機械を新しく設置する、既存設備を移転する、または設備の主要部分を変更する場面では、「これは88条申請が必要なのか」「何日前までに確認すればよいのか」と迷いやすくなります。特に、工場内の設備更新、生産ラインの変更、局所排気装置や集じん設備の導入、危険物や有害物を扱う工程の改造では、単なる設備工事の工程管理だけでなく、労働安全衛生法上の計画の届出に該当するかを早い段階で確認することが重要です。
実務では「88条申請」と呼ばれることがありますが、法令上の中心は「計画の届出」です。労働安全衛生法第88条では、一定の機械等を設置し、移転し、または主要構造部分を変更しようとする場合に、工事開始日の30日前までに所轄の労働基準監督署長へ届け出る枠組みが定められています。ただし、第88条には建設業の特に大規模な仕事に関する30日前の届出や、建設業その他一定の業種に属する一定の仕事に関する14日前の届出も含まれるため、「88条申請 何日前」とだけ覚えると、自社のケースにどの期限が当てはまるのかを誤りやすくなります。
この記事では、機械設置を中心に、88条申請と呼ばれる計画の届出が必要になる場面、30日前と14日前を混同しない考え方、提出期限を見極めるための5項目を実務目線で解説します。なお、個別案件の要否は機械の種類、事業場、作業内容、工事範囲、所轄の運用によって変わるため、最終判断は条文、関係規則、所轄の労働基準監督署への確認を前提にしてください。
目次
• 88条申請は機械設置にも関係する
• 提出期限は何日前かを最初に分ける
• 見極める項目1 機械等の種類と危険有害性
• 見極める項目2 設置か移転か主要構造部分の変更か
• 見極める項目3 工事開始日と社内スケジュール
• 見極める項目4 事業場と工事全体の責任分担
• 見極める項目5 添付資料と現場条件の確定度
• 対象外に見える場合でも確認しておきたい境界
• 機械設置の88条申請でよくある遅れ
• 提出期限を守るための実務フロー
• まとめ 30日前判断を早めて現場の手戻りを防ぐ
88条申請は機械設置にも関係する
88条申請という言葉を聞くと、建設工事の計画届を思い浮かべる人も多いですが、機械設置も重要な確認対象になります。労働安全衛生法第88条第1項では、危険または有害な作業を必要とする機械等、危険な場所で使用する機械等、または危険や健康障害を防止するために使用する機械等のうち、厚生労働省令で定めるものを設置、移転、または主要構造部分を変更しようとするときに、工事開始日の30日前までに計画を届け出ることが定められています。
ここで重要なのは、機械なら何でも届出が必要という意味ではないことです。判断の出発点は、その機械等が法令で定められた対象に該当するか、設置や変更によって危険性または有害性が生じるか、作業場の安全衛生条件が変わるかという点です。新品か中古か、国内製か海外製か、設備メーカーが据付まで行うか、自社で据付するか だけで要否が決まるわけではありません。
たとえば、動力を用いて加工や成形を行う設備、危険物や有害物を扱う設備、有害なガス、蒸気、粉じんの発散を抑えるための局所排気装置や除じん装置、一定の化学設備などは、計画の届出の対象になり得ます。ただし、対象となる機械等は労働安全衛生規則の別表や、ボイラー、クレーン、有機溶剤、特定化学物質、粉じんなどに関する個別規則で定められる場合があるため、名称だけを見て即断しないことが大切です。
また、機械設置の現場では、設備そのものだけでなく、周囲の作業床、通路、点検スペース、電気設備、配管、排気経路、材料の搬入動線、火気管理、保守時の停止手順なども安全衛生上の判断材料になります。つまり、88条申請の要否は、機械単体のカタログ情報だけではなく、実際にどこへ、どのように、誰が、どの作業と組み合わせて設置するのかまで含めて確認する必要があります。
実務担当者が最初に持つべき認識は、「機械設置でも88条申請が必要になる場合がある 」ということです。そのうえで、対象機械等に該当するか、届出の種類は何か、提出先は労働基準監督署長なのか厚生労働大臣なのか、期限は30日前なのか14日前なのか、建設工事側の届出も関係するのかを順に整理すると、判断の抜け漏れを減らせます。
提出期限は何日前かを最初に分ける
