十二条点検で機械排煙設備を確認するときは、室内側の排煙口、手動開放装置、排煙機の作動だけでなく、排煙風道の先にある屋外側の煙排出口まで、同じ系統として確認することが重要です。煙排出口に防鳥網や防虫網が設けられている場合、羽毛、巣材、落ち葉、繊維くず、粉じん、さび片などの付着により、有効な排出断面が小さくなることがあります。設備が作動しているように見えても、閉塞の程度によっては排煙風量へ影響する可能性があります。
防鳥網の確認は、単に「汚れているか」を見るだけでは足りません。対象系統の特定、有効開口の確認、周囲の障害物と取付状態、作動時の風量、写真と測定値による記録までを関連付けて評価する必要があります。本記事では、建物所有者、施設管理者、点検手配担当者、検査実務者に向けて、機械排煙設備の煙排出口にある防鳥網詰まりを確認する際の実務上の5点を解説します。
目次
• 十二条点検で防鳥網詰まりを見逃せない理由
• 確認点1 図面と現地表示で対象の煙排出口を特定する
• 確認点2 防鳥網の有効開口と詰まり方を確認する
• 確認点3 周囲障害物と取付状態を一体で確認する
• 確認点4 作動と排煙風量から機能低下を確認する
• 確認点5 写真と測定値で是正判断を残す
• 詰まりを確認した後の是正と再確認
• 十二条点検の実務で起きやすい見落とし
• 日常管理で防鳥網の再詰まりを防ぐ方法
• まとめ
十二条点検で防鳥網詰まりを見逃せない理由
「十二条点検」は法令上の一つの正式名称ではなく、建築基準法第12条に基づく定期調査、定期検査、国等の建築物の定期点検などを指して使われる実務上の呼び方です。民間建築物では、対象となる建築物や建築設備について、所有者または管理者が所定の資格者に調査・検査をさせ、その結果を特定行政庁へ報告 します。一方、国等の建築物には同条第2項・第4項に基づく定期点検があります。本記事は、主として排煙設備が対象に指定されている場合の建築設備定期検査・点検を扱います。対象設備、報告時期、追加項目、提出様式は特定行政庁によって異なるため、建物所在地の最新要領を確認してください。([国土交通省][1])
2025年7月1日施行の告示改正では、換気設備、排煙設備、可動式防煙壁、非常用の照明装置の作動状況について、特定建築物定期調査と建築設備定期検査の重複を解消し、建築設備定期検査側で実施する整理が行われました。前年までの分担や古い様式をそのまま使わず、検査着手日、対象設備の指定状況、現行様式を確認することが大切です。
用語も区別しておきます。一般的な機械排煙設備では、室内の天井や壁にあり煙を吸い込む開口を「排煙口」、排煙機を通過した煙を屋外へ放出する終端を「煙排出口」と呼び分けます。現場で屋外側を含めて「排煙口」と呼ぶこともありますが、防鳥網が設けられるのは主に屋外側の煙排出口、外部ガラリ、フードなどです。本記事の対象は、原則としてこの屋外側の防鳥網です。
建築設備定期検査告示には、排煙機について、煙排出口の設置状況、周囲の状況、屋外に設置された煙排出口への雨水等の防止措置、排煙機の排煙風量などが示されています。また、室内側の機械排煙設備については、排煙口の周囲、取付け、開放、排煙風量などが別の検査事項として示されています。「防鳥網の詰まり」という独立名称の項目がなくても、閉塞が煙の排出を妨げる障害物となっていないか、排煙風量や取付状態へ影響していないかを、該当する検査項目と設計条件に照らして評価する必要があります。防鳥網が汚れているという事実だけで直ちに法定判定を決めるのではなく、閉塞状態と機能への影響を分けて確認します。
現行の告示では、多くの外観確認について「目視又はこれに類する方法」により確認する整理となっています。「これに類する方法」は、検査者が自ら目視した場合と同等以上の情報が得られると判断できる方法を指します。望遠カメラ、可視カメラ、ファイバースコープなどを使える場合はありますが、機器を使っただけで確認が完了するわけではありません。網の裏面、枠、細かな付着物まで判断できない場合は、未確認範囲と方法上の限界を記録し、近接確認を計画します。
