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十二条点検の対象外と思った時に確認する3つの基準

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万能の測量機LRTKの説明

著者: LRTKチーム

「小規模な建物だから対象外だろう」「行政から案内が届いていないので定期報告は不要だろう」と、延べ面積や通知の有無だけで判断するのは安全ではありません。十二条点検の対象判定では、用途、階数、用途部分の床面積、所有・管理主体、所在地を所管する特定行政庁の指定、建築設備・防火設備・昇降機等の有無を重ねて確認する必要があります。


「十二条点検」は実務上の通称であり、建築基準法上は、民間建築物等について調査・検査結果を特定行政庁へ提出する「定期報告」と、国等が所有または管理する一定の建築物等について行う「定期点検」に分かれます。また、建物本体の定期調査が対象外でも、昇降機等が独立して定期検査報告の対象になることがあります。「建物が対象外」「設備も対象外」「今期は報告時期ではない」は別々の結論です。([国土交通省][1])


この記事では、十二条点検の対象外と思ったときに確認したい基準を三つに整理します。制度の一般的な考え方を示しますが、最終判断には、建物所在地を所管する特定行政庁の最新の条例・規則・対象表・運用の確認が必要です。


目次

十二条点検で「対象外」の判断が難しい理由

対象判定の前に整理したい四つの点検区分

基準1 建物の用途を名称ではなく実態で確認する

基準2 延べ面積だけでなく階数と用途部分の面積を確認する

基準3 所在地の指定と設備単位の対象を確認する

対象外と誤認しやすい代表的なケース

実務で迷わない対象判定の進め方

対象外でも残る維持管理上の責任

まとめ 対象外の結論は三つの基準を重ねて出す


十二条点検で「対象外」の判断が難しい理由

建築基準法の定期報告制度は、建物の使用開始後も適法で安全な状態を確保するため、損傷・腐食などの劣化や、不適切な改変による違反状態の有無を資格者が定期的に調査・検査し、その結果を行政へ報告する仕組みです。建築確認や完了検査が主に使用開始前の適法性を確認する手続であるのに対し、定期報告は使用開始後の維持管理を確認する制度です。([国土交通省][1])


対象判定が難しい第一の理由は、全国共通の対象と、特定行政庁が地域の実情に応じて指定する対象が併存していることです。国は政令で一定の用途・規模の建築物、防火設備、昇降機等を対象としていますが、特定行政庁も法令の範囲内で建築物や設備を追加指定できます。そのため、用途と規模が同じでも、所在地によって対象・報告時期・提出方法が異なる場合があります。([国土交通省][1])


第二の理由は、判定単位が建物全体の延べ面積だけではないことです。用途によっては、対象用途が地下または一定以上の階にあるか、二階部分の用途面積が基準以上か、対象用途に供する部分の合計が基準を超えるか、客席部分が一定面積以上かなど、見るべき条件が変わります。対象表に書かれた用途、階、面積、除外条件を一体として読む必要があります。


第三の理由は、「対象外」という表現が複数の状態を含むことです。制度上の対象外、報告年度ではない状態、新築・改築後の初回報告時期がまだ到来していない状態、所管庁の手続により使用休止中となっている状態、建物本体だけが対象外で設備は対象となる状態は区別しなければなりません。初回の取扱い、報告周期、休止・再開手続は所管庁の案内で確認します。東京都の案内でも、対象用途・報告時期と初回報告時期は個別に確認する構成になっています。([都営整備局][2])


制度改正も対象判定を難しくします。2023年4月1日には、事務所その他これに類する建築物について、民間建築物を特定行政庁が定期調査報告の対象として指定できる範囲が、従来の「階数5以上かつ延べ面積1,000平方メートル超」から「階数3以上かつ延べ面積200平方メートル超」へ拡大されました。ただし、これは指定可能な範囲の拡大であり、この範囲の民間事務所が全国一律で自動的に対象になったという意味ではありません。所在地の特定行政庁が実際に指定しているかを確認する必要があります。([国土交通省][3])


さらに、2025年7月1日施行の告示改正により、特定建築物定期調査と建築設備等・防火設備・昇降機の定期検査で重複していた一部項目が整理されました。各階の主要な換気設備、排煙設備、可動式防煙壁、非常用照明の作動確認などは建築設備等定期検査へ、各階の主要な常時閉鎖式防火扉に関する一定の確認項目は防火設備定期検査へ移されています。過去の報告書や旧様式だけを基準にせず、実施時点の告示・様式・所管庁の案内を確認することが重要です。([国土交通省][1])


