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国交省も推進!BIM/CIM対応の最新ソリューションLRTKとは

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万能の測量機LRTKの説明

BIM/CIM(ビム/シム)は、建設・インフラ業界で今や避けて通れないキーワードです。国土交通省(国交省)は建設現場の生産性向上とインフラ分野のデジタル変革(DX)の柱としてBIM/CIM導入を強力に推進しています。2023年度からは直轄工事へのBIM/CIM原則適用が始まり、特段の事情がない限り全ての設計・工事で3次元モデル活用が原則となりました。さらに2027年には公共事業でBIM/CIM完全義務化が予定されており、既に年間約2.5兆円規模の工事で導入が進んでいます。建設業界は今まさに大きな転換期を迎えており、BIM/CIMの本格導入は待ったなしの状況です。


こうした中、「LRTK(エルアールティーケー)」という最新ソリューションが注目を集めています。BIM/CIMと現場をつなぐ高精度測位技術として、国交省が推進するインフラDXにも合致した画期的なツールです。本記事では、BIM/CIMの基本からそのメリット・活用事例・課題、最新技術動向を解説し、さらにBIM/CIM対応の新ソリューションLRTKの原理と特徴、そしてBIM/CIM導入への貢献について詳しく紹介します。最後には、LRTKを用いた簡単な測量体験を通じて、読者の皆様が「試してみたい」「導入を検討したい」と感じられるような展望も示します。


BIM/CIMの定義と導入背景(国交省の政策とインフラDX)

BIM/CIMとは何か?その定義と目的

BIM/CIMとはBuilding/Construction Information Modeling, Managementの略称で、建築・土木を問わず建設事業で扱う情報をデジタル化して活用する手法を指します。具体的には、調査・測量・設計・施工・維持管理といった建設プロジェクトの各段階で3次元モデルや関連資料を用いて情報を一元管理・共有し、業務プロセス全体の効率化を図るものです。BIMはもともと建築分野で発展した「ビルディング・インフォメーション・モデリング」のことで、建物を3Dモデル化し属性情報(材質・寸法・コスト等)を統合したデータを活用します。一方、CIMはその概念を土木(Civil)分野に拡張し、社会インフラの計画・設計から施工・維持管理までライフサイクル全体に適用するものです。日本では建築と土木の区別なく「BIM/CIM」と一体的に推進されており、BIM/CIMモデルには以下の要素が含まれます。


3次元モデル: 構造物等の形状・寸法・位置関係を3次元空間で表現したデータ。外観や内部構造の視覚化、干渉チェック、シミュレーションに利用。

属性情報: 3Dモデル内の各部材に紐づく詳細情報(材質・強度・価格・施工日時など)。性能分析やコスト算出、施工・維持管理計画に活用。

参照情報: 図面や写真、点群測量データ、報告書など3Dモデルに関連付けられる外部資料。従来の2次元図面や報告書も含めて適切に使い分けることが重要。


BIM/CIMを導入することで、これらのデータを一元的に活用・共有し、発注者(業主)と受注者(施工者)の双方で生産性向上を図る狙いがあります。紙の図面だけでは把握しにくかった情報もデジタルモデルで「見える化」され、関係者間の共通理解が深まります。結果として手戻りの削減や品質向上、安全性向上につながるのです。まさにBIM/CIMは、建設分野のデジタルツイン(現実空間をサイバー空間に再現する技術)の実現基盤とも言え、実際に首里城の再建ではBIM/CIMで「首里城デジタルツイン」を構築し、工事関係者間や来訪者との情報共有に活用する試みも行われています。


国交省が推進するインフラDXとBIM/CIM導入の背景

日本の建設業界では長年にわたり生産年齢人口の減少や熟練技術者の高齢化、人手不足が課題となってきました。こうした課題を打開すべく、国交省は2016年(平成28年)からi-Construction(アイ・コンストラクション)と呼ばれる施策を展開し、ICT活用や工法改善による建設現場の生産性向上を推進してきました。さらに2020年(令和2年)以降は「インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)」が加速され、3次元データの利活用や建設生産プロセス全体の最適化といった観点から新技術導入が図られています。


こうした流れの中で、BIM/CIMはインフラDXの中核技術として位置づけられ、国交省直轄の土木工事・業務へ本格導入が決定しました。前述の通り、2023年4月以降、国交省発注の全ての直轄工事・業務でBIM/CIMの原則適用が開始されました。これは「特段の事情がない限りBIM/CIMを用いるのが原則」という方針で、設計業務(計画策定や詳細設計)、土木工事(河川・ダム・道路等)、そしてそれらに関連する測量・地質調査も対象とされています。従来は試行的な位置づけだったBIM/CIMがいよいよ“当たり前”の業務手法になりつつあるのです。


国交省はさらに2024年4月、「i-Construction 2.0」と称して次なるステップを打ち出しました。i-Construction 2.0では「少ない人数で、安全に、快適な環境で働ける生産性の高い建設現場」を目指し、遠隔施工や自動化、AIやロボットの活用も含めた取り組みが盛り込まれています。また2025年以降もインフラDX推進委員会の場で、ICT施工の拡大、新技術の導入、プロセス全体の最適化、データ連携標準化などが議論され、必要な基準や要領の整備が進められています。要するに国を挙げて建設業のデジタル革新が加速しており、BIM/CIM活用はその中心的テーマなのです。


このような背景から、「BIM/CIMを導入しなければ公共事業から淘汰される」と言っても過言ではありません。一方で、早期に取り組んだ企業は既に設計ミスを85%削減しコストを5~12%削減するなど大きな成果を上げており、3~5年で初期投資を回収できるとの調査結果もあります。国交省や業界団体の調査によってBIM/CIM導入の効果は定量的にも示され始めており、単なる流行ではなく投資対効果の高い経営戦略と言えるでしょう。