防鳥網は鳥や大きな異物の侵入を抑える部材ですが、設置環境によって汚れ方が異なります。樹木の種子や落ち葉、周辺工事の粉じん、繊維状の浮遊物、沿岸部の塩分を含む付着物、さび片などが網面やガラリ内部へ堆積することがあります。排煙設備は通常時に連続運転する設備ではないため、異常が利用者の体感として現れにくく、法定検査や保守点検の機会まで閉塞が進むことも考えられます。
また、排煙機から運転音が聞こえることと、必要な排煙性能が確保されていることは同義ではありません。防鳥網の閉塞、ダンパーの開放不足、風道の変形、給気条件など、複数の要因が風量へ影響します。十二条点検では「ファンが回った」「排煙口が開いた」という作動確認だけで終えず、屋外終端の状態と、適用される方法で確認した排煙風量を結び付けて判断することが重要です。
確認点1 図面と現地表示で対象の煙排出口を特定する
最初の確認点は、防鳥網が付いた外部開口のうち、どれが対象となる機械排煙設備の煙排出口なのかを正確に特定することです。屋上や外壁には、一般換気の排気口、厨房系統の排気口、機械室の換気口、給気口、非常用電源設備の排気系統など、用途の異なる外部開口が並ぶことがあります。外観だけで判断すると、別系統の防鳥網を確認して、排煙設備を点検したつもりになるおそれがあります。
点検前には、前回の定期検査報告書、検査結果表、排煙設備系統図、各階平面図、屋上平面図、機器表、完成図、改修図、保守記録をそろえます。室内側の排煙口番号から排煙風道を追い、接続する排煙機番号と屋外側の煙排出口位置までを一つの系統として整理します。過去写真がある場合は、網の形状、外部フード、ガラリの羽根、周辺機器の配置を照合し、移設や改修の有無も確認します。
現地では、排煙機の表示、制御盤の系統名称、ダクトの行き先表示、点検口付近の表示、外部開口の銘板や管理番号を確認します。表示が消えている、名称が図面と一致しない、改修後に番号が変わっている場合は、推測で進めず、ダクト経路と作動系統を照合して確定します。手動開放装置を操作したときに、どの排煙機が起動し、どの煙排出口から排気されるかを確認することは系統同定に役立ちます。ただし、作動試 験は警報、中央監視、空調停止、在館者、他設備への影響を事前に整理し、施設管理者と合意した安全な手順で実施します。
屋外側へ出る前に、屋上への入退場方法、点検通路、墜落のおそれがある場所、足場の状態、強風時の危険、設備停止の要否を確認します。防鳥網が高所や外壁面にあり安全に接近できない場合は、見えた範囲だけで「異常なし」としません。目視と同等以上の情報が得られる方法を検討し、それでも網の裏面や取付枠を判断できない場合は、確認できなかった範囲を記録して、適切な高所作業方法による追加確認につなげます。
完成時と異なる防鳥網が後付けされている場合も注意が必要です。鳥害対策として網目の細かい材料へ交換したり、既設網の上から別の網を重ねたりすると、有効開口が小さくなり、通気抵抗が増える可能性があります。反対に、詰まりを解消する目的で防鳥網を恒久的に撤去すると、鳥や異物の侵入、部材脱落など別の問題を生じることがあります。設計図書、機器仕様書、改修記録を確認し、元の仕様、必要風量、大臣認定や性能検証を用いた設備であればその条件への影響を整理してから判断します。
この段階で作成した系統一覧は、後の風量測定や写真整理にも使えます。「屋上東側の大きなガラリ」のような曖昧な呼び方ではなく、排煙機番号、対象階、室内排煙口群、屋外煙排出口の関係が分かる管理番号を付けておくと、検査者、施設管理者、修繕担当者の認識をそろえやすくなります。正しい対象を特定できて初めて、その後の詰まり評価が有効になります。
確認点2 防鳥網の有効開口と詰まり方を確認する
