目次
• 防火シャッターの納まり確認に図面AR重ね合わせが役立つ理由
• 図面AR重ね合わせを始める前に整理する情報
• 視点1 基準位置と開口寸法が一致しているか
• 視点2 シャッターケースと巻取り部分の空間を確保できるか
• 視点3 ガイドレールと周辺仕上げが干渉しないか
• 視点4 天井内設備や建具との取り合いに問題がないか
• 視点5 防火区画と閉鎖動作を妨げる要素がないか
• 視点6 点検や部品交換に必要な作業空間があるか
• 現場で図面AR重ね合わせを行う基本手順
• 図面AR重ね合わせの精度を保つための注意点
• 確認結果を施工管理と関係者調整に生かす方法
• 防火シャッターの手戻りを図面AR重ね合わせで減らす
防火シャッターの納まり確認に図面AR重ね合わせが役立つ理由
防火シャッターは、建築物の防火区画や開口部に設けられ、火災時に必要な閉鎖性能を確保する重要な設備です。通常時には天井内や壁際に格納されているため、完成後の見た目だけでは内部の納まりを把握しにくく、施工段階での確認不足が後から大きな手戻りにつながることがあります。
特に注意したいのが、建築図、構造図、天井伏図、設備図、シャッター施工図などの間で位置や寸法がわずかにずれている場合です。図面上では成立しているように見えても、現場では梁、天井下地、照明、配管、ダクト、点検口、建具枠などが近接し、シャッターケースやガイドレールを予定どおり設置できないことがあります。
防火シャッターの納まりに問題があると、単に仕上げがきれいに収まらないだけでは済みませ ん。シャッターカーテンの降下経路に障害物が入る、ガイドレールの固定位置が確保できない、点検口から必要な部分に手が届かない、防火区画の連続性を適切に確保できないといった問題につながる可能性があります。
こうした問題を早期に見つける方法として有効なのが、図面AR重ね合わせです。図面AR重ね合わせでは、設計図や施工図に示された防火シャッターの位置、開口、ケース、レールなどを現場空間に重ねて表示し、実際の柱、梁、壁、天井下地、設備配管との関係をその場で確認します。
紙の図面や画面上の図面だけを見ている場合、施工担当者は通り芯や寸法から頭の中で完成位置を想像しなければなりません。一方、図面AR重ね合わせを利用すると、シャッターの設置予定範囲を現場の視界の中で確認できます。完成後の位置を直感的に共有しやすくなるため、建築、設備、電気、内装など複数工種が関係する箇所で特に効果を発揮します。
ただし、AR表示を行えば自動的に納まりが正しいと判断できるわけではありません。確認すべき基準を定めずに眺めるだけでは、重要な干渉や寸法不足を見落とすことがあります。防火シャッターの構成と施工順序を理解したうえで、どこを、どの方向から、何と比較するのかを整理することが重要です。
図面AR重ね合わせを始める前に整理する情報
現場で図面AR重ね合わせを行う前に、確認対象となる図面と基準情報を整理します。最低限確認したいのは、平面上の設置位置、通り芯からの離れ、開口幅、床仕上げからの高さ、シャッターケースの外形、ガイドレールの位置、天井高さ、梁下高さ、壁厚、仕上げ範囲です。
防火シャッターの位置は、建築平面図だけで判断しないことが大切です。平面図には開口位置が示されていても、ケースの大きさや取付金物、点検スペースまでは十分に表現されていない場合があります。シャッター施工図や納まり図を併せて確認し、現場で表示する対象が開口芯なのか、ケース外形なのか、ガイドレール内側なのかを明確にします。
また、使用する図面の版管理も欠かせません。設計変更後の図面が現場に反映されていなかったり、古い施工図をAR表示したりすると、表示自体が正確でも確認結果は誤ったものになります。図面番号、改訂日、承認状況を確認し、現時点で施工に使用する図面を基準とします。
高さ方向の情報も事前にそろえる必要があります。防火シャッターのケースは天井内に設置されることが多く、平面位置だけを合わせても、梁下、天井下地、設備配管との干渉は判断できません。床基準高さ、天井仕上げ高さ、ケース下端と上端、支持材の取付高さなどを確認し、AR表示の高さ基準を統一します。
さらに、現場側の基準点も選定します。柱角、壁芯、通り芯の墨、床に設けた基準点など、図面と現場の両方で位置を特定できる箇所が適しています。仕上げ材の仮置き位置や移動する資材などを基準にすると、再確認時に同じ位置へ合わせられません。恒久的または施工期間中に保持される基準を使用します。