BIM/CIM導入のメリット(生産性向上、3次元データ活用、維持管理への効果)

BIM/CIMを導入すると、建設プロジェクトのあらゆるフェーズで多様なメリットが期待できます。ここでは設計・施工・維持管理の各段階に分けて、その効果を見てみましょう。


設計段階: 3Dモデルにより設計の精度と可視化が飛躍的に向上します。複雑な構造でも直感的に把握でき、干渉チェックを自動化することでヒューマンエラーを大幅に削減します。属性情報を活用すればコストや工期のシミュレーションも可能で、予算管理や工程管理の精度が高まります。さらに設計データをそのまま施工・維持管理段階へ引き継ぐことで、情報の一貫性が保たれ品質と安全性の向上に寄与します。例えば橋梁設計では、BIM/CIM導入により設計ミスが約85%減少し構造安全性の検証も効率化したとの報告があります。

施工段階: 現場でBIM/CIMモデルを活用することで施工管理の高度化・効率化が図れます。施工ステークホルダー全員が3Dモデルを共有することで、設計意図のズレや伝達ミスが減り品質向上につながります。施工の進捗や検査結果などをモデル上の属性情報として逐一記録すれば、出来高管理や品質管理をリアルタイムに把握できるようになります。また施工完了後は、そのモデル自体が電子納品成果物や出来形図書として機能し、竣工検査や引き渡しがスムーズになります。現に、あるトンネル工事ではBIM/CIMモデルと4D(工程)シミュレーション、VR/AR技術を活用することで施工計画を最適化し、プレキャスト部材据付工期を当初計画より40%短縮する成果を上げました。現場でモデルを用いた事前検討により、空間の制約下でも工程の無駄を省き、安全リスクも低減できた好例です。

維持管理段階: 竣工後もBIM/CIMモデルは価値を発揮します。完成時の3Dモデルに点検結果や補修履歴といった情報を属性データとして蓄積していくことで、構造物のデジタルツインが構築されます。これにより、点検時には過去の変状履歴を踏まえた劣化予測や補修計画の立案が容易になります。従来は台帳や図面をめくりながら行っていた維持管理業務も、モデル上で一元管理することで効率化が可能です。例えば橋梁の維持管理では、3Dモデル上に損傷箇所をマーキングし、その座標・写真・点検日などを記録しておけば、将来の定期点検で同じ場所を正確にチェックでき、修繕の優先度判断や予算化にも役立ちます。BIM/CIMによりインフラ資産のライフサイクルコストの低減や予防保全型の維持管理が期待できるのです。


以上のように、BIM/CIMは設計の品質向上・施工の生産性向上・維持管理の効率化という3点で大きなメリットをもたらします。国交省はこうした効果に注目し、BIM/CIM普及によって将来的に建設現場の働き方改革やコスト構造の改善、さらには安全性の向上まで見込んでいます。BIM/CIMの導入は決して容易ではありませんが、その効果は非常に大きいため、業界全体で取り組む価値があるのです。


• 維持管理段階: 竣工後もBIM/CIMモデルは価値を発揮します。完成時の3Dモデルに点検結果や補修履歴といった情報を属性データとして蓄積していくことで、構造物のデジタルツインが構築されます。これにより、点検時には過去の変状履歴を踏まえた劣化予測や補修計画の立案が容易になります。従来は台帳や図面をめくりながら行っていた維持管理業務も、モデル上で一元管理することで効率化が可能です。例えば橋梁の維持管理では、3Dモデル上に損傷箇所をマーキングし、その座標・写真・点検日などを記録しておけば、将来の定期点検で同じ場所を正確にチェックでき、修繕の優先度判断や予算化にも役立ちます。BIM/CIMによりインフラ資産のライフサイクルコストの低減や予防保全型の維持管理が期待できるのです。


以上のように、BIM/CIMは設計の品質向上・施工の生産性向上・維持管理の効率化という3点で大きなメリットをもたらします。国交省はこうした効果に注目し、BIM/CIM普及によって将来的に建設現場の働き方改革やコスト構造の改善、さらには安全性の向上まで見込んでいます。BIM/CIMの導入は決して容易ではありませんが、その効果は非常に大きいため、業界全体で取り組む価値があるのです。


現場での活用事例(橋梁工事、トンネル、ICT土工など)

BIM/CIMのメリットをより具体的にイメージするため、現場での活用事例をいくつか紹介します。橋梁工事やトンネル工事、さらにはICT土工(情報化施工による土工事)など、多様なプロジェクトでBIM/CIMが活用され始めています。


橋梁工事におけるBIM/CIM活用事例

橋梁分野では、設計段階から3次元モデルを活用することで劇的な効果が出ています。例えば首都圏のある高速道路橋梁プロジェクトでは、橋桁の形状検討に複数のBIM/CIMモデル案を用いて景観・構造の比較検討を行い、最適案の選定に成功しました。BIM/CIMにより地形や周辺環境との調和を可視化しながら設計できるため、関係者の合意形成もスムーズになります。また国内外の導入事例によれば、BIM/CIMに早くから取り組んだ橋梁設計事務所では設計ミスを85%削減しコストを5~12%削減する成果が確認されており、投資回収も3~5年で達成できたと報告されています。具体的な効果としては、以下のような点が挙げられます。