対象判定の前に整理したい四つの点検区分

対象確認では、最初から「建物全体が対象か」という一問だけで判断しないことが重要です。実務上は、次の四区分を分けて確認します。


特定建築物の定期調査

建築設備の定期検査

防火設備の定期検査

昇降機等の定期検査


東京都の制度案内でも、定期報告をこの四種類に分けています。具体的な対象範囲は地域によって異なるため、四区分の名称を確認した後、所在地の対象表に当てはめます。([都営整備局][2])


特定建築物の定期調査では、敷地・地盤、外壁などの外部、屋上・屋根、建築物の内部、避難施設、非常用進入口など、建物の安全性や避難に関わる状態を幅広く確認します。対象は主に用途、規模、対象用途のある階、特定行政庁の指定によって決まります。


建築設備の定期検査では、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水・排水設備などのうち、法令や特定行政庁の指定により対象となるものを確認します。設置されているすべての設備が全国一律に同じ条件で報告対象になるわけではありません。設備の方式、設置先の建物、対象用途、所管庁の指定を組み合わせて判断します。国土交通省も定期報告制度を、建築物、建築設備、防火設備、昇降機等に分けて説明しています。([国土交通省][4])


防火設備の定期検査では、防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャー等のうち、対象となる設備を確認します。2025年7月1日以後は、従来、特定建築物定期調査で扱っていた各階の主要な常時閉鎖式防火扉について、作動、劣化・損傷、物品の放置、固定の状況などの確認が防火設備定期検査側に整理されています。一方、すべての常時閉鎖式防火設備が一律に対象となったわけではないため、対象設備の範囲を最新資料で確認します。([国土交通省][5])


昇降機等の定期検査は、建物本体の定期調査とは別に判定します。エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設等は、建物本体の用途・規模が特定建築物の対象条件に該当しなくても、定期検査報告の対象になることがあります。ただし、ホームエレベーター、テーブル型小荷物専用昇降機、一定の簡易リフトなど、種類・仕様・設置条件により法令上の扱いが異なるものがあるため、機器名称だけで断定せず、確認済証、検査済証、仕様書、設置場所を確認します。([都営整備局][2])


また、民間建築物等の定期報告と、国等が所有または管理する建築物の定期点検は、適用条項と実務の流れが異なります。公共施設の担当者は、民間向けの「定期報告対象建築物一覧」だけで対象外と判断せず、建築基準法第12条第2項・第4項の点検対象に加え、国家機関の建築物では官公庁施設の建設等に関する法律による点検の適用も確認します。([国土交通省][6])


基準1 建物の用途を名称ではなく実態で確認する

第一の基準は建物の用途です。ただし、建物名、テナント名、固定資産上の名称、社内での呼称だけでは判断できません。建築確認時の用途と現在の利用実態を照合し、用途が混在している場合は階・区画ごとに整理します。


まず確認したいのは、確認申請書、各階平面図、面積表、確認済証・検査済証に関連する資料、用途変更や増改築の手続書類です。検査済証だけでは各区画の用途や面積が分からない場合があるため、確認申請図書や最新の改修図面も併せて確認します。古い建物で書類が不足している場合は、建築計画概要書や台帳記載事項、保存図書の閲覧可否を所管窓口に確認し、入手できた資料と不明点を記録します。


次に、現地の利用実態を確認します。テナントの入れ替え、事業内容の変更、倉庫から作業場への転用、事務室から店舗・診療・集会用途への変更、就寝利用の開始などにより、確認時の用途と現況が一致していないことがあります。名称が「本社ビル」であっても、低層階に飲食店や物販店舗、診療所、集会室などがあれば、事務所だけの建物として一括判定できない可能性があります。


複合用途建築物では、最も面積の大きい用途だけで分類しないことが重要です。事務所、店舗、飲食店、共同住宅、寄宿舎、倉庫などが一棟に混在する場合は、各用途が存在する階と用途部分の床面積を区画ごとに整理し、所管庁の対象表に照合します。共用廊下、階段、機械室、バックヤードなどの面積をどのように扱うかは、対象表の注記や所管庁の取扱いを確認します。