防火シャッター周辺には複数の工種が集まりやすいため、確認時点も重要です。躯体だけの段階、天井下地施工前、設備配管施工後、仕上げ施工前では、見える対象が異なります。一度だけ確認するのではなく、施工段階に応じて確認目的を変えることで、図面AR重ね合わせの効果を高められます。
視点1 基準位置と開口寸法が一致しているか
最初に確認するのは、防火シャッターの基準位置と現場の開口寸法です。ここがずれていると、その後に確認するケース、レール、天井、設備との取り合いもすべてずれてしまいます。
図面AR重ね合わせでは、まず通り芯や柱芯などの基準を現場へ合わせます。そのうえで、シャッター開口の中心、左右端、ガイドレール位置を表示し、墨出し位置や実際の躯体開口と比較します。開口幅だけでなく、左右の取付余幅や仕上げ厚を含めて確認することが重要です。
例えば、図面上の開口幅が確保されていても、柱型、ふかし壁、仕上げ材、下地材などが加わることで、有効な取付幅が不足する場合があります。ガイドレールを壁面へ固定するためには、レール本体の幅だけではなく、固定金物や施工時の作業空間も必要です。AR表示では、開口線だけを重ねるのではなく、可能な限りレールや取付部を含む外形を表示すると確認しやすくなります。
左右の位置関係だけでなく、床との関係も確認します。シャッターが閉鎖する床面に段差、溝、仕上げ材の切替え、床見切りなどがある場合、閉鎖状態や納まりに影響する可能性があります。床仕上げ前の確認では、仕上げ後の高さを基準として表示し、現在の躯体床との差を考慮します。
防火シャッターの設置位置が廊下や出入口に近い場合は、通行幅や建具の開閉範囲との関係も見ます。図面上では別々の記号として整理されていても、現場では戸当たり、取手、壁の出隅などがシャッターの降下範囲へ近づく場合があります。
位置のずれを確認す るときは、一点だけを合わせて判断しないことも大切です。長い開口では、片側を合わせた結果、反対側でずれが大きくなることがあります。開口の両端、中央、床側、ケース側など複数箇所で整合を確認し、図面の縮尺や変形ではなく、現場側の施工差なのかを切り分けます。
この段階で寸法不足が見つかれば、壁や天井の仕上げが進む前に調整できます。ガイドレール位置、壁下地、開口補強などの変更が必要になる場合でも、早期であるほど関係工種への影響を抑えやすくなります。
視点2 シャッターケースと巻取り部分の空間を確保できるか
防火シャッターの納まり確認では、開口部の上に設けるシャッターケースや巻取り部分の空間が重要です。完成後は天井内に隠れることが多いため、施工前に十分な空間を確認しておかなければなりません。
図面AR重ね合わせでは、ケースの下端だけでなく、上端、奥 行き、左右端を含む外形を現場へ表示します。梁下やスラブ下との離れ、天井下地との関係、支持材を取り付ける位置を確認し、ケース本体が入るだけでなく、施工可能な納まりになっているかを判断します。
ケースの外形だけを見ると収まっているように見えても、吊り材、ブラケット、ボルト、配線、駆動部などを考慮すると空間が不足することがあります。そのため、AR上で表示する範囲は製品外形だけに限定せず、取付部や必要な作業範囲を含めた確認用の範囲として設定すると効果的です。
特に注意したいのが梁との干渉です。シャッターケースが梁下へ収まらない場合、天井高さの変更やケース位置の移動が必要になる可能性があります。ただし、防火区画の位置や開口条件によっては、単純に横へ移動できるとは限りません。問題が見つかった時点で、設計、施工、設備などの関係者と調整する必要があります。
天井内の設備も確認対象です。空調ダクト、給排水管、電気配線、ケーブル支持材などがケースの近くを通る場合、ケース設置後に設備を移動できなくなることがあります。反対に、設備施工後ではシャッターを搬入できない場合もあります。図面AR重ね合わせによって、完成位置だけでなく施工順序を想定しながら空間を確認することが大切です。
ケース周辺の点検口との位置関係も、この段階で見ておきます。点検口がケースの近くに配置されていても、内部の点検対象へ手が届かなければ十分ではありません。開口方向や天井下地の配置を含め、点検時に必要な姿勢や工具の使用を想定します。