• 干渉チェックの高度化: 既設インフラや他工事との取り合い部分で干渉を事前に発見(例:橋脚基礎と地下埋設物の衝突をモデル上で検出し設計修正)。


• 品質・安全性の向上: 3D配筋モデルで鉄筋の干渉や欠損を検査し、施工不良や強度不足リスクを低減。構造解析モデルとの連携で安全率の適正化も可能。


• 合意形成と意思疎通: 発注者や地域住民への説明に3Dモデルや完成イメージを活用し、視覚的にわかりやすい資料提供で理解と納得を得やすくなる。


• 工期短縮: 橋梁の組立手順を4Dシミュレーションし、重機配置や資材搬入計画を最適化することで作業の無駄を削減。実際に工期を40%短縮した例もあり、生産性向上に直結。


このように橋梁工事では、BIM/CIMが計画・設計・施工計画の各フェーズを一貫して支え、プロジェクト全体の効率化・高度化を実現しています。


トンネル・地下工事でのBIM/CIM活用事例

都市部のトンネル工事や地下空間の構築にもBIM/CIMが活かされています。特に空間的制約が大きく複雑な地下工事では、3D・4D技術の威力が発揮されます。例として国道246号渋谷駅周辺の地下歩道工事では、地上・地下ともに極めて狭隘な現場条件下でBIM/CIMを駆使した施工計画が立案・実施されました。


このプロジェクトでは、以下の先進的な取り組みが行われています。


• 詳細な4D施工シミュレーション: プレキャストコンクリート製の大型部材を夜間に順次据え付ける必要がありましたが、施工手順や重機の動きを時間軸付き3Dモデル上で事前に綿密にシミュレーションしました。その結果、資材搬入の順序やクレーン配置計画が最適化され、据付作業日数が当初計画より40%短縮されました。


• VR(仮想現実)による施工検討: 作成した施工シミュレーションデータをVR空間で体験し、施工手順の不整合や危険箇所を疑似体験で洗い出しました。これにより、紙の計画では気付きにくいリスクを事前に把握し、安全対策に反映できました。


• AR(拡張現実)の現場活用: タブレット端末を使い、現地でカメラ越しにBIM/CIMモデルを投影するARシステムを導入しました。透視図で地下埋設物の位置を地面上に可視化しながら掘削作業を行うことで、誤って配管等を損傷するリスクを低減しています。また工事関係者や周辺事業者との打合せでも、ARで完成イメージを共有することで認識を揃え、調整業務の効率化に繋げました。


• 点群測量と出来形管理: 夜間作業後の出来形を毎日スキャナで点群計測し、得られた3D点群データをBIMモデルと重ね合わせて施工精度を検証しました。これにより、施工誤差を即座に把握し翌日の作業にフィードバックするPDCAを実現しました。


以上のように、トンネルや地下構造物の工事ではBIM/CIMとVR/AR、点群データの組み合わせが空間の有効活用と施工リスク低減に大きく寄与しています。狭い地下空間でもデジタル技術のおかげで「見えないものが見える化」され、安全かつ効率的な施工が可能になっています。


ICT土工の現場活用事例

ICT土工とは、情報化施工技術を活用した土工事のことです。主に造成や掘削、盛土・整地など土木工事の基礎となる土工プロセスにおいて、3次元測量データやマシンガイダンス(建機自動制御)技術を活用する取り組みです。BIM/CIMはICT土工とも深く関連しており、設計段階で作成した3次元地形モデルや施工モデルを施工フェーズでそのまま活用することで、劇的な効率化を生んでいます。


具体的な現場の例として、ダム建設や道路造成の現場では以下のような実践が行われています。


• 3次元測量と設計データの連携: ドローン空撮や地上レーザースキャナーで取得した現況地形の点群データから詳細な3D地形モデルを作成し、それを基に土工設計を行います。設計者はBIM/CIMモデル上で切土・盛土量を算出し、最適な施工計画を立案します。


• マシンガイダンス/マシンコントロール: 設計で作成した完成地形の3Dモデルデータをブルドーザーやショベルなどの建設機械に搭載します。GPSやTS(トータルステーション)と連動した建機は、オペレーターの操作をガイドしたり自動制御することで、常に設計面通りの高さ・勾配で切削・盛土作業を行えます。これにより、従来は人手で行っていた丁張り(高さ基準の杭)設置が不要となり、丁張りレス施工で省力化・工期短縮が可能になります。


• 出来形管理の効率化: 施工中や完了後に、再度ドローンや3Dスキャナーで地形を計測し、設計モデルとの誤差を検証します。これにより従来は測量班が時間をかけて行っていた出来形計測が迅速化し、品質確認が効率よく行えます。関東地方整備局の資料によれば、3次元設計データとICT測量機器を活用することで出来形計測作業の労力を大幅に軽減できたという報告があります。


• 安全性と省人化: 危険を伴う法面(のりめん)整形作業などでも、マシンコントロールにより人が近づかずに遠隔で作業できるため、安全性が向上します。同時に必要人員も削減され、人手不足対策にもつながっています。


このようにICT土工では、BIM/CIMで作成した3Dモデルがそのまま施工現場のデジタル指示書となり、測量→設計→施工→検査の各プロセスがシームレスにつながります。国交省も「ICT活用工事の全面的な推進」を掲げ、各種要領やガイドラインを整備しています。特に地方整備局や都道府県も独自の試行工事を重ね、ノウハウの蓄積と普及啓発が図られている状況です。ICT土工はBIM/CIMの実践形とも言え、これからの土木工事のスタンダードになりつつあります。


BIM/CIM導入における課題と解決策

BIM/CIMには多大なメリットがありますが、その導入にあたってはいくつかの課題も指摘されています。ここでは主な課題と、考えられる解決策について整理します。


BIM/CIM導入の主な課題

人材・スキルの不足: BIM/CIMの中核である3次元モデルの作成・活用には専門ソフトの操作スキルや3D設計の知識が必要です。しかし、現状ではそれらを習得した人材が不足しており、教育訓練の体制も十分ではありません。企業がBIM/CIMを始めたくても「扱える人がいない」「研修の時間が取れない」という壁に直面しがちです。また、新卒者に教えるにも社内に経験者が少ないためノウハウ継承もうまく進まないという課題があります。

