目次
• 盛土の体積計算で法尻小段の余幅を分ける理由
• 手順1 設計断面と施工断面の境界をそろえる
• 手順2 法尻小段の基準幅と余幅 の起点を決める
• 手順3 横断図ごとに余幅部分の断面積を求める
• 手順4 測点間の変化を反映して余幅土量を算出する
• 手順5 本体盛土と余幅土量を分けて照合する
• 法尻小段の形状に応じた計算方法
• 数量漏れと二重計上を防ぐ確認事項
• 現地計測から余幅土量を確認する方法
• 計算結果を実務で使える数量に整える
• まとめ
盛土の体 積計算で法尻小段の余幅を分ける理由
盛土の体積計算方法では、横断図から各測点の盛土断面積を求め、隣り合う断面積の平均に測点間距離を掛けて区間土量を算出する方法が一般的に用いられます。公的な数量算出要領でも、切土や盛土の体積を両断面積の平均と断面間距離から求める考え方が示されています。([rinya.maff.go.jp][1])
ただし、法尻付近に平場、管理帯、排水施設前面、作業余地などがある場合は、図面上の名称だけで計算範囲を決めることはできません。本稿では便宜上、盛土法面の下端付近に設けられた帯状の平場を「法尻小段」と呼びますが、この名称や範囲がすべての設計基準で統一されているわけではありません。一般に「小段」は法面途中の平場を指す場合もあるため、実務では設計図書に記載された名称、寸法線、施工境界を優先して確認します。
法尻付近の平場が設計幅より外側へ広がっているように見えても、その外側部分が直ちに追加計上対象になるとは限りません。完成後も設計形状として残る拡幅部、設計変更で認められた追加部分、施工中だけ形成する作業幅、法面整形のために設ける余盛りでは、数量 上の扱いが異なります。
とくに「施工余幅」と「余盛り」は同じ意味として扱わない方が安全です。施工余幅は施工性を確保するために設計線より外側へ確保する幅を指して使われることがあります。一方、余盛りは沈下、締固め、法面整形などを見込んで設計出来形より余分に盛り立てる部分を指すことがあります。公的な数量算出要領でも、余盛りした断面を施工した後に削り取りながら設計出来形へ整形する考え方が示されています。([農林水産省][2])
したがって、法尻小段の外側にある土量を読むときは、完成形として残る土量なのか、施工途中に必要な盛立量なのか、最終的に撤去または整形される土量なのかを分けなければなりません。契約数量、施工計画数量、材料手配数量、出来形数量では、同じ形状でも採用する範囲や土の状態が異なることがあります。
余幅部分は、一つの横断面では細い帯状に見えても、施工延長が長ければ体積が積み上がります。反対に、本体盛土の計算外周にすでに含まれている部分を別途加えると二 重計上になります。数量漏れと二重計上の多くは、計算式ではなく境界条件の不一致から生じます。
法尻付近の断面は、必ずしも長方形ではありません。既設地盤の傾斜、小段面の横断勾配、外側へのすり付け、排水溝、擁壁基礎、表層材などにより、三角形、台形、多角形へ変化します。平面図から幅だけを読み取り、一定厚を掛ける方法は、概算には使えても、条件によっては確定数量に適さない場合があります。
盛土の体積計算方法には、平均断面法、格子や点高差を利用する方法、施工前後の三次元面を比較する方法などがあります。三次元モデルによる土工数量では、現況地盤面と計画面などのサーフェスを重ね、標高差を用いて算出する考え方も示されています。([農林水産省][3]) ただし、契約数量や精算数量へ使用できるかは、発注者の要領、設計図書、協議結果、使用データの品質に従って判断します。
この記事では、法尻付近の平場にある設計外側部分を対象として、境界の確認から断面積、区間体積、本体盛土との照合、現地計測までを5つの手順で整理します。
手順1 設計断面と施工断面の境界をそろえる
最初の手順は、設計完成形、施工時形状、施工前地盤、材料境界を同じ断面上で整理することです。法尻小段の余幅土量を計算するときは、外側へ張り出した部分だけを見るのではなく、その部分がどの図面、仕様、設計変更、施工計画に基づくものかを確認します。
横断図では、計画面、法肩、法面、法尻、平場の内側端と外側端、施工境界、現況地盤線を確認します。寸法値が記載されていても、寸法線の起点と終点を見なければ対象範囲は確定しません。法尻から平場外側端までなのか、排水構造物の端から用地境界までなのか、土砂部分だけなのかによって断面積は変わります。
標準断面図と個別横断図は必ず照合します。標準断面図は代表形状を示すため、地形、用地、排水、構造物、取り付け部などの条件により、個別横断図 や平面図で幅、高さ、勾配が変更されている場合があります。標準値を全測点へ一律に当てはめると、局所的な拡幅やすり付けを見落とすおそれがあります。
施工計画図に作業幅、施工余幅、余盛り、仮盛土などが示されている場合は、設計完成形とは別の線で表示します。完成後に残らない部分は、完成形の設計数量へ自動的に含めません。一方、施工時の盛立量、運搬計画、仮置き計画では対象になる場合があります。
