目次
• 十二条点検でPS内の貫通部確認が重要な理由
• 確認1 防火区画と貫通位置を図面で照合する
• 確認2 配 管や配線の周囲にすき間がないか確認する
• 確認3 貫通部処理のひび割れや脱落を確認する
• 確認4 配管の増設跡や撤去跡を確認する
• 確認5 点検口から見えにくい範囲まで確認する
• PS内で見落としやすい不具合の特徴
• 指摘箇所を正確に記録する方法
• 点検前の準備で確認漏れを減らす
• 貫通部の不具合を繰り返さない維持管理
• まとめ 十二条点検では小さなすき間も記録して判断する
十二条点検でPS内の貫通部確認が重要な理由
十二条点検で建物内部を確認するとき、見落としやすい場所の一つがPSです。PSは一般にパイプスペースや配管シャフトを指し、給水管、排水管、通気管、電気配線などが縦方向に通る空間として設けられています。廊下や居室のように日常的に人が出入りする場所ではないため、点検口を開けなければ内部の状態を確認できないことも少なくありません。
本記事では、建築基準法第12条に基づく定期報告制度に関係する調査や確認を、分かりやすく十二条点検と表現します。実際には、特定建築物の定期調査、建築設備の定期検査、防火設備の定期検査などで報告区分や資格要件が異なります。対象建築物、報告時期、調査項目、地域独自の取扱いは、用途や規模、所在地を所管する特定行政庁の定めによって異なる場合があるため、現場ごとに最新の様式や指示を確認することが必要です。
PS内の貫通部が重要なのは、配管や配線が壁や床を通り抜ける部分に、防火上の弱点が生じる可能性があるためです。壁や床が防火区画を構成していても 、管を通すために設けた開口の周囲が必要な仕様で処理されていなければ、区画として期待される性能を保てないおそれがあります。
火災時には、炎だけでなく煙や熱も建物内を移動します。縦方向に連続するPSは、一つの階で生じた煙や熱が別の階へ広がる経路になる可能性があります。そのため、貫通部のすき間、充填部分の欠損、使用されていない開口、後から追加された配線の通り道などを確認し、現在の状態を正確に把握することが大切です。
ただし、すき間らしきものが見えたからといって、現場で直ちに法令違反と断定するのは適切ではありません。必要な処理方法は、防火区画の種類、壁や床の構造、管の用途や材質、寸法、施工時に採用された認定仕様などによって確認事項が変わります。見た目だけで適否を決めず、設計図書、施工図、認定内容、工事記録などと照合し、調査資格者や設計関係者が総合的に判断することが基本です。
令和7年7月1日に施行された定期調査関係の告示改正では、特定建築物定期調査の調査結果表に添付する各階平面図へ、防火区画を明示する取扱いが追加されました。建築設備や防火設備の定期検査でも図面を活用しやすくする趣旨があるため、PS内を確認するときも、どの壁や床が防火区画を構成しているのかを図面上で把握してから現場を見ることが重要です。
十二条点検を効率よく進めるには、PS内に穴があるかだけを見るのでは不十分です。区画位置、配管周囲の状態、充填部分の劣化、改修履歴、見えにくい範囲という五つの観点を組み合わせて確認することで、正面から見える部分だけで点検を終えるリスクを減らせます。
確認1 防火区画と貫通位置を図面で照合する
最初に行いたいのは、PSの位置と防火区画の範囲を図面上で整理することです。点検口を開けてからその場で考え始めると、目の前に見える配管ばかりに注意が向き、壁や床がどのような区画を構成しているのかを見失いやすくなります。
確認に使用する資料としては、各階平面図、防火区画図、設備図、竣工図、過去の改修図、前回の定期調査報告書などが考えられます。資料の名称や保存状況は建物ごとに異なりますが、少なくともPSの位置、階をまたいで通る管の系統、壁や床の区画位置が分かる資料をそろえておくと、現場確認を進めやすくなります。
図面では、PSの四周すべてが同じ構造になっているとは限りません。廊下側、居室側、設備室側などで壁の仕様が異なることがあります。床についても、PS内部が階をまたいで開放されているのか、各階で床や区画が形成されているのかによって、確認すべき位置が変わります。
現場では、図面に示されたPSと実際の点検口を対応させます。同じ階に複数のPSがある建物では、東側PSや中央PSといった呼び方だけでは記録が混乱しやすいため、階数、通り芯、室名、点検口番号などを組み合わせて識別します。
