88条申請について調べると、「何日前までに出すのか」という期限に意識が向きやすいですが、実務ではその前に「そもそも対象工事なのか」を確認することが重要です。対象であれば30日前または14日前の準備が必要になり、対象外であれば88条申請としての期限カウントは不要になります。ただし、建物本体は対象外でも足場や型枠支保工などの仮設設備が対象になる場合があり、反対に一見大きな工事でも、法令上の規模や作業内容に当てはまらなければ対象外と整理できる場合もあります。
この記事では、検索語として一般に使われる「88条申請」という表現を用いますが、法令上は労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出を指します。申請という言い方だけで判断すると、建設工事計画届、機械等設置届、仮設設備に関する届出などが混同されやすくなります。この記事では、「88条申請 何日前」で検索している実務担当者に向けて、期限確認の前に見るべき3条件を、現場で使える判断手順として解説します。
目次
• 88条申請の対象外判断は期限確認より先に行う
• 条件1 工事の種類と規模が法定の対象範囲に入っていない
• 条件2 足場や型枠支保工などの仮設設備が届出対象になっていない
• 条件3 変更や追加工事を含めても対象作業や主要構造部分の変更に当たらない
• 対象外と判断しやすい工事と注意が必要な工事
• 対象外でも安全管理まで不要になるわけではない
• 何日前に確認すれば期限遅れを防げるか
• まとめ 88条申請の対象外判断は根拠を残して早めに行う
88条申請の対象外判断は期限確認より先に行う
88条申請という呼び方は実務上よく使われますが、労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出は、一つの手続だけを指す言葉ではありません。一定の機械等を設置、移転、または主要構造部分を変更する場合の30日前の届出、建設業に属する特に大規模な仕事に関する30日前の届出、一定の建設業等の仕事に関する14日前の届出などがあり、どの枠に該当するかで提出先、準備する図面、工程上の確認事項が変わります。
そのため、最初に行うべきことは「30日前なのか、14日前なのか」を暗記で決めることではありません。まず、工事本体が対象なのか、仮設設備が対象なのか、追加や変更によって対象になる可能性があるのかを分けて確認します。この順番を間違えると、対象外だと思っていた工事で届出が必要になったり、逆に対象外の工事に過剰な書類作成をして工程を重くしたりします。
実務では、発注者、元請、専門工事業者、設計者、安全担当者の間で、88条申請という言葉の意味が微妙にずれることがあります。ある人は高さ31メートルを超える建築物等の建設等の仕事に関する計画届を指しており、別の人は足場、架設通路、型枠支保工などの機械等に関する届出を指していることがあります。会議で「この現場は88条が必要ですか」と聞くだけでは、何を対象にしているのかが曖昧になりがちです。
確認時には、建築物本体、工作物、橋梁、ずい道、掘削、圧気工法、石綿等作業、廃棄物焼却設備の解体等、土石採取、足場、架設通路、型枠支保工といった要素を分けて見る必要があり ます。工事名が「改修工事」や「補修工事」でも、実際には外部足場、深い掘削、設備解体、有害物に関係する作業が含まれることがあります。反対に、名称が大きく見える工事でも、法定の規模や作業内容に該当しなければ、88条申請としては対象外と整理できる場合があります。
対象外判断で特に危険なのは、「建物が低いから不要」「小規模改修だから不要」「足場はいつも使っているから不要」といった単純な決め方です。工事本体の規模だけを見れば対象外でも、仮設設備の種類、高さ、設置期間によって別の届出対象になることがあります。また、当初計画では対象外だったものが、追加工事、工法変更、仮設計画の変更によって対象に近づくこともあります。
この記事でいう対象外とは、「労働安全衛生法第88条に基づく計画の届出としては該当しない可能性が高い」という意味です。労働安全衛生法上の安全措置、作業主任者、特別教育、作業計画、危険予知活動、元方管理、注文者との調整、自治体や消防など別法令の届出まで不要になるという意味ではありません。対象外という言葉を安全管理不要と同じ意味で使わないことが、公開前の工事情報や社内説明でも重要です。
条件1 工事の種類と規模が法定の対象範囲に入っていない
88条申請の対象外になるかを判断する第一の条件は、工事の種類と規模が法令で定める対象範囲に入っていないことです。建設工事だからすべて対象になるわけではなく、重大な労働災害を生ずるおそれがある一定の仕事や、危険防止に関わる一定の機械等が対象として定められています。
