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AR土木で施工エリアの進入禁止を共有する5つの方法

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この記事は平均7分15秒で読めます
万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

施工エリアの進入禁止は、看板やカラーコーンを置くだけで完結するものではありません。土木現場では、作業の進み方、重機の動線、仮設通路の切り替え、掘削範囲の変化、資材置き場の移動などによって、危険な場所が日々変わります。現場をよく知る担当者には当たり前の範囲でも、協力会社、搬入車両、点検者、発注者、近隣対応の関係者には伝わりきらないことがあります。そこで役立つのが、現地の空間に情報を重ねて確認できるAR土木の考え方です。この記事では、AR土木を使って施工エリアの進入禁止を共有するための5つの方法を、実務で使いやすい視点から整理します。


目次

施工エリアの進入禁止をAR土木で共有する意味

方法1 現場の境界をAR上で見える化する

方法2 進入禁止の理由と期間を現地で確認できる形にする

方法3 重機動線と人の動線を分けて共有する

方法4 朝礼と巡視で同じAR情報を確認する

方法5 記録を残して変更履歴を追えるようにする

AR土木で進入禁止共有を運用するときの注意点

まとめ


施工エリアの進入禁止をAR土木で共有する意味

土木現場における進入禁止エリアは、単に「入ってはいけない場所」を示すだけではありません。掘削中で足元が不安定な場所、重機の旋回範囲に近づく場所、吊り荷の下に入るおそれがある場所、仮設材が積まれている場所、法面や段差の近くで転落リスクがある場所など、進入禁止にする理由はさまざまです。さらに、同じ場所でも午前中は通行可能で、午後から舗装作業や型枠作業のために立入制限が必要になることもあります。現場の状況は常に変化するため、進入禁止の共有は一度表示して終わりではなく、更新し続ける管理が必要です。


従来の共有方法では、現場の看板、カラーコーン、バリケード、掲示板、紙の平面図、朝礼での口頭説明などが中心でした。これらは今後も重要ですが、現場の空間と図面上の情報が分かれていると、初めて入る人には位置関係が分かりにくい場合があります。特に、広い造成現場、道路工事、河川工事、構造物まわりの工事では、図面上の範囲と実際の地形や仮設物の位置を頭の中で合わせる必要があります。この変換がうまくできないと、本人は安全な通路を歩いているつもりでも、実際には作業半径や立入禁止範囲に近づいてしまう可能性があります。


AR土木を使うと、現場で見えている景色に施工エリアや進入禁止範囲を重ねて確認できます。たとえば、掘削予定範囲、重機の作業範囲、仮設通路の境界、資材置き場の外周、立入禁止ラインなどを、現地の位置に合わせて視覚的に共有できます。紙の図面だけでは伝わりにくい「このラインから先は危険」「この角を曲がると重機動線に近づく」「今日だけ通路が切り替わる」といった情報を、現地で直感的に確認しやすくなる点が大きな利点です。


ただし、AR土木は現場の安全設備そのものを置き換えるものではありません。進入禁止の最終的な管理には、現地の囲い、標識、誘導員、作業手順、立入管理、関係者教育が欠かせません。ARは、これらの安全対策を分かりやすく共有し、関係者の認識差を減らすための補助的な手段として使うのが現実的です。現場で「どこが危険か」を伝えるだけでなく、「なぜ危険か」「いつまで入れないか」「代わりにどこを通るか」まで共有することで、進入禁止のルールが守られやすくなります。


AR土木で進入禁止を共有する目的は、見栄えのよい表示を作ることではなく、現場で迷いを減らすことです。作業員、職長、現場監督、搬入車両の運転者、点検者、発注者など、関係者ごとに必要な情報は異なります。すべての人に同じ情報を見せるだけでなく、現場の役割に応じて、通行できるルート、立ち止まってはいけない場所、近づく前に連絡が必要な範囲を整理することが重要です。AR上で分かりやすく表示できれば、朝礼や現地説明の内容が残りやすくなり、口頭だけの伝達による抜け漏れを減らしやすくなります。


方法1 現場の境界をAR上で見える化する

施工エリアの進入禁止を共有する第一歩は、境界を明確にすることです。現場では「このあたりから先は入らないでください」という曖昧な説明が起こりがちですが、曖昧な境界は人によって解釈が変わります。特に、舗装前の路盤、盛土法肩、仮設ヤード、掘削部周辺などは、目印が少ない場合があります。そこで、AR土木を使って現場の景色に進入禁止範囲の境界を重ねると、関係者が同じ位置を確認しやすくなります。


