目次
• 路肩拡幅部のくさび土量を計算する前に
• 盛土の体積計算方法の基本を押さえる
• 確認1 拡幅区間の始点と終点を確定する
• 確認2 現況面と計画面の境界を統一する
• 確認3 断面形状が変わる位置を拾う
• 確認4 くさび断面を三角形だけで計算しない
• 確認5 路体盛土と路床盛土を分けて集計する
• 確認6 控除土量と施工上の追加土量を整理する
• 平均断面法によるくさび土量の計算例
• 曲線区間や片勾配区間で注意すること
• 既設法面の段切りがある場合の考え方
• 計算結果の拾い漏れと二重計上を防ぐ方法
• 現地計測データを数量確認へ生かす方法
• まとめ
路肩拡幅部のくさび土量を計算する前に
道路改良や線形修正では、既設道路の路肩を外側へ広げるため、既設法面へ腹付けするように盛土を追加することがあります。横断方向に見ると既設法面と計画法面の間に三角形、台形、不整形多角形に近い領域が生じ、縦断方向に見ると拡幅の始点または終点へ向かって細くなる立体になります。本記事では、このような路肩拡幅部の盛土を説明上「くさび土量」と呼びます。正式な数量名称や工種区分は、対象工事の設計図書と数量総括表に合わせてください。
くさび土量は道路全体の盛土量に比べて小さく見えますが、拡幅延長が長い場合、左右両側に発生する場合、既設法面が急で盛土高が大きい場合には、合計数量が材料手配や運搬計画へ影響します。断面ごとの面積が小さいという理由だけで省略せず、設計上の計上範囲と控除条 件を確認したうえで数量を整理する必要があります。
路肩拡幅部で起こりやすいのは、計算式の誤りよりも対象範囲の認識違いです。標準的な拡幅幅に達した位置から計算を始め、そこへ至るすり付け区間を拾っていない例があります。反対に、道路全断面の盛土量に拡幅部がすでに含まれているのに、くさび土量として別に加算すれば二重計上になります。
数量の状態も区別しなければなりません。計画断面から求める盛土量は、完成形状に対応する締固め後の状態として扱うのが一般的ですが、掘削、積込み、運搬、土材料などは、適用する数量算出要領や積算区分によって地山、ほぐし、締固め後などの扱いが異なります。完成断面の体積を、そのまま搬入土の荷姿体積や運搬回数へ置き換えないことが重要です。
当初設計数量、設計変更数量、施工計画用数量、出来高確認数量は、同じ「土量」であっても基準面と目的が異なります。当初設計を再現するなら設計時に採用された現況面を使い、施工実績を確認するなら関係者間で確認 した施工前面または中間計測面を使います。目的の異なる数量を一つの表へ混在させると、差が計算方法によるものか、地形変化によるものか分からなくなります。
路肩拡幅部を立体として把握するには、平面図、縦断図、横断図、標準断面図、構造物図、数量総括表を相互に確認します。平面図だけでは盛土高や層境界が分からず、横断図だけでは拡幅の始終点やすり付け長を見落とすことがあります。図面間の版と基準をそろえ、どの面に囲まれた体積を求めるのかを明確にしてから断面積を計算します。
盛土の体積計算方法の基本を押さえる
道路土工の数量計算では、平均断面法または適用要領で認められた3次元モデルによる数量算出が用いられます。平均断面法は、隣り合う二つの横断面積の平均値に、その断面間の距離を掛ける方法です。測点1の断面積をA1、測点2の断面積をA2、断面間距離をLとすると、区間体積Vは次の式で表せます。
V=(A1+A2)÷2×L
例えば、ある測点のくさび断面積が2.0平方メートル、次の測点が4.0平方メートル、断面間距離が20メートルであれば、区間体積は次のとおりです。
V=(2.0+4.0)÷2×20=60立方メートル
複数の測点がある場合は、隣接する断面ごとに区間体積を求め、最後に合計します。式は単純ですが、A1とA2は同じ範囲、同じ層区分、同じ基準面で算出されていなければなりません。一方の断面が路体だけ、もう一方が路床を含む総盛土であれば、数式が合っていても数量の意味は一致しません。