第二の確認点は、防鳥網の表面が汚れているかではなく、煙を通す有効な開口がどの程度保たれているかを見ることです。網目が見えていても、裏面に綿状のほこりが膜のように付着している場合があります。正面からは背景と重なって気付きにくいため、安全に確認できる範囲で斜め方向から光を当て、網面の透過や明暗の均一性を見ます。取り外し可能な構造で、停止・誤起動防止・墜落防止を含む安全措置を講じられる場合は、表面と裏面の両方、網とガラリの間、フード内部まで確認します。
詰まり方は、全面が薄く覆われる均一な閉塞と、巣材や落ち葉が一部に集中する局部的な閉塞に分けて整理すると分かりやすくなります。均一な閉塞は軽微に見えても、網面全体の抵抗を増やす可能性があります。局部的な閉塞では、残った開口へ気流が偏り、付着物がさらに集まったり、網や取付枠が変形したりすることがあります。中央部だけでなく、上端、下端、四隅、ガラリ羽根の裏側、雨だれが集まる位置も確認します。
付着物の種類も記録します。羽毛、細い枝、巣材がある場合は鳥の侵入や営巣履歴が考えられ、落ち葉や種子が多い場合は周辺植栽と風向の影響が考えられます。繊維状のほこり、粘着性の汚れ、白色や褐色の固着物なども、再発原因を探る手掛かりになります。ただし、外観だけで成分や発生源を断定しません。鳥、卵、ひな、生体、ふんなどがある場合は、衛生面、作業者保護、関係法令や自治体の案内を確認し、専門業者を含む適切な方法で対応します。
網そのものの状態も、詰まりと同時に確認します。線材の腐食、塗膜の厚塗り、補修塗装の吹き込み、網目のつぶれ、変形、破断、たるみ、二重張り、補修材の重なりは、有効開口や安全性へ影響します。外壁改修や防水工事の後は、養生材の残置、塗料の付着、シーリング材のはみ出しにより、網面やガラリが部分的にふさがれていないかを確認します。新しい網であっても、網目が過度に細かい、線径が太い、既設網と重なっている場合は、設計時と同じ通気条件とは限りません。
写真上で網面を複数の区画に分け、閉塞して見える範囲を概算すると、前回との比較や修繕指示に役立ちます。ただし、「何パーセント詰まれば一律に要是正」といった独自基準だけで法定判定を決めるのは適切ではありません。閉塞率の概算は状態共有の補助情報です。最終的には、煙の排出を妨げる障害物となっているか、適用される排煙風量の判定基準に適合するか、取付けや損傷に問題があるかを、設計条件と特定行政庁の運用に照らして判断します。
防鳥網の背後にガラリやフードがある場合は、網だけを清掃しても内部の堆積物が残ることがあります。ガラリ羽根の裏側、フード底部、水切り、排水経路、ダクト入口に落ち葉や巣材が入り込んでいないかを確認します。網面がきれいでも、内部に大きな異物があれば排出断面が狭くなる可能性があります。反対に、乾燥時には軽微に見える付着物が、雨天時に湿って網へ張り付く場合もあります。点検時の天 候、網の乾湿状態、直前の清掃や工事の有無を記録すると、評価の再現性が高まります。
季節性も考慮します。春先の花粉や綿毛、秋の落ち葉、台風後の飛来物、冬季の着雪や凍結など、点検日だけでは年間の厳しい状態を捉えられない場合があります。前回点検からの清掃履歴、異常が発生しやすい季節、周辺工事の時期を確認し、必要に応じて法定検査とは別に季節点検や臨時点検を設定します。毎年の写真が異なる季節や天候で撮影されている場合は、見た目の差だけで閉塞の進行速度を断定しないことも大切です。
確認点3 周囲障害物と取付状態を一体で確認する
第三の確認点は、防鳥網単体ではなく、煙排出口の周囲と取付状態を一体で見ることです。建築設備定期検査告示では、煙排出口の周囲について、煙の排出を妨げる障害物があることが判定上の問題として示されています。防鳥網の閉塞に加え、排出口の前に置かれた資材、仮設物、看板、足場シート、設備カバー、植栽、積雪なども排出を妨げる可能性があります。
