建設業界では、2016年に国土交通省が提唱した「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を皮切りに、現場の生産性向上とデジタル化が本格的に進められてきました。2024年にはいよいよ建設業への時間外労働規制(いわゆる「2024年問題」)が適用されるなど、働き方や人材確保の面でも転換点を迎えています。2025年現在、こうした状況に対応すべく建設現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)は待ったなしの状態です。
中でも注目されているのが、スマートフォンを活用した高精度なスマホ測量です。従来は専門機器と複数人を要した測量作業が、RTK(リアルタイムキネマティック)技術を搭載したスマホによって一人測量で可能となりつつあります。手軽に現場の位置・地形データを取得して即座にクラウド共有できるこの手法は、現場DXの切り札として静かな広がりを見せています。本記事では、2025年時点のi-Constructionの方針や現状を踏まえ、測量起点のデジタル化が求められる背景、スマホRTKによる一人測量の役割と普及状況、測量から施工・検査・維持管理に至る一貫したデータ活用の展望、そしてi-Constructionを支える人材像と現場スキルの変化について詳しく解説します。最後に、最新のスマホ測量ソリューションであるLRTKを例に、手軽に導入できる高精度測量のメリットをご紹介し、DX推進へのヒントを探ります。
i-Constructionとは何か(2025年の方針と現状)
i-Constructionとは、建設現場の生産性向上と働き方改 革を目的に国土交通省が2016年度から推進している施策です。少子高齢化による担い手不足、熟練技能の継承難やインフラ老朽化への対応など、建設業界が抱える構造的課題を背景に、ドローン測量やマシンガイダンス(建機の自動操縦)などのICT技術を現場に導入して生産性の底上げを図る取り組みです。実際、2016年以降にICT施工(情報化施工)が徐々に普及した結果、直轄工事の生産性は約20%向上したとの報告もあります。中小建設会社でも、まずは測量データの電子化やクラウド活用から着手して、自社のペースでデジタル化を進める例が増えてきました。
2024年度からは*i-Construction 2.0*と称して取り組みが加速され、さらに踏み込んだ目標が掲げられています。最大のポイントは「建設現場のオートメーション化」で、2040年度までに現場作業の省人化3割(生産性1.5倍)を達成する長期目標を設定しました。そのために施工の自動化(建機の自律運転や遠隔操作の拡大)、データ連携の自動化(BIM/CIMなど3次元データ活用の標準化)、施工管理の自動化(現場監督業務の効率化・無人化)という3本柱で技術開発と導入が進められています。この 新方針では、安全性の向上や多様な人材が活躍できる環境整備、給与水準の底上げといった働き方改革も含め、建設業を「新しい建設産業」へと変革するビジョンが示されています。
こうした政策のもと、現場ではICT施工の原則化やBIM/CIMの全面適用が現実のものとなりつつあります。例えば国土交通省直轄工事では、2022年度時点で土工の約86%にICT施工が導入されており、2024年度からICT土工を原則発注とする運用が始まりました。
またBIM/CIM(3次元モデル)は2023年度から原則適用がスタートし、2025年には高速道路会社で全土木工事への全面適用が予定されています。
さらに、現場検査の遠隔臨場(オンラインでの立会検査)の導入拡大や、施工データのクラウド共有・電子納品化の徹底など、i-Constructionの取り組みは測量から設計・施工・検査・維持管理に至るまでトータルなデジタル化へと広がっています 。
2025年に求められる現場DXとは(測量起点のデジタル化)