境界の見える化では、まず基準となる位置情報を整理します。設計図面上の範囲、施工計画で定めた作業区画、実際に設置した仮囲い、現場で決めた安全余裕距離などを確認し、どの線を進入禁止ラインとして扱うのかを決めます。AR上に表示する線が現場のルールと一致していなければ、かえって混乱を招きます。現場のバリケードはこの位置にあるが、ARでは少し内側に表示されているという状態になると、どちらを基準にすればよいのか判断しにくくなります。そのため、AR表示を作る前に、現地の物理的な規制とデータ上の規制を照合することが大切です。


ARで境界を表示する場合、線だけでなく面として示すと理解しやすくなります。たとえば、立入禁止範囲を半透明のエリアとして重ね、境界部分に注意を促す表示を置くことで、通行できる場所と入ってはいけない場所の違いが分かりやすくなります。現地の視界では、手前の段差や資材に隠れて奥の危険範囲が見えないこともありますが、AR上で面として確認できれば、少し先にある危険も把握しやすくなります。


ただし、ARの位置表示には誤差が生じる可能性があります。建物、法面、樹木、重機、仮設材などがある場所では、測位や位置合わせが不安定になることもあります。進入禁止範囲をARで表示するときは、実際の安全余裕を削るような使い方は避けるべきです。AR上では境界が少しずれて見える可能性を前提に、現地の柵やコーン、看板と併用し、危険側に入らない余裕を確保します。ARは「正確にこの線の上を歩くための道具」ではなく、「現場の立入禁止範囲を理解しやすくする道具」と考えると運用しやすくなります。


また、境界を共有する際は、現場全体の中でどの場所を見ているのかも示す必要があります。AR画面で一部の範囲だけが表示されても、利用者が自分の向きや位置を誤解していれば、正しい判断につながりません。現在地、進行方向、近くの構造物、仮設道路、資材置き場など、現場で目印になる情報と合わせて表示すると、初めて現場に入る人でも理解しやすくなります。特に、広い現場では、進入禁止エリア単体ではなく、通行可能なルートと一緒に表示することが有効です。


境界の見える化は、現場の安全意識をそろえる効果もあります。関係者が同じ場所で同じ表示を見ながら確認できれば、「この線より内側は作業者だけ」「この範囲は重機作業中は立入禁止」「この通路は搬入車両優先」といった共通認識を持ちやすくなります。現場監督が説明した内容を、職長や作業員が別の言葉で伝え直すと、少しずつ意味が変わることがあります。AR表示を共通の確認材料にすれば、認識のずれを減らしやすくなります。


方法2 進入禁止の理由と期間を現地で確認できる形にする

進入禁止エリアを共有するときは、範囲だけでなく理由と期間も伝える必要があります。人は、なぜ入ってはいけないのかを理解しているほうが、ルールを守りやすくなります。単に「立入禁止」と表示されているだけでは、急いでいるときや作業上の都合があるときに、少しだけなら問題ないと判断してしまうことがあります。一方で、「掘削端部が不安定」「重機旋回範囲」「吊り荷作業中」「養生中」「舗装直後」「測量作業中」など、理由が分かれば、危険の具体像を想像しやすくなります。


AR土木では、現地の危険範囲に説明情報を重ねて表示できます。たとえば、進入禁止エリアを見たときに、禁止理由、対象者、開始時刻、解除予定、担当者、迂回ルートなどを確認できるようにしておくと、現場での判断がしやすくなります。紙の掲示板に情報をまとめる方法も有効ですが、現場が広い場合、掲示板を見た後に実際の場所へ移動する間に位置関係が分からなくなることがあります。AR上で現地と情報を結びつければ、場所と理由を同時に確認できます。


期間の共有も重要です。施工エリアの進入禁止は、常設のものばかりではありません。午前中だけのコンクリート打設、短時間の搬入作業、数日間の養生期間、夜間作業に向けた区画変更など、時間によって状態が変わります。昨日まで通れた場所が今日から通れない、午前は通れたが午後は通れないという変化は、現場での混乱につながります。AR表示に期間や時間帯を含めておけば、関係者が現地で最新の状態を確認しやすくなります。


