一人測量でここまでできる！LRTK活用の現場事例10選

従来、測量の現場では2～3人がかりで作業するのが当たり前でした。しかし今、最新技術の登場により「一人測量」が現実のものとなり、現場の常識が大きく変わりつつあります。本記事では、一人測量が注目される理由と背景、そしてその鍵を握るLRTK（スマホ装着型RTK-GNSSデバイス）の技術的な特長を解説します。さらに、実際にLRTKを活用して一人で高精度測量を実現した現場の事例を10個、建設・測量・農業・防災・都市管理など多彩な分野から厳選して紹介します。一人測量によって現場業務がどこまで効率化できるのか、具体的な成果と効果をぜひ確認してください。

一人測量が注目される理由と背景

建設・土木業界では近年、深刻な人手不足と作業員の高齢化が課題となっています。ベテラン測量技術者の引退が相次ぎ、これまでのように「人に頼る測量」を続けることが難しくなりつつあります。一方で現場では精密な測量データが求められ、限られた人員でいかに効率良く測量を行うかが大きなテーマです。そこで注目されているのが、RTK-GNSS（リアルタイムキネマティックGPS）など衛星測位技術を活用し、少人数、極端には一人だけで測量作業を完結するという新しいアプローチです。

従来の測量では、巻尺・スタッフ・トランシット（三脚上の測量機器）などを使い、1人が機器操作、もう1人が離れた地点でスタッフ（標尺）を持つなど最低2人での作業が必要でした。広い現場を測る際は丸一日がかりとなることも珍しくなく、準備から撤収まで手間も時間もかかりました。また、人力測量にはヒューマンエラーのリスクも伴います。読み違いや記録ミスが発生すると、後工程で手戻りが発生して工期遅延やコスト増につながる恐れもありました。

このような背景から、国土交通省が推進するi-Constructionなどでも「少人数・短時間で効率的な測量」「生産性向上」が強調され、測量DX（デジタルトランスフォーメーション）が加速しています。中でも一人測量は、人手不足の解消と精度向上を同時に達成できる切り札として期待されています。最新のGNSS技術を駆使すれば、経験の浅い作業員でも短時間で広範囲を測量でき、しかも精度は従来と同等以上——そんな可能性が開けてきたのです。

LRTKの技術的特長（簡単・高精度・クラウド連携）

一人測量を支える代表的な技術がLRTKです。LRTK（エルアールティーケー）は、東京工業大学発のスタートアップ企業・レフィクシア株式会社が開発したスマートフォン用の超小型測量デバイスです。iPhoneやiPadに装着するだけで、端末がそのままセンチメートル級精度の測量機器に変身します。

LRTKの主な技術的な特長は次のとおりです。

• 手軽さ（小型・軽量でスマホと一体化）: LRTKデバイス本体は重さ約165g、厚さ1cm程度のポケットサイズ。専用カバーやマウントでスマホ背面に装着し、BluetoothまたはLightningで接続するだけで準備OKです。これ一台をポケットに入れて持ち歩き、必要なときに取り出してすぐ測量できます。従来は数kgの機材を担いで三脚を据える必要がありましたが、LRTKならスマホひとつで現場測量から杭打ち作業まで一人で完結できる手軽さです。

• センチメートル級の高精度測位: LRTKはRTK方式に対応しており、水平精度約±2～3cm・鉛直精度±3～4cmという測量機器レベルの精度で位置を特定できます。スマホ内蔵GPSでは誤差5～10mが普通ですが、LRTKでは専用アンテナとRTK補正により誤差を一気に数cmまで縮小。基地局となる電子基準点ネットワーク（Ntrip）や、日本の準天頂衛星みちびき（CLAS補強信号）にも対応しているため、全国どこでもリアルタイムに高精度測位が可能です。これにより地形測量や境界確認、出来形管理など高い精度を要求される測量にも十分応えられます。

