目次
• 3D CADでサポート材を減らす意味
• サポート材が必要になる形状を理解する
• 配置ルール1 造形方向は面積ではなく形状変化で決める
• 配置ルール2 下向き面を自己支持できる傾斜へ置き換える
• 配置ルール3 穴と開口部は軸方向と断面形状を見直す
• 配置ルール4 ブリッジを短くして段階的に積み上げる
• 配置ルール5 曲面と角部の立ち上がりを滑らかにする
• 配置ルール6 一体造形にこだわらず分割と接合を設計する
• 配置ルール7 サポート接触面を機能面から遠ざける
• 7つの配置ルールを3D CADで検証する手順
• サポート材削減で起こりやすい失敗
• まとめ
3D CADでサポート材を減らす意味
積層造形では、3D CADで作成した形状を薄い層に分け、下の層の上へ材料を順番に積み重ねます。そのため、空中へ急に張り出す面、下側へ向いた水平面、途中から始まる突起などは、そのままでは安定して造形できない場合があります。こうした部分を一時的に支えるのがサポート材です。
サポート材は造形を成立させるために有効ですが、増やしすぎると材料使用量が増え、造形時間が長くなり、除去作業や表面仕上げも必要になります。接触部に跡が残ったり、狭い隙間から取り出せなくなったりすることもあります。積層造形後に切削、研磨、洗浄などの工程を行う場合も、サポートの位置によって作業性が大きく変わります。
一方で、サポート材を減らすことだけを優先すると、造形物が倒れやすくなったり、反りや変形が生じたり、必要な面精度が得られなかったりします。特に造形方式によって サポートの役割は異なります。材料を線状に押し出して積み重ねる方式では張り出し部を下から支える意味が大きく、液状材料を硬化させる方式では造形物を保持し、造形時の力に耐える役割もあります。金属材料を扱う方式では、形状保持だけでなく、熱を逃がし、造形台へ固定する目的が加わることがあります。
したがって、3D CADで目指すべきなのは、単純なサポート材ゼロではありません。必要な支持は残しながら、不要な支持を発生させない形状と配置をつくることが重要です。サポート材を後から自動生成するだけでなく、設計段階から造形方向、傾斜、穴、曲面、分割位置、仕上げ面を一体で考えると、造形後まで含めた工程を整えやすくなります。
サポート材が必要になる形状を理解する
サポート材を減らすには、まずどのような形状が不安定になりやすいかを理解する必要があります。代表的なのは、下向きの水平面、大きな張り出し、長い橋渡し形状、途中から始まる孤立部分、急に断面が広がる形状です。3D CAD上ではつながって見えていても、積層方向に一層ずつ確認すると、直下に材 料がない領域が見つかります。
判断の基本は、現在の層が直前の層にどの程度支えられているかです。上の層が下の層より少しずつ外側へ広がる形状であれば、材料や造形条件によってはサポートなしで積み上げられます。しかし、一層の間に大きく外側へ張り出すと、材料が垂れたり、硬化位置が不安定になったりします。許容できる張り出し角度は一律ではなく、造形方式、材料、積層厚さ、冷却条件、造形速度、形状寸法などで変わります。そのため、一般的な角度を絶対条件として固定するのではなく、自社設備で確認した基準を3D CADの設計ルールへ反映することが重要です。
また、同じ形状でも配置方向を変えるだけでサポート量は変化します。板状部品を寝かせれば高さは低くなりますが、下面全体に支持が必要になる場合があります。立てれば下面は小さくなるものの、造形時間が延び、転倒や振動への配慮が必要です。斜めにするとサポート接触面を減らせることがありますが、層数が増え、寸法精度や表面状態が方向ごとに変わります。
サポート材の要否は、形状単体ではなく、造形方向との組み合わせで判断します。3D CADでは完成形だけを見るのではなく、造形台に対する上下を仮定し、断面が下から上へどう変化するかを確認する必要があります。この考え方が、これから紹介する7つの配置ルールの土台になります。
配置ルール1 造形方向は面積ではなく形状変化で決める
最初のルールは、造形台に置く面を単純に最も広い面へ決めないことです。広い平面を下にすれば安定しやすく見えますが、その向きで大きな庇や段差が下向きになれば、サポート材はかえって増えます。造形方向は接地面積だけでなく、積層方向に対する断面変化、重要面の向き、造形物の高さ、重心、後処理のしやすさを合わせて決めます。