特に注意したいのは、進入禁止の解除予定を過信させないことです。工程上は夕方に解除予定でも、作業の遅れ、天候、品質確認、検査待ちなどにより、解除が延びることがあります。そのため、AR表示では「解除予定」と「解除済み」を明確に区別する必要があります。解除予定の表示だけを見て、実際の確認前に入ってしまうと危険です。解除は現場責任者の確認後に反映する、解除済みの表示に変わるまでは入らない、といった運用ルールを決めておくことが大切です。


理由と期間を表示するときは、情報を詰め込みすぎない工夫も必要です。現場で歩きながら確認する画面に長い文章を表示しても、読み切れないことがあります。AR上では短く分かりやすい言葉で要点を示し、詳しい内容は別の確認画面や現場掲示で補うとよいでしょう。たとえば、現地では「掘削端部 接近禁止」「本日午後から通行不可」「搬入車両優先 通行注意」といった要点を表示し、必要に応じて詳細な作業指示や安全資料を確認できるようにします。


また、対象者ごとの表示も検討できます。現場監督に必要な情報と、搬入業者に必要な情報は同じではありません。監督者には作業範囲、担当班、解除条件、確認記録が必要になる一方で、搬入業者には進入可能なゲート、待機場所、通行禁止ルート、連絡先が重要になります。AR土木の運用では、誰が見る情報なのかを意識し、現場で迷わず判断できる情報量に調整することが求められます。


進入禁止の理由と期間を現地で確認できるようにすると、現場の安全説明にも一貫性が生まれます。朝礼で説明した内容、掲示板に貼った内容、現地で見えるAR表示が一致していれば、関係者は同じ情報を前提に行動できます。逆に、掲示板では通行不可、ARでは通行可能、口頭では注意して通行可というように情報が食い違うと、現場の判断が乱れます。AR表示を使う場合ほど、情報の更新責任と確認手順を明確にしておくことが大切です。


方法3 重機動線と人の動線を分けて共有する

施工エリアの進入禁止を考えるとき、特に重要なのが重機動線と人の動線の分離です。土木現場では、掘削機、転圧機械、運搬車両、クレーン、資材搬入車などが動きます。これらの動線と作業員や点検者の動線が重なると、接触、巻き込まれ、死角への入り込み、後退時の危険などが発生しやすくなります。進入禁止エリアは、危険な作業箇所だけでなく、重機や車両が通る範囲にも設定する必要があります。


AR土木を使うと、重機動線と人の通行ルートを現地で重ねて確認できます。紙の平面図では、動線が線で示されていても、現地の高低差、仮設材、駐車車両、資材置き場、視界の悪い角などを把握しにくい場合があります。ARで現地の景色に動線を重ねると、どこで人と車両が近づくのか、どの交差部に注意が必要なのか、どの場所に誘導員や注意表示が必要なのかを確認しやすくなります。


重機動線の表示では、単に走行ルートを示すだけでは不十分です。旋回範囲、後退範囲、荷下ろし位置、待機場所、方向転換場所、視界が遮られる場所なども共有する必要があります。特に、重機の周囲には運転者から見えにくい死角があり、現場の地形や仮設物によってさらに視認性が低下することがあります。AR上で重機の作業範囲を面として示し、人が立ち入らない範囲を明確にすることで、危険な接近を防ぎやすくなります。


人の動線については、通行可能なルートを明確に示すことが重要です。進入禁止だけを強調しても、どこを通ればよいのかが分からなければ、関係者は最短距離を探して危険な場所に入り込む可能性があります。AR上では、通行可能な仮設通路、待機場所、安全な集合場所、迂回ルート、横断可能な位置を併せて示すと効果的です。特に、現場の途中から入る協力会社や搬入業者は、普段の作業員ほど現場の変化を把握していません。進入禁止範囲と通行可能ルートを一体で共有することが、実際の安全行動につながります。


動線分離をARで共有する場合、日々の工程変更に対応する仕組みが欠かせません。道路工事では片側通行や仮設歩道の切り替え、造成工事では盛土範囲や搬入ルートの変更、河川工事では仮締切や資材ヤードの移動などが起こります。昨日の動線が今日も正しいとは限りません。AR表示を現場で活用するなら、工程変更に合わせて動線情報を更新し、古い情報が残らないように管理する必要があります。