• クラウド連携とデータ共有: LRTK専用のスマホアプリを使えば、測ったデータはその場で自動的にLRTKクラウドにアップロードされます。測点の座標値や写真、メモ情報がクラウド上の地図にプロットされ、オフィスにいる同僚も即座にWeb画面で状況を確認できます。測定結果はCSVやPDF、SIMA形式でダウンロード可能で、CAD図面や報告書作成にもすぐ活用できます。また、クラウド上で発行した共有用URLを関係者に送れば、ログイン不要で誰でも最新データを閲覧できるため、発注者や協力会社との情報共有もスムーズです。リアルタイムな現場の見える化によって、測量後のデータ整理や伝達にかかる時間を大幅に短縮できます。

• 多彩な機能（点群計測・写真測位・AR表示など）: LRTKシステムは単にポイント座標を測るだけでなく、現場のDXを促進する様々な機能を備えています。例えば、iPhoneのLiDARスキャナと連携した詳細点群スキャン機能では、歩きながら周囲の地形や構造物を3D点群データとして取得可能です。測定した点群には自動的に絶対座標（緯度・経度・高さ）が付与されるため、現場を3次元モデル化してそのまま土量計算や図面化に活用できます。また、スマホのカメラで撮影するだけで写真の撮影位置と方位を記録する機能も搭載。撮った写真はクラウド上で地図と連動し、どの場所のどの向きを写したか一目瞭然です。さらに、得られた測量データや設計モデルをスマホ画面のカメラ映像に重ねて表示するAR（拡張現実）機能も利用できます。これにより「設計図上の点」を現実空間で可視化し、杭打ち位置のガイドや完成形の重ね合わせ表示など、直感的な測量・施工支援が実現します。

• オフライン対応と安全性: LRTKはインターネット圏外でも威力を発揮します。みちびきのCLAS信号を直接受信できるため、携帯電波の届かない山間部や災害現場でも衛星からの補強情報で高精度測位が可能です。大規模災害で基地局や通信が遮断された状況下でも、一人で現地の位置情報を取得して記録することができます。また、LRTKはバッテリー内蔵で約6時間の連続稼働が可能。モバイルバッテリーから給電すればさらに延長できるため、長時間の測量や遠隔地での作業でも安心です。小型軽量ゆえ足場の悪い場所でも取り回しが容易で、危険箇所への立ち入りを最小限にして計測できる点も安全面で大きなメリットです。

• コストパフォーマンス: 従来の高精度RTK測量機は数百万円する大型機材も珍しくありませんでしたが、LRTKはスマホと組み合わせて使うシンプル設計のおかげで導入コストが大幅に抑えられています。価格が非常にリーズナブルなため、一人一台の配備も現実的です。これにより現場の複数スタッフが各自LRTKを携行して好きなタイミングで測量・記録を行えるようになり、現場全体の生産性向上につながります。

以上のように、LRTKは「誰でも・どこでも・すぐに」センチ精度測量ができる革新的なツールです。それでは、実際にこのLRTKを活用して一人測量を行った現場の事例を具体的に見ていきましょう。建設・測量のみならず農業や防災、インフラ管理まで、様々な現場でどんな効果が生まれているのかをご紹介します。

LRTK活用の現場事例10選

事例1：災害現場（能登半島地震）での迅速な被害測量

概要: 2023年に発生した能登半島沖の地震では、一人測量の強みが発揮されました。被災直後の現場は道路寸断や基地局の停電で通信が途絶する中、災害対応チームの担当者がLRTKを装着したスマホ1台で被害状況の測量を実施。大きな測量機材を持ち込めない瓦礫だらけの現場でも、LRTKならヘルメットに付けたスマホで歩くだけで高精度の位置データを収集できます。みちびき衛星からの補強信号を受け取ることでインターネット圏外でもセンチ単位の測位が可能なため、通信遮断下でも正確な座標で被災箇所を記録できました。