3D CAD上では、候補となる方向を少なくとも複数用意し、それぞれについて下向き面の総量を比較します。比較するときは、単にサポート体積を見るだけでは不十分です。サポートがどこに接触するか、細い突起が途中から始まらないか、造形中の断面積が急に変わらないか、造形台との接触が細すぎないかも確認します。
例えば、箱形部品の開口を上向きに配置すれば、内部にサポートを入れずに造形しやすくなります。反対に、開口を下向きにすると天井面を支えるためのサポートが必要になり、内部から除去しにくくなる可能性があります。側面に開口を向ければ内部サポートを減らせる場合がありますが、開口上端が水平な橋渡し形状となるため、上端形状の工夫が必要です。
機能面の優先順位も重要です。寸法精度が必要な取付面、気密や摺動に関わる面、外観として見える面には、なるべくサポートを接触させない配置を選びます。造形後に切削する面であれば、サポート跡を許容しやすいことがあります。逆に、工具が入らない内面や細い溝へサポートを発生させると、除去できずに不良となるおそれがあります。
高さを抑える配置は造形時間の短縮につながりやすい一方、各層の面積が大きくなることがあります。液状材料を用いる方式では、層ごとの面積や造形時に受ける力も安定性に影響します。細長い部品を垂直に立てる配置はサポート 面積を減らせても、揺れや倒れへの対策が必要です。したがって、配置方向は一つの指標で決めず、サポート量、品質、安定性、時間、後処理の総合評価で決定します。
実務では、3D CADモデルに基準座標を設定し、造形候補ごとに姿勢を保存しておくと比較しやすくなります。各候補に対して、重要面、許容できるサポート面、除去経路、加工基準面を注記しておけば、造形担当者との認識差も減らせます。最初の配置判断を丁寧に行うことが、後工程での無理なサポート削減を防ぐ最も基本的な対策です。
配置ルール2 下向き面を自己支持できる傾斜へ置き換える
二つ目のルールは、下向きの水平面を、下の層に少しずつ支えられる傾斜面へ置き換えることです。直角に張り出す棚形状や庇形状は、その開始位置で急に空中へ伸びるため、サポートが必要になりやすくなります。張り出しの下面に面取りを加え、断面が段階的に広がる形状へ変更すると、サポートなしで成立する可能性が高まります。
ここで重要なのは、外観上の角を丸めればよいとは限らない点です。下面の丸みは、立ち上がり直後に急な張り出しを生むことがあります。上面側の丸みは問題がなくても、下面側の円弧は下向き面の一部が水平に近づき、サポートを増やす場合があります。サポート削減を目的とするなら、下面には一定勾配の面取りや、積層方向に対して連続的に広がる形状を優先して検討します。
面取り角度は、造形設備の実績に合わせて決めます。材料や積層条件が変われば、安定して造形できる角度も変わります。試験片で張り出し角度と表面状態を確認し、許容範囲を設計標準として登録すると、担当者ごとの判断差を減らせます。3D CADのテンプレートや設計チェック項目に、下面の最小傾斜、張り出し長さ、肉厚の条件を含めると運用しやすくなります。
リブや補強部も、単なる直角板として追加するとサポートを増やすことがあります。垂直壁から水平板へつなぐ補強は、三角形や台形の断面にし、下から上へ連続して広がる形状にすると、構造補強と自己支持を両立しやすくなります。リブの終端も急に切らず、徐々に高さを下げることで、断面変化を緩やかにできます。
ただし、傾斜面を追加すると部品外形が大きくなり、周辺部品と干渉する可能性があります。また、肉厚が増えると冷却や硬化の条件が変わり、反りや収縮へ影響することがあります。面取りを大きくする前に、必要な空間、荷重、組立性、加工余地を確認します。サポート材を減らす形状変更は、機能を保ったまま行うことが前提です。
設計変更が難しい場合は、外形を変える代わりに、下面へ小さな自己支持形状を追加する方法もあります。例えば、後で除去できる薄い膜や、切り離しやすい補助リブを3D CAD側で設計する考え方です。自動生成サポートより形状や接触位置を制御しやすく、除去工具が入る方向へ配置できます。ただし、補助形状も製品形状の一部として出力されるため、除去後の寸法や外観を事前に決めておく必要があります。
配置ルール3 穴と開口部は軸方向と断面形状を見直す