また、動線の共有では、現場全体の流れを説明する場面と、個別の場所を確認する場面を分けて考えると運用しやすくなります。朝礼や新規入場者教育では、全体図として重機動線と人の動線を説明し、現地ではARで自分の立っている場所に近い危険範囲を確認します。全体説明だけでは現地で迷い、現地表示だけでは全体の流れを理解しにくいことがあります。両方を組み合わせることで、現場での理解度を高められます。


重機動線と人の動線を分けて共有することは、現場の安全文化にもつながります。危険な場所に入った人を注意するだけでなく、そもそも危険な場所に入りにくい情報設計を行うことが重要です。AR土木を使えば、現場に入る前の説明と、現地での確認をつなげることができます。関係者が「ここは通れない」だけでなく、「こちらを通ればよい」と理解できるようになれば、進入禁止は単なる禁止表示ではなく、安全な移動を支える仕組みになります。


方法4 朝礼と巡視で同じAR情報を確認する

進入禁止エリアの共有は、データを作って終わりではありません。現場で実際に使われなければ意味がありません。AR土木を安全管理に活かすには、朝礼、作業前打合せ、現場巡視、新規入場者教育など、日常の運用に組み込むことが重要です。特に、朝礼と巡視で同じAR情報を確認できるようにすると、説明した内容と現場で確認する内容が一致し、関係者の理解が深まりやすくなります。


朝礼では、その日の作業範囲、進入禁止範囲、重機動線、通行可能ルート、作業時間帯、注意点を共有します。ここでAR表示を使うと、平面図や口頭説明だけでは伝わりにくい位置関係を示しやすくなります。たとえば、「今日は南側の掘削範囲が立入禁止です」と説明するだけでなく、実際の現場方向に端末を向けて、どこからどこまでが対象なのかを確認できます。現場経験の浅い作業員や、その日だけ入る関係者にとって、視覚的な共有は理解を助けます。


ただし、朝礼でARを使う場合は、全員が画面を細かく見る前提にしないほうがよいでしょう。屋外では日差し、雨、手袋、騒音、集合人数などの影響で、画面だけに頼った説明は難しい場合があります。現場の掲示、紙の図面、口頭説明、指差し確認と組み合わせ、ARは位置関係を補足する道具として使うのが現実的です。大切なのは、朝礼で説明したAR情報が、その後の現場巡視でも同じ内容として確認できることです。


巡視では、朝礼で共有した進入禁止範囲が現地で守られているかを確認します。バリケードがずれていないか、表示が見えにくくなっていないか、資材が通路にはみ出していないか、実際の作業範囲がAR表示とずれていないかを確認します。AR表示を使えば、予定していた進入禁止範囲と現地の状態を比較しやすくなります。もし現場の状況が変わっていれば、AR情報を更新するきっかけにもなります。


新規入場者への説明でもARは有効です。初めて現場に入る人は、掲示板に示された区画名や測点名だけでは、実際の場所を把握しにくいことがあります。ARを使って現地で進入禁止範囲を確認すれば、「このフェンスの向こう側」「この仮設道路の右側」「この重機が作業する範囲」といった具体的な説明ができます。新規入場者が現場に慣れるまでの認識差を縮めるうえで、ARは分かりやすい補助になります。


朝礼と巡視で同じAR情報を使うには、情報の更新タイミングを決めておく必要があります。前日の夕方に翌日の作業範囲を登録するのか、朝礼前に現場監督が確認するのか、作業途中の変更は誰が反映するのかを明確にします。更新の責任者が曖昧だと、古い進入禁止情報が残ったまま使われるおそれがあります。特に、通行止めの解除や迂回ルートの変更は、現場の行動に直結するため、変更後の確認を丁寧に行う必要があります。


また、AR情報を確認したこと自体を記録できるようにすると、管理の質を高められます。朝礼で表示した内容、巡視で確認した箇所、修正した進入禁止範囲、是正したバリケード位置などを記録しておけば、後から振り返ることができます。安全管理は、問題が起きた後に説明するためだけでなく、問題を未然に防ぐために日々改善するものです。ARを使った確認を記録と結びつけることで、現場の安全管理が属人的になりにくくなります。