平均断面法は、断面間の面積変化を直線的に近似する方法です。拡幅幅が直線的に変わっていても、既設地盤、計画高、法面勾配、構造物境界が途中で変われば、断面積は直線的に変化しないことがあります。両端断面だけで立体を十分に表せない場所では、変化点へ補助断面を追加します。
断面間距離は、使用する横断面の向きと整合させます。道路土工では道路中心線上の距離を標準とする考え方がありますが、急曲線などで中心線距離による算出が形状を適切に表さない場合は、適用要領に従って計算断面の図心位置に対応する距離などを検討します。中心線距離、左右路肩線距離、斜め断面間距離を理由なく混在させないことが大切です。
単位も統一します。断面積を平方メートル、断面間距離をメートルで扱えば、体積は立方メートルになります。図面寸法がミリメートルで表示されている場合や、CADデータの作図単位が異なる場合は、面積計算前に換算条件を確認します。紙図面を測る場合は、図面縮尺だけでなく印刷倍率や出力時の拡大縮小にも注意します。
端数処理は、対象工事の数量算出要領に合わせます。小図形ごとの面積を早い段階で丸めると、断面数が多いほど誤差が累積します。内部計算では必要な桁を保持し、断面積、平均断面積、区間体 積、合計数量のどの段階で位止めするかを統一します。
3次元モデルで体積を求める場合も、平均断面法と同じく基準面、計画面、対象範囲、控除範囲の設定が結果を左右します。ソフトウェアが算出した数値だけを確認するのではなく、代表断面、概算値、面の重なり、欠測部の補間を照査します。契約数量の算出方法が指定されている場合は、その方法を主とし、別手法の結果は照査値として扱います。
確認1 拡幅区間の始点と終点を確定する
一つ目の確認は、路肩拡幅部がどこから始まり、どこで終わるのかを明確にすることです。くさび土量の拾い漏れは、断面積の計算ミスより、対象区間の設定ミスによって生じることがあります。
平面図では、計画路肩線が既設路肩線から徐々に離れ、所定の拡幅幅へ達する形状が示されます。所定幅に達した測点を拡幅開始点とすると、その手前のすり付け区間が抜けます 。開始点は、計画線と既設線の差が生じ始める位置として確認します。
開始点が通常測点と一致しない場合は、補助測点を設定します。計画形状が既設形状へ実際に収束し、その位置の盛土断面積がゼロになるなら、ゼロ断面と次の有効断面との間を平均断面法で計算できます。ただし、別の盛土や構造物へ連続している場合は、機械的にゼロ断面とせず、数量区分の境界を確認します。
例えば、0メートル地点で断面積が0平方メートル、20メートル地点で2.4平方メートルであれば、最初の区間は24立方メートルです。20メートル地点から計算を始めると、この先細り部分が抜けます。終点側も同様に、一定幅区間の終わりではなく、拡幅形状が既設形状または次の数量区分へ接続する位置まで確認します。
橋梁、擁壁、函渠、交差点、取付道路などへ接続する場所では、断面積がゼロにならないことがあります。どこまでを路肩拡幅盛土とし、どこからを構造物背面盛土、裏込め、別工区の盛土とするかを図面と数量項目で決めます。
左右の路肩で始点と終点が異なる場合もあります。平面線形、用地境界、既設地形、交差点形状などにより、片側だけが先に広がることがあるためです。左右を合算した断面積でも体積は求められますが、照査と変更対応を考えると、右側と左側を別欄で集計した方が変化の理由を追いやすくなります。
縦断方向だけでなく、横断方向の境界も統一します。道路本体盛土と拡幅部を別計上する場合、両者を分ける線を全断面で同じ考え方にします。境界が測点ごとに移動すると、本体との間に空白ができたり、同じ領域を重複して拾ったりする可能性があります。