ソフトウェア選定と互換性: BIM/CIMを実現するには専用ソフトウェアやツールが必要ですが、多種多様な製品が乱立しており「どのソフトを使えば良いか分からない」という声もあります。建築分野ではRevitやArchicad、土木分野ではCivil 3DやInfraWorksなどが代表的ですが、それぞれ操作性や得意分野が異なります。また異なるソフト間でデータ互換性が低いケースもあり(例えばIFCなど中間フォーマット経由でも属性情報が失われる等)、せっかく作ったモデルが他社と共有できないといった問題もあります。

コスト・時間面の負担: 3Dモデル作成には追加の手間と時間がかかるため、短納期・低予算の案件では敬遠されがちです。中小規模の工事では「2次元図面だけの方が早い」「3Dにする余裕がない」という事情もあります。また専用ソフトのライセンス費用やハイスペックPCの購入費など初期投資が高額になる場合もあり、特に小規模事業者にとってハードルとなっています。

現場での抵抗感: 長年2D図面で業務を行ってきた技術者の中には、3Dモデルへの抵抗感や「習熟できるだろうか」という不安もあります。新しいやり方を現場全体に浸透させるには時間がかかり、経営層の理解不足や社内の協力体制不足が導入を妨げるケースもあります。


課題解決に向けた取り組みとソリューション

上記の課題に対し、業界では徐々に解決に向けた取り組みが進んでいます。いくつかの方向性を紹介します。


• 人材育成と教育充実: 国交省や各地方整備局、建設団体はBIM/CIM研修や人材育成プログラムを相次いで開催しています。例えば近畿地方整備局ではインフラDX人材育成の一環としてBIM/CIM施工や3Dデータ取扱いの実習研修を行っています。企業側でも若手に3D CADを積極的に学ばせたり、中途で専門スキルを持つ人材を採用する動きがあります。さらにBIM/CIM推進室を社内に設置し、ナレッジの集約と各部署支援を行う例も増えています。


• 導入支援ツールの活用: ソフトウェア各社も、初心者でも扱いやすいBIM/CIMソリューションを提供し始めています。例えば手持ちの2D図面から半自動で3Dモデルを生成するツールや、クラウド上で複数ソフトのデータ統合を行うプラットフォーム等が登場しています。オープンフォーマット(IFCなど)の普及や、ソフト間の連携強化も進んでおり、今後データ互換性の向上が期待されます。またアウトソーシング(専門会社への委託)や人材派遣によって、自社にスキルが無くてもBIM/CIMモデルだけ作成してもらうサービスも利用されています。これらを活用すれば、中小企業でも無理なくBIM/CIMに着手できるでしょう。


• 段階的な導入と経営層のコミットメント: いきなり全プロジェクトでフル活用を目指すのではなく、まずは一つのモデル事業や得意分野の業務から試行し、効果を検証して徐々に拡大するのも有効です。小さく始めて成功体験を積むことで社内の理解も深まり、抵抗感も和らぎます。また経営層がDX推進を明確に打ち出し、社内横断のプロジェクトとしてBIM/CIM導入をリードすることが重要です。「トップダウンの決断+ボトムアップの現場ニーズ吸い上げ」の両面で推進する体制が望ましいでしょう。


• 国の支援策の活用: 国交省はBIM/CIMの導入促進のため、技術的支援や加点評価、補助事業など様々な支援策を講じています。直轄工事ではBIM/CIMの取り組みが総合評価落札方式の加点対象になるケースもあります。また、民間も含めた標準ガイドラインの策定や事例集公表、ポータルサイトでの情報提供など、業界全体で知見を共有できる環境が整いつつあります。これら公的情報を積極的に参照し、自社の導入計画に役立てることが大切です。


このように課題は多いものの、一つひとつ解決策が示され始めています。BIM/CIMの導入・活用には時間と努力を要しますが、それだけの価値があることは先に述べた通りです。各社が自社に合った手法で工夫しつつ、一歩ずつでも前進していくことが業界全体の底上げにつながるでしょう。


最新のBIM/CIM技術動向と業界トレンド

2025年現在、BIM/CIMを取り巻く技術動向や業界トレンドはますます活発化しています。ここでは最新の傾向をいくつか押さえておきましょう。


BIM/CIM全面適用とi-Construction 2.0の展望

前述のように、2023年度から国交省直轄工事でBIM/CIM原則適用が始まり、2027年には完全義務化が見込まれています。これは業界全体に強いインパクトを与えており、建設会社各社は対応を急いでいます。大手ゼネコンはもちろん、中小建設会社でもBIM/CIM対応の動きが加速しており、「2024年問題」と称される労働環境改革(残業規制の厳格化)への対応策としてもDX推進が叫ばれています。労働力不足と働き方改革に直面する中、BIM/CIMで生産性を向上しなければ業務を回せない、という危機感が背景にあります。


また2024年に示されたi-Construction 2.0では、BIM/CIMやICT施工を前提に、遠隔監督・自動施工・AI活用など次世代のスマート建設技術への展望が語られています。例えば将来的には、リアルタイムで施工状況をデジタルツイン上に反映し、AIが品質や安全を監視して指示を出す、といったことも現実味を帯びてきました。国交省内にもDX推進本部が設置され、官民で協調しつつデジタル技術の社会実装が図られています。BIM/CIMはその足掛かりとして重要な位置にあるため、今後も政策的な後押しが続くでしょう。


