一人測量をARで実現！LRTKでiPhoneが高精度測位端末に

AR（拡張現実）技術と高精度GNSS測位の融合により、複数人がかりだった測量作業を一人で完結させることが可能になりつつあります。iPhoneと小型RTK-GNSSデバイス「LRTK」の組み合わせで、誰でも現場でセンチメートル級の測量や墨出し、出来形管理ができる時代が到来しました。本記事では、一人作業での測量の課題と背景、従来手法との比較、新技術AR＋RTK活用のメリットに触れながら、iPhone＋LRTKを用いた測量・ナビ・AR投影の具体的な流れと活用事例を紹介します。最後に、現場DXを加速するLRTK導入の利点とお問い合わせ先もご案内します。

一人測量の課題と背景

建設現場や土木工事における測量作業は、品質管理や出来形確認に不可欠なプロセスです。しかし近年、この分野では深刻な人手不足が課題となっています。ベテラン測量技術者の高齢化が進む一方で若手の担い手が減少し、限られた人員で多くの現場をカバーせざるを得ない状況です。そうした中、従来は2人以上で行うのが当たり前だった測量を一人でこなせるようにする取り組みが注目を集めています。

従来、測量には複数人のチームが必要で、経験豊富な測量士と補助者がペアになって作業するのが一般的でした。例えば、トータルステーション（TS）による測量では1人が機器を操作し、もう1人が離れた測点でプリズムを持つという二人一組の体制が基本です。場合によっては測定値を記録するスタッフが加わった3人チームで臨むこともあり、このように手間と人員を要する測量は現場に大きな負担となっていました。

また、従来の測量作業は時間と労力もかかりがちでした。広範囲の出来形管理では測点の数が数百に上ることもあり、チームが現場中を移動して測定を繰り返す必要があります。さらに測量後には事務所に戻ってから図面へのプロットや数量計算、報告書作成といった工程が待っており、現場で即座にデータを活用できない非効率さも抱えていました。測量結果の確認や手戻りの発見が遅れることで施工全体の進捗に影響を及ぼすケースもあったのです。

さらに、従来手法にはヒューマンエラーや属人化の問題も潜んでいます。手書きで記録した測定データを後から整理する過程で記入ミスや転記ミスが発生したり、写真帳に撮影場所を書き忘れたりする例は少なくありません。高度な測量機器の操作は専門スキルを要するため、特定の熟練者に依存せざるを得ず、その人が不在だと「測量待ち」で現場が止まるといった事態も起こり得ます。このように、人員不足・作業非効率・ミス発生リスクを抱えた従来の測量を刷新しようと、現場では“一人測量”への期待が高まってきました。

従来手法との比較：新技術が変えるポイント

従来の測量方法と、最新のスマホを活用した一人測量（スマホ測量）とでは具体的に何が変わるのでしょうか。以下に主なポイントを比較してみます。

• 必要な人員: 従来は2～3人がかりで行っていた測量も、スマホ＋高精度GNSSがあれば一人で完結します。人件費削減だけでなく、人手不足の現場でも測量作業を遅滞なく進められます。

• 機材と準備: 従来はトータルステーションやスタッフ棒、レベル機器など大型機材の運搬・セッティングが必要でした。一方、スマートフォンと小型GNSS受信機（LRTK）の組み合わせならばポケットに入る機材だけで済み、煩雑な設置作業も不要です。

• 作業効率とスピード: 伝統的な測量では、測量→図面起こし→数量計算→出来形確認という一連の流れに数日を要することもありました。新しい手法では、現場で測ったデータをその場でクラウド共有し、即座に結果を確認できます。これによりリアルタイムな出来形把握が可能となり、手戻りの防止につながります。

• 測位精度と品質: 一人測量と聞くと精度に不安を覚えるかもしれませんが、RTK方式によりセンチメートル級の測位精度を実現しています。従来の巻尺や単独GPS測位よりも高精度で、品質確保に必要な精度要件を十分満たします。誤差が小さいため再測や修正作業が減り、出来形管理の信頼性も向上します。

• データ記録とミス防止: デジタル測量では測定値や写真に位置情報が自動記録されるため、紙にメモする必要がありません。写真ごとの撮影位置・方向も保存され、「どこで何を測ったか」後から迷う心配もなくなります。手作業記録に伴うヒューマンエラーが減少し、データの抜け漏れや取り違えを防げます。