効果: 一人で身軽に動きながら測量できるため、余震が続く危険区域でも最小限の人数で調査を完了。取得データは現場復旧本部で即座に地図化され、被害範囲が迅速に共有されました。その結果、復旧計画の立案までのリードタイムが大幅に短縮され、早期の復旧工事着手につながりました。また、従来は測量会社に委託していた被災状況の測定を自治体職員が自ら実施できたため、外部委託費用の削減と技術の内製化にも寄与しました。一人測量による素早い状況把握と情報共有が、人命救助・インフラ復旧のスピードアップに大きく貢献したケースです。

事例2：土砂災害現場での一人ボリューム計測

概要: 集中豪雨による土砂崩れ現場でも、一人測量が威力を発揮しています。ある豪雨災害では、崩落した土砂で埋まった山腹を担当者が単身で調査しました。安全な位置に留まりつつLRTKの連続測位機能を使って土砂堆積域の周囲を歩行し、1秒間に最大10点のペースで連続的に座標を記録。短時間で崩壊土砂の範囲を正確に測定し、そのデータから崩落土量（体積）を即座に算出しました。

効果: 従来なら危険を冒して複数人で測量し、データを持ち帰ってから土量計算するような場面でしたが、LRTKなら現地で測って即計算まで完了します。土砂の体積情報がすぐ得られたことで、必要な重機やダンプ台数の手配を的確に判断でき、復旧工事の段取りがスムーズになりました。一人で計測できるため人員手配の手間もかからず、余分な立ち入りも不要なので安全面でも安心です。結果として、災害対応の初動をスピードアップしつつ作業員の安全確保にもつながった好例です。

事例3：土工現場での点群スキャンによる施工量管理

概要: 土木工事（造成工事や盛土・掘削作業）では、出来形や土量を正確に把握するための測量に時間がかかりがちです。ある中規模の土工現場では、LRTKを用いたモバイルスキャンによって大幅な省力化に成功しました。一人の担当者がiPhoneに装着したLRTKを手に現場を歩き回り、LiDARによる地表面の点群データを収集。例えば50m四方程度の造成地ならわずか5分程度のスキャン作業で、地形の形状を示す数十万点規模の点群データが取得できました。

効果: この方法により、従来は人力で測点を一箇所ずつ観測していた工程が劇的に短縮されました。数日かけていた丁張りまわりの計測や土量チェックが、その場で完了します。取得した点群には初めから絶対座標が付いているため、オフィスに戻ってから位置合わせする必要もありません。点群データ同士を比較して盛土・掘削の体積を即座に算出できるため、土工量管理や出来形検測がリアルタイムで行えます。「人手が2倍に増えたようだ」と現場担当者が驚くほど、一人の作業で得られる情報量と速度が向上しました。これにより施工管理の効率化と工期短縮を達成した事例です。

事例4：急斜面や岩盤での一人墨出し（AR杭打ち）

概要: 構造物の基準線出しや杭打ち位置のマーキング（墨出し）は、通常2人以上で行う煩雑な作業です。特に岩盤上や急斜面では木杭を打てず位置出しが困難でした。あるトンネル道路工事の現場では、LRTKとAR技術を活用して一人で杭位置を示すことに挑戦しました。設計図の座標データをLRTKクラウドに登録し、現地でスマホのカメラ越しに見ると、画面上に仮想の杭マーカーがAR表示されます。作業者はそれを目安に物理的な杭を打てない硬い地盤上でも正確にポイントを特定できました。

効果: このAR杭打ちにより、従来は測量チームが往復して行っていた位置出し作業を一人で連続的に実施できました。スマホ画面に表示される次の設置位置に従って移動するだけで、順番に杭ポイントをマーキングできます。結果として、広範囲にわたる杭打ち位置出しを短時間で完了し、人員も削減。特に足場の悪い場所でも補助者を要さないため、安全性も向上しました。また、「ここに杭を打ちたい」という現場の指示に対してその場で座標を測定→即AR表示することも可能で、現場監督の意図を即座に共有できる柔軟性も生まれました。一人測量×ARによって測量工程の大幅な省力化と正確性の向上を両立した好例です。