また、ケース下端と天井仕上げ面の関係も重要です。ケースを露出させる納まりなのか、天井内へ隠す納まりなのかによって、仕上げ材の切り回しや見切り位置が変わります。AR表示で天井ラインとケース外形を同時に確認すると、完成後の見え方や仕上げ施工の難しさも把握しやすくなります。
視点3 ガイドレールと周辺仕上げが干渉しないか
ガイドレールは、シャッターカーテンを所定の経路で降下させる重要な構成部分です。ガイドレールの位置や固定状態に問題があると、閉鎖時の動作に影響する可能性があります。そのため、左右のレールが図面どおりの位置に設置できるか、周辺仕上げと干渉しないかを詳しく確認します。
図面AR重ね合わせでは、ガイドレールの中心線だけでなく、レールの外幅と突出量を表示します。壁仕上げ面からどの程度出るのか、壁の見切りや巾木とどのように取り合うのかを現場で確認します。仕上げ前の段階では、下地位置と仕上げ厚を考慮して完成面を想定します。
壁面に石こう系のボードや化粧材などを施工する場合、レール固定部の下地が不足していると、後から補強が必要になります。図面上でレール位置が壁下地の間に入っていないか、必要な固定位置に補強材があるかをAR表示と現場確認で照合します。
柱や壁の不陸にも注意が必要です。図面では直線として示されていても、実際の躯体面に段差や傾きがあると、ガイドレールの通りを確保しにくくなる場合があります。AR表示だけで微小な不陸を判断することは難しいため、重ね合わせで位置を確認した後、必要に応じて実測や水準確認を行います。
ガイドレール周辺の仕上げ見切りも重要です。レールを先に設置するのか、壁仕上げ後に設置するのかによって、施工順序と納まりが変わります。仕上げ材がレールの固定部を覆ってしまう、レールの点検や取外しができなくなる、仕上げ端部に不自然な隙間が生じるといった問題を防ぐため、完成状態だけでなく施工途中の状態も想定します。
また、手すり、掲示板、サイン、スイッチ、収納、設備盤などがレール近くに配置される場合があります。これらがシャッターの降下を直接妨げなくても、点検や清掃、部品交換の邪魔になることがあります。AR上でレールの範囲を示し、周辺に後施工されるものを含めて確認することが重要です。
レール下端付近では、床仕上げ、巾木、床見切りとの取り合いを確認します。床仕上げの厚みが変わる場所で は、左右で高さ関係が異ならないかを確認します。レール周辺に清掃しにくい隙間や、物が挟まりやすい形状が生じないかも、維持管理の観点から見ておくと安心です。
視点4 天井内設備や建具との取り合いに問題がないか
防火シャッターの周辺には、天井、照明、空調設備、配管、配線、建具など多くの要素が集まります。これらは別々の図面で計画されることが多く、各図面だけでは干渉を見落としやすい部分です。
図面AR重ね合わせを使う際は、防火シャッターだけを単独で表示するのではなく、可能であれば天井伏図や設備図の情報も切り替えて確認します。シャッターケースと天井下地、点検口、照明、感知装置、吹出口などの位置関係を現場空間で比較すると、二次元図面では分かりにくい近接状態を把握できます。
天井見切りとシャッターの納まりは、意匠にも大きく影響します。シャッターの降下位 置と天井材の切れ目がずれていると、仕上げが複雑になったり、不要な隙間が生じたりすることがあります。天井下地を施工する前に、ケース位置、シャッター通過部、天井開口の位置を重ねて確認すると、見切り位置を早期に調整できます。
空調ダクトや配管については、完成後に接触しないことだけでなく、施工時にケースを設置できる経路が残っているかも確認します。大きな設備が先に施工されると、シャッターケースや長尺部材の搬入、取付作業が難しくなる場合があります。図面AR重ね合わせを施工手順の検討に使うことで、設備の先行施工範囲を調整しやすくなります。
建具との取り合いでは、扉の開閉軌跡、枠の出寸法、ドアクローザーなどの金物位置を確認します。シャッターの降下位置と扉が重なる計画では、火災時に扉が開いたままになっていても必要な閉鎖動作が成立するか、関係図書と納まり条件に基づいて確認する必要があります。