クラウドプラットフォームとデータ共有

BIM/CIMモデルや点群データをクラウド上で共有・管理する動きが広がっています。従来はCADソフトごとのローカル環境で扱っていた設計データも、今ではクラウドのBIMプラットフォームにアップしてプロジェクト関係者全員で閲覧・編集するのが主流になりつつあります。例えばAutodesk BIM 360やBentley iTwin、国内ベンダー各社のBIMクラウドなど、多様なサービスが登場しています。クラウド上で3Dモデルを表示してコメントしたり検討会をオンラインで実施することも可能で、コロナ禍以降、リモート環境下でも設計・施工者間のコラボレーションが進んでいます。


国交省もBIM/CIMデータの標準納品様式やチェックツールを整備し、将来的には発注者も含めてデータ共有を円滑に行える環境を目指しています。また工事完了後も発注者(行政)がBIM/CIMデータを活用してインフラ資産を管理することが検討されており、今後はBIM/CIMモデルが維持管理台帳の代わりになる可能性もあります。


AR・VR、AIなど先端技術との融合

BIM/CIMは他の先端技術との親和性も高く、さまざまな融合が試みられています。例えばAR(拡張現実)については、前述の渋谷駅工事のようにタブレットで現場映像にモデルを重ねて表示する用途が広がっています。施工中の構造物に完成予定のBIMモデルを透過表示してチェックしたり、地下埋設物の位置を投影して掘削時の安全確認をする、といったことが既に実用段階です。またVR(仮想現実)では、施工計画の疑似体験やオペレーター訓練に活用され始めています。重機オペレーターがVRゴーグルをかけて仮想建設現場で練習し、実際の現場に臨むといった取り組みもあります。


さらにAI(人工知能)の活用として、BIM/CIMモデルや施工データを解析し、工程の最適化や危険予知に役立てる研究も進行中です。例えば、竹中工務店は施工管理にデジタルツインを導入し、AIが当日の作業リスクを自動診断する試行を行っています。BIM/CIMモデルに各種センサーデータ(振動・歪みなど)を取り込んで構造ヘルスモニタリングを行うなど、維持管理分野でのAI分析も期待されます。


このように、BIM/CIMは単体でも強力なツールですが、クラウド・AR/VR・AI・IoTセンサー・ロボット等と組み合わさることで建設DXのハブとなっていく流れがあります。業界トレンドとして、これらを包括的に導入することでスマートシティやスマートインフラ管理へ繋げようという大きなビジョンが描かれているのです。


LRTKとは何か:BIM/CIM対応の最新測位ソリューション

次に、本記事のタイトルにもある「LRTK」とは何かを紹介します。LRTKは、BIM/CIM時代の新たな測量・位置決めソリューションとして登場したコンパクトな高精度測位デバイスです。国交省が推進するi-ConstructionやインフラDXの文脈でも、その技術が現場革新に役立つと注目されています。


LRTKの基本原理と特徴

LRTKは一言で言うと「手のひらサイズのRTK-GNSS測位端末」です。RTK(Real-Time Kinematic)とは衛星測位(GPS/GNSS)の誤差を基地局からの補正情報でリアルタイムに補正し、測位精度を飛躍的に高める技術です。通常のGPSが数メートルの誤差を持つのに対し、RTKなら水平数センチ・鉛直数センチの精度で位置を特定できます。LRTKはこのRTK技術を極限まで小型化し、現場で誰でも手軽に使えるようにした製品です。


 


図: スマホに装着するポケットサイズの高精度測位機「LRTK Phone」(iPhoneに専用RTK-GNSS受信機を装着し、いつでも携帯して使える万能測量機となる)


LRTKは東京工業大学発のスタートアップ企業・レフィクシア社が開発した製品群で、中でも「LRTK Phone」と呼ばれるデバイスが核となっています。LRTK Phoneは専用のスマートフォンケース一体型の超小型RTK-GNSS受信機で、これをiPhoneやiPadに装着するだけで、スマホがそのままセンチメートル級の測量機に変身します。重さは125g、厚さ13mm程度でバッテリーも内蔵しており、まさにポケットに入る測量機です。専用アプリ「LRTKアプリ」を使ってワンタッチで測位を実行でき、緯度・経度・高さを高精度に記録できます。日本の測地系(世界測地系JGD2011)や平面直角座標系にも対応し、測位と同時に自動で座標変換・ジオイド高計算まで行ってくれるため、専門知識がなくても扱えるのが特徴です。


高精度も大きな売りです。例えば、LRTKアプリには一定回数の測定値を平均化して精度を向上させる機能があり、単発測位で水平12mm程度の誤差でも60回平均すれば水平誤差8mmという驚異的な結果が得られています。縦方向も1cm前後の精度が出ており、本格的な測量機器に匹敵する精度と言えます。それでいて従来のRTK測量機のような煩雑さはなく、スマホでボタンを押すだけで結果が得られる手軽さは画期的です。


LRTKのもう一つの特徴は、測位データをクラウドと連携できる点です。測った座標やメモ情報はボタン一つでLRTKクラウド(Webプラットフォーム)にアップロード可能で、オフィスのPCから即座に現場の測点情報を確認できます。クラウド上の地図に測点がプロットされ、タイトル・日時・座標値・メモが一覧できるため、現場とオフィスでデータをリアルタイム共有できるのです。これはBIM/CIMが目指す「現場とモデルのデータ連携」と合致しており、後述するようにBIM/CIM導入の強力な支援ツールとなります。