「88条申請 何日前」という検索意図で最も多い悩みは、30日前なのか、14日前なのか、あるいは別の期限を見ればよいのかという点です。機械設置に関しては、対象となる機械等を設置、移転、または主要構造部分を変更する場合、原則として工事開始日の30日前までという整理が出発点になります。ここでいう工事開始日は、機械を実際に稼働させる日ではなく、対象となる設置工事や変更工事を始める日として考える必要があります。
一方で、同じ第88条の中には、建設業に属する事業のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事について、仕事開始日の30日前までに厚生労働大臣へ届け出る規定があります。さらに、建設業その他政令で定める業種に属する一定の仕事について、仕事開始日の14日前までに労働基準監督署長へ届け出る規定もあります。したがって、88条申請を何日前に出すかは、「どの第88条の届出なのか」を分けて確認しなければなりません。
このため、機械設置の現場で期限を確認するときは、「機械等の設置、移転、主要構造部分の変更に関する届出」と「建設工事としての計画届」を混同しないことが重要です。たとえば、工場内に新しい生産設備を設置するために基礎工事、搬入口の改修、作業床の補強、架台の設置を行う場合、機械等の届出の観点と、工事の種類や規模に応じた建設側の届出の観点が重なることがあります。どちらか一方だけを見て「14日前でよい」「30日前だけでよい」と決めてしまうと、必要な確認が漏れるおそれがあります。
実務上は、迷った時点で30日前を基準に逆算しておくのが安全です。14日前の届出に該当する可能性がある工事でも、機械設置側で30日前の届出が必要であれば、短い期限だけに合わせることはできません。逆に、機械そのものは対象外であっても、工事内容が第88条の別の計画届に該当する場合があります。期限の見極めは、「88条だから何日前」と一括で覚えるのではなく、「機械等の届出なのか、建設業等の仕事の届出なのか」を分けて確認することが 大切です。
また、30日前までという期限は、社内で判断を始める期限ではありません。提出が30日前までである以上、対象確認、図面準備、設備仕様の整理、施工方法の検討、関係者確認、所轄の労働基準監督署への事前相談などは、さらに前倒しで進める必要があります。特に機械設置では、仕様変更やレイアウト変更が直前に発生しやすいため、工程表上の据付開始日だけでなく、基礎工事、搬入、電気配線、配管、排気設備工事など、対象機械等の設置に関わる作業がいつ始まるのかを早めに確認しておくべきです。
見極める項目1 機械等の種類と危険有害性
提出期限を見極める第一の項目は、設置する機械等の種類と、その機械が持つ危険有害性です。88条申請の対象になるかどうかは、単に機械の大きさ、導入金額、メーカー名、工期の長さで判断するものではありません。危険な作業を必要とするもの、有害な作業を伴うもの、危険な場所で使用するもの、または危険や健康障害を防止するために使用する設備に当たるものかを確認します。
製造現場であれば、加圧、せん断、切断、成形、粉砕、混合、乾燥、加熱、化学反応、溶接、塗装、粉じん発生、蒸気発生などの作業が絡む設備は、慎重な確認が必要です。危険物や有害物を扱う設備はもちろん、作業者を守るための排気設備や換気設備であっても、法令上の対象になる可能性があります。安全対策のために設置する設備だから届出は関係ない、と考えてしまうと判断を誤る場合があります。
機械の名称だけで対象外と判断しないことも大切です。同じような名称の機械でも、使用目的、処理する材料、発生する粉じんや蒸気、圧力、温度、設置場所、囲いの有無、作業者の接近頻度によってリスクは変わります。設備仕様書に書かれた能力値だけでなく、実際の運用条件を確認しなければ、届出対象かどうかを見誤ることがあります。
また、既存設備の更新であっても油断はできません。能力が上がる、作業速度が変わる、材料が変わる、排気量が変わる、危険物の保有量が変わる、作業者の立ち位置が変わるといった場合、安全衛生上の条件は従来と同じではありません。既存機の置 き換えだから過去と同じ扱いでよいと考えるのではなく、今回の設置計画として改めて確認する必要があります。