屋上では、工事用資材や清掃用具が一時的に置かれ、そのまま煙排出口の前に残ることがあります。外壁面では、広告物、目隠し、増設配管、鳥害対策ネット、外部足場の部材が近接することがあります。これらは完成図に表れないため、図面確認だけでは見つかりません。排出方向を現地で確認し、排出口の正面だけでなく、上方、側方、下方に排出流を妨げるものがないかを見ます。
外部ガラリの羽根が変形して開口を狭めている場合や、雨除けフードの内部へ板金が追加されている場合もあります。漏水対策として塞ぎ板を取り付けた結果、排出断面が小さくなっている可能性もあります。雨水侵入の防止と排煙性能は両立させる必要があるため、片方だけを優先した応急措置で済ませません。改修履歴が不明な追加部材を見つけた場合は、設計図書や施工記録と照合し、必要に応じて設備設計者や専門工事者へ確認します。
防鳥網の取付枠については、固定ねじの緩み、枠の腐食、溶接部の割れ、端部の浮き、網のたるみ、風による振動跡を確認します。網が内側へ大きく変形していると、ダクト入口 やガラリに接触して有効断面をさらに小さくすることがあります。端部が外れている場合は、鳥や異物が侵入し、排煙機やダクト内部へ堆積する可能性があります。網面が詰まっていなくても、取付けが不安定であれば、閉塞とは別の不具合として記録します。
清掃できる構造かどうかも重要です。防鳥網が溶接や多数の固定具で固定され、裏側へアクセスできないと、表面だけの清掃になりやすく、内部堆積を見逃します。取り外し式の枠や点検扉がある場合は、固着して開かない、工具が届かない、周囲の設備が干渉するなど、保守性が失われていないかを確認します。近接確認のたびに高所作業設備が必要な位置では、安全な点検方法、清掃周期、仮設計画を維持保全計画へ明記しておくことが有効です。
煙排出口の近くに給気口、開閉可能な窓、他設備の外気取入口がある場合は、排出された煙が別の開口へ回り込むおそれにも注意します。防鳥網の局部閉塞やガラリの変形により排出方向が偏ることも考えられます。網の接写だけで終えず、外壁や屋上全体の中で煙排出口の位置と、周辺開口・設備との関係が分かる写真を残すと、煙排出口の設置状況を含めて判断しやすくなります。
安全面では、排煙機の作動中に網へ手や工具を近づけないことが基本です。網が外れかけている場合は、作動時の風圧や振動で部材が脱落する可能性があります。近接確認や取外しの前に設備を安全に停止し、誤起動を防止し、必要な墜落防止措置を講じます。身を乗り出す、不安定な場所で脚立を使うといった方法は避け、確認できない状態そのものを記録して、適切な作業計画へつなげます。
確認点4 作動と排煙風量から機能低下を確認する
第四の確認点は、防鳥網の外観確認を、排煙設備の作動と排煙風量の確認へつなげることです。網面に付着物が見えるだけでは、系統全体への影響の大きさを確定できません。一方、外観上は軽微に見えても、実際の風量が低下している場合があります。手動開放装置、室内排煙口の開放、排煙機の起動、中央監視上の表示、排煙風量という流れを確認し、防鳥網を含む屋外終端の閉塞が機能低下へ関係していないかを切り分けます。
作動試験の前には、施設管理者と試験範囲を共有し、在館者への影響、連動する警報や防災設備、扉の開閉、空調停止、予備電源試験との関係を整理します。排煙口を開放したときに対象の排煙機が起動するか、開放状態が保持されるか、異常音や異常振動がないか、制御盤や中央監視で状態を確認できるかを見ます。排煙機が回っていても、ダンパーが十分に開いていない、風道内に障害物がある、給気が不足している、屋外の防鳥網が閉塞している場合は、必要な風量が得られない可能性があります。
ここで、屋外側と室内側の測定を混同しないことが重要です。建築設備定期検査告示では、少なくとも次の二つが別の検査事項として示されています。
• 排煙機の排煙風量:屋外側の煙排出口の同一断面内から5か所を偏りなく抽出し、風速計で1点につき30秒以上継続して測定し、平均風速と煙排出口面積から排煙風量を算出します。