方法5 記録を残して変更履歴を追えるようにする

施工エリアの進入禁止は、現場の変化とともに更新されます。そのため、どの時点で、誰が、どの範囲を、どの理由で進入禁止にしたのかを記録することが大切です。記録が残っていなければ、後から「いつから通行止めだったのか」「解除前に誰が確認したのか」「なぜこの範囲を禁止にしたのか」を確認できません。AR土木を活用する場合も、表示そのものだけでなく、変更履歴を管理する視点が必要です。


変更履歴を残すことで、現場内の情報共有が安定します。たとえば、午前中に掘削範囲を広げたため進入禁止エリアを拡大した場合、その変更が関係者に伝わっていなければ、午後から入場した作業員が古い認識のまま行動するおそれがあります。AR表示の更新と同時に、変更内容、変更時刻、変更理由を記録しておけば、後から入った人にも最新情報を共有しやすくなります。現場の安全管理では、更新された情報をいかに確実に伝えるかが重要です。


記録には、AR上の表示範囲だけでなく、現地写真やメモを組み合わせると実用的です。AR表示で進入禁止エリアを確認した位置、現地に設置したバリケード、注意看板、迂回路、重機の配置などを記録しておけば、現場の状態を具体的に残せます。平面図上の線だけでは分からない現地状況も、写真や位置情報と合わせることで後から確認しやすくなります。特に、日々変化する仮設物や資材置き場は、記録を残しておくと引き継ぎに役立ちます。


変更履歴の管理では、古い情報が現場に残らないようにすることも重要です。AR上に過去の進入禁止範囲が残っていると、現在の状態と混同されるおそれがあります。履歴として保存する情報と、現場で現在有効な情報を分けて扱う必要があります。現場で見る画面には現在の進入禁止範囲を表示し、必要に応じて過去の履歴を確認できるようにするのが望ましい運用です。過去情報と現在情報の区別が曖昧だと、安全管理のためのARがかえって混乱の原因になります。


記録を残す目的は、責任追及のためだけではありません。むしろ、現場の改善に活かすことが重要です。進入禁止範囲の変更が頻繁に起きる場所、作業員が迷いやすい通路、バリケードの移動が多い箇所、重機動線と人の動線が近づきやすい地点を記録から見つけることができます。こうした傾向が分かれば、仮設計画の見直し、通路表示の改善、朝礼での重点説明、資材配置の変更などにつなげられます。


また、発注者や関係者への説明にも記録は役立ちます。施工中の安全対策は、現場の中だけでなく、発注者、監理者、近隣対応の担当者にも共有が必要になることがあります。ARを使って進入禁止範囲を示し、いつどのように管理していたかを記録しておけば、現場説明の説得力が高まります。ただし、外部に共有する情報には、現場の機密や個人情報、不要な詳細が含まれないよう注意が必要です。共有範囲に応じて、必要な情報だけを整理することが大切です。


変更履歴を追える運用を作るには、記録の粒度を決めておく必要があります。すべての小さな変更を細かく記録しようとすると、現場の負担が大きくなり、運用が続かなくなります。一方で、大きな変更だけを曖昧に記録すると、後から状況を確認できません。現場では、進入禁止範囲の新設、拡大、縮小、解除、迂回ルートの変更、重機動線の変更など、安全行動に影響する変更を中心に記録するのが現実的です。AR土木は、こうした変更を現地の位置と結びつけて残せる点で、進入禁止管理と相性がよいといえます。


AR土木で進入禁止共有を運用するときの注意点

AR土木を使って施工エリアの進入禁止を共有する際は、便利さだけでなく限界も理解しておく必要があります。AR表示は、現場の状況を分かりやすくする有効な手段ですが、表示されている情報が常に完全に正しいとは限りません。位置合わせの誤差、端末の向き、測位環境、データ更新の遅れ、現地の仮設変更などによって、表示と実際の状態がずれることがあります。そのため、AR表示を安全判断の唯一の根拠にするのではなく、現地の安全設備や作業指示と組み合わせて確認することが重要です。


まず注意したいのは、現地の物理的な立入管理を省略しないことです。ARで進入禁止範囲を表示しているからといって、バリケード、看板、カラーコーン、仮囲い、誘導員などが不要になるわけではありません。端末を持っていない人、画面を確認していない人、急いで移動している人、搬入車両の運転者など、AR表示を常に見られるとは限らない関係者もいます。現場の基本は、誰が見ても危険範囲が分かる物理的な表示です。ARは、その理解を補強する役割として位置づけるべきです。