この項目では、社内の設備担当だけでなく、安全衛生担当、生産技術担当、現場責任者、保全担当が同じ情報を見て判断することが重要です。機械の仕様、使用物質、発生する危険有害要因、作業方法、保守方法を一つの資料にまとめ、対象の可能性がある段階で所轄の労働基準監督署に相談できる状態にしておくと、30日前の期限に追われにくくなります。
見極める項目2 設置か移転か主要構造部分の変更か
第二の項目は、今回の作業が「設置」「移転」「主要構造部分の変更」のどれに当たるかを確認することです。新しい機械を初めて導入する場合は設置として意識しやすいですが、実務で見落としが多いのは移転と変更です。工場内の別ラインへ移す、同じ建屋内でレイアウトを変える、周辺設備との接続を変更する、主要部品を入れ替えて能力や構造が変わる場合には、届出の要否を確認する必要があります。
移転については、同じ事業場内だから必ず不要とは言い切れません。設置場所が変わると、周囲の通路幅、避難経路、作業床の強度、隣接設備との距離、火気や危険物との関係、換気条件、騒音や粉じんの影響範囲が変わることがあります。つまり、機械そのものが同じでも、作業場としての危険有害性は変化します。届出対象かどうかの判断では、移す距離だけでなく、移転によって安全衛生条件がどう変わるかを重視すべきです。
主要構造部分の変更も判断が難しい領域です。単なる消耗部品の交換、通常の保守点検、同等部品への交換であれば、届出対象の変更に当たらない場合もあります。しかし、駆動方式、加圧機構、囲い、排気経路、処理能力、危険部への接近防止構造、制御方式、安全装置の構成などが変わる場合は、主要構造部分の変更に該当する可能性を検討する必要があります。
特に注意したいのは、改善工事や能力増強工事という名前で進む案件です。現場では「改造」「更新」「増強」「省力化」「自動化」「安全対策追加」などの言い方をしますが、法令上の判断では、その工事によって機 械等の主要構造や作業場の安全衛生条件がどう変わるかが問題になります。名称が小さく見えても、実態として大きな変更であれば、30日前の届出確認が必要になることがあります。
この項目を見極めるには、変更前と変更後の状態を比較できる資料が不可欠です。現況図、変更後の配置図、機械仕様、改造範囲、撤去範囲、据付範囲、電気や配管の接続範囲、運転方法の変更点を整理し、「何が変わらないか」だけではなく「何が変わるか」を明確にします。変更点が曖昧なままでは、届出の要否だけでなく、添付資料の作成も遅れます。
見極める項目3 工事開始日と社内スケジュール
第三の項目は、工事開始日をどの日として扱うかです。提出期限が30日前である場合、最も危険なのは、稼働開始日や引渡し日から逆算してしまうことです。機械設置の88条申請では、対象となる工事の開始日が基準になります。搬入後の据付開始日だけでなく、基礎工事、アンカー施工、架台設置、囲いの改修、排気設備の施工、配管接続、電気工事などが対象機械等の設置または変更に不可分である場合は、それらの開 始日も確認しなければなりません。
実務では、工程表上の表現が部署によって異なります。設備担当は搬入日を開始日と考え、生産部門は試運転日を意識し、工務担当は基礎着工日を工事開始と見ていることがあります。この認識がずれたまま進むと、届出期限の逆算が遅れます。88条申請の要否確認では、まず工程表の中で関連工事の開始時期を洗い出し、どの日を基準にすべきかを所轄への相談も含めて確認する姿勢が必要です。
30日前までに届け出るためには、少なくともその前に届出対象の判断が終わっていなければなりません。さらに、図面や書面の準備、社内承認、施工会社との内容確認、設備仕様の確定、リスク低減措置の整理、必要に応じた事前相談の期間も必要です。したがって、実務上は工事開始日の30日前に初めて動くのではなく、60日前、できればそれ以前に一次判断を済ませる運用が望ましいです。
また、機械設置の計画は途中で変わりやすいものです。搬入経路が変わる、基礎位置がずれる、排気ダクトの経路が変わる、安全柵の範囲が変わる、材料の保管場所が変更になるといったことは珍しくありません。こうした変更が届出内容に影響する場合、再確認や補正が必要になる可能性があります。提出期限だけを満たしても、計画内容が不十分であれば、工事開始前の安全確認として機能しません。
