目次
• 法面吹付前清掃土を出来形外で扱う意味
• 現場で土量管理が難しくなる理由
• 基準1 設計数量の対象範囲を確認でき ること
• 基準2 清掃が吹付工の下地処理として説明できること
• 基準3 発生時点と発生場所を施工記録で特定できること
• 基準4 清掃土を他の発生土と区分して管理できること
• 基準5 契約図書と協議記録に基づいて扱いを決めること
• 出来形外でも土量収支から除外しない
• 日報・写真・測量をつないだ記録方法
• 二重計上と計上漏れを防ぐ照合手順
• 少量で測りにくい清掃土の扱い
• 変更・追加作業になった場合の整理
• まとめ
法面吹付前清掃土を出来形外で扱う意味
法面吹付工の施工前には、吹付面に残る泥土、浮石、緩んだ土砂、植物片、その他の付着を妨げるものを取り除き、吹付材を施工できる状態へ整える作業が行われます。この記事では、その作業に伴って発生する土砂や小石を便宜上、法面吹付前清掃土と呼びます。
ただし、法面吹付前清掃土という名称や、それを出来形外として扱うための全国一律の数量区分が、すべての工事に共通して定められているわけではありません。発注者の共通仕様書、特記仕様書、工事数量総括表、設計図、数量計算書、積算条件、施工協議の内容によって、法面整形、吹付工の準備作業、掘削、残土処理などのどこに含まれるかが異なります。
本記事でいう出来形外とは、清掃で発生した 実土量を無視する意味ではなく、設計面までの掘削数量や法面整形の出来形数量へ、清掃土の実測体積を機械的に上乗せしないという現場管理上の整理です。工事によっては、掘削を体積で管理する一方、法面整形や吹付工を面積で管理します。そのため、清掃土の体積と契約上の出来形数量は、同じ尺度で直接加減できない場合があります。
また、共通仕様書などで、法面整形時に緩んだ転石や岩塊を取り除くこと、吹付前に泥土や浮石などを除去することが施工上の要求として示されている場合があります。このような作業は、別数量として自動的に精算されるとは限らず、当初の工種に含まれる可能性があります。
一方で、通常の表面清掃を超えて、設計面の地山側へ大きく掘り込む除去、広範囲の崩落土撤去、想定外の不良地山への対応が必要になった場合は、単なる清掃として整理できないことがあります。追加掘削、法面形状の変更、補強工の追加、設計変更などの検討が必要です。
したがって、清掃土を出来形外として扱う判断 は、作業名だけで決められません。設計数量の範囲、除去前後の形状、作業目的、契約上の包含関係、監督職員との協議を確認し、出来形数量と現場の土量収支を分けて整理することが重要です。
以下の5基準は、公的な統一基準を示すものではありません。現場で土量管理を行う際に、清掃土を設計掘削数量へ重ねて計上していないか、反対に搬出実績から漏らしていないかを確認するための実務上の確認軸です。
現場で土量管理が難しくなる理由
法面吹付前清掃土の管理が難しい主な理由は、掘削、法面整形、浮石除去、吹付前清掃が連続して行われることです。施工の区切りを記録しないまま作業が進むと、どこまでが設計面を形成するための掘削で、どこからが吹付面の下地処理なのかを後から説明しにくくなります。
さらに、法面整形の施工内容には、仕上げ面を整えるだけでなく、安定を損なう緩みや岩塊の除去が含まれる場合があります。したがって、掘削完了後に発生したという理由だけで、すべての土砂を法面整形や掘削と無関係な清掃土に分類するのは安全ではありません。
清掃土は、法面全体から一定の厚さで発生するとは限りません。泥分だけを薄く除去する部分、小規模な浮石を除去する部分、局部的な崩れを回収する部分が混在します。面積に一律の厚さを掛けるだけでは、実際の発生量とかけ離れる可能性があります。
法尻へ落とした後の混合も問題になります。清掃土が設計掘削土、法面整形土、自然崩落土、側溝の堆積土などと混ざると、搬出台数や受入数量は分かっても、発生源別の内訳を説明できません。
数量の状態が異なる点にも注意が必要です。設計掘削数量は設計図に基づく地山状態の数量として算出されることがありますが、法尻へ落下した清掃土はほぐれた状態です。車両運搬時には積載状態が変わり、降雨後には含水状態も変化します。地山、ほぐし、運搬、重量の各数値を無条件に同一視すると、土量差 が生じます。