就寝を伴う用途は、施設名だけでなく利用者と運営実態の確認が必要です。国は、高齢者等の自力避難が困難な人が就寝用途で利用する一定の施設を、政令による定期報告対象として位置付けています。共同住宅、寄宿舎、福祉施設などの名称だけで判断せず、確認図書上の用途、現況、利用者の特性、サービス内容を整理します。([国土交通省][1])


用途の不一致や未手続の可能性が見つかった場合は、対象判定だけで終わらせず、用途変更や改修に必要な手続の有無も確認します。定期報告制度は経年劣化だけでなく、不適切な改変による違反状態の確認も目的としています。図面と現況が一致しない場合は、建築士などの資格者または特定行政庁へ相談し、旧用途を前提に対象外と決めないことが安全です。([国土交通省][1])


この基準で大切なのは、「事務所だから対象外」「工場だから対象外」「共同住宅だから対象外」と用途名だけで結論を出さないことです。建築確認上の用途、現在の用途、混在用途、就寝利用、用途変更・改修履歴をそろえてから、規模判定へ進みます。


基準2 延べ面積だけでなく階数と用途部分の面積を確認する

第二の基準は建物の規模です。ここで多い誤りは、建物全体の延べ面積だけを見て対象外と判断することです。対象基準には、延べ面積のほか、階数、対象用途が存在する階、その階の用途部分の床面積、対象用途に供する部分の合計、客席部分の面積などが使われます。用途ごとの条件文と脚注を最後まで読む必要があります。


対象用途が地下または一定以上の階にあることを条件とする区分では、建物全体の延べ面積だけでなく、その用途がどの階にあるかが重要です。二階部分の用途面積が一定以上で対象になる区分や、客席部分だけを集計する区分もあります。地下階、塔屋、中間階、傾斜地における階の扱いは、現場での呼称ではなく確認図書と法令上の取扱いに基づいて確認します。


面積集計では、少なくとも次の数字を分けて管理します。


建物全体の延べ面積

対象用途に供する部分の床面積の合計

特定の階にある対象用途部分の床面積

客席など、対象表で個別に指定された部分の面積


テナントの賃貸面積や専有面積が、そのまま法令上の用途部分の床面積になるとは限りません。共用部分の算入方法も含め、確認申請図書の面積表と対象表の注記を照合します。また、「以上」と「超える」では境界値の扱いが異なります。基準値付近では概算や切捨てで判断せず、根拠資料を残します。


増築、減築、区画変更、用途変更を行った建物では、竣工時の面積表だけでは不十分です。最新の確認手続を反映した図面と現況を使用します。同一敷地に複数棟がある場合も、敷地全体の合計だけで判断せず、法令上どの範囲が一の建築物として扱われるか、渡り廊下や増築部分を含めて確認します。


事務所建築物では、2023年4月1日の改正を反映する必要があります。民間の事務所その他これに類する建築物について、特定行政庁が定期調査報告の対象として指定できる範囲は「階数3以上かつ延べ面積200平方メートル超」まで拡大されました。改正前の「階数5以上かつ延べ面積1,000平方メートル超」に該当しないことだけでは、現在の対象外を証明できません。([国土交通省][3])


一方、改正後の範囲に入る民間事務所が全国一律にすべて対象となるわけではありません。改正は特定行政庁が指定できる範囲を広げたものであり、実際の指定の有無、対象規模、施行時期、報告年度は所在地の規則・対象表で確認します。「国の基準に入るか」と「所管庁が指定しているか」を一組で判定します。([国土交通省][3])


国等の建築物については、同じ改正により点検対象範囲も見直されています。改正で追加された小規模側の事務所等については、当面、直通階段・竪穴区画に関する項目へ点検範囲を限定する取扱いが示されています。ただし、従来から官公庁施設の建設等に関する法律による点検を行ってきた国家機関の建築物は規模にかかわらず全調査項目を点検し、特定行政庁が項目を付加した場合はその取扱いにも従います。公共施設では、民間向けの規模表だけでなく、所有・管理主体、適用法令、点検項目を確認します。([国土交通省][7])


規模確認のゴールは、「小さいから対象外」という印象ではなく、どの条件に該当しないのかを数字と図面で説明できる状態にすることです。確認図書上の階数、延べ面積、用途別・階別面積、対象用途の位置、参照した対象表の版を記録します。