現場DXとは、建設現場にデジタル技術を導入して業務プロセスを根本的に変革する取り組みを指します。単にタブレット端末を使うだけではなく、従来は紙や人手に頼っていた情報管理や施工手順をデータとITの力で最適化することが目的です。2024年の働き方改革関連法による残業規制適用(2024年問題)や将来的な担い手減少を踏まえ、2025年には現場DXの実現が一層強く求められています。限られた人員でも質の高いインフラ整備・維持を行うためには、従来の非効率な慣習を見直し、デジタル技術で業務を効率化・省力化することが避けられません。
その中で特に重要なのが、測量を起点としたデジタル化です。測量は工事の第一歩であり、現地の地形・構造物の状況を把握して図面や計画を作成する基礎となる工程です。この最初の段階で取得するデータをデジタル化しておけば、後続の設計・施工・検査・維持管理まで一貫してデータを活用することができます。逆に測量結果が紙の図面やアナログな数値でしか残っていないと、その後の工程で再入力や現場での再測定が必要になるなど手戻りが発生し、生産性を下げてしまいます。
例えば、ドローン空撮による3次元測量や地上レーザースキャナーの点群計測などは、従来より短時間で詳細な現地データをデジタル形式で取得できる手法として普及してきました。こうした最新技術により、測量成果をすぐにCIM(Construction Information Modeling)モデルや土量算出に反映したり、設計者・施工者間で共有したりすることが可能になります。すなわち、測量段階からデータをデジタルで一元管理することで、以降のプロセス全体をシームレスにつなぎ、業務効率を大幅に向上させられるのです。
現場DXを推進する上では、「まず測量からデジタル化する」ことが有効な戦略と言えます。実際、ICTやDXに馴染みの薄い中小企業でも、最初の一歩として測量機器やソフトをデジタル化し、得られたデータをクラウド上で管理するといった取り組みが増えてきています。紙の野帳でなくタブレットで測定値を記録したり、CAD図面ではなく点群データで地形を取り扱ったりするなど、小さな変化から現場のデジタル化を始めることで、結果的に作業のムダを省き働き方改革にもつながります 。測量起点のDXは、現場全体の変革への第一歩なのです。
スマホ測量・RTK・一人測量が担う役割と実務での浸透
近年登場したスマホ測量は、現場DXを語る上で欠かせないキーワードです。スマートフォンやタブレットに高精度GNSS受信機を組み合わせることで、従来は専用機器が必要だったセンチメートル級の測位を手軽に実現できます。この技術の核となるのがRTK(リアルタイムキネマティック)方式です。RTKは基地局と移動局の衛星測位データをリアルタイムに比較し、誤差を差分補正することで高い測位精度を得る仕組みで、従来は測量専門家が使う高価なGPS機材で行われてきました。それが近年、スマホと小型受信機、そしてインターネット経由の基準局データ(ネットワーク型RTKなど)を組み合わせることで、誰でも扱える身近な技術となりつつあります。
スマホ測量が注目される理由は、その省力化と効率化のメリットにあります。主な利点を挙げると次のとおりです。
• 一人で測量が完結:トータルステーションによる測量では測定と標尺保持に2人以上が必要でしたが、スマホ+GNSSなら1人で現在位置を計測可能です。人手不足の中でも現場作業を止めずに済みます。
• 携帯性と機動力:スマホ測量機器は小型軽量で、現場を歩き回って手軽に必要な点を測定できます。高所や危険箇所でも、機器を片手に安全な位置から測位できる場合もあり、迅速なデータ収集が可能です。
• リアルタイムなデータ共有:スマホで取得した測量データはその場でクラウドにアップロードでき、オフィスの支援スタッフや発注者と即時に共有できます。逐次データを共有することで、測り直しや伝達ミスを防ぎ、意思決定のスピードも上がります。
• 低コスト・導入の手軽さ:専用の測量機器に比べて初期投資が抑えられるケースが多く、既存のスマホを 活用できるため導入ハードルが低いことも魅力です。アプリの操作も直感的で、ITに不慣れな作業員でも短期間で使いこなせるようになります。
• データ活用の促進:測量結果がデジタルデータとして蓄積されるため、その後の設計や施工管理への利用が容易です。位置情報付きの写真撮影や、測定点間距離・面積の自動計算など、スマホならではの機能連携で付加価値の高いデータが得られます。