この項目では、工程表に「88条確認」「対象判断」「事前相談」「届出資料作成」「社内確認」「提出予定日」といった管理点を組み込むことが有効です。単なる備忘ではなく、工程の正式なマイルストーンとして扱うことで、設備導入の担当者だけに負担が集中せず、関係部署が早めに動けるようになります。
見極める項目4 事業場と工事全体の責任分担
第四の項目は、誰が届出の要否を判断し、誰が資料を作り、誰が提出するのかという責任分担です。機械設置では、発注者、事業者、設備を納入する会社、据付を行う会社、建築や電気の施工会社、元請となる会社など、多くの関係者が関わります。関係者が多いほど、「誰かが確認しているはず」という思い込みが起きやすくなります。
労働安全衛生法上の届出は、現場で機械を使用し、労働者を就業させる事業者側の管理責任と深く関係します。もちろん、設備会社や施工会社から仕様書、図面、施工方法、危険有害情報を受け取ることは不可欠です。しかし、資料をもらうことと、自社として届出の要否を判断することは別です。社内の安全衛生管理体制の中で、最終的に誰が所轄の労働基準監督署との窓口になるのかを決めておく必要があります。
複数事業者が同じ敷地で工事を行う場合は、工事側の計画届や安全管理との関係も複雑になります。機械を設置するために建屋改修や基礎工事を伴うとき、工事全体として建設業側の届出が必要になる可能性もあります。このとき、機械等の設置届と建設工事の計画届を別々に扱いすぎると、同じ現場で異なる前提の資料が作られてしまいます。
責任分担を整理するうえでは、対象機械の使用者、所有者、設置場所の管理者、工事の発注者、現場の統括者を明確にします。さらに、図面の版管理、仕様変更の連絡方法、届出資料に反映すべき変更の 基準も決めておく必要があります。たとえば、施工会社が現場判断で配管経路を変えた場合、その変更が安全衛生条件に影響するなら、設備担当だけでなく届出担当にも共有されなければなりません。
この項目で重要なのは、届出を単なる書類作業にしないことです。88条申請は、工事前に安全衛生上の問題を洗い出し、危険を低減するための計画確認でもあります。責任分担が曖昧だと、提出期限を守れないだけでなく、実際の現場リスクの把握も遅れます。機械設置プロジェクトの立ち上げ段階で、届出要否の確認責任者と情報集約の流れを決めておくことが、期限管理の基本です。
見極める項目5 添付資料と現場条件の確定度
第五の項目は、添付資料を作れるだけの現場条件が固まっているかどうかです。88条申請では、単に届出書を提出すればよいわけではなく、機械等の種類や届出区分に応じた書面や図面を添付する必要があります。必要資料は一律ではないため、機械の種類、事業場の状況、工事内容、所轄の確認事項に応じて整理することが大切です。
機械設置で必要になりやすい資料には、事業場の周囲との関係を示す図面、建物内の配置図、主要機械の配置、作業方法の概要、労働災害防止のための方法や設備の概要、機械の仕様を示す資料、排気や換気に関する資料、電気や配管の関係を示す資料などがあります。実際に何が必要かは機械等の種類や届出内容によって異なるため、早めに所轄の労働基準監督署へ確認するのが安全です。
資料作成で遅れやすいのは、現場レイアウトの確定です。設置位置が数十センチ変わるだけでも、作業者の通路、安全柵の位置、点検スペース、隣接設備との距離、搬入搬出動線が変わることがあります。機械本体の仕様が確定していても、現場側の配置が曖昧であれば、届出資料として十分な計画を示しにくくなります。
また、危険有害性への対策も資料化が必要です。可動部への接近防止、非常停止、インターロック、点検時の停止手順、粉じんや蒸気の発散抑制、換気、火災爆発防止、感電防止、転落防止、重量物搬入時の安全対策など、設備の性質に応じた説明が求められることがあります。安全対策を現場任せにして後から考えるのではなく、設計段階で届出資料に反映できるように整理しておく必要があります。
この項目では、完成度の低い図面を急いで提出するのではなく、届出期限に間に合うように現場条件を早めに固めることが重要です。もちろん、設備導入では細部の調整が残ることもありますが、安全衛生上の判断に関わる主要条件は、届出前に説明できる状態にしておかなければなりません。資料がそろわない原因が仕様未確定なのか、図面作成の遅れなのか、社内確認の遅れなのかを早めに切り分けることで、提出直前の混乱を防げます。
