目次
• 埋設管AR表示が映らない時は原因を順番に切り分ける
• 原因1:表示対象の埋設管データが読み込まれていない
• 原因2:座標系や基準点の設定が一致していない
• 原因3:現在位置や端末の向きを正しく取得できていない
• 原因4:表示範囲や深度などの絞り込み条件から外れている
• 原因5:カメラや位置情報などの権限と端末設定に問題がある
• 原因6:端末負荷や通信状態の影響で処理が完了していない
• 原因が分からない時に行う現場での切り分け手順
• 埋設管AR表示を安定させる事前準備
• AR表示だけで掘削位置を判断してはいけない理由
• まとめ
埋設管AR表示が映らない時は原因を順番に切り分ける
埋設管AR表示を現場で起動しても、管路がまったく現れない、表示された直後に消える、想定と違う方向に出るといった症状が起こることがあります。この時、位置情報の精度や端末の故障だけを疑うと、復旧までに余計な時間がかかります。
埋設管AR表示の仕組みは製品や運用方式によって異なります。衛星測位などで現在位置を求める方式、現場の基準点に表示を合わせる方式、カメラ映像と端末の動きを使って姿勢を追跡する方式、これらを組み合わせる方式があります。したがって、すべてのシステムが同じ原因で映らなくなるわけではありません。まず利用中の仕組みが、どのデータとセンサーを使って表示しているかを取扱説明書や管理画面で確認することが出発点です。
一般的なARでは、カメラ映像と端末の動きに関する情報を組み合わせて仮想物の位置や向きを追跡します。屋外の埋設管AR表示では、これに現在位置、座標変換、基準点、管路の高さ、表示距離などが加わる場合があ ります。必要な要素の一つが欠けると、データ自体は存在していても画面に表示されないことがあります。([Google for Developers][1])
最初に整理したいのは、何が正常で何が異常なのかです。カメラ映像は動いているか、現在地は更新されているか、対象データの名称や件数を確認できるか、地図表示がある場合は管路が正しい地域にあるか、端末をゆっくり動かすと表示が一瞬でも現れるかを確認します。
カメラ映像が出ない場合は、座標や管路データを調べる前にカメラ権限やAR機能の対応状況を確認します。地図上では管路が見えるのにAR画面だけ空の場合は、姿勢追跡、表示条件、高さ、端末負荷などが候補になります。別の端末では同じデータを表示できる場合は端末側、複数端末で同じデータだけ表示できない場合はデータ側の可能性が高まります。
ただし、一つの比較結果だけで原因を断定してはいけません。端末ごとに権限、アプリの版、座標設定、保存済みデータが違えば、単純な比較にならないからです。変更する項目は一度に一つとし、変更前後の症状を記録します。
ここからは、埋設管AR表示が現場で映らない時に確認したい代表的な原因を六つに分け、原因別の対処法を説明します。
原因1:表示対象の埋設管データが読み込まれていない
最初に確認するのは、対象の埋設管データが選択され、表示に必要な情報の読込が完了しているかです。AR画面が開いたからといって、対象案件の管路データまで読み込まれているとは限りません。
案件名、現場名、工区、作成日、版、更新日時などを確認します。同じ現場に旧版、試験版、部分更新版が並んでいると、似た名称のデータを選び間違えることがあります。表示したい管種や区間が、その版に含まれているかも確認が必要です。
一覧表示や属性表示があるシステムでは、管路の件数、名称、設備種別を確認します。地図表示を備えている場合は、ARを開く前に管路が地図上へ描画されるかを見ます。地図にも表示されない時は、ARの追跡よりも、データの選択、登録、変換、同期の問題を先に疑う方が効率的です。
クラウドからデータを取得する方式では、案件名や概要だけが先に表示され、形状や属性の取得が続いている場合があります。読込中を示す表示、同期日時、オフライン利用の可否などを確認し、完了前にAR画面を何度も開き直さないようにします。連続操作によって必ず不具合が起きるわけではありませんが、処理状況が分かりにくくなり、原因の切り分けを難しくします。
元データの不備も考えられます。線形を構成する座標が欠けている、数値の単位が想定と違う、高さが未設定である、極端に離れた点が混在している、対応していない形式や属性が含まれているといった問題です。ただし、高さ情報がないだけで必ず表示不能になるとは限りません。地表面へ仮配置する、一定の深さを与える、対象外として除外するなど、システムごとに扱いが異なります。
対処する時は、対象案件を閉じて正しいデータを選び直し、一覧や地図で内容を確認してからARへ進みます。同期機能がある場合は、通信が安定した場所で同期完了を確認します。オフライン保存に対応している場合は、現場へ行く前に必要な範囲を端末へ保存します。
データを再取得する際は、現場で入力したメモ、写真、補正値、確認結果などが端末内だけに残っていないか注意してください。削除や再同期によってローカル記録が失われる可能性は運用方式によって異なるため、バックアップや同期状態を確かめてから実行します。
正しいデータを選び直しても地図や一覧に対象管路が現れない場合は、データ作成担当者へ確認します。その際は、案件名だけでなく、データの版、更新日時、表示対象の管種、発生地点、端末の画面状態を伝えると調査しやすくなります。