数量計算の目的も先に定めます。設計図面上の完成体積、施工時に必要な締固め後体積、搬入時のほぐれた土量、出来形計測による施工体積では、単位が立方メートルで同じでも意味が異なります。計算書には、対象時点、対象形状、土の状態を明記します。
施工前地盤線の種類にも注意します。現況測量時の地盤線、表土除去後の地盤線、段切り後の基面、置換後の基面などが混在すると、同じ上面形状でも盛土断面積が変わります。どの地盤線を盛土の下端に用いるかは、設計図書、数量算出条件、施工手順に従って 決めます。
表土除去や段切りを行うからといって、その全範囲が必ず盛土量へ加算されるわけではありません。除去後または段切り後の空間へ盛土材を充填する計画で、かつその体積を盛土数量として扱う条件であれば反映します。掘削数量と盛土数量の境界は、工種区分や契約条件によって異なるため、同じ体積を両方へ重複計上しないようにします。
左右の法尻は別々に整理します。左右で地盤勾配、法面勾配、排水施設、用地境界、施工幅が異なることは多く、片側だけに平場や余幅がある場合もあります。左側余幅と右側余幅を分けて記録すると、局所的な変更や控除を追いやすくなります。
設計図面と座標データの数値が一致しない場合は、どちらかを機械的に優先せず、図面の適用順位、設計者の指示、発注者との協議により解消します。縮尺読み、寸法記載、座標値、三次元設計データの間に差がある状態で計算を進めると、精密な計算でも根拠が不明確になります。
この手順の完了条件は、設計完成形の外周線、施工時の外周線、盛土下端となる基面、材料境界を断面上で説明できることです。余幅土量は、これらの線で閉じた範囲として定義します。
手順2 法尻小段の基準幅と余幅の起点を決める
二つ目の手順では、基準となる平場幅と、余幅を測り始める起点を決めます。余幅は基準線より外側の部分であるため、基準線が確定していなければ数量も確定しません。
設計図書に小段幅、管理帯幅、作業帯幅などが明示されている場合は、その寸法線の範囲を確認します。法尻から土砂部分の外側端までなのか、側溝や基礎を含む全幅なのかを区別します。構造物を含む寸法をそのまま土砂幅として使うと、構造物部分まで盛土へ含めるおそれがあります。
設計上の平場外側端が確定したら、その線を余幅の内側境界とします。外側境界は、完成後に残る設計線、設計変更線、施工計画上の仮線など、計算目的に対応する線を選びます。現地で土が広がっている位置を、そのまま契約上の余幅境界として扱わないことが重要です。
余幅の断面積を求めるには、水平幅だけでなく標高情報が必要です。設計端と外側端の計画高、両地点の地盤高、小段面の横断勾配、外側へのすり付け形状を確認します。
上面と地盤面がほぼ平行で、両端の盛土厚が同程度なら、余幅断面は長方形に近くなります。外側で盛土厚がゼロになるすり付けなら三角形に近くなります。内側と外側の双方に盛土厚がある場合は台形として扱えることがあります。
既設地盤が外側へ下がる場合は、余幅端の盛土厚が増えます。外側へ上がる場合は、盛土厚が減少し、上面と地盤面が交差する位置より外側は盛土になりません。余幅の平面幅だけを一律に掛ける計算では、この違いを反映できません。
小段面に排水勾配がある場合も、内側端と外側端の標高は同じではありません。余幅が広いほど上面の標高差が大きくなるため、水平面として扱うと断面積に差が生じます。
平面図では、設計端線と施工端線が縦断方向にどのように変化するかを確認します。曲線区間、構造物接続部、取り付け部、施工ヤード付近では、余幅が途中から始まり、広がり、縮小することがあります。
既存の測点間で余幅の開始位置や終了位置が明確な場合は、その位置に追加断面を設定します。測点両端だけで計算すると、実際とは異なる位置から直線的に幅が変化すると仮定されるためです。
各断面では、法尻点、設計平場端、余幅外側端、地盤との交点を特定し、それぞれの水平位置と標高を記録します。これにより、余幅部分を構成する閉じた図形を再現できます。
この手順が完了した時点で、各測点について基準幅、余幅、計画高、地盤高、上面勾配、外側のすり付け条件が対応している状態を目指します。
手順3 横断図ごとに余幅部分の断面積を求める
三つ目の手順では、各測点の横断図から余幅部分だけの断面積を求めます。平均断面法を用いる場合、測点ごとの断面積が区間体積の基礎になります。
余幅断面は、設計平場の外側端、計算対象とする外側境界、余幅上面、盛土下端となる地盤または基面に囲まれた範囲です。図形が閉じていなければ、断面積の対象範囲が確定していないため、先に境界を補います。
長方形として計算できるのは、上面と下端面がほぼ平行で、内側と外側の盛土 厚が同じとみなせる場合です。断面積は余幅に盛土厚を掛けて求めます。ただし、実際の地盤が傾斜している場合に、便宜的な長方形を採用するなら、概算であることを明記します。
