河川、排水路、調整池、海岸、橋台、擁壁、ボックスカルバートなどの工事では、施工中の水や土砂の流入を抑え、作業区域を確保するために仮締切りを設けることがあります。仮締切りは施工段階に応じて撤去される仮設構造物ですが、撤去後に生じた空間や乱れた地盤を復旧する際、その土量を本体盛土へ含めるのか、埋戻し、復旧、置換などの別区分で扱うのかを事前に整理しなければなりません。
この区分が曖昧なまま盛土の体積計算を進めると、同じ空間を本体盛土と置換土の両方へ計上する二重計上が起こり得ます。反対に、仮締切り撤去部を本体盛土から控除したまま、復旧に必要な数量を別項目へ計上せず、拾い漏らすこともあります。完成形だけを示した設計図では、仮締切りの施工形状、撤去底面、過掘り、洗掘、地盤の乱れが十分に表現されていない場合があるため、完成断面だけを見て機械的に算定するのは適切ではありません。
なお、「置換土」「埋戻し土」「復旧土」などの名称や計上区分は、発注者の数量算出要領、設計図書、特記仕様書、契約条件によって異なります。本記事では便宜上「置換土」と表現しますが、実務では対象工事に適用される正式な工種名と算出条件を優先してください。
盛土の体積計算方法では、地盤面と計画面の高低差を求めるだけでなく、どの施工時点の面を基準にするのか、どの範囲を本体盛土とするのか、撤去後に投入する材料をどの工種で整理するのかを決める必要があります。ここでは、仮締切り撤去後の置換土を本体盛土から分けるための5つの確認事項と、実務上の計 算手順を解説します。
目次
• 仮締切り撤去後の置換土を盛土と分ける理由
• 盛土本体と置換土の区分を計算前に整理する
• 確認1 仮締切りの設置範囲と撤去範囲を特定する
• 確認2 体積計算に使用する地盤面の時点をそろえる
• 確認3 置換土の材料条件と締固め条件を確認する
• 確認4 盛土本体との重複範囲と控除範囲を確認する
• 確認5 図面と数量計算書と施工記録を照合する
• 仮締切り撤去後の置換土を計算する実務手順
• 断面法とメッシュ法を使い分ける考え方
• 置換土の計上で見落としやすい現場条件
• 計測データを活用して土量計算の精度を高める
• まとめ
仮締切り撤去後の置換土を盛土と分ける理由
仮締切りは、施工中に作業区域を確保するため一時的に設けられます。土砂による締切り、鋼製部材を用いた締切り、土のうや袋状資材を用いた締切りなどがあり、工法は水深、流速、地盤、施工期間、周辺環境などに応じて選定されます。土砂を使用した仮締切りは完成形の盛土と外観が似るため、設置に使った土、撤去した土、撤去後に投入した土が数量上混同されやすい点に注意が必要です。
完成後に残る本体盛土は、道路、堤防、造成地、護岸背面、構造物周辺などの計画形状を構成する恒久的な土工です。一方、仮締切り撤去後の置換土は、仮設物の撤去によって生じた空間を埋め、原地盤、設計河床、構造物周辺または完成計画面まで復旧するための材料です。同じ材料を使用する場合でも、施工目的、施工時期、要求品質、出来高管理、契約上の工種区分が異なることがあります。
仮締切りを既設地盤上へ載せ、撤去後に地盤をほとんど乱さない施工であれば、独立した置換土量がほぼ発生しない場合もあります。これに対し、仮締切りの基礎部を河床や軟弱地盤へ根入れし、撤去時に周辺地盤まで掘り取る場合は、復旧が必要な空間が生じます。撤去作業に伴う過掘り、施工中の洗掘、土砂流出、地盤の緩みがある場合も、当初の仮締切り形状だけでは必要数量を判断できません。
完成計画面までの全体を本体盛土として算定しながら、仮締切り撤去後の復旧分を別項目でも加算すると、同じ空間が二重計上されます。逆に、復旧分は仮設工に含まれると考えて本体盛土から控除したものの、仮設工側にも数量がない場合は空白が生じます。
したがって、名称だけで区分を決めるのではなく、どの空間を、どの時点で、何の目的により、どの材料で充填するのかを基準に整理することが重要です。設計図書上の工種名が「埋戻し」「復旧」「置換」「盛土」などのいずれであっても、体積を構成する上面、下面、平面範囲を明確にすれば、重複と欠落を確認しやすくなります。
盛土本体と置換土の区分を計算前に整理する
体積計算を始める前に、施工過程で扱う土量を目的別に分けます。完成後に残る本体盛土、仮締切りとして一時的に設置する材料、撤去して搬出または仮置きする材料、撤去後の空間を復旧する材料、構造物周辺の埋戻し材料は、数量上の意味が異なります。
ここで注意したいのは、工種区分と材料の移動が一対一で対応しないことです。仮締切りに使用した土を撤去し、品質を確認したう えで本体盛土や復旧材として再利用する場合があります。材料が同じでも、仮締切りの設置量、撤去量、再利用量、最終的な完成体積は別々の施工段階を表します。
また、仮締切りの設置体積と撤去後の置換体積が等しくなるとは限りません。設置時と再利用時で締固め状態が異なることがあり、撤去時の含水状態、異物混入、粒度変化、流出などによって全量を再利用できない場合もあります。したがって、撤去体積と必要な完成体積を単純に相殺せず、状態区分と品質条件をそろえて比較する必要があります。
完成形の本体盛土体積は、一般に設計上の上面と採用した下側基準面との間の幾何学的体積として求めます。仮締切り撤去後の置換土は、撤去後の地盤面と、設計図書で定めた復旧面または区分境界面との間の体積として整理できます。ただし、どの面を上面とするかは工事ごとに異なるため、着工前地盤を自動的に境界とみなしてはいけません。
仮締切り撤去後の復旧までが仮設工に含まれる場合と、復旧材を本体土工として計 上する場合では、同じ形状でも数量の整理方法が変わります。計算前に適用する数量算出要領、設計図書、特記仕様書、施工条件、変更指示の有無を確認し、各工種の境界を断面図または三次元モデル上へ示しておくことが重要です。
確認1 仮締切りの設置範囲と撤去範囲を特定する
最初に、仮締切りをどこへ設置し、最終的にどこまで撤去するのかを特定します。平面範囲だけでなく、底面標高、天端幅、法面勾配、根入れ、構造物との位置関係、残置の有無まで確認します。
仮設平面図に外周線が示されていても、その線が天端外周、法肩、法尻、施工ヤード境界のどれを示すかは図面によって異なります。平面図の面積だけで体積を求めると、法面、水中部、根入れ部を正しく反映できないことがあります。仮設平面図、縦断図、横断図、施工ステップ図、標準断面図を組み合わせ、三次元的な形状を確認します。