また、法面では安全確保を優先し、不安定部を直ちに除去しなければならないことがあります。必要な処置を遅らせるべきではありませんが、除去前の状況、位置、指示内容、概略範囲が残っていないと、通常清掃と追加除去の境界が不明になります。
現場で土量管理を成立させるには、施工後に一括して分類するのではなく、設計面の確認時、清掃開始時、発生土の集積時、搬出時の節目を設定し、それぞれの記録をつなぐ必要があります。
基準1 設計数量の対象範囲を確認できること
第一の基準は、契約上の設計数量がどの範囲と工種を対象としているかを確認できることです。重要なのは、清掃土が設計面の内側か外側かを感覚で判断することではなく、掘削、法面整形、吹付工、残土処理の数量算出条件を先に把握することです。
掘削数量は、一般に設計図に示された断面や計画面を基に算出されます。一方、法面整形や吹付工は面積で数量化されることがあります。清掃で発生したほぐし土量を、そのまま設計掘削の地山数量へ加えると、数量状態と契約単位の両方が一致しない可能性があります。
清掃前に設計面へ到達していたかを確認できれば、掘削作業と下地処理を切り分けやすくなります。法面全体を高密度に測れない場合でも、測点、施工ブロック、段、法肩、法尻、構造物との取合いなど、位置を再現できる情報を残します。
設計面より手前に残る付着土、掘削時に法面へ付着した泥、表面の小さな緩みなどを取り除く作業は、下地処理として説明しやすい対象です。ただし、これらが契約上どの工種に含まれるかは、設計図書の確認が必要です。
反対に、設計面の地山側へ深く除去した場合や、除去後の法面線が大きく後退した場合 は、通常の清掃だけで整理しないようにします。亀裂沿いの岩塊、湧水で軟弱化した部分、崩落範囲などについて、位置、深さ、原因、後工程への影響を記録します。
法面整形の仕様に、緩んだ転石や岩塊を除去することが含まれている工事では、その除去を別の掘削数量として扱えない場合があります。逆に、当初想定を超える不良地山が確認された場合は、契約条件に基づく協議対象となる可能性があります。
したがって、出来形外として扱う前提は、清掃前に設計面が概ね形成されていたことだけではありません。設計数量の算出範囲、法面整形に含まれる作業、吹付前処理に含まれる作業を確認し、清掃土の実量をどの管理表へ記録するかまで決めることが必要です。
基準2 清掃が吹付工の下地処理として説明できること
第二の基準は、除去作業の目的と内容が、吹付面を施工可能な状態へ整える下地処理として説明できることです。清掃という名称だけでは、表面の洗浄、法面整形の続き、追加掘削、崩落土撤去のどれに該当するか判断できません。
吹付前の下地処理では、吹付材の付着を妨げる泥土、ごみ、植物片、浮石、緩んだ小規模な土塊などを取り除くことがあります。岩盤面では圧縮空気や水などを用いることもありますが、具体的な施工方法は設計図書、施工計画、安全条件に従います。
日報には、単に法面清掃と書くのではなく、泥土除去、付着物除去、小規模な浮石除去、法尻へ落下した清掃土の回収など、実際の作業内容を記載します。除去対象と目的が分かれば、設計面の形成作業なのか、吹付直前の表面処理なのかを区別しやすくなります。
使用機械や施工方法も判断材料になります。人力や小型機材で表面の付着物を除去したのか、掘削機械で法面を掘り直したのかでは、作業の性格が異なります。ただし、使用機械の大きさだけで契約上の区分が決まるわけではありません。除去範囲と設計面への影響を併せて確認 します。
通常の下地処理と、想定外の不安定部除去が同じ区画で発生することもあります。その場合は、法面全体を一括して清掃土にせず、通常作業の範囲と協議対象の範囲を分けます。
作業指示の経緯も残します。当初施工計画に含まれる通常清掃なのか、監督職員との協議により範囲を追加したのか、安全上の緊急対応として施工者が先行除去したのかを区別します。
下地処理として説明できる場合でも、別数量として精算できるとは限りません。吹付工や法面整形の施工単価に含まれることがあるため、作業内容の記録と契約上の計上可否は別々に確認します。