三つ目のルールは、穴や開口部を円形のまま配置するのではなく、積層方向との関係を見直すことです。穴の軸が積層方向と平行であれば、各層は閉じた輪郭として積み上がり、サポートなしで造形しやすくなります。これに対し、穴の軸が水平になると、上半分が徐々に張り出し、最上部付近では橋渡し状態になります。穴径や造形条件によっては、上側が垂れたり、円形がつぶれたりします。
配置を変更できる部品では、重要な穴の軸をできるだけ積層方向へ合わせます。ただし、すべての穴を同じ方向へそろえられるとは限りません。複数方向に穴がある部品では、最も精度が必要な穴、後加工できない穴、内部サポートを除去しにくい穴を優先します。後から穴あけや仕上げ加工ができる箇所は、下穴だけを造形し、最終寸法を加工で整える方法も検討できます。
水平穴を避けられない場合は、断面形状を自己支持しやすい形へ変更します。円の上部を山形にした涙滴形状、ひし形に近い形状、上側へ傾斜を設けた多角形などは、上半分の急な張り出しを減らせます。機能上、真円が必要な場合でも、造形後に仕上げ加工する前提で下穴形状を変更すれば、内部サポートを減らせる可能性があります。
長い貫通穴では、サポートの除去経路が特に重要です。入口から見えない位置にサポートが残ると、異物、流路抵抗、組立不良の原因になります。3D CADでは穴径だけでなく、長さ、曲がり、交差、工具の到達性を確認します。内部流路は、急な水平天井を避け、断面上部を傾斜させたり、流路全体を緩やかに上昇させたりすると、サポートなしで造形しやすくなります。
ねじ穴や精密な嵌合穴は、造形時の表面粗さや寸法変化を考慮し、必要に応じて加工代を設けます。サポートを減らすために穴の向きを変えても、組立時に必要な同軸度や位置精度が得られなければ意味がありません。造形方向と加工基準を同時に計画し、どの面を基準に穴を仕上げるかまで3D CAD上で示すことが大切です。
開口部についても、上端が長い水平線になる形状は避けます。四角い窓の上辺を山形やアーチ状に変更すると、一層ごとの張り出しを小さくできます。外観上四角形が必要な場合は、薄い補助膜で一度閉じ、造形後に切り抜く方法もあります。補助膜は厚すぎると除去しにくく、薄すぎると造形中に破損するため、設備と材料に合わせた確認が必要です。
配置ルール4 ブリッジを短くして段階的に積み上げる
四つ目のルールは、空間を一度に横断するブリッジ形状を短くすることです。両側の壁の間を水平面でつなぐ形状は、下に材料がない状態で線や面を渡すため、距離が長いほど垂れや寸法変化が生じやすくなります。サポート材を使わずに造形できる距離は、材料、温度、速度、冷却、線幅、積層厚さなどに左右されます。一般的な数値だけで判断せず、実機で確認した許容長さを使います。
3D CADでは、長いブリッジを一つの水平面として残すのではなく、中間に支点となる壁、柱、リブを設けて複数の短い区間へ分けます。支点を追加できない場合は、下面を段状または傾斜状にし、両側から少しずつ中央へ寄せる形状を検討します。最上部だけを短い橋渡しにすれば、全面にサポートを入れるより材料と後処理を抑えやすくなります。
箱形の内部空間では、天井を完全な平面にせず、切妻状、アーチ状、緩やかな山形にすると自己支持しやすくなります。ただし、内部容積、流体の滞留、清掃性などの機能条件がある場合は、形状変更による影響を確認します。内部空間が機械的な逃げであれば変更しやすい一方、流路や音響空間では性能へ影響する可能性があります。
ブリッジの向きも重要です。造形装置が線を積み重ねる方式では、どの方向に線を渡すかによって安定性が変わることがあります。細長い開口がある場合、短辺方向へ橋渡しできる配置にすると、同じ開口面積でも無支持距離を短くできます。3D CAD上で部品全体の向きを変えるか、開口の長手方向を変えることで対応できます。
また、ブリッジの端部には十分な支持長さが必要です。橋渡し部分だけを短くしても、両端の接続面が細すぎると、材料が定着せず剥がれることがあります。端部の肉厚を確保し、急激な断面変化を避けます。必要に応じて、端部に小さな受け形状を追加し、造形後に除去する方法もあります。
ブリッジ対策では、サポート材を完全に排除するかどうかを二者択一で考えないことが大切です。全面を支えるのではなく、中央の一部だけに限定した支持を置く、端部だけを補助する、後から抜きやすい方向に線状サポートを配置するなど、局所化によって負担を減らせます。3D CAD側でブリッジ長さと支持位置を意識しておけば、自動生成に任せるより意図した形状へ近づけやすくなります。