• 技術習得と属人性: スマホアプリによる操作は直感的で、専門機器の操作経験が浅い人でも短時間で習得できます。測量のノウハウがアプリに集約されているため作業が標準化され、特定のベテランに頼らずとも一定の精度で業務を行えます。これにより属人化を排し、誰でも安定した測量ができる体制を築けます。

以上の比較から、一人測量の実現には「少ない人員で迅速かつ高精度にデータを取得し、即座に活用できる」ことが鍵だと分かります。それを可能にするのが次に紹介するAR＋RTK技術の活用なのです。

AR＋RTKで変わる測量スタイル

AR（拡張現実）とRTK-GNSS（リアルタイムキネマティック測位）を組み合わせることで、これまでにない測量スタイルが実現します。高精度GNSSで取得した位置座標に基づき、スマホの画面上に仮想の測量ターゲットや設計データをリアルタイム表示できるのが大きな特徴です。

例えば、図面上の座標に杭を打つ場合、従来は測量士が現地で交点を計算し墨を出していました。AR＋RTKを使えば、スマホ越しに見る現場映像に「ここに杭を打つ」というマーカーやラインが正確な位置に重ね表示されます。作業者はその表示を見ながら杭打ち作業を行えるため、一人でも測量と杭打ちを両立できます。

従来のAR技術では、現場と仮想モデルの位置合わせにマーカー設置や初期調整が必要で、ユーザーが移動すると表示がずれてしまう課題がありました。しかしRTKによる絶対測位を取り入れたARなら、グローバル座標に基づいて常に正しい位置に仮想モデルが表示されます。測量者が歩き回っても、AR上の杭や構造物モデルは実物とずれることなくその場に固定され続けます。この「位置ズレしないAR」により、屋外の広い現場でも安心してAR表示を活用できるのです。

また、ARによる視覚化は直感的な理解を助けるため、測量結果の共有や発注者との合意形成にも役立ちます。例えば完成イメージの3Dモデルを現地に重ねて見せれば、図面だけでは伝わりにくい完成像をその場で共有し確認できます。RTKの高精度があるからこそ、ARが現実の業務に使えるレベルの精度と安定性を備え、測量＋施工管理の新しいワークフローを可能にしています。

iPhone＋LRTKでスマホが高精度測位端末に

AR＋RTKを現場で手軽に実現するキーとなるのが、レフィクシア社が開発した超小型RTK-GNSS受信機「LRTK」です。これをiPhoneやiPadに取り付けるだけで、スマートフォンがセンチメートル級精度の測位端末に早変わりします。

LRTKデバイス「LRTK Phone」は、重量125g・厚さ13mmほどのコンパクト設計で、専用スマホケース経由でiPhone本体に簡単に装着できます。内部にはマルチGNSS対応の高性能アンテナと独自アルゴリズム搭載チップが収められており、従来は据え置き型機器や三脚が必要だった高精度測位をポケットサイズで実現します。バッテリーも内蔵しているため外部電源や煩雑な配線も不要です。

このLRTKを用いることで、スマホの位置計測精度は飛躍的に向上します。通常のスマホ内蔵GPSでは数mの誤差が出ることがありますが、LRTKとネットワーク型RTK補正情報（電子基準点データなど）を組み合わせれば、誤差数センチのFIX解（固定解）を短時間で得ることが可能です。現場に到着して電源を入れれば、衛星捕捉後すぐに測位が安定するため、待ち時間なく作業を開始できるのも強みです。

さらに、スマホと連携することで操作性とデータ処理効率も大幅に向上します。LRTK専用のスマホアプリを使えば、測位の開始から記録・計算・保存までワンタッチで完結可能です。難しい設定はアプリ側が自動処理してくれるため、専門知識がなくとも扱いやすいのが特徴です。例えば、測位と同時に平面直角座標系への変換やジオイド高の計算も自動で行われ、測点に名前やメモを付けて保存することができます。紙と鉛筆を持ち歩いて座標をメモする時代は終わりつつあり、スマホひとつで完結する測量が現実のものとなっています。

iPhone＋LRTKを活用した測量・ナビ・AR投影の流れ

それでは、実際にiPhone＋LRTKを使って一人測量を行う際の一連の流れを見てみましょう。測量からナビゲーション、ARによる投影まで、スマホ上でシームレスに行えます。