基準3 所在地の指定と設備単位の対象を確認する

第三の基準は、所在地を所管する特定行政庁の指定と、設備単位の対象です。用途と規模が分かっても、全国共通の説明だけでは最終判定できない場合があります。特定行政庁は地域の実情に応じ、法令の範囲内で建築物や設備を定期報告の対象に指定できます。([国土交通省][1])


最初に、建物所在地の所管庁を市区町村単位で特定します。都道府県内でも、建築主事を置く市や特別区などが特定行政庁となる区域では、都道府県の対象表がそのまま適用されるとは限りません。東京都の案内も、東京都が特定行政庁となる区域と、特別区・11市が所管する区域を分けています。([都営整備局][2])


次に、所管庁の最新の条例・規則、対象用途・規模一覧、報告年度、提出期間、初回報告、休止・再開・廃止の届出、様式を確認します。対象表の公開日だけでなく、2023年の事務所等に関する改正や、2025年7月以後の調査・検査項目の整理が反映されているかも確認します。過去に報告実績がある建物でも、旧様式や前回の判定をそのまま流用しないことが重要です。


行政から案内文書が届いていないことは、対象外の根拠になりません。東京都は、所有者または管理者に報告義務があり、行政等からの案内の有無と報告義務の有無は無関係であると明示しています。所有者・管理者・施設名称の変更や、過去の未登録などにより案内が届かない可能性もあるため、通知ではなく法令と所管庁の指定で判断します。([都営整備局][2])


建物本体の判定後は、設備を一つずつ確認します。特に昇降機等は、建物本体の対象規模・用途にかかわらず独立して対象となる場合があります。エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機等について、種類、用途、仕様、設置場所、検査済証、過去の定期検査報告を確認します。建築設備と防火設備についても、設備の種類、方式、数量、設置先の建物用途、所管庁の指定を整理します。([都営整備局][2])


消防法、建築物衛生法、労働安全衛生法に基づく点検・検査や、保守会社による日常保守を実施していても、建築基準法第12条の定期報告が完了したことにはなりません。制度ごとに対象、資格、点検方法、判定基準、提出先が異なるため、報告書の表紙や根拠法令まで確認します。東京都も、建築基準法の定期報告と消防法・建築物衛生法の届出や報告は別制度であると説明しています。([都営整備局][2])


使用していない建物や設備も、所有者側の判断だけで恒久的な対象外になるとは限りません。休止・再開・廃止の手続は自治体ごとに確認が必要です。例えば横浜市では、次回報告時期を超えて使用を休止する場合の使用休止届、再開時の使用再開届、取壊し・廃止時の変更届を案内しています。空室、休業、電源停止、施錠だけで報告義務が消滅したと判断せず、所在地の手続を確認します。([横浜市公式サイト][8])


この基準の結論は、所在地の最新ルールを使い、建築物、建築設備、防火設備、昇降機等を別々に判定することです。判定記録には、所管庁名、確認日、参照した規則・対象表の名称と版、四区分ごとの結論、根拠資料、不明点を残します。


対象外と誤認しやすい代表的なケース

ケース1 小規模な事務所ビル


4階建てで延べ面積が1,000平方メートル以下の事務所は、改正前の基準だけを見れば対象外と考えやすい建物です。しかし、現在は「階数3以上かつ延べ面積200平方メートル超」まで、特定行政庁が指定できる範囲が拡大されています。該当する場合は、所在地の指定の有無まで確認します。全国一律に対象と断定するのも、旧基準だけで対象外と断定するのも誤りです。([国土交通省][3])


ケース2 共同住宅だから対象外と考える


共同住宅の指定状況は自治体によって異なり、用途・規模・対象階によって結論が変わります。複合用途がある場合や、高齢者等の自力避難が困難な人が就寝利用する別用途に該当する場合は、通常の共同住宅として一括判定できない可能性があります。建物本体が対象外でも、昇降機等は別に確認します。([国土交通省][1])


ケース3 工場・倉庫だから対象外と考える


工場・倉庫部分が対象表にない場合でも、同じ棟に事務所、物販、飲食、集会、寄宿舎などが含まれていれば、複合用途として確認が必要です。昇降機、排煙設備、防火設備なども、設備区分ごとに確認します。敷地の主用途ではなく、棟、階、区画、設備の単位で整理します。