また、シャッター近くに防煙垂れ壁や間仕切り壁などがある場合は、それぞれの位置関係と連続性を確認します。必要な区画性能は建物の計画や設備の種類によって異なるため、現場判断だけで変更せず、承認された図面や関係者の確認に基づいて調整します。
設備との干渉が見つかった際は、見た目上少し離れているから問題ないと判断しないことが大切です。振れ止め、保温材、接続部、点検時の取外し範囲など、図面に単純な線でしか表現されていない部分が実際には空間を必要とします。AR表示は干渉の可能性を見つける入口とし、最終判断では寸法確認を併用します。
視点5 防火区画と閉鎖動作を妨げる要素がないか
防火シャッターの納まり確認では、部材が取り付くかどうかだけでなく、火災時に予定された位置まで閉鎖できるかを確認する必要があります。見た目がきれいに収まっていても、降下経路に障害物があれば本来の役割を果たせない可能性があります。
図面AR重ね合わ せでは、シャッターカーテンが通過する面を床からケースまで連続して表示し、その範囲に物が入っていないかを確認します。天井付近だけでなく、壁面に設置されるサイン、配線モール、棚、什器、手すり、設備機器なども確認対象です。
施工中は問題がなくても、完成後の運用によって障害物が置かれる場合があります。特に、日常的に台車や備品が置かれやすい位置では、シャッター降下範囲を床表示や管理ルールで明確にする必要があります。AR確認時に完成後の利用状況を想定し、物を置きやすい形状や余剰空間がないかを見ることも有効です。
防火区画との関係では、シャッター上部や側部の壁、梁、天井内区画などが計画どおり連続しているかを確認します。シャッターだけが所定の位置にあっても、周辺の壁や貫通部の処理が不十分であれば、区画全体としての確認が必要になります。
配管や配線が区画を貫通する箇所については、承認された納まりに従った処理が行われるかを確認します。図面AR重ね合わせで貫通位置を 可視化すると、シャッターケースや支持材の近くに貫通部が集中していないかを事前に把握できます。
閉鎖に関係する装置や配線についても、位置と経路を確認します。操作部、制御部、感知に関係する機器などは、建築仕上げや他設備に隠れず、点検可能な位置に納める必要があります。具体的な作動条件や設置要件は、採用する設備の仕様、関係図書、適用される基準に従って確認します。
AR表示で降下面を確認する際は、正面からだけでなく、斜め方向や側面からも見ます。正面からは重なって見えない障害物でも、実際にはシャッター面へ張り出していることがあります。複数方向から確認し、シャッターカーテンの厚みやレール内への納まりも含めて判断します。
最終的な閉鎖動作は、施工完了後の作動確認によって確かめる必要があります。図面AR重ね合わせは、作動確認そのものを代替するものではありません。しかし、施工前や施工途中に障害となりそうな要素を除去し、作動確認で不具合が見つかる可能性を減らすために 役立ちます。
視点6 点検や部品交換に必要な作業空間があるか
防火シャッターは、施工が完了すれば終わりではありません。長期間にわたり適切な状態を保つためには、定期的な確認や必要に応じた整備、部品交換が行える納まりにしておくことが重要です。
図面AR重ね合わせでは、点検口の位置だけでなく、点検者が内部へ手を入れ、対象部を確認し、工具を使用できる空間があるかを確認します。点検口がケースから近すぎたり、天井下地や設備配管に囲まれていたりすると、開口があっても十分な作業ができません。
点検口の大きさや開く方向も重要です。点検口を開けたときに照明、配管、壁面などへ当たらないか、脚立を安全に設置できるか、通行を妨げずに作業できるかを確認します。廊下や出入口に面する場合は、点検時の周辺利用にも配慮が必要です。
駆動部、巻取り部、制御部など、点検対象となる箇所が複数ある場合は、一つの点検口ですべてに対応できるとは限りません。施工図や設備仕様を確認し、どの部分へアクセスする必要があるのかを整理したうえで、AR上に点検範囲を表示します。
部品交換を想定すると、手が届くだけでは不十分です。部品を取り外す方向、引き出す長さ、工具を振るための空間、交換部品の搬入経路なども必要になります。天井内で設備が密集している場合、施工時には設置できても、完成後には取り外せない納まりになることがあります。
