの組み合わせは高精度な点群スキャンも可能にします。iPhoneのLiDARやカメラで取得した点群に対し、LRTKで測位した正確な座標を付与することで、各点に緯度・経度・標高といった情報が紐付きます。これにより、従来は据置型のレーザースキャナや高価な測量機でなければ難しかった位置合わせ済みの3Dモデルを、スマホだけで取得できるようになりました。取得した点群や写真データはクラウド上にアップロードして管理することが可能で、オフィスにいるスタッフともリアルタイムで共有できます。現場で測ったデータをすぐ図面化したり解析したりできるため、「現場で測って事務所に戻って図面化」という従来フローを大きく短縮できます。このようにiPhone+LRTKによる高精度AR技術は、測量から施工管理までのワークフローそのものを変革しつつあります。
高精度AR導入による主な効果
iPhone+LRTKを活用した高精度ARを現場に導入することで、施工管理には次のような効果がもたらされます。
• 作業の省力化・効率化: AR測量により、多くの手作業プロセスがデジタル化されます。丁張の設置や墨出しの簡略化、追加測量ややり直し作業の削減などにより、全体の作業時間が大幅短縮します。必要な情報を現場で即確認できるため、判断のスピードも向上し、工期短縮や人手不足解消に寄与します。
• 管理手法の標準化: デジタルツールの導入によって、属人的になりがちだった管理手法が統一されます。ベテランの勘や経験に頼らず、誰でも同じ手順・精度で計測・検査できるようになるため、組織全体で安定した品質管理が可能になります。点群データやAR記録は客観的なエビデンスとなるため、検査書類の信頼性も向上します。
• 若手技術者の活躍促進: 直感的に使えるスマホARは、デジタル世代の若手社員にも馴染みやすく、戦力化しやすいツールです。熟練者でなくても現場のイメージを共有しやすくなるため、新人技術者でも施工管理に積極的に参画できるようになります。実際に最新ツールを若手に任せ、ベテランと協力して業務改善を図ることで、組織全体のDX推進とスキル継承が進むでしょう。
• 記録の電子化・デジタルアーカイブ: ARや 点群で取得したデータはすべてデジタルに保存・共有できます。例えば、AR表示の写真や点群データを残しておけば、後日になってからでもその時点の施工状況を正確に再現・検証できます。紙の写真帳や報告書では残せない3次元の証拠を長期保存できるため、将来の紛争防止や維持管理にも役立ちます。また、LRTKクラウドではワンクリックで報告書を自動生成する機能も開発中であり、記録・報告業務の一層の簡素化が期待できます。
LRTKの複合機能による現場支援
ARヒートマップを現場の法面上に重ねて表示した例。色の違いで設計との誤差量が直感的に示され、是正箇所の特定が容易になる。 上述のように、LRTKはスマホ一台で測量+点群計測+AR表示を実現する統合ソリューションです。その中核となる複合機能を、実務視点で整理してみましょう。
• 高密度点群スキャン: LRTKを使えば、iPhoneを手に現場を歩くだけで周囲の地形や構造物を点群データとして記録できます。取得される点群にはリアルタイムで高精度座標が付与される ため、そのまま設計データと重ねた解析や出来形評価に利用できます。広範囲を網羅する詳細な出来形データを短時間で取得できるため、計測漏れが減り品質管理の抜け落ち防止に直結します。
• 3DモデルのAR重ね合わせ: 設計段階のBIM/CIMモデルや施工図の3DデータをLRTKアプリに取り込めば、現場で実物に重ねて表示できます。寸分違わずモデルが空間に固定されるので、施工前に完成イメージを関係者と共有したり、施工中に構造物の配置が図面通りか随時確認することが可能です。図面上では分かりにくかった干渉やミスも、その場で発見・是正でき、コミュニケーションロスを減らします。
• ARナビゲーション(測設誘導): LRTKは、指定した座標まで利用者を案内するナビゲーション機能も備えています。例えば、設計図に示された杭打ち位置や掘削範囲といったポイントを選択すると、AR空間上に矢印やマーカーが表示され、利用者を目的地まで誘導します。これにより、熟練の測量技術がなくとも正確な測設が行え、新人でも一人で杭位置出しなどの作業が可能になります。結果として、人員削減や時間短縮だけでなく、測点の打ち間違い防止にもつながります。
• ARヒートマ ップ確認: 前述した出来形ヒートマップ機能は、LRTKならではの革新的な機能です。クラウド上で設計3Dモデルと点群を比較して自動生成した誤差ヒートマップを、iPhoneにダウンロードして現場でAR表示できます。色分けされた誤差分布が実物とぴったり重なって見えるため、例えばコンクリート打設後の床版厚さが不足している箇所なども一目瞭然です。従来は出来形の不良箇所を特定するのに図面と実物を見比べる手間がありましたが、ARヒートマップにより即座に位置を把握し、その場での是正(追加打設や表面削正等)が可能になりました。この機能は既にLRTKユーザーに提供されており、現場の出来形管理を劇的に効率化しています。
おわりに:現場へのAR測量導入を検討しませんか
施工管理DXを加速するツールとして、AR技術とiPhone+LRTKの組み合わせは大変魅力的です。出来形・品質・工程・安全のあらゆる場面で、直感的な見える化とデータ活用によるメリットが得られるため、限られた人員でも高品質な施工を実現しやすくなります。国土交通省主導のi-Constructionの追い風もあり、今後ますます現場への普及が進むでしょう。
こうした高精度AR測量を「難しそうだ 」と感じる方もいるかもしれませんが、LRTKならiPhoneにデバイスを装着するだけで簡単に始められます。特別な測量機器や高度な技能がなくても、手軽にセンチメートル精度のAR体験が可能です。ベテランの知見とデジタル技術を融合させ、若手でも活躍できるスマートな現場を築いてみませんか。施工管理の次なるステージに踏み出す一歩として、ぜひLRTKの導入を検討してみてください。詳しくは[LRTK公式サイト](https://www.lrtk.lefixea.com/)でも製品情報や活用事例をご覧いただけます。DX時代の施工管理をリードする高精度AR技術で、皆様の現場も生産性と安全性を飛躍的に向上させましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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