• 現況の高精度測量: 現場に到着したら、iPhoneにLRTKを装着して専用アプリを起動します。ネットワーク経由で基準局データ（補正情報）に接続し、RTK測位を開始。測位がFIX状態になれば、まず現況の地形や既存構造物の位置を測ります。測りたい点にスマホ（または取り外したLRTKアンテナ）をかざし、アプリのボタンをタップするだけで、瞬時にその点の緯度・経度・高さを記録できます。必要に応じてiPhoneのLiDARスキャナを用いて周囲を点群スキャンし、地形の三次元データを取得することも可能です。こうして集めた現況データはスマホ内に保存されると同時に、ボタン一つでクラウドにアップロードできます。

• クラウドでのデータ連携: LRTKアプリはクラウドサービス（LRTKクラウド）と連携しており、現場で取得した点群や測点の情報は即座にクラウド上の地図にプロットされます。現場からオフィスへデータを持ち帰る手間はなく、オフィス側ではWebブラウザからリアルタイムに測量結果を確認可能です。逆に、事前に用意した設計データ（例えば施工予定構造物の3Dモデルや図面上の座標リスト）をクラウドにアップロードしておけば、現場のスマホアプリに同期されます。クラウド上では設計モデルと現況の点群データが自動で位置合わせされるため、煩雑な位置調整も不要です。

• ターゲット位置へのナビ誘導: 続いて、設計で決められた位置や過去に測定・撮影した地点に対してナビゲーション機能を使って移動します。アプリで目的の点を選択すると、スマホ画面に目的地方向を示す矢印と距離が表示され、指示に従って現地まで誘導してくれます。現場に近づくと画面表示が切り替わり、まるでトータルステーションで一人墨出ししているかのようなARガイド画面になって精密に誘導します。これにより、地図や図面を片手に勘を頼りにポイントを探す必要がなく、初心者でも迷わず正確な測点にたどり着けます。

• ARによる杭打ち・墨出し: 目的の位置まで移動したら、スマホのカメラ越しに現場を映しつつAR機能をオンにします。すると、設定した座標に対応する位置に仮想の杭やマーキングラインが3D表示されます。例えば「ここに杭を打つ」という箇所にCGの杭が立って見えるので、その真下の地面に実際の杭を打設したりマーキングしたりします。作業者が移動して別角度から確認しても、仮想杭は常に所定の位置に留まり続けるため位置ズレの心配がありません。また、物理的に杭を打てないコンクリート面や立ち入りにくい急斜面上のポイントでもAR杭による位置出しが可能です。視覚的なガイドにより、従来は手間取っていた墨出し作業も一人で迅速かつ正確にこなせます。

• 出来形検査の計測と記録: 施工完了後の出来形検査にも、iPhone＋LRTKが威力を発揮します。完成した構造物や造成地の高さ・形状を測定する際、再びスマホで必要な点の座標を測ります。従来はスタッフを用いた測量結果を図面と照合するのに時間がかかりましたが、LRTKなら測ったポイントがそのまま設計座標系で記録されるため、設計値との差異を即座に把握できます。点ごとの誤差をリアルタイムで確認しながら測れるので、もし規格値からのズレが見つかっても現場で追加測定や補正をすぐ行えます。また、広範囲を一度に記録したい場合は点群スキャンにより出来形全体の三次元データを取得し、後で設計モデルと重ね合わせて検証することも可能です。これらの計測データや写真はクラウド上に蓄積されるため、出来形管理図表の作成もスムーズになります。

• 写真記録・点検への活用: iPhone＋LRTKは、日常の点検業務や施工記録の写真撮影にも有効です。フィールドノートの代わりにスマホで写真を撮るだけで、写真に撮影位置（緯度経度）と方位角度が自動タグ付けされます。例えばインフラ点検で橋梁のひび割れを撮影すれば、その写真は地図上で正確な位置にマッピングされ、後から「どこで撮った写真か分からない」という事態を防げます。記録写真はワンタップでクラウド共有でき、事務所に戻ってから写真台帳に整理する手間も省けます。さらに、LRTKのナビ機能を使えば同じ撮影位置への再現も容易です。定点観測地点を登録しておけば、次回の点検時にナビゲーションによって全く同じ場所・角度から写真を撮影できます。これにより経年変化の比較が正確に行え、点検記録の信頼性も向上します。