LRTKは堅牢性や現場適応性も考慮されています。デバイス自体は防塵防水仕様(IP規格対応)で、粉塵の舞う土木現場や多少の雨天でも安心して使用できます。またGNSS測位が不安定になりがちな高架下やトンネル入口付近でも、IMU(慣性計測装置)を組み合わせた独自技術で安定した測位を可能にしています。電波が途切れやすい環境でも自己推定で位置を保管する工夫がされており、トンネル工事などにも応用できるといいます。


総じてLRTKは、「いつでも・どこでも・誰でも正確に」測位できることを目指した万能測量ツールです。その開発者が「気付けば何でもできる万能測量機になっていた」と語るように、ユーザーの現場ニーズを反映して様々な機能がオールインワンで盛り込まれています。具体的には以下のような機能があります。


• 単点測位: 任意の地点の座標(経緯度・高さ)をワンプッシュで測定し記録。平面直角座標系やジオイド高も自動計算。


• 連続測位・点群計測: 一定間隔で連続測位して地形の点群データを取得可能。歩きながら多数のポイントを取ることで、簡易的な地形スキャンにも使える。


• 墨出し・位置誘導: 設計図上の座標(例えば構造物の配置位置)をあらかじめ入力し、その場所に誘導する機能。スマホ画面に矢印や距離が表示され、所定の位置に来ると「ここが設計ポイントです」と知らせてくれる。


• 写真計測・ARシミュレーション: スマホのカメラで撮影した写真に、高精度な位置座標や方位をタグ付けして記録。さらにその場で写真に写った対象物の大きさを計測したり、設計モデルを重ねて表示(AR)することもできる。例えば、掘削予定箇所の写真に設計断面を重ねて表示し、作業前に完成イメージを確認するといった使い方が可能。


• 土量・距離計算: 測定した複数点のデータから、距離や面積、体積(土量)を算出するツールも搭載。現地でざっくりとした数量計算を行うのに便利。


• クラウド共有と帳票: 測位結果はクラウド上で即共有でき、後からWeb上でCSVエクスポートしたり、報告書用の帳票を自動生成するといった機能も順次開発されています。


驚くべきは、これだけの機能を備えたLRTKの価格が非常にリーズナブルなことです。具体的な金額は公表されていませんが、「誰もがLRTKを手にできる」ことを重視し、RTK受信機本体やオプション一脚などが従来機器では考えられない低価格で提供されています。高価な測量機器は導入ハードルになりますが、LRTKなら1人1台配備も現実的で、現場スタッフ全員が各自で測量できる時代が来るかもしれません。


従来製品との比較(精度・価格・操作性)

従来の高精度測位製品(GNSS測量機やトータルステーション等)と比べ、LRTKには以下の優位性があります。


• 取り回しの良さ: 従来は据え置き型の基地局とプリズムを持った人員が必要だった測量も、LRTKなら1台のスマホで完結します。自動追尾式のトータルステーションなど一人測量を実現する機器もありますが、それでも機材は大掛かりでした。LRTKは1人で片手で扱えるので、狭い現場や夜間作業でも負担になりません。


• 初学者でも使いやすい: 従来の測量機器は専門知識や経験が要求されましたが、LRTKはスマホアプリの直感的なUIにより非専門家でも簡単に操作できます。基地局の設置や無線設定など複雑な手順も自動化されており、測位を始めるまでのハードルが低いのです。研修無しでも現場ですぐ使えるため、新人や他業種の人でも扱えます。


• オールインワンと汎用性: 従来は測量→墨出し(位置出し)→出来形計測でそれぞれ機器や担当者が異なることもありましたが、LRTKなら1台で測量から出来形まで一貫して対応できます。その汎用性ゆえ、「現場のペンとノート代わりになる」ツールとも称され、位置に関するあらゆるニーズに応えられます。


• 精度と信頼性: 精度自体は従来のRTK-GNSS機器も高いですが、LRTKは前述の通り平均化機能でミリ単位まで突き詰められます。またIMU融合により衛星受信が不安定な場所での連続測位に強く、単体GNSS機器より現場実用性が高いです。既存製品では難しかった高架下や樹林地帯での安定測位も可能にしています。


• コストパフォーマンス: トータルステーションや測量GPSセットは数百万円する場合もありますが、LRTKはそれらと比べ格段に安価です。初期投資を抑えつつ複数台導入できるので、一度に複数箇所で測量したり、待ち時間なく同時進行で作業できるメリットも生まれます。


• 拡張性: スマホと連携している利点として、ソフトウェアアップデートで新機能追加が容易です。「現場の声を反映して今後も便利な新機能開発を続ける」とされており、将来的な発展性にも期待できます。例えば将来はリアルタイムでBIMモデルを表示しながら測量する機能や、AIによる自動異常検知なども実装されるかもしれません。


もちろん従来製品にも長所はあります。高精度トータルステーションはプリズムに対してミリ以下の精度を出せますし、レーザースキャナーは短時間で高密度点群を取得できます。LRTKはそうした専用機材を完全に置き換えるものではありません。しかし、「日常的な測量・位置出し・記録作業を誰もが手軽に行える」という点で今までにない価値を提供しています。高精度+簡便さを兼ね備えたLRTKは、まさに建設現場のDXを下支えする革新的ソリューションなのです。


LRTKがBIM/CIM導入にどう貢献するか(測量・設計・施工・維持管理フェーズでの活用)

それでは、このLRTKが具体的にBIM/CIM導入をどう後押しするのか、プロジェクトの各フェーズに沿って考えてみましょう。BIM/CIMは調査・設計から維持管理までのデータ連携が肝要ですが、LRTKはその各段階でデータの橋渡し役を担える可能性があります。