図面と現況が一致しない場合は、その場の推測だけで図面を書き換えないことが大切です。改修によって配管 経路が変わった可能性もあれば、図面が更新されていない可能性もあります。点検時には、図面との差異が分かる写真と位置情報を残し、改修履歴や工事記録を後から確認できる状態にします。
特に注意したいのが、図面上では一本の管しか示されていないのに、現場では複数の配管や配線が追加されているケースです。設備更新、テナント工事、通信配線の増設などが重なると、竣工時にはなかった貫通部が形成されていることがあります。管そのものに異常がなくても、増設時の区画貫通処理に不足があれば確認対象になります。
反対に、図面には記載されているものの、現場では既に撤去されている管もあります。この場合は、管を撤去した後の穴がどのように閉塞されているかを確認します。表面だけ板材や補修材で覆われ、内部の開口が残っている可能性もあるため、外観だけで処理済みと判断しないことが重要です。
防火区画の位置が不明確なままでは、どの貫通部を重点的に確認すべきか決めにくくなります。資料が不足している場 合は、その事実自体を記録し、所有者、管理者、設計関係者などへ確認します。図面がないからといってPS内のすべての穴を同じ扱いにするのではなく、適否の判断に必要な資料が不足している状態として整理することが実務上のポイントです。
確認2 配管や配線の周囲にすき間がないか確認する
二つ目は、管と壁または床との取り合いを一周確認することです。正面から見える部分だけではなく、管の裏側、複数の管が接近している部分、床際や壁際の角などを含めて確認します。
防火区画を給水管、配電管その他の管が貫通する部分では、適用される法令や採用された仕様に応じて、管と区画とのすき間を不燃材料で埋めるなどの処理が必要になります。必要な構成は一律ではないため、現場で見える材料の色、硬さ、形状だけを手掛かりにせず、設計図書や施工記録、認定仕様と照合することが必要です。
すき間を確認するときは、管の全周が連続して処理されているかを見ます。手前側がきれいに埋められていても、裏側に欠損が残っていることがあります。太い管の背面や、複数の細い配線が束ねられた部分は視線が届きにくく、正面からの確認だけでは見落としやすい場所です。
明確な開口が見える場合だけでなく、細い線状の離れにも注意します。充填部分と管との境目、充填部分と壁との境目に連続したすき間がある場合は、材料の収縮、振動、管の動きなどによって密着状態が変化している可能性があります。
ただし、表面に細い線があるだけで、内部まで開口しているとは限りません。表面上のひびなのか、奥まで続くすき間なのかを確認するには、照明を当てる方向や見る角度を変える必要があります。無理に工具を差し込むと、既存の処理を傷つけるおそれがあるため、非破壊で確認できる範囲を基本とします。
向こう側の光が見える場合は、開口が連続している可能性を疑う手掛かりになります。ただし、光が見えないから健 全とは限りません。管の裏側で開口が曲がっている場合や、内部に別の材料がある場合は、すき間があっても光が通らないことがあります。光の有無だけを合否判定に使わないことが大切です。
管がスリーブを通っている場合は、管とスリーブの間だけでなく、スリーブと壁または床との取り合いも確認します。見た目には管の周囲が埋まっていても、外側の取り合いに欠損があることがあります。どの部分が区画を貫通しているのかを意識し、複数の境界をそれぞれ見ます。
配管支持金物の近くも注意が必要です。支持金物や固定材が視界を遮り、その背面にあるすき間を確認できないことがあります。また、管に荷重がかかって傾いた結果、貫通部処理との間に離れが生じることも考えられます。すき間そのものだけでなく、配管の偏りや支持状態も合わせて観察します。
断熱材で覆われた管では、断熱材が開口部まで入り込み、壁や床との境界が見えない場合があります。断熱材があること自体を不具合と判断するのではなく、どの位置 でどのような貫通処理が行われているのかを資料で確認します。確認のために断熱材を不用意に切断すると、設備性能や安全性に影響する可能性があるため、必要な調査方法を関係者と協議します。
現場で判断できないときは、異常なしとして処理するのではなく、視認できず、仕様確認が必要、全周確認不可など、確認できなかった範囲を残します。見えなかった事実を記録することも、十二条点検の精度を高める重要な作業です。