• 機械排煙設備の排煙口の排煙風量:室内側の排煙口の同 一断面内から5か所を偏りなく抽出し、同様に1点につき30秒以上継続して測定し、平均風速と排煙口面積から排煙風量を算出します。
いずれも式は `Q = 60 × A × Vm` で、`Q` は毎分の排煙風量、`A` は測定対象となる開口の面積、`Vm` は平均風速です。したがって、屋外の煙排出口で行う所定の測定を一律に「補助情報」と扱うのは適切ではありません。一方、ガラリの外側で任意に1点だけ測った瞬間値など、告示の測定断面・点数・時間を満たさない確認値は、正式な検査値と区別して扱います。適用除外、前回検査以降の同等な記録による確認、認定設備の検査方法などが関係する場合があるため、現行告示、設計図書、特定行政庁の要領に従ってください。
測定時は、煙排出口または排煙口の面積を正しく把握し、同一断面内の測定点に偏りが出ないようにします。扉や窓の状態、給気経路、他系統の運転状態が変わると測定値も変化するため、前回値や清掃前後を比較するときは条件をそろえます。測定器の識別情報や点検状態、測定日時、天候も記録し、各測定点の値と平均値を残します。特定の位置だけ風速が極端に低い場合は、開口部の閉塞、排煙口の開放不良、偏流などを疑います。系統全体で低い場合は、排煙機、主風 道、ダンパー、給気条件、煙排出口の閉塞など、共通部分を確認します。
防鳥網詰まりの影響を切り分けるには、清掃前後の測定が有効です。清掃前の外観、煙排出口と室内排煙口の測定値、排煙機の作動状態を記録し、安全に清掃して防鳥網を所定の状態へ復旧した後、可能な限り同じ条件で再測定します。清掃後に風量が回復すれば、煙排出口周辺の閉塞が影響していた可能性が高まります。清掃後も不足が続く場合は、排煙風道の漏れや変形、ダンパーの状態、排煙機の能力低下、給気不足など、別の原因を調べます。清掃前後の差だけで法定判定を完結させず、最終的に復旧した状態で適用基準への適合を確認します。
ガラリや防鳥網の直近では流れが乱れやすく、測定位置が少し違うだけで値が変わることがあります。正式な「排煙機の排煙風量」を確認するときは、告示に定める煙排出口の同一断面と面積の取り方を確認します。所定断面を確保できない、網やフードの形状により測定方法が不明確、認定図書に別の方法があるといった場合は、自己流で数値を作らず、検査者、設計者、所管窓口へ確認します。
運転音や電動機の電流値は原因調査の参考になりますが、それだけで防鳥網詰まりや排煙性能を判定することはできません。抵抗の増加に対する機器の挙動は、送風機の特性と系統条件によって異なります。過去の正常時データと比較しながら、風量、必要に応じた圧力、音、振動、開放状態、外観を総合して評価します。異常音がある場合は、網やガラリの振動だけでなく、排煙機内部への異物混入、軸受部の劣化、接続部の緩みなども考えられるため、運転継続の可否を専門技術者が判断します。
排煙設備は火災時に機能することが求められます。一度作動したという事実だけでなく、必要な経路が確保され、適用される排煙性能が維持されているかを確認することが重要です。防鳥網の詰まりは屋外の小さな不具合に見えますが、共通の煙排出口や主風道に閉塞がある場合は、その系統に接続された複数の排煙口へ影響する可能性があります。外観と機能を関連付けることが、見逃しを減らす基本です。
確認点5 写真と測定値で是正判断を残す
第五の確認点は、次の担当者が対象と状態を追跡できる記録を残すことです。「防鳥網に詰まりあり」「清掃推奨」だけでは、閉塞の位置、程度、系統への影響、緊急性が分かりません。記録には、建物名、点検日、天候、対象系統、排煙機番号、煙排出口の位置、確認方法、確認できなかった範囲、網面の状態、周囲障害物、取付状態、作動結果、測定値、前回値との比較、必要な是正内容を関連付けて記載します。