配置ルール5 曲面と角部の立ち上がりを滑らかにする
五つ目のルールは、曲面や角部が積層方向に対して急に広がらないようにすることです。滑らかな曲面は一見造形しやすそうですが、曲率と配置方向によっては、下側で急な張り出しが発生します。球や円筒を横向きに置くと、最下部付近の接地が小さく、少し上の層で断面が急拡大するため、支持が必要になりやすくなります。
円筒部品は、軸を積層方向へ合わせると円形断面を順に積み上げられます。ただし、高さが増えるため造形時間や安定性への配慮が必要です。軸を水平 にする場合は、下面を平らにしたり、涙滴形状へ変えたり、分割して造形したりする方法があります。完成品として円形が必要なら、加工代を設けて後加工する選択肢もあります。
角部では、外側の丸みと内側の丸みを区別します。上向きの角を丸める処理は問題になりにくい一方、下向きの角を大きな円弧でつなぐと、円弧の途中に水平に近い領域が生まれます。サポート削減を優先する部分では、下面側を直線的な面取りにする方が積層しやすい場合があります。3D CADの見た目だけで判断せず、積層方向に断面を切り、各層の輪郭がどれだけ外側へ移動するかを確認します。
曲面の品質を重視する場合は、サポート量だけでなく段差状の表面も考慮します。緩い傾斜面は自己支持しやすくても、積層段差が目立つことがあります。重要な意匠面を垂直に近づける、後で研磨できる方向へ向ける、仕上げ代を設けるなど、表面品質とサポート削減のバランスを取ります。
断面が急に太くなるボス形状やフランジ形状では、根元に傾斜を設 けて段階的に広げます。円盤状のフランジを水平に張り出させるより、下面を円すい状にすると自己支持しやすくなります。補強リブを放射状に加える場合も、リブ下面を傾斜させ、途中から水平に始まる部分をなくします。
曲面を滑らかにするという言葉は、単に丸みを増やすことではありません。積層方向から見た断面変化を滑らかにすることが目的です。必要な強度、接触条件、空間制約を保ちながら、下の層から上の層へ形状が連続するように設計します。この視点を持つと、外観上は似た形でも、サポートの要否が異なる理由を説明しやすくなります。
配置ルール6 一体造形にこだわらず分割と接合を設計する
六つ目のルールは、複雑な形状を無理に一体造形せず、サポートが少ない単純形状へ分割することです。内部空間、逆向きの穴、大きな張り出しが複数方向にある部品は、どの向きに配置してもサポートが増える場合があります。このような形状では、造形方向の工夫だけで解決しようとせず、部品を分割してそれぞれに適した向きで造形する方が、全体工程を簡素化できることがありま す。
分割位置は、外観や機能への影響が小さく、接合作業を行いやすい場所に設定します。荷重が集中する部分、気密が必要な部分、摺動面、精密な基準面を避け、平面や段差部など位置決めしやすい場所を選びます。接着、締結、圧入、かみ合わせなど、使用条件に合う接合方法を先に決め、その方法に必要な形状を3D CADへ組み込みます。
位置決めには、ピンと穴、段付き面、あり形状、キー形状などを利用できます。ただし、造形寸法には方向差や材料収縮があるため、3D CAD上で同寸法にすると組み付けられないことがあります。設備ごとの実績に基づいて隙間を設定し、必要なら試験片で確認します。位置決め形状を増やしすぎると、誤差が重なって組立不能になるため、基準となる拘束方向を整理します。
分割により、内面を外側へ向けて造形できることも大きな利点です。一体形状では工具が届かない内部サポートも、分割すれば除去しやすくなり、表面仕上げや検査も行いやすくなります。内部流路を左右に分割し、開いた状 態で造形してから接合する方法は、サポート残りの確認にも有効です。ただし、接合部からの漏れや段差が問題になる用途では、適切なシール構造と検査方法が必要です。
分割数を増やせばよいわけではありません。部品点数が増えると、管理、組立、検査、締結部品、接着剤、作業時間などが増えます。サポート除去の負担と、分割後の組立負担を比較し、総工程が小さくなる範囲で決めます。交換や保守を考え、摩耗部だけを分割するなど、製品寿命全体で利点が出る構成も検討できます。
3D CADでは、元の一体モデルを保存したうえで、造形用モデルを別管理すると変更に対応しやすくなります。機能設計の基準となる形状と、分割面、加工代、補助形状を含む製造用形状を区別します。接合後の完成寸法を確認できる組立モデルも用意し、干渉、隙間、組立順序、工具経路を検証します。分割はサポート削減のための逃げではなく、積層造形に適した製造設計として計画することが重要です。