確認3 貫通部処理のひび割れや脱落を確認する
三つ目は、貫通部を埋めている部分の劣化や損傷を確認することです。すき間が施工時から残っている場合だけでなく、当初は処理されていた部分が、経年によってひび割れたり、欠けたり、脱落したりすることがあります。
確認時には、充填部分のひび割れ、欠損、浮き、剥離、変形、変色などを見ます。床面の処理で は、上からの荷重や振動、漏水の影響を受けることがあります。壁面では、管の振動や温度変化、改修作業時の接触などが劣化のきっかけになる可能性があります。
ひび割れは長さだけでなく、位置と連続性を確認します。管の周囲に沿って生じているのか、壁や床との境界に沿っているのか、充填部分の中央を横切っているのかによって、確認すべき範囲が異なります。写真を撮る際は、ひび割れだけを拡大して撮るのではなく、管と周囲の位置関係が分かる写真も残します。
欠損がある場合は、欠けた部分の大きさだけでなく、確認できる範囲で内部の状態を見ます。表面の薄い部分だけが欠けているのか、壁や床の向こう側まで開口しているのかは、外観だけでは判断できない場合があります。無理に触れて欠損を広げず、照明、鏡、撮影機器などを利用して記録します。
貫通部には、硬い材料、柔軟性のある材料、繊維状に見える材料など、さまざまな外観のものが使われていることがあります。色や触感だけで材質や性能を特定する ことは困難です。柔らかいから不適切、硬いから適切といった判断は避け、採用された施工仕様を確認します。
特に注意したいのは、後から一般的な補修材を表面に塗ったように見える箇所です。外観上は穴が塞がっていても、必要な範囲まで処理されていない場合や、元の認定仕様と異なる材料が重ねられている場合があります。区画貫通部の処理は、単に穴を見えなくする作業ではありません。現在の管の本数や配置を含め、採用された仕様に沿っているかを確認する必要があります。
管の種類や本数が変更されている場合は、当初の貫通部処理が現在の状態にも対応しているかを確認します。一本の管を前提に施工された箇所へ別の管や配線を追加していると、材料が押し広げられたり、切り取られたりしていることがあります。外周にすき間がなくても、配線同士の間や奥側に空隙が残る可能性があります。
充填部分に施工者名、施工時期、仕様番号などの表示がある場合は、その内容も記録します。ただし、表示があるから適切に施 工されているとは限りません。反対に、表示がないことだけで直ちに不適切と断定できるとも限りません。表示は施工時期や仕様を追跡するための手掛かりとして扱います。
漏水跡や結露跡も確認します。水分によって周囲の材料が変色している場合や、表面が崩れやすくなっている場合は、貫通部処理だけでなく、配管、防水、保温、換気などの状態も確認する必要があります。原因を貫通部だけに限定せず、周囲の設備や建築部位と合わせて整理することが重要です。
仕様と現況の一致を確認できない場合は、外観上のすき間がないことだけで適合と判断しないようにします。施工図、認定書類、工事写真などを確認し、必要に応じて専門者による追加調査や是正方法の検討につなげます。
確認4 配管の増設跡や撤去跡を確認する
四つ目は、竣工後の工事によって生じた貫通部を確認することです 。PSは設備をまとめて通す空間であるため、建物の使用開始後も配管や配線が追加されやすい場所です。設備更新や用途変更のたびに工事が行われると、当初の図面にはない穴や処理跡が増えていきます。
増設された管は、周囲の管と比べて材質や固定方法が異なることがあります。新しい管だけ色が違う、支持金物が追加されている、配線が後付けのように束ねられているといった状態は、改修箇所を探す手掛かりになります。
ただし、新しく見えるから不具合というわけではありません。重要なのは、増設時に必要な区画貫通処理が行われ、工事後の状態が記録されているかどうかです。工事会社や施工時期だけで判断せず、施工図、完了写真、使用した仕様に関する資料などを確認します。
よくある見落としが、細い配線だけを通した小さな穴です。太い排水管の周囲には注意が向いても、通信線や制御線を一本だけ通した穴は見逃されやすくなります。配線の背後や束の中心部にすき間が隠れていることもあるため、細い配線が壁や床を通る位置も確認対象として扱います。