以上の流れを通して、一人の技術者が測量から杭打ち、出来形確認、記録作業まで一貫して実施できることがお分かりいただけたでしょう。では、どのようなシーンでこの一人測量が特に威力を発揮するのか、いくつか活用例を確認します。

一人測量で広がる活用例

• 杭打ち作業の効率化: 基準点の位置出しや杭打ちのマーキングにARを活用する例です。従来は測量班が位置を出してから作業員が杭を設置していましたが、LRTKなら作業員自身がスマホ画面のAR杭を見ながら正確な位置に杭を打設できます。斜面や高所で直接立ち入れない場所でも、安全な位置からARで杭位置を特定できるため、仮設標識の設置などもスムーズに行えます。

• 出来形検査の省力化: 工事完了後の出来形管理では、LRTKによって一人で迅速に測量検査が完結します。例えば道路工事で路盤高さをチェックする際、iPhoneを持って各ポイントの高さを測定しクラウドにアップロードすれば、自動で設計高との誤差一覧が得られます。複数人で丸一日かかっていた出来形測量が大幅に効率化され、検査結果の精度も向上します。

• 点検記録のDX: 定期点検や施工記録の写真撮影においても、一人測量ツールが威力を発揮します。スマホで撮影した写真には高精度な位置座標と方位情報が紐付けられ、クラウド上の地図に整理されます。これにより現場で紙の図面に撮影場所を書き込む手間や、後日の写真整理作業が不要になります。点検漏れを防ぎ、記録業務のデジタル化（DX）と効率化を促進します。

• ナビゲーション誘導による現場支援: LRTKのナビ機能は、初めての現場でも迷うことなく目的地に到達できる強力なツールです。例えば、埋設物の位置を確認する場合でも、事前に埋設地点の座標を設定しておけばスマホが作業員を正確にその地点まで誘導します。これにより「現場でポイントを探し回る」という無駄な時間が解消され、ベテランでなくとも確実に必要箇所へ到達できます。災害時の被害調査や緊急のインフラ点検でも、ナビ機能によって迅速な現場対応が可能となります。

スマホアプリとクラウド活用による業務効率化

一人測量を支えるスマホアプリとクラウドの活用は、現場の業務効率を飛躍的に高めます。測位データや写真はクラウド上に自動集約され、関係者間でリアルタイム共有されます。これにより、測量担当者が現場で取得した情報を離れた事務所の担当者が即座に確認して指示を出すことも可能となり、意思決定のスピードが上がって工事全体の進行が一層円滑になります。

また、クラウド上にデータが蓄積されることで、過去の測量結果や施工履歴を簡単に検索・参照できるようになります。紙の台帳やエクセルで管理された情報から解放され、誰もが同じプラットフォーム上で必要なデータにアクセスできるため、属人化した情報が存在しなくなります。ベテラン社員の頭の中にあったノウハウもデジタルデータとしてチーム全体で共有できるようになるのです。

さらに、スマホという日常的な端末を使うことで現場への定着率も上がります。1人1台のスマホ測量ツールを携行するスタイルが実現すれば、測量専門部署に依存せず各現場スタッフが必要なときにすぐ測定や記録を行えます。これは現場の即応性を高めるだけでなく、測量作業の待ち時間をなくし全体最適化する効果もあります。結果として、業務の簡略化・標準化と同時に働き方改革にもつながり、建設現場の生産性向上に寄与します。

LRTK導入の利点とお問い合わせ

スマホとARによる一人測量は、測量・施工管理の現場に画期的な変化をもたらします。人手不足や作業効率の課題を解決し、現場DXと品質向上を同時に実現できるソリューションとしてLRTKは大きな注目を集めています。国土交通省が推進する*i-Construction*（建設現場のICT活用）にも合致した取り組みであり、今後ますます普及が進むことが予想されます。

LRTKを導入することで、少人数での高精度測量、リアルタイムの情報共有、業務の標準化といった多くのメリットが得られ、現場全体の生産性が飛躍的に向上します。高精度な一人測量を実現するLRTKシリーズの詳細について興味をお持ちの方は、ぜひお気軽に[お問い合わせ](https://www.lrtk.lefixea.com/contactlrtk)ください。LRTKを活用し、御社の現場を次のステージへと進化させてみませんか。