事例5：BIM/CIMモデルのAR可視化による施工合意形成

概要: 3次元のBIM/CIMモデルを使った施工現場では、紙の図面だけでは関係者全員に完成イメージを伝えるのが難しい場合があります。そこで、ある道路工事の現場ではタブレット（iPad）にLRTKを装着し、設計3Dモデルを現場景色にAR表示して打合せに活用しました。完成予定の盛土の形状や構造物モデルを実際の地形に重ねて見せることで、発注者や施工スタッフ、重機オペレーターから近隣住民まで誰もが直感的に完成像を理解できるようになりました。

効果: タブレット画面を通じて現場に完成モデルが浮かび上がる光景は、関係者の理解を深め、コミュニケーションを円滑にしました。従来は図面を指さしながら説明していたものが、現地でモデルを「目で見るだけ」で共有できるため、認識のズレによる手戻りが減少。ある現場では、この手法で施工担当者間の意思疎通が格段にスムーズになり、設計意図の共有ミスが減ったとの報告もあります。また、出来形検査の立会い時にタブレットで設計データと施工物を重ね合わせて確認することで、その場で不備を発見して是正することも可能になりました。ARによる「現場の見える化」が合意形成と品質管理を支え、生産性と施工品質の向上につながった事例です。

事例6：道路・橋梁点検での高精度位置記録とクラウド共有

概要: 自治体が管理する道路や橋梁などのインフラ点検では、異常箇所の位置を正確に記録することが維持管理の鍵になります。従来は点検結果を紙の台帳や写真で管理し、「◯◯交差点から東へ50m付近の街路灯故障」などといったアバウトな記述に頼る場面もありました。これを改善すべく、ある市では保守点検員がLRTK搭載スマホで不具合箇所を撮影・測位し、データを共有する仕組みを導入しました。点検員が街路灯の球切れを見つけたら、スマホで写真を撮るだけで緯度経度と日時がタグ付けされ、クラウドに自動アップロードされます。

効果: オフィス側では送られてきた写真と地図上のプロットを見て、即座に正確な場所と状況を把握可能です。例えば従来は「〇〇の近くの街路灯が故障」と聞いて現場を探し回ることもありましたが、LRTKで取得した座標情報をもとにナビゲーションすれば一発で現地に到達できます。結果として、修繕班が無駄なく現場へ直行でき、対応スピードが飛躍的に向上しました。また、蓄積された高精度な位置データはインフラ設備の長期的なモニタリングにも役立ちます。同じ橋脚を毎年LRTKで測定して座標を比較すれば、経年的な沈下や変位を数cm単位で捉えることも可能です。属人的だった異常検知がデータに基づく客観評価へと変わり、維持管理の精度と効率が向上しました。一人一台のスマホ測量ツールを点検業務に取り入れることで、現場情報がリアルタイムかつ正確に共有され、インフラ保全のスマート化につながった事例です。

事例7：都市インフラ資産（標識等）の一括測量・台帳整備

概要: 都市には街路灯、信号機、消火栓、ベンチ、公園遊具など様々な施設が点在しますが、それらの正確な位置データをデジタル台帳化することが課題となっている自治体もあります。古くから設置されている設備では座標情報が未整備だったり紙図面しか存在しないケースも少なくありません。そこで、ある市では職員がLRTKを使って市内全域の道路標識を一斉に測量し、位置台帳を更新するプロジェクトに着手しました。担当者が一本一本の標識柱に近づき、スマホのボタン操作で設置位置の座標を測定。併せて管理番号や種類などの属性情報も入力し、クラウド上にデータを集積しました。