ガイドレール周辺も維持管理の対象です。壁仕上げや造作材によって固定部が完全に覆われると、調整や交換が難しくなります。仕上げの美観だけを優先せず、将来の点検や補修ができる納まりになっているかを確認します。
床面やレール下端には、ごみや異物がたま りにくいことも大切です。清掃できない隙間や段差があると、異物が残り、閉鎖動作に影響する可能性があります。日常清掃の方法も想定し、管理担当者が確認しやすい状態を確保します。
図面AR重ね合わせによって点検時の視点から現場を見ると、施工直後には気付きにくい問題を早期に発見できます。点検口や作業空間の変更は、天井仕上げ後では大きな手戻りになりやすいため、下地施工前に確認することが効果的です。
現場で図面AR重ね合わせを行う基本手順
図面AR重ね合わせを防火シャッターの確認に活用するには、表示するだけでなく、一定の手順に沿って進めることが重要です。確認者によって基準が変わると、同じ場所でも異なる結果になるため、現場内で手順を統一します。
最初に、使用する図面の版と確認範囲を決めます。平面図、天井伏図、シャッター施工図などから、今回確認する位置、外 形、高さ、設備との関係を整理します。複数の図面を使用する場合は、それぞれの基準座標や縮尺が一致していることを確認します。
次に、現場で位置合わせに使用する基準点を選びます。通り芯の交点、柱角、壁芯など、位置を明確に特定できる基準を複数使用します。一点だけで合わせると回転方向のずれを検出しにくいため、離れた位置にある二点以上を使って方向を確認します。
位置合わせ後は、近くの柱、壁、開口など既知の部分へ図面を重ね、表示状態を検証します。防火シャッターだけが合っているように見えても、周辺全体がずれていれば正しい重ね合わせとはいえません。
重ね合わせが確認できたら、開口、ケース、ガイドレール、降下面、点検範囲の順に確認します。平面位置から始め、高さ方向、周辺設備、維持管理空間へと確認範囲を広げると、見落としを減らせます。
問題が疑われる箇所では、AR画面だけで判断せず、スケールや測定機器を用いて実寸を確認します。AR表示は位置関係を直感的に把握する手段として有効ですが、数ミリ単位の施工可否を最終決定するための実測を省略するものではありません。
確認結果は、画面記録、現場写真、位置情報、指摘内容、必要寸法をまとめて残します。写真には、どの方向から見たものか、何が図面位置で、どこが現況なのかが分かる情報を添えます。
最後に、指摘事項の対応者と確認期限を決めます。図面AR重ね合わせで問題を発見しても、情報が共有されなければ改善につながりません。設計確認が必要なのか、施工図の修正が必要なのか、設備位置を調整するのかを整理し、対応後に同じ基準で再確認します。
図面AR重ね合わせの精度を保つための注意点
図面AR重ね合わせを有効に使うには、表示精度の特性を理解する必要があります。現場空間を認識して表示する仕組みでは、移動距離、周辺形状、照明条件、基準設定などによって表示位置が変化する可能性があります。
特に広い現場を長時間移動しながら確認すると、最初に合わせた位置から徐々にずれが生じる場合があります。そのため、防火シャッターの確認場所へ移動した後、近くの柱や壁などで位置を再確認します。複数のシャッターを連続して確認する場合も、各箇所で基準との整合を確かめることが大切です。
周辺に特徴が少ない場所や、同じような壁面が続く場所では、空間認識が安定しにくいことがあります。仮設材の移動や照明条件の変化によっても表示が変わる可能性があります。必要に応じて現場基準を示す目印を設け、再現性を高めます。
図面データ自体の精度も確認します。画像化した図面を使用する場合、出力時の縮尺設定や余白処理によって寸法が変化していないかを確認します。図面上の既知寸法を測り、正しい縮尺で登録され ていることを確かめてから使用します。
高さ基準の誤りにも注意が必要です。床仕上げ高さと躯体床高さを混同すると、ケースや天井の表示が大きくずれます。図面上の高さがどの基準から示されているのかを明確にし、現場の基準高さと対応させます。
また、図面AR重ね合わせの表示結果を過信しないことが重要です。表示上で接触していないように見えても、施工誤差、保温材の厚み、支持金物、ボルトの突出などによって実際には干渉することがあります。反対に、表示上でわずかに重なっていても、位置合わせ誤差の範囲である可能性があります。