こうしたスマホ×RTKによる一人測量は、現場実務者の間で静かなブームとなりつつあります。実際に「1人1台」のスマホ測量機を現場に配備し、誰もが必要な時にサッと測量できるようにする動きも見られます。これにより、従来は測量班の到着を待っていたような場面でも、現場の担当者自らがその場で測定を行い、即座にデータを確認・共有できるようになりました。例えば、小規模な造成現場での出来形確認や、道路工事での埋設物位置の記録、災害現場の被災状況把握など、多様なシーンでスマホ測量が実務に活用されています。また、スマホの画面上に設計データをAR表示して位置出し(墨出し)を行うといった先進的な応用も登場しており、現場での使い方は今後さらに広がっていくでしょう。
測量から施工・検査・維持管理までの一貫データ活用
i-Constructionの理念の一つに、データの一貫活用があります。これは、プロジェクトの各段階で得られる情報を連携させ、使い回すことで効率化を図る考え方です。特に測量段階で取得した現地の空間データを起点に、それを設計・施工・検査・維持管理に至るまで活用すれば、業務ごとに同じ現場情報を取り直したり入力し直したりする無駄を省けます。いわゆる「一度入力したデータを何度も使う」ことで、一元化された情報基盤のもと各フェーズがシームレスにつながるのです。
例えば、測量で得た3次元の地形データや既存構造物の位置情報は、そのまま計画立案や設計のCIMモデル作成に活かされます。設計者は正確な現況モデルを参照しながら施工計画を立てることができ、出来上がった3次元設計データは施工者へ引き継がれてマシンガイダンス用のデータや出来形管理の基準として用いられます。施工中には、重機のセンサーや施工管理用の測定データがクラウド上の共通データ環境に逐次蓄積され、発注者や監督技術者もリアルタイムで進捗を把握可能です。検査段階でも、その施工データをもとに出来形や品質の確認を効率的に行えますし、完成後も3次元モデルや測量データが維持管理データベースに登録され、点検や補修計画に活用できます。
このように、一貫したデータ活用を実現するには、データ形式や基準を統一しオープンにしていく必要があります。現在、国や業界団体ではBIM/CIMの標準化や電子納品要領の整備が進められており、「3次元モデルを工事契約図書と位置付ける」といった新たなルールも打ち出されています。これにより3次元データが単なる参考資料ではなく公式な情報源となり、以降の工程で繰り返し利用されることが期待されています。また、現場DXが進むことで、将来的には完成したインフラのデジタルツイン(仮想空間上の双子モデル)を構築し、センサーで取得するモニタリングデータと組み合わせて、劣化予測や補修の最適化を図るといった高度な活用も見据えられています。
この一連の流れを支えるのが、前述した測量段階からのデジタルデータ取得です。 最初に正確で汎用性の高いデータを取得しておくことで、後工程でスムーズに活用できます。逆に現場データに誤差や不整合があると、その後のモデル作成や施工管理に支障をきたす恐れがあります。したがって、高精度な測量とデータ共有は、現場DX時代における品質確保と効率化の要と言えるでしょう。
i-Constructionを支える人材像と現場スキルの変化
デジタル技術が現場に浸透するにつれ、必要とされる人材像やスキルにも変化が現れています。i-Construction時代の現場を支えるのは、従来型の職人技だけでなく、ICTを使いこなすスキルを備えた「建設DX人材」です。具体的には、ドローンやGNSS測量機器、3次元設計データなどを扱えるデジタルリテラシーと、土木施工の実務知識や段取り力の双方を兼ね備えた人材が求められています。言わば、現場の経験×デジタル技術のハイブリッドなスキルセットを持つ技術者が理想像と言えるでしょう。
現場スキルのトレンドも少しずつ変わっています。例えば、図面読み取りや墨出しといった従来から重要なスキルは今も必要ですが、それらもタブレット上の電子図面やAR技術で行う場面が増えています。また、測量においてもトランシットやレベルの操作だけでなく、RTK-GNSS受信機や点群処理ソフトの扱い方を習得する必要があります。重機オペレーターであれば、マシンコントロール対応機の操作パネルを理解し、データ通りに施工を進めるスキルが求められます。さらに、クラウド上の施工履歴データやIoTセンサーの情報を活用して現場の問題点を分析・改善できるようなデータ活用力も重要度を増しています。