次に、AR表示の更新責任を明確にする必要があります。現場では作業が進むにつれて、進入禁止範囲や通行可能ルートが変わります。表示が古いままだと、現場の実態と異なる情報を共有してしまいます。誰が更新するのか、いつ確認するのか、変更後に誰へ周知するのかを決めておくことが大切です。特に、進入禁止の解除は慎重に扱う必要があります。作業が終わったように見えても、養生中、検査待ち、清掃前、資材撤去前など、まだ立ち入るべきでない状態が残っている場合があります。


また、AR表示の内容は分かりやすさを優先する必要があります。安全情報を多く載せようとすると、画面上が複雑になり、かえって重要な情報が埋もれてしまいます。現場で必要なのは、瞬時に判断できる表示です。進入禁止範囲、禁止理由、通行可能ルート、注意が必要な交差部などを整理し、現場で見たときに迷わない表現にします。細かい規程や長文の説明は別資料で確認できるようにし、AR上では行動につながる情報を優先すると運用しやすくなります。


端末を使う場面の安全にも配慮が必要です。AR表示を確認するために画面を見続けながら歩くと、足元の段差、ぬかるみ、資材、車両の接近に気づきにくくなることがあります。現場では、立ち止まって確認する、周囲の安全を見てから画面を見る、歩行中は画面注視を避けるといったルールを徹底する必要があります。AR土木は現地確認を助けるものですが、端末操作そのものが新たなリスクにならないよう注意しなければなりません。


さらに、関係者全員が同じ理解で使えるように教育することも大切です。AR表示の意味、色や線の見方、進入禁止と注意喚起の違い、表示が不明な場合の確認先、現地表示とAR表示が食い違った場合の対応などを決めておきます。特に、現地表示とAR表示に差がある場合は、危険側に倒して判断し、勝手に立ち入らないルールを徹底することが必要です。便利な仕組みほど、使い方が人によってばらつくと安全上の問題につながります。


AR土木の運用は、最初から完璧を目指すよりも、重要なエリアから始めるほうが現場に定着しやすくなります。たとえば、重機との接触リスクが高い場所、通路切り替えが多い場所、初めて入る関係者が迷いやすい場所、発注者説明で位置関係を示したい場所などから活用します。効果が確認できたら、対象範囲を広げていくと、現場の負担を抑えながら運用を改善できます。AR表示を作ること自体が目的にならないよう、現場の安全行動に結びついているかを定期的に確認することが大切です。


まとめ

AR土木で施工エリアの進入禁止を共有するには、現場の境界を見える化し、進入禁止の理由と期間を分かりやすく示し、重機動線と人の動線を分けて整理することが重要です。さらに、朝礼や巡視で同じ情報を確認し、変更履歴を記録として残すことで、現場全体の認識差を減らせます。進入禁止は一度決めたら終わりではなく、工程や現場条件に合わせて更新し続ける管理項目です。ARを使うことで、図面上の情報と現地の景色を結びつけ、関係者が同じ場所を同じ認識で確認しやすくなります。


一方で、ARは現場の安全設備を代替するものではありません。バリケード、看板、仮囲い、誘導、朝礼、巡視、作業手順といった基本的な安全管理があってこそ、AR表示は効果を発揮します。位置表示の誤差や情報更新の遅れも考慮し、現地の実態と照合しながら使うことが大切です。AR土木を安全管理に取り入れる際は、誰が更新し、誰が確認し、どの情報を現場で有効なものとして扱うのかを明確にしておく必要があります。


施工エリアの進入禁止を正しく共有できれば、現場での迷いが減り、危険範囲への不用意な立ち入りを防ぎやすくなります。特に、広い現場や日々動線が変わる現場では、紙の図面や口頭説明だけでは伝わりにくい位置関係を、現地で直感的に確認できる点が大きな価値になります。まずは重要な危険箇所や通路切り替えの多い場所からAR表示を活用し、朝礼、巡視、記録の流れに組み込むことが実務的な第一歩です。現場で使いやすいAR土木の運用を始めるなら、進入禁止範囲の確認や共有を現地で扱いやすくするAR対応の計測・記録環境の活用へ自然につなげて検討するとよいでしょう。


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