写真は、位置関係が分かる遠景、煙排出口全体が分かる中景、防鳥網の付着物や変形が分かる近景をそろえると有効です。近接写真だけでは、どの面のどの位置なのか特定できません。方位、階、屋上区画、周辺設備が分かるように撮影し、全体写真と部分写真の対応を明確にします。必要に応じて寸法の分かる目盛りを添えますが、作動中の設備へ近づけないなど安全を優先します。写真番号は系統番号とひも付け、報告書、修繕依頼書、清掃完了記録で同じ番号を使います。
文章は、確認した事実と判定・推定を分けて書きます。状態欄には、付着物の種類、分布、網の変形、枠の腐食、周囲障害物など、現地で確認した事実を具体的に記載します。判断欄には、煙の排出を妨げる可 能性、排煙風量への影響、適用する検査事項、追加測定の要否、是正の優先度を記載します。外観だけでは影響を確定できない場合は「異常なし」と断定せず、「閉塞を確認。所定の風量測定および系統確認により影響を評価する」のように、次の行動が分かる形にします。
法定上の判定は、防鳥網の見た目だけでなく、適用される検査事項と判定基準に照らして行います。煙の排出を妨げる障害物がある、排煙機または排煙口の排煙風量が適用基準に適合しない、関連部位の取付けが堅固でない、著しい腐食や損傷があるなど、該当する項目ごとに整理します。防鳥網そのものに全国一律の独立判定欄があると決めつけず、特定行政庁が追加した項目や独自様式も確認します。
測定値は、最終的な風量だけでなく、測定対象が煙排出口か室内排煙口か、開口寸法、面積、各測定点の風速、平均風速、測定条件、使用した測定器、測定者を残します。前回値と比較する場合は、扉や窓、給気口、他系統の運転、測定断面、網やガラリの復旧状態が同じかを確認します。条件が異なる場合は注記します。数値が基準内であっても、網枠が外れかけている、網が破断しているといった別の不具合は解消されないため、外観、取付け、機能 を項目別に完了確認します。
高所で近接確認できなかった場合は、未確認範囲と理由を明記します。地上から撮影した写真だけで網の裏側まで良好と判断したり、前回写真を今回の証拠として転用したりしません。追加調査の方法、予定時期、担当者を決め、法定報告までに確認できない場合は、検査者と所管窓口で報告上の扱いを早めに整理します。
是正後は、清掃や交換を実施したという連絡だけで完了にしません。網面の有効開口、取付け、周囲の障害物、排煙設備の作動、適用される排煙風量を再確認し、是正前後の写真と測定結果を対にして保存します。清掃時にごみをダクト内へ押し込んでいないか、網を二重に張っていないか、固定具や水切りを正しく復旧したかも確認します。次回検査で経過を追える記録にすることが重要です。
詰まりを確認した後の是正と再確認
防鳥網の詰まりを確認した ら、閉塞の程度、排煙機能への影響、部材脱落の危険を整理し、対応の優先順位を決めます。網面の広い範囲がふさがれている、排煙機または室内排煙口の風量不足が確認された、排煙機に異常音や振動がある、網や枠が脱落しかけている場合は、単なる美観上の汚れとして扱いません。建物の用途、利用者の避難特性、対象系統が受け持つ範囲、他の不具合も踏まえ、施設管理者と検査者が情報を共有します。
清掃は、排煙機を安全に停止し、誤起動を防止したうえで行います。作動中の網へ手や工具を近づけたり、付着物をダクト内へ押し込んだりしません。巣材、羽毛、ふん、粉じんがある場合は、飛散や吸入を抑える作業方法と保護具を選び、回収物を屋上やダクト内に残さないようにします。網を取り外す場合は、復旧方向、固定具、シール、水切りを確認し、清掃後に緩みや隙間がないかを点検します。
網が腐食、破断、変形している場合は、清掃ではなく交換を検討します。交換時は、元の設計条件、材質、線径、網目、取付方法、有効開口、耐候性、異種金属接触による腐食の可能性を確認します。鳥の侵入を強く防ぎたいという理由だけで既設より細かい網へ変更すると、通気抵抗が増えて排煙性能へ影響するお それがあります。反対に、風量確保だけを目的として防鳥網を恒久撤去すると、異物侵入や安全上の問題が生じる可能性があります。仕様変更は、設備設計上の確認を行ってから実施します。