効果: この取り組みにより、数センチ単位の精度で全標識の緯度経度リストが完成し、都市資産の最新配置図をデジタルで把握できるようになりました。新設・撤去の履歴もクラウドで管理することで、将来的な設備更新計画の立案も効率化します。例えば道路工事の際、事前に埋設物や標識の正確な位置を把握できるため、掘削時の損傷事故リスクが減り安全です。また、大規模災害や交通事故で施設が破損した際にも、被害箇所を地図上で即座に特定でき、迅速な対応に役立ちます。AR機能を使えば、現地でカメラ越しに見た風景に地下埋設管やケーブルの位置を重ねて表示することもでき、掘削工事前の確認作業にも応用できます。LRTKによる手軽な現地測量を積み重ねて資産情報を整備していけば、都市インフラのデジタルツイン（現実の街の詳細なデジタルモデル）構築も夢ではありません。一人測量をコツコツ活用した地道な台帳整備が、スマートシティの基盤づくりにつながった事例です。

事例8：農業用水路の巡回点検とスマート管理

概要: 農村部でも一人測量の恩恵が現れています。ある地方自治体の農政担当部署では、広範囲に張り巡らされた農業用水路やため池の点検にLRTKを導入しました。農業土木施設は数十年にわたり使われているものも多く、正確な位置や形状データが十分でない場合があります。そこで職員がLRTK付きスマホを片手に、水路沿いや堤防を巡回。ヒビ割れや漏水箇所を発見するたびに写真を撮影し、その位置を測位してクラウドに記録しました。

効果: これにより、今までは職員の経験と勘に頼っていた施設管理がデータ主導に変わりました。クラウド上に蓄積された座標付き写真を事務所で確認しながら、補修の優先順位や工程計画を合理的に立案できます。例えば「前年にも同じ場所で漏水があった」ことがデータから一目で分かれば、重点的な補強策を講じることができます。また、大雨や地震で水路が被災した際も、被害箇所の正確な座標を即座に記録・共有できるため、補助金申請や支援要請の資料作成が迅速になりました。限られた人数でもLRTKを使って効率良く巡回・記録することで、広域に分散した農業インフラの維持管理水準を向上させた事例です。紙の地図とメモ帳で行っていた巡回点検がデジタル化され、担当者間で情報を共有しやすくなったことで、世代交代が進む中でも安定した施設管理が可能になっています。

事例9：境界測量・杭位置確認の効率化

概要: 民間の測量士や土地家屋調査士の仕事でも、一人測量ツールが活躍しています。例えば土地境界の確認作業では、過去に設置した境界杭や測量ポイントを再度探すのに手間取ることがよくありました。草木に隠れていたり、前回と担当者が違って位置の勘所が分からないと、現地で探し回ることになってしまいます。そこである調査士事務所では、事前に既知の境界座標をLRTKクラウドに登録し、現地で座標ナビ機能を使って杭の位置を探す手法を導入しました。スマホを持って現地に赴き、目的の境界点を選択すると、画面上に矢印と距離がリアルタイム表示されます。それに従って進むだけで、数cmの誤差範囲までピンポイントで杭の場所に誘導してくれるのです。

効果: この方法により、境界杭や測量標識を見失うことなく短時間で再訪できるようになりました。特に複数回にわたる定点観測や、長期間隔での現地調査でも、前回測定した正確な地点を容易に再現できます。結果として、境界確認のために割いていた時間が大幅に短縮され、調査効率が上がりました。また、LRTKアプリ上で過去に撮影した境界標の写真やメモも時系列で確認できるため、経年変化の確認や見落とし防止にも役立ちます。一人で境界測量が完結することで、少人数の測量事務所でも多くの案件を並行してこなせるようになり、顧客への対応スピードも向上しました。精度に妥協せず効率化できる一人測量ツールは、公共だけでなく民間の測量現場でも強力な味方となっています。

事例10：屋内・高所での非接触測位による安全な測量

概要: LRTKは屋外だけでなく、GPSが届きにくい構造物の下や高所の測定にも創意工夫で対応できます。例えば橋梁の桁下やトンネル内など、通常はGNSS信号が受信できない場所では、LRTKの屋内測位モードが有効です。一度GPSが受かる位置で現在地を基準取得し、その後GPS圏外に入っても慣性航法的に相対位置を計算して、引き続きcm精度の測位を可能にします。実際、橋の下部点検でLRTKを活用したケースでは、橋脚下に潜り込んでの測点取得を一人で安全に完了させました。