測量・調査フェーズでのLRTK活用

BIM/CIMの出発点は、現地の状況を正確に把握することです。LRTKは高精度かつ手軽な測量を実現するため、調査・測量段階で大いに活躍します。


まず、計画段階で必要となる現況地形や構造物配置の把握にLRTKが使えます。例えば従来、設計者が現地確認する際にはメジャーや簡易なハンディGPSで測っていたものが、LRTKがあれば正確な座標取得が可能です。設計者自身がスマホ片手に敷地の要点(境界や高低差、既存構造物の位置など)を測って回り、そのデータを即座にクラウドで共有することで、オフィスで3Dモデル化して検討を開始できます。測量の専門班を待たずとも、自主的な予備調査が高精度にできるのです。


また、正式な基準点測量や地形測量においてもLRTKは有用です。例えば、ドローン空撮による図化を行う際、LRTKで現地に対空標識(GCP)の座標を素早く測定できます。1人で次々と点を拾っていけるため、短時間で多数の基準点を設置できます。これにより空撮図の精度向上や作業効率化が図れます。実際、LRTKシリーズの紹介事例では「ある鉄道工事現場でRTK基準点を設置した結果、従来法に比べ測量時間が大幅に短縮された」という報告もあります。


LRTKで取得した測点データは、そのままBIM/CIMモデルの基盤データとして活用できます。クラウド経由で設計チームに共有し、3Dモデルに参照情報として読み込めば、計画段階から実地に即したモデルが作成できます。国交省が強調する「調査・測量→設計→施工→維持管理の情報連続性」を、LRTKが担保するイメージです。さらに地質調査位置の記録、環境調査ポイントの測位など、あらゆる現地調査でLRTKは精度保証付きの位置情報を提供します。BIM/CIMモデルに現場実測値を反映させることで、モデルと現場の乖離を無くし、以降の設計施工をスムーズにする効果は計り知れません。


設計フェーズでのLRTK活用

設計段階でも、LRTKは設計者やコンサルタントの強力なツールになります。設計図面上でいくら精密に検討しても、実際の現地でどう見えるか・収まるかは行ってみないと分からないものです。LRTKとAR技術を組み合わせれば、デザインの現地検証が容易にできます。


例えば道路設計でカーブの線形を検討する際、設計モデル上では問題なく見えても、現地では見通しに支障があったり周辺環境と齟齬がある場合があります。そうしたとき設計者がタブレットにLRTKを装着して現地に立てば、BIM/CIMモデルを実風景に重ねて確認できます。LRTKの精密な位置・姿勢計測により、自分が立っている位置に応じたモデルの見え方をAR表示できるため、「ここからだと看板が隠れてしまう」「擁壁高さはこのくらいになるのか」といったことが一目瞭然です。渋谷駅周辺工事でも、タブレットARで隣接する再開発ビルとの取り合い部分をその場で確認し、不整合のないよう設計を調整しました。


またLRTKは設計変更へのフィードバックにも有効です。設計途中で現地条件の変更や新たな制約が判明した場合、すぐに担当者がLRTKで追加測量してデータを取得し、モデルを修正するといったフレキシブルな対応ができます。従来は外注測量の手配や再調査に時間がかかり、設計修正にタイムラグが生じていましたが、LRTKがあればリアルタイム設計修正も夢ではありません。例えば橋脚基礎の位置を少しずらす必要が出た時、LRTKですぐ周囲の空きスペースや干渉物位置を測ってモデル更新→即座に安全性計算、というような俊敏なPDCAが可能になります。


さらにはBIM/CIMならではの合意形成プロセスにもLRTKが貢献します。例えば住民説明会や関係機関協議で、計画施設の位置や高さを説明する際、現場にLRTKでポイントを出して「ここにこれくらいの高さの構造物ができます」と示すことができます。スマホ画面に表示したARモデルを見せれば、平面図では伝わらなかった情報も明確に伝わります。LRTKは手軽に持ち運べるので、設計者自ら現地に赴いて説明に使えるのも強みです。


施工フェーズでのLRTK活用

施工段階こそ、LRTKの真価が発揮される場面です。施工現場では出来形の管理や墨出し作業など、位置情報が絡む作業が数多くあります。従来はこれらを専門の測量技師が担っていましたが、LRTKがあれば現場技術者一人ひとりが測量マンに変身します。


まず、着工前の丁張り(墨出し)作業です。従来は設計図をもとに専門スタッフが現地で水糸や杭を使い構造物の位置・高さをマーキングしていました。LRTKを使えば、設計座標を端末に入力して現地で誘導機能に従うことで、正確な位置にマーキングできます。例えば道路のカーブの中心点や建物の柱位置など、知りたい点に近づくとスマホが教えてくれるので、測量経験の浅い人でもミスなく墨出し可能です。これは施工精度の向上のみならず、測量待ちによる工事の中断を減らし、工期短縮にもつながります。


次に施工中の出来形確認です。コンクリート打設や埋戻し、舗装厚など、施工直後に出来形を確認すべき場面でLRTKが威力を発揮します。例えば道路舗装工で所定の厚みが確保できたかを確認する際、仕上がり面の高さをLRTKで測れば、その場で厚さを計算できます(基準高との差をアプリが算出)。結果は即クラウド共有されるので、所長や品質担当もリアルタイムでチェックできます。従来は後日専門測量の結果待ちだったものが、その日のうちに確認でき手直しも早期にできます。


また、LRTKは安全管理や工程管理にも寄与します。AR機能を使えば、掘削中に埋設ガス管の3Dモデルを投影して作業員に注意喚起したり、重機オペレーターに見えない地下障害物の位置を把握させるといった活用ができます。360度写真や進捗写真に高精度座標タグを付けて記録しておけば、出来高管理書類や施工管理記録も信頼性の高いものになります。LRTKで取得した点群データを設計モデルと比較し、施工範囲外の掘削がないかチェックするといった品質保証も簡単にできます。