問題の可能性を見つけたら、関係寸法を実測し、施工図や納まり図と照合します。ARは確認箇所を素早く見つけ、関係者の認識をそろえるための道具として使い、最終的な施工判断は承認図書、実測結果、必要な協議に基づいて行います。
確認結果を施工管理と関係者調整に生かす方法
防火シャッターの納まりには、建築、構造、内装、電気、空調、衛生など複数の担当者が関係します。そのため、問題を発見することと同じくらい、分かりやすく共有することが重要です。
従来の指摘では、「シャッターとダクトが干渉する可能性がある」と文章だけで伝えることがあります。しかし、どの位置で、どの程度近く、どの部材を動かす必要があるのかが伝わりにくい場合があります。図面AR重ね合わせの画面記録と現場写真を組み合わせると、完成予定位置と現況の関係を視覚的に共有できます。
記録する際は、シャッター番号、階、通り芯、確認方向、図面版、確認日をそろえます。同じような開口が複数ある建物では、場所を明記しなければ別のシャッターと混同する可能性があります。
指摘内容に は、単に「干渉あり」と書くのではなく、どの範囲が重なっているのか、必要な離れがどの程度不足しているのか、どの工程までに判断が必要なのかを記載します。実測値がある場合は、AR画面と合わせて残します。
調整後は、変更内容を図面へ反映します。現場で設備位置だけを動かし、施工図を更新しないまま進めると、後工程や竣工図に不整合が残ります。変更された図面を再度AR表示し、現場と一致しているかを確認します。
図面AR重ね合わせは、施工担当者だけでなく、設計者や設備担当者との現地確認にも役立ちます。図面を指しながら説明するより、現場空間に完成位置を示したほうが、問題の意味や調整案を共有しやすくなります。
また、問題がなかった箇所も記録しておくと、施工後の確認や品質管理に活用できます。天井で隠れるケース周辺、支持部、配管との離れなどを施工途中に記録しておけば、完成後に内部状況を確認する資料となります。
同じ形式の防火シャッターが複数ある場合は、最初の一か所を重点確認し、その結果を標準納まりとして他の箇所へ展開できます。ただし、梁位置や設備配置は場所ごとに異なるため、標準納まりが成立することを各箇所で確認する必要があります。
防火シャッターの手戻りを図面AR重ね合わせで減らす
防火シャッターの納まりは、開口寸法、シャッターケース、ガイドレール、天井、設備、防火区画、点検空間など多くの条件が重なって成立します。一つひとつの図面では問題がなくても、現場で組み合わせたときに初めて干渉が見つかることがあります。
図面AR重ね合わせを利用すると、防火シャッターの完成予定位置を現場空間に表示し、実際の柱、梁、壁、天井下地、設備配管との関係を施工前から確認できます。二次元図面を頭の中で立体化する負担を減らし、異なる工種の担当者にも納まりを共有しやすくなります。
確認時には、基準位置と開口寸法、ケースの設置空間、ガイドレールと仕上げ、天井内設備や建具、防火区画と閉鎖動作、点検や交換の作業空間という六つの視点を押さえることが重要です。完成時の見た目だけではなく、施工手順、火災時の動作、将来の維持管理まで考えて確認することで、実務に役立つ判断ができます。
一方で、AR表示には位置合わせや縮尺、高さ基準などによる誤差が生じる可能性があります。表示だけで施工可否を断定せず、問題が疑われる部分は実測し、承認された図面や関係者の協議に基づいて判断する必要があります。
図面AR重ね合わせは、施工後の検査で不具合を探すためだけの方法ではありません。壁や天井が閉じる前に問題を見つけ、修正可能な段階で関係者へ共有するための施工管理手段です。防火シャッターのように複数工種が集中する設備では、早期確認による手戻り削減の効果が期待できます。
現場で図面をすぐに呼び出し、その場で重ね合わせ、確認記録まで一連の流れで行える環境を整えると、事務所と現場を往復する負担も抑えられます。図面AR重ね合わせをより身近な施工確認へ取り入れる方法については、Phoneのページで詳しく確認できます。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、
こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