ケース4 行政から通知が来ていないので対象外と考える


通知の有無は報告義務の発生要件ではありません。過去に報告実績がない、所有者・管理者情報が更新されていないなどの理由で、案内が届かないことがあります。通知がない建物ほど、所在地、用途、規模、設備を基に自主的に確認します。([都営整備局][2])


ケース5 新築後に報告していないので対象外と考える


新築・改築後は、検査済証の交付時期と報告周期の関係で、直後の報告が不要となる取扱いがあります。しかし、これは制度上の恒久的な対象外を意味しません。具体的な初回報告時期は所管庁の対象表・案内で確認し、次回年月を管理台帳に登録します。横浜市の例では、新築・改築後に検査済証の交付を受けた年度は報告不要とし、次年度以降の報告を案内していますが、地域ごとの取扱いを確認する必要があります。([横浜市公式サイト][8])


ケース6 空きビル・休止設備なので対象外と考える


使用実態がなくても、所管庁への休止届が必要な場合があります。再開時に届出や検査が必要となる場合もあるため、休止中の維持管理と再開条件まで確認します。単にテナントが退去した、電源を切った、入口を閉鎖したという状態だけで判断しません。([横浜市公式サイト][8])


ケース7 消防設備点検をしているので十二条点検は不要と考える


消防法の設備点検と建築基準法第12条の定期調査・検査は別制度です。重なるように見える設備や確認事項があっても、資格、判定基準、報告様式、提出先は同一ではありません。施設管理台帳では、消防法、建築基準法、建築物衛生法、労働安全衛生法、保守契約による点検を区分して管理します。([都営整備局][2])


ケース8 前回の調査会社が対象外と言ったので、そのまま対象外と考える


前回の判定が正しくても、その後の用途変更、テナント変更、増改築、設備更新、所管庁の規則改正により結論が変わることがあります。対象外判定は固定情報ではありません。用途、規模、設備、所有・管理主体、所在地ルールのいずれかが変わった時点で再判定します。


実務で迷わない対象判定の進め方

対象判定は、資料収集、現況確認、法令照合、記録化の順で進めると整理しやすくなります。


1 所有・管理主体と適用区分を確定する


建物所在地、所有者、管理者、民間建築物等か国等の建築物か、竣工年月、検査済証の有無を整理します。民間の定期報告なのか、国等の建築物に対する定期点検なのかを最初に分けます。所有者と管理者が異なる場合は、法令上の報告者と、社内の資料準備・発注・期限管理の担当を明確にします。


2 確認図書と過去資料を集める


確認済証、検査済証、確認申請書、用途変更・増改築関係書類、各階平面図、面積表、設備図、設備台帳、過去の定期報告書、行政からの通知、改修履歴を集めます。資料が複数部署や管理会社に分散している場合は、原本の所在、作成日、最新版を記録します。


3 図面と現況の差分を確認する


各階・各区画の現在用途、利用者、就寝利用の有無、閉鎖区画、増設間仕切り、避難経路、防火区画、昇降機、換気・排煙設備、非常用照明、防火扉・防火シャッターを現地で確認します。図面と一致しない箇所には印を付け、改修や用途変更の手続履歴を調べます。


4 国の基準と所管庁の指定を順に照合する


まず政令等による全国共通の対象を確認し、次に所管する特定行政庁の追加指定、報告年度、提出期間、初回報告、除外・休止の取扱いを確認します。対象表は本文だけでなく、脚注、面積算定、境界条件、経過措置まで読みます。事務所等は2023年改正、防火設備・建築設備等の項目は2025年7月施行の改正が反映された資料を使用します。([国土交通省][3])


5 四区分ごとに結論と根拠を記録する


判定票には、例えば次のように記載します。


特定建築物:用途、階数、延べ面積、用途別・階別面積、所管庁の対象表、判定

建築設備:設備種類、方式、設置場所、所管庁の指定、判定

防火設備:設備種類、作動方式、設置場所、対象建築物との関係、判定

昇降機等:機種、用途、仕様、検査済証、法令上の除外条件、判定


「対象外」とだけ書かず、どの条件に該当しないかを明記します。不明な区分は「確認中」とし、他の区分まで対象外にしないことが重要です。


6 所管庁または資格者へ具体的な条件を示して確認する


特定行政庁へ相談するときは、「この建物は対象ですか」とだけ尋ねるのではなく、住所、所有・管理主体、確認上の用途、現用途、階数、延べ面積、用途別・階別面積、設備種類、増改築・用途変更履歴、過去の報告番号を提示します。電話や窓口で確認した場合も、確認日、窓口、提示した前提、回答内容を記録します。