外側で盛土厚がゼロになる直線的なすり付けでは、三角形として近似できます。内側厚を高さ、余幅を底辺として面積を求めます。上面または地盤線に折れ点がある場合は、一つの三角形で近似せず、区分を増やします。
内側厚と外側厚が異なり、上面と地盤面をそれぞれ直線とみなせる場合は、台形として整理できます。断面積は、内側厚と外側厚の平均に余幅を掛けて求めます。
地盤線や上面に複数の折れ点がある場合は、三角形や台形へ分割して合計します。座標が得られる場合は、余幅範囲の頂点を順番に並べ、閉じた多角形の面積として算出する方法もあります。頂点順序、線の交差、単位、座標軸の向きを確認します。
排水溝、集水桝、擁壁基礎、管路、張りコンクリートなどが余幅範囲へ入る場合は、盛土材に置き換わらない部分を控除します。構造物周辺に別材料の埋戻しがある場合は、土砂盛土と分けて数量化します。
表土除去後の基面や段切り面を盛土下端に採用する場合は、その形状を断面へ反映します。ただし、掘削量と盛土量の双方へ同じ空間を重複計上しないよう、工種区分を確認します。
上面に砕石、保護層、路盤、舗装、植生基盤などがある場合は、土砂盛土の上面を材料境界まで下げます。仕上がり面から地盤までを一括して土砂盛土とすると、別材料の体積が混入します。
各測点の結果は、本体盛土、左側余幅、右側余幅、構造物控除、別材料などへ分けて記録します。一つの合計断面積だけにすると、設計変更や照査時に修正範囲を追いにくくなります。
断面積を求めた後は、幅、盛土厚、地盤高との関係を確認します。余幅がゼロの測点で断面積もゼロになっているか、外側地盤が低い区間で断面積が大きくなる傾向があるか、構造物区間で控除が反映されているかを見ます。
断面図上の形状確認と数値確認を両方行うことで、線の取り違え、地盤線の版違い、単位違い、左右の取り違えを見つけやすくなります。
手順4 測点間の変化を反映して余幅土量を算出する
四つ目の手順では、各測点の余幅断面積から区間体積を求めます。平均断面法では、始点断面積をA1、終点断面積をA2、断面間距離をLとすると、区間体積VはV=(A1+A2)÷2×Lで求めます。公的な数量算出要領にも、この考え方が示されています。([rinya.maff.go.jp][1])
この式は、測点間の断面形状が連続的に変化するとみな して体積を求める方法です。余幅、盛土厚、地盤高が緩やかに変化する区間では扱いやすい一方、局所的な拡幅、地盤の凹凸、構造物による中断がある区間では、両端断面だけでは変化を十分に表せない場合があります。
余幅が途中から始まる場合は開始位置に、最大幅へ達する位置がある場合はその位置に、終了する場合は終了位置に追加断面を設けます。これにより、余幅なし、拡幅、一定幅、縮小の各区間を分けて計算できます。
排水桝や構造物で平場が途切れる場合は、構造物の始終点やすり付け位置で区間を分割します。構造物体積を一括控除するだけでは、前後の断面変化を表せない場合があります。
沢、谷、尾根、局所的な盛り上がりなど、地盤が大きく変化する位置にも追加断面を検討します。余幅部分は盛土厚が薄いことがあるため、小さな地盤変化でも体積への割合が大きくなる場合があります。
測点間距離は、設計図書や数量算出要領で定められた基準線と測点距離を使用します。曲線部で法尻側の実延長と道路中心線の測点距離に差があっても、契約数量を独自に法尻線延長へ置き換えてよいとは限りません。急曲線などで通常の平均断面法により難い場合は、適用要領や発注者協議に基づき別の算出方法を検討します。([rinya.maff.go.jp][1])
施工計画上の参考数量として法尻線や余幅中心線の実延長を用いる場合は、契約数量と区別して記録します。どの線に沿った距離かを明示しなければ、同じ断面積でも異なる体積になります。
区間体積を計算したら、始点、終点、区間距離、始点断面積、終点断面積、区間体積を対応させて記録します。追加断面を設けた場合は、分割区間の距離合計が元の区間距離と一致するか確認します。
左右に余幅がある場合は、左右別に区間体積を求めると照査しやすくなります。片側だけ途中で消える場合や、左右で材料や構造物条件が異なる場合に、内訳を保持できます。
三次元データを利用する場合は、施工前面と計画面または施工後面を同じ座標系で重ね、余幅範囲を閉じた領域として切り出します。点群から面を作成し、面の標高差で数量を算出する考え方はICT土工でも示されています。([国土交通省ハザードマップ][4])
ただし、三次元計算は測れば自動的に確定数量になる方法ではありません。外周線、欠測部の補間、構造物の除外、材料境界、メッシュや点高法などの算出方法、精算への適用可否を事前に確認します。
平均断面法と三次元計算の結果に差がある場合は、一方を直ちに誤りとせず、計算範囲、地盤面、測点間隔、補間方法、構造物控除、距離基準を比較します。細長く薄い余幅形状では、外周線のわずかな違いが数量差として表れやすいためです。