また、手が届かない高所のポイント測定には、LRTKの被写体測位機能（非接触測位）が役立ちます。例えば法面上部や橋梁の高い位置にあるボルトの座標を測りたい場合、無理にポールを伸ばしたり人が昇らなくても、離れた位置からスマホのカメラでターゲットを捉えて測位ボタンを押すだけで、その地点の緯度・経度・高さを取得できます。あるプラント設備の点検では、地上からバルブの取付位置を写真測位し、わざわざ高所作業車を出すことなく図面修正に必要な座標を得ることができました。

効果: これらの機能により、従来は測れなかった場所のデータ取得や、危険を伴う高所作業の省力化が可能になりました。橋梁下の測量では、仮設足場を組んだり複数人でのぞき込むような作業をせずに済み、安全面・コスト面で大きなメリットがありました。非接触測位機能によって、高い位置にある設備点検でもメジャーや脚立を使わずに正確な位置情報を得られるため、作業時間と手間の削減だけでなく作業員のリスク低減にもつながっています。一人測量のツールが計測困難な場所を手の届くものに変え、現場作業の幅を広げた好例と言えます。

まとめ：LRTKによる測量の手軽さと導入メリット

以上、LRTKを活用した現場事例を10項目にわたり紹介しました。「一人測量でここまでできるのか！」と感じられたのではないでしょうか。LRTKの登場によって、測量作業は経験豊富なベテランの専売特許ではなく、誰もが扱える日常的なツールへと変貌しつつあります。現場にスマホとLRTKさえ持っていけば、高精度な測量から点検記録、写真撮影、そしてデータ共有まであっという間に完了します。

一人測量のメリットは端的に言えば、生産性と安全性の飛躍的向上です。少人数・短時間で必要十分な測量データを取得できるため、人員手配の負担や現場滞在時間が減り、その分を他の作業に充てることができます。人件費削減や工期短縮といった直接的な効果は、企業や自治体のコスト管理にも寄与します。また、一人で完結できることで「密」を避けられるため、コロナ禍で注目された非接触・リモート対応にも適しています。

精度と品質の確保という点でも、一人測量は優れています。LRTKのようなツールはアプリが自動でガイド・記録してくれるため、ヒューマンエラーのリスクが低減します。熟練者の勘に頼らずとも若手が正確に測れるので、技能継承の不安も解消します。現場でリアルタイムに測ったデータをその場で確認・共有できるため、ミスの早期発見や手戻り防止にもつながります。要するに、「早く・安く・安全に・正確に」という現場の理想を一人測量がぐっと引き寄せているのです。

さらに、昨今は国や自治体によるデジタル化支援策も充実してきました。高精度GNSS機器の導入に補助金を活用できるケースや、災害対応力強化の一環で機器調達を後押しする制度も見られます。これまで高額ゆえに導入を躊躇していた中小企業や市町村でも、LRTKのようなコストパフォーマンスに優れたソリューションなら現実的に採用が可能です。

一人測量という新たなスタイルは、測量・建設業界のみならず社会全体のインフラ維持管理にも大きな変革をもたらそうとしています。LRTKを使えば、スマホが「現場の目と足」になり、現地の状況をそのままデジタルで記録して共有できるようになります。これはまさに現場DXの推進力であり、働き方改革の一環とも言えるでしょう。

最後に、もしあなたの職場やプロジェクトで「測量に人手や時間がかかりすぎて困る」「もっと効率的に現場の情報を集めたい」と感じているなら、ぜひLRTKによる一人測量を検討してみてください。手軽さと高精度を両立したこの技術を導入すれば、測量のハードルが一気に下がり、現場の可能性が広がります。熟練者でなくても扱える直感的な操作性なので、導入直後から即戦力となるでしょう。一人測量で手にしたゆとりは、きっと他の価値創出活動に振り向けられるはずです。LRTKが実現する新しい測量スタイルで、あなたの現場も次のステージへ踏み出してみませんか。