複数の配線を一つの開口に通している箇所では、配線同士の間も確認します。開口の外周が埋められていても、束の内部に連続したすき間が残っている場合があります。外周だけをなぞるように見るのではなく、開口全体がどのように処理されているかを観察します。
撤去跡については、使われていないスリーブ、途中で切断された管、壁面だけで塞がれた穴などに注意します。管を撤去しても、開口が自動的に元の壁や床と同じ状態へ戻るわけではありません。撤去工事の際に、区画の状態を回復するための処理が必要になります。
穴の中に紙、布、用途を確認できない発泡状の材料などが詰められているように見える場合は、仮設的な処理の可能性を考えます。ただし、外観だけで材質を断定せず、触ったり引き抜いたりせずに写真を残します。不用意に材料を動かすと、開口を広げるだけでなく、配線や配管を損傷するおそれがあります。
増設跡や撤去跡を見つけたときは、工事履歴との対応を確認します。該当する工事記録がない場合は、いつ、何のために施工されたのかが分からない状態として整理します。記録がないこと自体が直ちに区画性能の不良を意味するわけではありませんが、仕様確認を難しくする要因になります。
同じ建物内で同種の工事が複数箇所に行われている場合は、一箇所の状態だけを確認して終わらせず、同時期に施工された他のPSも確認します。同じ方法で施工されていれば、別の階や別の系統にも似た状態がある可能性があります。
工事後の確認を施工担当者だけに任せ、建物管理側が記録を受け取っていないと、次回の十二条点検で経緯を追えなくなります。増設や撤去を行う際は、工事前後の写真、施工位置、採用した処理方法、完了確認者などを建物側でも保管することが大切です。
確認5 点検口から見えにくい範囲まで確認する
五つ目は、点検口から正面に見える範囲だけで確認を終わらせないことです。PSの内部は狭く、配管が重なり、照明が届きにくいため、視線を少し変えただけで見える状態が大きく変わります。
点検口を開けたら、まず内部全体の配置を把握します。どの方向に壁があり、床の貫通部がどこにあり、どの管が上階や下階へ続いているかを確認します。その後、照明を当てる方向や見る角度を変え、管の背面や下側を順番に見ます。
点検口のすぐ近くにある部分だけでなく、奥側の壁にも注意します。正面の配管が視界を遮り、奥の貫通部が見えないことがあります。鏡や小型の撮影機器などを補助的に使用できる場合は、無理に身体を入れずに確認範囲を広げられます。
ただし、補助具で撮影した映像が不鮮明な場合は、確認済みと扱わないことが重要です。映像が暗い、焦点が合って いない、位置関係が分からないといった場合は、何を見た写真なのか後から判断できません。撮影前に全景を記録し、奥へ移動する順番が分かるようにすると整理しやすくなります。
床の貫通部を確認するときは、上面だけでなく、可能であれば下階側からも状態を確認します。上から見ると正常に見えても、下面側で材料が脱落していることがあります。壁の貫通部も、両側から確認できる場合は、片側だけで終わらせないことが望まれます。
すべての面を確認できない場合は、その理由を明確にします。配管が密集している、点検口が小さい、固定された設備がある、反対側に入れないなど、確認できない理由を記録しておけば、追加調査の必要性を判断しやすくなります。
PS内には、鋭利な金物、熱を持つ配管、漏水、電気配線などが存在する可能性があります。狭い空間へ手や頭を入れる前に、接触、感電、やけど、落下などの危険がないかを確認します。安全を確保できない状態で無理に調査を続けることは避け、必要に応じて設備担当者の立会いや別の確認方法を検討します。
点検口そのものの開閉状態も確認します。扉が家具や保管物で塞がれている、鍵がなく開けられない、開けると配管に接触するなどの状態では、必要な範囲を確認できません。点検当日になって初めて判明すると調査が中断するため、事前に開閉できることを確認しておくと効率的です。
同じ形式のPSが各階に連続している場合でも、一箇所だけを見て全階同じ状態と判断しないことが重要です。改修履歴、漏水の有無、配管の支持状態などは階ごとに異なる可能性があります。報告対象や調査方法に沿って、必要な範囲を個別に確認します。
PS内で見落としやすい不具合の特徴
PS内の見落としは、単に暗いから起こるわけではありません。点検者が何を探しているかを明確にしていない場合にも発生します。配管の腐食を確認する点検と、区画貫通部を確 認する点検では、見る位置や必要な資料が異なります。