対象外に見える場合でも確認しておきたい境界
機械設置の88条申請では、対象外に見える案件でも、境界を確認しておくことが大切です。たとえば、小型の装置、短期間だけ使う装置、既存設備の部品交換、同じ種類の設備への入れ替え、作業場所の一部変更などは、現場感覚では「大きな工事ではない」と見られがちです。しかし、法令上の対象外かどうかは、工事の見た目の大きさだけでは判断できません。
労働安全衛生規則では、一定期間未満で廃止するものや、組立てから解体までの期間が短い一部のものについて、対象から除かれる扱いが定められています。ただし、除外の考え方は機械等の種類や条件によって異なります。短期間だからすべて不要、仮設だからすべて不要と考えるのは危険です。期間、機械の種類、危険有害性、設置場所、作業者の関与を合わせて確認する必要があります。
また、試験導入や実証運用も注意が必要です。「本格稼働ではない」「評価目的で置くだけ」と説明される案件でも、労働者がその機械を使用し、危険有害な作業が発生するのであれば、安全衛生上の確認は必要です。試験運転の期間中に材料を投入する、作業者が調整を行う、排気や粉じんが発生する、重量物の搬入搬出があるといった場合は、届出要否だけでなく、作業計画や教育、立入管理も合わせて検討しなければなりません。
対象外かどうかを判断するときに避けたいのは、「前回も出していないから今回も不要」という考え方です。過去の案件が本当 に同じ条件だったのか、法令や運用の確認が適切だったのか、所轄の判断が同じでよいのかは、改めて確認する必要があります。特に、扱う材料や作業方法が変わっている場合、過去の判断をそのまま当てはめるとリスクが残ります。
境界案件では、早めの事前相談が有効です。相談の際には、機械の名称だけでなく、用途、設置場所、使用物質、発生する危険有害要因、工事開始日、変更内容、レイアウト、作業者の関与、安全対策を整理して持参すると、確認が進みやすくなります。対象外だった場合でも、その整理は現場の安全管理資料として活用できます。対象かどうか迷う案件ほど、早めに情報を集めておくことが、結果的に工程の安定につながります。
機械設置の88条申請でよくある遅れ
機械設置の88条申請で最も多い遅れは、届出要否の確認が設備発注後になってしまうことです。設備仕様やレイアウトがほぼ固まってから安全衛生担当に相談が来ると、対象機械に該当する可能性が判明しても、30日前までの提出に必要な時間が足りなくなります。場合によっては、工事開始日の見直し、資料の作り直し、施工範囲の再整理が必要になります。
次に多いのは、工事開始日の認識違いです。担当者が稼働開始日から逆算していたが、実際には基礎工事や搬入準備がもっと早く始まるというケースです。機械設置では、設備本体が現場に届く前から、アンカー位置の墨出し、床の補強、架台の設置、ダクトや配管の準備が始まることがあります。これらが対象工事に含まれる場合、届出期限の基準日を遅く見積もってしまうおそれがあります。
資料の版管理不足も大きな遅れの原因です。設備会社から受け取った図面、建屋側の図面、社内で作成したレイアウト図、施工会社が持つ施工図が一致していないと、届出資料の整合性を確認するだけで時間がかかります。提出直前に設置位置、排気経路、安全柵、点検スペースの不一致が見つかると、関係者全員で再確認する必要が生じます。
また、危険有害性の説明が不足しているために資料作成が止まることもあります。機械の能力や寸法は分かっていても、どの作業でどの危険が発生 するのか、どの安全装置でどう低減するのか、粉じんや蒸気をどのように処理するのか、点検時にどのような手順で停止するのかが整理されていないと、労働災害防止のための計画として説得力が弱くなります。
さらに、社内承認の遅れも軽視できません。届出資料は、設備担当だけで作るものではなく、安全衛生、製造、保全、工務、場合によっては環境管理や防災担当の確認も必要です。承認経路が決まっていないと、提出期限が近づいてから関係部署への確認が始まり、修正が連鎖します。88条申請の遅れは、書類作成能力の問題というより、プロジェクト初期の確認不足から起きることが多いのです。
提出期限を守るための実務フロー