建築士や各種調査員・検査員へ相談する場合も、図面不足、用途不明、複合用途の面積算定、昇降機の除外条件など、判断に迷っている論点を先に共有します。対象外の確認を依頼する場合でも、判断根拠を文書で残せるようにします。


最後に、対象となった区分は報告周期と提出期限を管理台帳へ登録し、対象外の区分にも再判定条件を設定します。用途変更、テナント入替え、増改築、設備更新、所有者・管理者変更、所管庁の規則改正を再判定のきっかけとして管理すると、報告漏れを防ぎやすくなります。


対象外でも残る維持管理上の責任

十二条点検の対象外という結論は、建物が安全であることや、すべての法令に適合していることを保証するものではありません。建築基準法第8条は、建築物の所有者、管理者または占有者に対し、敷地、構造、建築設備を常時適法な状態に維持するよう努めることを求めています。定期報告の対象外でも、外壁の浮き・落下、屋根や庇の劣化、避難経路への物品放置、防火扉の固定、非常用照明の不点灯などを放置してよいわけではありません。([e-Gov 法令検索][9])


法定の定期調査がない建物では、所有者・管理者が自主点検の範囲と頻度を決めておくことが重要です。日常巡回では外壁・天井の異常、漏水、扉の閉鎖障害、避難経路、階段・手すり、設備警報などを確認し、必要に応じて高所や隠蔽部を含む専門点検を計画します。異常は、写真、場所、発見日、応急措置、恒久対策、完了日とともに記録します。


十二条点検の対象外と、他法令の点検対象外は同義ではありません。消防、労働安全、建築物衛生、電気、ガス、浄化槽など、用途や設備に応じて別の点検・検査・届出が関係します。法定点検台帳は、根拠法令、対象設備、資格者、周期、提出先を分けて作成します。反対に、他法令の点検を実施していることを理由に、建築基準法第12条の確認を省略しないことも重要です。([都営整備局][2])


対象外判定の記録は、将来の改修計画にも役立ちます。用途、階数、面積、設備、所管庁、確認日を一枚にまとめておけば、テナント変更や増改築によってどの条件が変わると定期報告の対象になり得るかを事前に確認できます。工事後に対象化へ気付くのではなく、計画段階で報告周期、点検口、設備台帳、図面整備、予算を検討できます。


また、定期報告の対象外であっても、用途変更や増改築などに別の手続が必要となる場合があります。対象外という結論は、「現況が適法」「改修手続が不要」という結論ではありません。図面と現況の不一致、避難・防火上の支障、設備の不具合を把握した場合は、対象判定と是正要否を分けて確認します。国土交通省も、定期報告で劣化だけでなく不適切な改変による違反状態を確認すると説明しています。([国土交通省][1])


まとめ 対象外の結論は三つの基準を重ねて出す

十二条点検の対象外と思ったときは、第一に、建物の用途を名称ではなく実態で確認します。建築確認上の用途と現在の利用が一致しているか、複合用途や就寝用途がないか、用途変更・改修履歴が反映されているかを確かめます。


第二に、延べ面積だけでなく、階数、対象用途がある階、用途部分の床面積、客席などの個別面積条件を確認します。特に事務所等では、2023年4月から特定行政庁が指定できる範囲が「階数3以上かつ延べ面積200平方メートル超」まで拡大されているため、旧基準だけで対象外と判断できません。ただし、民間事務所が全国一律に対象化されたわけではなく、所在地の指定確認が必要です。([国土交通省][3])


第三に、所在地を所管する特定行政庁の最新ルールを確認し、特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等を別々に判定します。案内が届かないこと、過去の報告がないこと、新築後にまだ報告していないこと、現在使用していないことは、それだけでは恒久的な対象外の根拠になりません。([都営整備局][2])


対象判定に迷う場合は、確認済証・検査済証、各階平面図、面積表、設備一覧、改修履歴、過去の報告書をそろえ、所在地・用途・規模・設備・所有管理主体を具体的に示して、所管する特定行政庁または建築士等の資格者へ確認してください。


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