再発を繰り返す場所では、網面の清掃だけでなく、原因を減らす改修を検討します。周辺植栽から落ち葉が集中する場合は管理方法を見直し、外壁工事の粉じんが原因と考えられる場合は工事中の養生と完了清掃を改善します。網の裏側に手が届かない場合は、安全に取り外せる枠や点検口の整備を検討します。雨水が付着物を固着させている場合は、排煙性能を損なわない範囲でフード、水切り、排水経路の状態を見直します。
清掃や交換後は、外観だけでなく、室内排煙口の開放、排煙機の起動、中央監視の表示、異常音や振動、適用される排煙風量を再確認します。煙排出口で測る排煙機の排煙風量と、室内排煙口で測る排煙風量を取り違えず、必要な項目を最終復旧状態で確認します。清掃前後で同じ条件の測定値を比較し、回復が見られない場合は、防鳥網以外の原因を調査します。風道内への異物侵入、ダンパーの開放不足、排煙風道の変形、接続部の漏れ、排煙機の劣化、給気不足など、複数要因が重なることもあります。
法定報告の時点で是正が完了していない場合は、指摘内容、暫定的な安全管理、恒久対応の予定、管理責任者、完了確認方法を整理します。提出後に是正した場合も完了記録を保管し、必要な追加提出や報告の扱いは所管行政庁の運用に従います。十二条点検は報告書の提出だけで終わらせず、不具合を解消し、次回まで性能を維持できる管理へつなげることが重要です。
十二条点検の実務で起きやすい見落とし
最も大きな見落としは、室内側の排煙口と手動開放装置だけを確認し、屋外側の煙排出口まで追わないことです。排煙口が開き、排煙機の運転音がしても、終端の防鳥網やガラリが閉塞していれば、排煙風量へ影響する可能性があります。点検計画の段階で、屋上や外壁の煙排出口を対象一覧へ入れ、立入り方法と安全対策まで決めておきます。
次に多いのは、一般換気の排気口と機械排煙設備の煙排出口を取り違えることです。外部開口の形状が似ている建物では、図面、系統表示、作動試験を照合しないと誤認しやすくなります。前回写真に写っている場所を毎年そのまま撮影するだけでは、最初の取り違えが繰り返されるおそれがあります。改修で系統が変更されていないかを含め、毎回照合します。
「網目が見えるから詰まっていない」という判断も避けます。細かな繊維や粘着性の付着物は網の裏側に膜を作り、正面からは開口が残っているように見えることがあります。ガラリ羽根の奥やフード内部に堆積している場合もあるため、透過、裏面、内部の堆積を確認します。高所で判断できない場合は、確認できなかったことを明記し、同等以上の情報が得られる方法または近接確認を計画します。
屋外側の測定をすべて「参考値」と扱うことも、反対に任意の位置で測った瞬間値をそのまま法定検査値とみなすことも誤りです。煙排出口で行う「排煙機の排煙風量」は正式な検査事項になり得ますが、告示で示される測定断面、5点、各30秒以上、面積の取り方などを満たす必要があります。室内排煙口の風量測定とは別の項目として記録します。
清掃したことだけで完了とするのも見落としにつながります。清掃時に付着物をダクト内へ押し込む、網を復旧する際に二重に重ねる、固定具を締め忘れる、元より細かい網へ変更するなど、作業後に別の不具合が生じることがあります。完了後は、外観、取付け、作動、適用される風量を再確認し、是正前後を対応する写真で比較します。
前回と今回の測定値を、条件を確認せず比較することも避けます。扉や窓、給気口、他系統の運転、測定断面、排煙口の開放面積、防鳥網の復旧状態が異なれば、数値差の原因を防鳥網だけに求めることはできません。条件をそろえ、差がある場合は記録したうえで評価します。
十二条点検と日常保守を同じものと考えないことも重要です。法定検査は定められた時点で状態を確認するものであり、台風、外壁工事、鳥の営巣、落葉など、検査後に生じる変化を常時把握するものではありません。法定検査で問題がなかった建物でも、その後の環境変化で網が閉塞する可能性があります。施設管理者による巡回と、専門業者による保守を組み合わせます。