さらに、竣工時にはLRTKで電子納品データを整えることも考えられます。検測箇所の座標をLRTKで測り、そのまま成果を電子納品図書に活用すれば、いちいち図面に起こす手間が減ります。竣工図をBIM/CIMモデルで納める場合も、LRTK計測値でモデルを更新して正確なアズビルト(竣工モデル)を完成させることができます。まさにLRTKは施工フェーズを通じ、常に現場とデジタルモデルを同期させるハブとなるのです。


維持管理フェーズでのLRTK活用

BIM/CIMモデルを維持管理に活かすには、実際の点検データをいかにモデルに取り込むかが重要です。LRTKはここでも機動的なデータ収集で貢献します。


例えば橋梁定期点検で、ひび割れや変位を発見したとします。その位置をLRTKで測定すれば、緯度経度だけでなく橋梁全体モデル上の正確な位置(スパン何処の何番目の桁に〇〇mmのひび割れ)として記録できます。次回点検時には同じ位置をピンポイントで再確認でき、損傷進展のモニタリングが容易になります。LRTKで取得した損傷座標や写真付きメモはクラウドで共有できるため、維持管理担当者間で情報がすぐ行き渡ります。


また災害直後のインフラ点検でも、LRTKは威力を発揮します。地震後の道路陥没や橋梁変状箇所を緊急調査する際、LRTKなら単独で広範囲を回って測量し、被災状況を即座にデジタル地図上にプロットできます。これにより早期復旧計画の立案に役立つでしょう。同様に、台風後の河川施設点検でも決壊箇所の正確な測位に使えます。従来は復旧工事のための測量待ちで初動が遅れることもありましたが、LRTKがあれば初期対応を迅速化できます。


維持管理では、蓄積されたデータをいかに活用するかも肝心です。LRTKで取得した点検データをBIM/CIM維持管理モデルにフィードバックすれば、時系列で構造物の状態を追跡できるデジタルアセットマネジメントが可能になります。例えばトンネル内の変位計測結果をモデル上に色分け表示したり、路面沈下を面的なヒートマップで可視化するといった高度な解析も、基礎となるデータが精密であればこそ信頼できます。LRTKはそうしたIoTセンサー的な役割も担い、維持管理DXを支えてくれるでしょう。


最後に、維持管理段階で重要なのは現場の属人化排除です。経験に頼っていたインフラ点検をデジタルデータに置き換えることで、世代交代や人材不足にも対応できます。LRTKで収集した膨大な点検情報は、将来的にAIが劣化予測や補修計画立案をアシストする材料にもなります。BIM/CIMモデルとLRTKデータを組み合わせたデジタルツインが構築されれば、点検頻度や補修時期を最適化する予知保全も現実味を帯びます。


以上、調査から維持管理までLRTKの活用シナリオを見てきました。要するにLRTKは「現場のデータをリアルタイムにデジタル世界へ送り込む」と同時に「デジタル世界の設計情報を現場で実現する」両方向の橋渡しをするツールなのです。BIM/CIMが目指すサイクル(計画→設計→施工→維持管理の情報連携)において、各ステージで欠かせない情報収集とフィードバックをLRTKが支援することで、BIM/CIM導入効果を最大化できるでしょう。


まとめ:未来の現場へ一歩踏み出そう – LRTKで体験するBIM/CIM時代

BIM/CIMの定義やメリット、事例から課題、そして最新トレンドとLRTKソリューションまで駆け足で紹介してきました。建設・インフラ業界は今、デジタル技術による革新期を迎えています。国交省の強力な推進もあり、BIM/CIMは近い将来すべてのプロジェクトで当たり前のように使われる時代がやってくるでしょう。そうした中で、現場を支える個々の技術者がデジタルツールを使いこなすことが成功の鍵となります。


LRTKは、まさに現場の一人ひとりがDXを体感・実践できるツールとして登場しました。ポケットから取り出したスマホでボタンを押すだけで、従来は専門測量が必要だった精密データが得られる――これは数年前には考えられなかった光景です。例えば試しに、身近な敷地でLRTKによる簡単な測量を体験してみてください。地面の高低差や距離をさっと測ってクラウドにアップするだけでも、「こんなに手軽にデータ化できるのか!」と驚くはずです。紙とペン、メジャーで悪戦苦闘していた作業が、スマホ一つで完了してしまう便利さは、一度味わえば手放せなくなるでしょう。


BIM/CIMの効果を最大限引き出すには、まず現場がデジタルデータを持つことが前提です。LRTKはその第一歩を力強くサポートしてくれます。これからBIM/CIM導入を検討する企業・部署の方々も、まずは現地調査や施工管理の場面でLRTKを活用してみてはいかがでしょうか。手軽に始められる分、現場の抵抗も少なく、確実な省力化・効率化の実感が得られるはずです。「百聞は一見に如かず」と言うように、デジタル施工の威力は実際に使ってみることで腹落ちします。幸いLRTKは誰もが手にできる価格帯で提供されており、1人1台体制も夢ではありません。


最後に強調したいのは、BIM/CIMやLRTKといったツールはゴールではなく手段だということです。真の目的は、より安全で生産的な現場を実現し、良いインフラを効率よく作り、長く賢く使っていくことにあります。新技術の導入には戸惑いや苦労も伴いますが、その先にある明るい未来のために、まずはできるところからデジタル技術を取り入れてみましょう。LRTKで高精度測量を体験することは、その第一歩として最適です。ぜひこの機会に現場DXの扉を開き、未来の当たり前となるであろうBIM/CIMの世界を体感してみてください。現場とデジタルがシームレスにつながる快適さに、きっと驚きと魅力を感じていただけることでしょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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