提出期限を守るには、機械設置プロジェクトの初期段階で、88条申請の要否確認を正式な工程に入れることが重要です。まず、設備導入の企画段階で、対象となる機械等の可能性を一次確認します。この時点では、完全な図面がなくても構いません。機械の用途、危険有害性、設置予定場所、工事開始予定日、変更範囲を大まかに整理し、明らかに対象外と言い切れない場合は早めに詳細確認へ進めます。
次に、設備仕様が固まり始めた段階で、対象機械の該当性と届出種類を確認します。機械等の設置、移転、主要構造部分の変更に関する届出が必要か、建設工事側の計画届が別に必要か、関連する安全衛生規則や個別規則の確認が必要かを分けて整理します。この段階で、所轄の労働基準監督署に相談するための資料を準備しておくと、判断の遅れを防げます。
その後、工事開始日から逆算して、提出予定日を決めます。30日前までに提出が必要な場合、社内の目標提出日はそれより前に設定すべきです。提出直前に資料の不足や図面の不整合が見つかることを考えると、法定期限ぎりぎりではなく、余裕を持った日程にする必要があります。工程表には、届出資料の作成開始日、関係部署確認日、事前相談日、提出予定日を明記します。
資料作成では、現場条件と安全対策を同時に整理します。機械仕様書を集めるだけでなく、配置図、作業方法、保守方法、搬入経路、通路、避難、換気、排気、電気、配管、火気管理、危険物管理、点検スペースなどを確認します。現場で撮影した記録や位置情報、設置前後の状況が整理されていると、図面や書面の確認が進みやすくなります。
最後に、提出後も計画変更に注意します。届出後に設置位置、安全対策、使用物質、排気経路、工事範囲などが変わる場合は、その変更が届出内容に影響するかを確認します。提出したら終わりではなく、届出内容と実際の施工が一致しているかを管理することが大切です。工事中の変更を現場だけで処理せず、届出担当へ必ず共有する仕組みを作っておくと、後からの手戻りを防ぎやすくなります。
まとめ 30日前判断を早めて現場の手戻りを防ぐ
88条申請は、機械設置でも必要になる場合があります。特に、危険または有害な作業を伴う機械等、危険な場所で使用する機械等、危険や健康障害を防止するための設備に関わる場合は、工事開始日の30日前までの届出を意識して、早めに対象確認を進める必要があります。ただし、対象となるのは厚生労働省令や関係規則で定められた機械等であり、すべての機械設置が一律 に届出対象になるわけではありません。
提出期限を見極める際は、機械等の種類と危険有害性、設置や移転や主要構造部分の変更に当たるか、工事開始日をどこに置くか、関係者の責任分担が明確か、添付資料を作れるだけ現場条件が固まっているかを確認します。この5項目を設備導入の初期段階で押さえておけば、提出期限ぎりぎりになってから対象判定や資料作成に追われるリスクを減らせます。
また、対象外に見える案件でも、短期間の使用、試験導入、同等更新、工場内移設、部分改造といった境界では判断が難しくなります。迷う場合は、機械の名称だけでなく、用途、作業内容、設置場所、危険有害要因、工事開始日、安全対策を整理し、所轄の労働基準監督署へ早めに確認することが安全です。88条申請は、単に書類を出すための手続きではなく、工事前に労働災害のリスクを見える化し、計画段階で手戻りを防ぐための管理でもあります。
機械設置の現場では、レイアウト、搬入経路、周囲の設備、作業動線、点検スペー スを正確に把握することが、届出資料の精度と現場安全の両方に直結します。図面上の計画と現場の実態がずれていると、届出資料の修正だけでなく、施工そのものの見直しが必要になることもあります。現場確認の記録、位置情報、写真、図面、点検メモを日常的に整理しておくことで、設備導入時の判断と説明がしやすくなります。
最終的には、88条申請を「提出直前の書類作業」として扱わず、設備計画の初期段階から安全衛生確認の工程として組み込むことが大切です。30日前という期限は提出の締切であって、検討開始の目安ではありません。対象機械等の可能性が少しでもある段階で情報を集め、工事開始日から余裕を持って逆算し、所轄への確認を前倒しすることが、届出遅れと施工手戻りを防ぐ第一歩です。
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