配置ル ール7 サポート接触面を機能面から遠ざける
七つ目のルールは、必要なサポートをなくしきれない場合に、接触位置を意図的に制御することです。サポート材の量が同じでも、接触する面によって後処理の難易度と品質への影響は大きく変わります。外観面、嵌合面、シール面、摺動面、薄肉部、工具が届かない内面への接触は避け、目立たず加工しやすい面へ集めます。
3D CADで造形方向を決める際は、サポートが発生しそうな下向き面を色分けするなどして、機能面との重なりを確認します。重要面が下向きになる場合は、部品を傾ける、分割する、形状を面取りへ変更する、後加工面へサポートを移すといった対策を検討します。傾けることで接触面積を小さくできても、造形高さや安定性が悪化することがあるため、全体評価は必要です。
サポート接触部には、除去後に仕上げるための余裕を設ける方法があります。切削や研磨を予定する面には加工代を追加し、サポート跡が完成寸法へ直接影響しないようにします。反対に、薄い壁へサポートを強く接触させると、除去時に壁が欠けたり変形したりする可能性があります。接触部周 辺の肉厚、工具の入る角度、部品の固定方法を考慮します。
内部サポートでは、入れることより取り出せることが重要です。開口寸法、工具経路、サポートの分割方向、破片の排出経路を3D CAD上で確認します。入口より大きな塊として残る形状や、曲がった流路の奥で接続する形状は避けます。必要に応じて、除去専用の開口を設け、後で栓や別部品で閉じる方法もあります。
サポートを局所化するために、製品側へ小さな犠牲形状を追加することもあります。切り取りやすい耳、支柱、薄い膜などを、強度や寸法へ影響しない位置に設けます。自動生成される広いサポートより、接触位置と除去方向を管理しやすくなります。ただし、犠牲形状の切断跡が残るため、完成状態の許容範囲を図面や3D注記で明確にします。
サポート材削減の最終段階では、量を最小にするより、品質リスクが低い位置へ配置する方が合理的なことがあります。わずかな材料削減のために重要面を荒らすと、再造形や追加加工が必要になり、結果として工程が増えます。必要なサポートは残し、除去しやすく、仕上げやすく、検査しやすい場所へ誘導することが、実務的な最適化です。
7つの配置ルールを3D CADで検証する手順
7つのルールを実務で使うには、設計者の感覚だけに頼らず、一定の手順で検証することが重要です。最初に、部品の機能面と品質要求を整理します。寸法精度が必要な面、外観面、接触面、後加工面、サポート除去が難しい内面を3D CAD上で区別します。この情報がなければ、サポート量だけを減らして重要面を傷めるおそれがあります。
次に、造形方式、材料、積層条件、造形可能寸法、後処理方法を確認します。設計段階で設備が未定の場合でも、想定する方式を明記し、許容できる張り出し、ブリッジ長さ、最小肉厚、穴寸法などを仮の設計条件として設定します。設備が決まった後に条件を置き換え、再評価できるようにしておきます。
そのうえで、複数の造形方向を作成します。最も広い面を下にした案だけでなく、開口を上へ向ける案、重要面を垂直へ向ける案、部品を傾ける案、分割する案などを比較します。各案について、下向き面、孤立開始部、長いブリッジ、細い支持部、急な断面変化を確認します。
形状変更では、まず機能への影響が小さい部分から検討します。下面の面取り、穴上部の山形化、リブ終端の傾斜、ブリッジ中間の支点追加などは、比較的適用しやすい対策です。それでも解決できない場合に、部品分割、接合構造、加工代、犠牲形状を検討します。変更するたびに、質量、重心、強度、干渉、組立性、清掃性などを再確認します。
造形用のデータを作成した後は、積層方向に沿った断面確認を行います。一定間隔で断面を送り、前の層に支えられていない領域が急に現れないかを見ます。完成形の立体表示だけでは見落としやすい内部天井や交差流路も、断面表示なら確認しやすくなります。
次に、造形準備工程でサポート候補を生成し、3D CADの 意図と一致しているかを確認します。想定外のサポートが大量に発生した場合は、設定だけで無理に消すのではなく、原因となる形状へ戻ります。小さな水平面、微小な段差、意図しない隙間、面の裏返りなど、3D CADモデルの不具合が原因となることもあります。