見落としやすいのは、正面側だけがきれいに処理されているケースです。点検口から見える範囲には材料が充填されていても、管の背面に施工不足や欠損が残っていることがあります。写真でも正面だけでは全周の状態が分からないため、撮影方向を変える必要があります。
次に注意したいのが、大きな管へ意識が集中し、細い配線を見落とすケースです。太い排水管や給水管は目立ちますが、その脇を通る一本の配線が別の穴を通っていることがあります。壁面を管の周囲だけでなく、点検口から見える範囲全体として確認すると見つけやすくなります。
床と壁が交わる角部も見落としやすい場所です。充填材、躯体、仕上げ材が重なって見え、どこが実際の開口なのか分かりにくくなります。表面の仕上げだけが連続していても、内部の区画構成を確認できない場合があります。
保温材や被覆材に隠れた部分も注意が必要です。管の外径が大きく見えるため、壁との間が完全に埋まっているように見えても、実際には被覆材の奥にすき間がある可能性があります。無理に被覆を外すのではなく、図面と施工記録から貫通部処理の位置を確認します。
配管の更新によって、古い管と新しい管が混在しているPSでは、処理時期が複数に分かれます。一見して同じ材料に見えても、施工方法や劣化の進み方が異なることがあります。工事時期ごとに範囲を整理すると、同様の状態が別の位置にないか追跡しやすくなります。
PS内部に資材や清掃用具などが置かれている場合は、貫通部が隠されるだけでなく、点検者が内部を確認しにくくなります。可燃物の管理という別の観点もありますが、十二条点検では、まず調査対象を視認できる状態が確保されているかを確認します。
過去の指摘箇所が表面だけ補修されているケースにも注意します。前回写真と比較し、補修範囲、材料の状態、周囲への新たなひび割れの有無などを確認します。改善済みと記録されていても、現場の状態を改めて確認することが必要です。
指摘箇所を正確に記録する方法
PS内で不具合らしき状態を見つけても、位置や状況を正確に記録できなければ、是正担当者が同じ場所へたどり着けません。特にPSは似た外観の箇所が多いため、配管の周囲にすき間ありという記録だけでは不十分です。
記録には、建物名、階、PSの識別番号、点検口の位置、壁面または床面、管の種類や外観上の特徴などを含めます。管の用途が資料で確認できない場合は、推測で名称を付けず、灰色の縦管、点検口右奥の細い配線束など、現場で再現できる表現を使います。
写真は、位置が分かる全景、周辺との関係が分かる中景、不具合の状態が分かる近景を組み合わせます。近接写真だけでは、どのPSのどの部分か分からなくなります。反対に、全景だけでは小さなすき間やひび割れが見えません。
撮影方向も記録します。点検口から奥を見た写真なのか、上向きに床下面を撮った写真なのかが分からないと、後の確認で混乱します。図面上の位置と写真番号を対応させておくと、報告書や是正計画へ反映しやすくなります。
スケールを写し込む場合は、既存の処理に接触して損傷させないよう注意します。写真から寸法だけで法令適合性を判断することが目的ではなく、状態の大きさを把握する参考として記録します。適否は、すき間寸法だけでなく、区画の構造や採用された仕様を含めて判断する必要があります。
現場では、確認できた事実と判断を分けて記録します。管の背面に開口を確認、充填部分に線状の離れを確認、施工仕様を示す資料なしといった事実を先に残し、その後に調査資格者が報告上の判定を行います。
要是正などの報告上の判定や、既存不適格に該当するかどうかの整理は、適用される法令、建築時期、現況、確認できた資料などを踏まえて行います。建物管理者が自主点検で異常を見つけた場合は、独自に法的な結論を確定させず、調査資格者や設計関係者へ情報を引き継ぐことが安全です。
確認できなかった箇所も記録します。点検口が開かない、配管が密集し奥側を視認できない、反対側の室へ入室できないなどの情報があれば、後日必要な準備を整えて再確認できます。記録がないまま未確認範囲を残すと、確認済みと誤解される可能性があります。
是正後は、工事前と同じ撮影位置から写真を残します。工事後の近接写真だけでなく、対象位置が分かる全景も必要です。施工日、施工範囲、採用した仕様、確認者などを合わせて保存することで、次回点検時の資料として活用できます。