最後に、全国共通の説明だけで対象や判定を決めないことです。建築設備の定期報告対象、報告時期、追加検査項目、様式、既存設備や認定設備の扱いは、特定行政庁の規定や個別の設計条件により異なる場合があります。建物所在地、用途、規模、設備の設置根拠、過去の報告内容を確認し、最新の告示と提出要領に合わせます。
日常管理で防鳥網の再詰まりを防ぐ方法
防鳥網の再詰まりを防ぐには、十二条点検の直前だけ清掃するのではなく、建物ごとの汚れ方に合わせた巡回周期を設定します。樹木が近い建物は落葉期、鳥の飛来が多い建物は営巣しやすい時期、沿岸部は強風後、周辺で工事が行われる建物は工事中と完了時に重点確認します。点検日を固定するだけでなく、詰まりが増えやすい出来事の後に臨時確認を入れると早期発見につながります。
巡回記録には、煙排出口ごとの写真、付着物の種類、清掃日、清掃方 法、作業者、異常の有無を残します。同じ位置、同じ画角で撮影すると、閉塞の進行を比較しやすくなります。毎回の汚れが軽微でも、清掃間隔が短くなっている場合は発生源や網仕様を見直すきっかけになります。記録を法定検査の検査者へ渡せば、点検日だけでは分からない季節変動も把握しやすくなります。
外壁塗装、防水改修、屋上設備の更新、足場設置などを行う際は、工事前に煙排出口の位置を施工者へ周知します。養生シートでふさがないこと、塗料や粉じんを付着させないこと、資材を前に置かないこと、工事完了後に網面と周囲を確認・清掃することを施工計画へ入れます。工事中に一時的な養生が必要な場合は、防災上の扱い、代替措置、撤去時刻、復旧確認を施設管理者が管理します。
清掃しやすい環境づくりも重要です。屋上への安全な動線、排出口付近の作業空間、取り外し可能な点検枠、管理番号の表示を整えると、確認と清掃の質が安定します。反対に、煙排出口の前を物置場所として使う、植木鉢や資材を常設する、設備名称を表示しないといった運用は、閉塞や見落としを招きます。担当者が交代しても管理方法が続くように、図面、写真、手順、連絡先を設備台帳へまとめます。
日常巡回で異常を見つけたときは、次回の十二条点検まで待たずに対応します。網の大きな閉塞、枠の脱落、鳥の侵入、異常音、排煙機の起動不良などは、火災時の安全に影響する可能性があります。設備の停止や使用上の対応が必要かを所定の資格者や専門技術者へ確認し、暫定対応と恒久対応を分けて進めます。日常管理で小さな変化を捉えることが、重大な不具合と突発的な修繕を減らすことにつながります。
まとめ
十二条点検で機械排煙設備の防鳥網詰まりを確認するときは、まず図面と現地表示から正しい煙排出口を特定し、次に網面の有効開口と詰まり方を確認します。そのうえで、周囲障害物と取付状態を一体で見て、排煙設備の作動と排煙風量から機能への影響を確かめ、写真と測定値によって判断と是正経過を記録します。この5点を順番につなげることで、「ファンが回ったから問題ない」「網目が見えるから詰まっていない」といった表面的な判断を避けやすくなります。
特に、屋外の煙排出口で確認する「排煙機の排煙風量」と、室内側の「排煙口の排煙風量」は別の検査事項です。屋外測定を一律に補助情報とせず、反対に任意測定を正式値ともせず、適用される告示の方法、設計図書、特定行政庁の要領に沿って実施します。
防鳥網は小さな部材ですが、閉塞や変形があれば煙の排出を妨げる可能性があります。清掃や交換後も、取付け、作動、必要な風量を最終復旧状態で再確認し、是正前後の記録を残してください。対象設備や報告方法に不明点がある場合は、建物所在地の特定行政庁、所定の資格者、排煙設備に詳しい専門技術者へ確認して進めることが安全です。
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