計算書には、拡幅開始点、所定幅への到達点、一定幅区間の終点、すり付け終点、構造物接続点を記録します。測点番号だけでなく、その測点を追加した理由も残しておけば、設計変更で拡幅延長が変わった際に修正範囲を特定しやすくなります。
確認2 現況面と計画面の境界を統一する
二つ目の確認は、盛土断面積を囲む現況面と計画面を統一することです。横断図には、既設舗装面、既設路肩、既設法面、自然地盤、表土除去線、段切り後の施工面、計画路体上面、計画路床面、路盤下面、舗装完成面など、複数の線が描かれます。どの線の間を盛土として拾うかが不明確だと、同じ図面から異なる数量が算出されます。
盛土体積は、基準となる施工前面または計画埋戻し線と、対象とする完成計画面との差分として整理します。ただし、どの面を基準にするかは工事内容と数量区分で変わります。既設法面へ直接腹付けする場合、既設法面が下面になります。表土を除去してから盛土する場合、表土除去後の面を基準にする数量区分が設けられることがあります。
表土除去前の地表面を使うのか、除去後の計画面を使うのかは、設計図書と数量算出条件で確認します。表土除去量と盛土量の双方に同じ領域を含めたり、どちらにも含めなかったりしないよう、掘削側と盛土側の境界を対応させ ます。
既設法面へ段切りを設ける場合は、段切り前の既設面、段切り後の施工面、完成計画面を区別します。段切り前の面から完成面までの差分を盛土量として求めた後、段切りによる凹部の充填量を別に加算すると、同じ領域を二重計上する可能性があります。反対に、段切り掘削だけを計上し、段切り後の面から完成面までの盛土を拾わなければ不足します。
現況面の測量時期も重要です。設計時の地盤と施工直前の地盤は、伐採除根、先行工事、仮設道路、降雨侵食、堆積、他工事による改変などで異なることがあります。当初設計を再現する数量へ施工直前面を使ったり、実績数量へ古い設計面を使ったりすると、差の原因が不明になります。
計画面では、舗装完成面と盛土完成面を混同しないようにします。舗装、基層、路盤、路床、路体の層がある場合、舗装完成面までを土量として拾うと、舗装材料や路盤材料に相当する部分まで盛土へ含めることになります。対象工事の層境界を横断図と標準断面図で照合します。
路肩部の舗装構成や路盤幅が車道部と異なる場合は、車道部の境界線をそのまま外側へ延長できません。路肩端、排水施設、縁石、保護路肩などの構成に応じて、各層の外端位置が変わります。
線の表示色や線種だけで基準面を判断するのも危険です。表示設定や印刷条件で色と線種が変わることがあるため、線の名称、標高、座標、寸法、図面凡例を確認します。面積計算機能を使う場合は、対象領域が正しく閉じているかを代表断面で確認します。
確認3 断面形状が変わる位置を拾う
三つ目の確認は、横断面積の変化を適切に表せる位置へ断面を設けることです。平均断面法は断面間の面積変化を直線的に近似するため、途中に急な形状変化があるのに両端だけで計算すると、実際の立体との差が大きくなることがあります。
拡幅幅が変わる位置は代表的な補助断面位置です。拡幅幅だけでなく、盛土高、既設地盤、法面勾配、路肩端高がほぼ連続して変化し、断面積もおおむね直線的に変わる区間であれば、両端断面による近似が成立しやすくなります。途中で拡幅率が変わる場合や、一度一定幅になった後に再び広がる場合は、その変化点へ断面を追加します。
既設地盤の変化も重要です。平面上では一定幅の拡幅でも、横断地盤が谷状になれば盛土高と法面長が増え、尾根状になれば小さくなります。縦断図だけでは見えない横断方向の折れや局部的な凹凸があるため、横断図を測点順に並べて面積の増減を確認します。
法面勾配、法肩位置、小段、法尻位置が変わる場所も区間を分けます。通常法面から緩勾配法面へ移ると、同じ盛土高でも水平幅と断面積が変わります。法面勾配の変更点が通常測点の中間にある場合は、その位置に補助断面を設けます。