試作では、サポート量だけでなく、造形成功率、変形、表面状態、除去時間、工具の使いやすさ、仕上げ後の寸法を記録します。良否だけで終わらせず、どの角度、長さ、肉厚、接触条件で問題が出たかを残します。結果を設計標準へ戻せば、次の部品で同じ検討を繰り返さずに済みます。
最終的には、3D CADモデル、造形方向、分割構成、サポート許容面、後加工面、検査基準を一つの製造情報として管理します。設計者と造形担当者が別の場合でも、配置の理由が伝わる状態にしておくことが大切です。サポート削減は造形準備だけの作業ではなく、設計、製造、後処理、検査をつなぐ活動として進めると効果が安定します。
サポート材 削減で起こりやすい失敗
よくある失敗の一つは、一般的な張り出し角度をすべての部品へそのまま適用することです。実際の造形可否は、材料、設備、積層厚さ、速度、温度、形状寸法で変わります。小さな試験片で成功した角度が、大型部品の長い張り出しでも同じ結果になるとは限りません。設計基準には、角度だけでなく張り出し長さや部品寸法も含めます。
二つ目は、サポート体積だけを評価し、造形物の安定性を見落とすことです。接地面を小さくしてサポートを減らしても、高く細い配置では造形中に揺れたり剥がれたりする可能性があります。造形方向を変更するときは、重心、接地、層ごとの断面、造形中に受ける力を確認します。
三つ目は、丸みを追加すれば造形しやすくなると考えることです。下面側の大きな丸みは、立ち上がり付近で急な張り出しをつくる場合があります。外観上の滑らかさと、積層方向に対する自己支持性は別の問題です。断面を下から上へ追い、各層の移動量を確認します。
四つ目は、内部サポートの除去を後回しにすることです。造形できても、閉じた空洞や曲がった流路からサポートを出せなければ、完成品として使用できません。内部形状では、除去経路、洗浄経路、検査方法まで設計段階で決めます。必要であれば分割や作業用開口を採用します。
五つ目は、一体造形を積層造形の利点として過度に優先することです。一体化は部品点数を減らせますが、サポート、表面品質、内部清掃、再造形リスクが増える場合があります。分割した方が総工程を短くできるなら、接合構造を含めて設計する方が合理的です。
六つ目は、造形後の加工や組立を考えずに配置を決めることです。サポート跡が基準面に残る、工具が届かない、固定できない、加工代が不足するといった問題は、造形自体が成功しても発生します。3D CADでは、完成形だけでなく製造途中の状態を確認します。
七つ目は、サポート材ゼロを目標にしすぎることです。必要 な支持まで削ると、反り、垂れ、剥離、寸法不良につながります。重要なのは、製品品質と総工程を保ちながら不要なサポートを減らすことです。少量の支持を適切な位置へ残す方が、再造形や修正を避けられる場合があります。
こうした失敗を防ぐには、設計変更前後の比較を記録することが有効です。造形方向、サポート量、造形時間、除去時間、表面状態、寸法結果を同じ条件で比較し、どのルールが有効だったかを確認します。経験を数値や画像、注記として残すことで、3D CAD担当者と製造担当者の共通基準を育てられます。
まとめ
3D CADで積層造形のサポート材を減らすには、造形準備工程で自動生成された支持を消すだけでは不十分です。造形方向を断面変化から選び、下向き面を傾斜へ変え、穴や開口の軸と断面を見直し、長いブリッジを短くします。さらに、曲面と角部の立ち上がりを整え、一体造形が不利な形状は分割し、残すサポートは機能面から遠ざけます。
この7つの配置ルールは、どの造形方式でも同じ数値を当てはめるためのものではありません。材料、設備、積層条件、部品寸法、必要品質に合わせ、試作結果を設計基準へ反映することが前提です。サポート材の量だけでなく、造形安定性、表面品質、除去性、加工性、組立性、検査性まで含めて比較すると、実務に適した配置を選びやすくなります。
特に大切なのは、完成形の見た目だけで判断せず、積層方向に断面を追うことです。各層が直前の層にどのように支えられるかを確認すれば、急な張り出し、孤立開始部、内部天井、長い橋渡しを設計段階で発見できます。問題の原因を形状へ戻して修正することで、造形準備担当者だけに負担を集中させず、再現性のある製造につなげられます。
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