こうした新たなスキル習得のために、企業や業界全体での人材育成も活発化しています。研修ではICT施工の操作体験や3次元CADの基礎教育、若手とベテランのペアによる実地訓練などが行われ、世代を超えたスキル継承が図られています。ベテラン勢は豊富な現場知識を活かしてデジタルツールの活用法を検討し、若手はITへの習熟を活かして現場の効率化策を提案するといった、互いの強みを融合させる取り組みも見られます。DX推進においては経営層の理解とリーダーシップも欠かせませんが、現場から「使えるDX人材」を育てていくことが、i-Constructionを真に定着させる鍵となるでしょう。
人材面の変化は、現場の働き方や雇用にも波及しています。遠隔操作やテレワークの導入により、必ずしも現地に長時間詰めなくてもよい業務も出てきました。結果として、育児や介護と両立しながら働く技術者や、定年後に経験を活かしてリモート指導を行うシニア技術者など、新しい働き手層の活用も期待されています。また、デジタル化によって重労働や危険作業が軽減されれば、建設業のイメージアップにもつながり、若年層や女性の参入促進といった効果も見込まれます。人材の多様化と技能の高度化が相まって、i-Constructionは持続可能な産業への変革を後押ししているのです。
スマホ測量導入の実例:LRTKがもたらす手軽な高精度測量
最後に、スマホ測量の具体的な導入例として注目されているLRTKというソリューションをご紹介します。LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業によって開発された、小型のRTK-GNSS受信機とスマホアプリからなるシステムです。専用の受信機をiPhoneやiPadに装着することで、わずか125g程度のデバイスがスマホをセンチメートル精度の測量機に変身させます。ポケットに入れて持ち運べるコンパクトさで、必要なときにすぐ測れる手軽さが特徴です。
LRTKのスマホアプリを使えば、測りたいポイントでボタンをタップするだけで、その地点の緯度・経度・高さを高精度に記録できます。日本の測地系(世界測地系や平面直角座標系、ジオイド高)にも自動対応しており、現場で面倒な座標変換を意識する必要はありません。記録した点には日時やメモを残すこともでき、一連の測点データはワンタップでLRTKクラウドにアップロード可能です。クラウド上の地図には測定点がプロットされ、オフィスにいる担当者も即座に結果を確認できます。複数の点を測れば自動で距離や面積を計算する機能もあり、現場で必要な計算をその場でこなせます。
従来のRTK測量機器と比べて価格が格段に手頃であることも、LRTKの大きな魅力です。高価な機材を人数分揃えなくても、現場スタッフ各自のスマホにLRTKを1台ずつ装着すれば、1人1台の測量ツールが実現します。実際にLRTKは建設会社や測量会社のみならず、自治体などでも導入が進んでおり、災害現場の迅速な被害状況把握や インフラ点検業務の効率化に役立てられています。「いつでもどこでも誰でも測れる」環境を整えることで、現場の生産性とデータの蓄積量は飛躍的に向上するでしょう。
このようなスマホ測量ソリューションの登場により、DXのハードルは大きく下がりました。高精度測位というと専門業者に任せきりだった時代から、今や現場の誰もが必要な情報を自ら計測し活用できる時代へと変わりつつあります。重要なのは、まず小さな一歩でも現場にデジタルツールを取り入れてみることです。LRTKをはじめとする手軽なスマホ測量を現場DXの切り札として上手に活用し、2025年以降の建設現場の生産性向上と働き方改革につなげていきましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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