建設工事の14日前届出で確認される代表的なものには、高さ31メートルを超える建築物または工作物の建設、改造、解体、破壊、一定規模以上の橋梁の建設等、ずい道等の建設等、掘削の高さまたは深さが10メートル以上である地山の掘削、圧気工法による作業、一定の石綿等作業、一定規模以上の廃棄物焼却設備の解体等、土石採取に関する掘削などがあります。ここで重要なのは、金額や工期の大きさだけではなく、法令上列挙された仕事に該当するかどうかを確認することです。
たとえば、一般的な低層建築物の 内装改修、外装補修、設備更新、舗装修繕、浅い外構補修などは、工事本体だけを見ると88条申請の対象外と整理できる場合があります。しかし、対象外と判断するには、単に「小さい工事です」と説明するだけでは不十分です。建築物や工作物の高さ、橋梁の最大支間、掘削の高さまたは深さ、坑内やずい道に労働者が立ち入るか、圧気工法を使うか、石綿等の除去等があるか、廃棄物焼却設備の解体等を含むかといった観点で、法定の対象に触れていないことを確認する必要があります。
高さ31メートルを超えるかどうかは、対象外判断でよく問題になります。ここで注意したいのは、階数だけで判断しないことです。階数が少なくても階高、塔屋、屋上工作物、敷地の高低差、工作物の形状によって高さの確認が必要になる場合があります。反対に、階数が多そうに見えても設計上の高さが基準に達しない場合は、建築物本体の仕事としては対象外と整理できる可能性があります。対象外とする場合は、図面上の高さ、工事対象範囲、工事種別を記録しておくと、後から説明しやすくなります。
掘削についても、単に深さだけを見ればよいわけではありません。地山の掘削では、掘削の高さまたは深さが10メートル以上かどうかに 加えて、掘削機械を使う作業で掘削面の下方に労働者が立ち入らないものかどうかなど、作業方法も確認します。つまり、掘削規模が大きく見えても作業方法によって対象外となる余地がある一方で、労働者が掘削面の下方に立ち入る計画であれば慎重な確認が必要です。
石綿等の作業や廃棄物焼却設備の解体等は、建物の高さや工事金額だけでは見落としやすい分野です。解体、改修、設備撤去の中に一定の吹付け石綿等や保温材等の除去、封じ込め、囲い込みが含まれると、建築物本体の高さが31メートル以下であっても、別の観点から届出対象になる場合があります。特に既存建物の改修では、事前調査の結果によって作業範囲が変わることがあります。初期の見積段階で対象外と考えていても、調査後に対象作業が判明した場合は、期限計算をやり直す必要があります。
一方で、特に大規模な建設業の仕事に関する30日前届出は、さらに大きな規模の仕事を想定しています。代表的には、高さ300メートル以上の塔、堤高150メートル以上のダム、最大支間500メートル以上の橋梁、長さ3000メートル以上のずい道等、一定のたて坑を伴う長大なずい道等、ゲージ圧力0.3メガパスカル以上の圧気工法による作業を行う仕事などが確認対象になります。ただし、これらに該当しない場合でも、14日前の届出対象に該当する可能性は残ります。「大臣宛ての30日前対象ではない」ことと「88条申請全体の対象外である」ことは、必ず分けて考えます。
条件1で対象外と整理するためには、工事の正式名称だけでなく、実際に行う作業を確認します。たとえば「改修工事」という名称でも、高所作業、外部足場、石綿等作業、設備解体、地山掘削を含むことがあります。「解体工事」という名称でも、高さ、構造、対象設備、吹付け材の有無、作業方法によって判断は変わります。対象外判断は、見積名や契約名ではなく、施工計画の中身で行うことが基本です。
条件2 足場や型枠支保工などの仮設設備が届出対象になっていない
第二の条件は、工事本体だけでなく、足場や型枠支保工などの仮設設備が届出対象になっていないことです。実務で多い誤解は、「建物本体が88条申請の対象外だから、現場全体も対象外」と考えてしまうことです。労働安全衛生法第88条は、工事本体の計画届だけでなく、一定の機械等を設置、移転、または主要構造部分を変更する場合の届出にも関係します。
代表的に注意されるのが足場です。足場は工事本体とは別に、種類、高さ、設置期間を確認します。つり足場、張出し足場、またはそれ以外の足場で高さ10メートル以上の構造のものは、計画届の確認対象になり得ます。ただし、足場や架設通路については、組立てから解体までの期間が60日未満のものが対象から除かれる扱いがあります。したがって、足場については「足場を使うかどうか」だけではなく、「どの種類の足場を、どの高さで、どの期間設置するか」を確認する必要があります。
ここで実務上のポイントは、建物の高さと足場の高さは同じではないということです。建物本体が31メートルを超えない場合でも、足場の組み方、設置位置、地盤面の高低差、屋上設備や外壁上部の施工範囲によって、足場の高さが別途問題になることがあります。反対に、足場を使用していても、種類、高さ、設置期間が対象条件に達しなければ、機械等に関する計画届としては対象外と整理できる場合があります。

