土木現場でRTKを導入するメリット5選:
施工精度と効率が劇的向上

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2025年3月13日 掲載

近年、建設業界では測位技術の進歩により施工の精度と作業効率が飛躍的に向上しています。その代表的な技術が「RTK」です。大手ゼネコンから中小の土木・建設業者、測量技術者、さらにはJRや高速道路などインフラの保守担当者まで、現場でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえでRTK導入が注目されています。
本記事では、土木現場でRTKを導入するメリット5選を中心に、RTKの基本概要、導入による施工精度向上の事例データ、具体的な導入手順と注意点、そして導入におすすめの機器「LRTK」の紹介までを詳しく解説します。施工現場の生産性を高めたい方はぜひ参考にしてください。
RTKとは?
RTKとは「リアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)」の略称で、衛星測位システム(GNSS)を利用した高精度測位技術の一種です。
通常のGPS測位(単独測位)では、衛星信号の誤差により位置のずれが数メートル生じることもあります。しかしRTKでは基地局(基準局)と呼ばれる既知の位置に設置した受信機と、移動しながら測位する移動局(ローバー)の2台で同時にGNSS衛星の信号を受信し、お互いの測位データを通信で補正し合うことで、センチメートル級の精度を実現します。つまり、固定局から得た誤差情報をリアルタイムに移動局へ送り、測定値を補正する仕組みです。
一般的なGPSでは誤差が数十cmに達することもありますが、RTKなら誤差数cm以内にまで抑えられるのが最大の特徴です。この高精度を活かし、RTKは土木測量・出来形管理、建設機械のマシンガイダンス、ドローン航行、精密農業など「より正確な位置情報」が求められる分野で活用が広がっています。例えば土木現場では、従来のGPS測量では位置ずれによる測量誤差や施工誤差が問題でしたが、RTK導入により設計値通りの位置出しや出来形計測が可能になりつつあります。
補足: RTKには大きく分けて「基準局を自前で設置する方式」と、基地局ネットワークから補正情報を受け取る「ネットワーク型RTK」があります。ネットワーク型では携帯通信などを通じて国土地理院の電子基準点や通信事業者の基準局網から補正データを取得するため、現場で基準局を設置せずに1台の受信機で測位できます。日本では準天頂衛星みちびき(QZSS)のCLASや、通信キャリア各社の高精度測位サービス(例:SoftBankのichimill
)により、手軽にネットワーク型RTKを利用する環境が整ってきています。
それでは、RTKを土木施工に導入すると具体的にどのようなメリットがあるのか、5つのポイントに分けて解説します。
RTK導入のメリット5選
RTKの高精度測位を現場に取り入れることで得られるメリットを5つにまとめました。それぞれが施工精度や生産性に直結する重要なポイントです。
1. 施工精度の劇的向上
RTK最大のメリットは何と言っても測位精度の飛躍的な向上です。従来のGPSやトータルステーションによる位置出しでは、わずかな測量誤差が後の施工精度に影響することがありました。しかしRTKなら、取得した座標のズレを数センチ以下に抑えられるため、設計図通りの精度で施工を行うことが可能となります。例えば、基礎の位置出しや道路線形の追従といった場面でも、RTK測位値をもとにすれば人為的な誤差を極限まで減らせます。
また、出来形管理(施工後の形状測定)においてもRTKは威力を発揮します。盛土やコンクリート打設後の形状をRTK搭載機器で測量すれば、短時間で高密度な出来形データを取得でき、設計値との差分を即座に確認できます。実際、国土地理院の示す手法でもRTK-GNSSを用いれば出来形測定の許容誤差内に収めやすくなるとされ、品質確保に有効です。
施工精度向上の一例として、ある測量会社では単独測位では達成困難だった水平精度8~12mmという極めて高い測位精度をRTKで実現しています。わずか1cm未満の誤差で測位できれば、構造物の位置ずれや傾きも即検知できるため、品質管理のレベルが一段と上がります。RTK導入によって「測れない・分からない範囲の誤差」をほぼ解消し、劇的な施工精度向上が期待できます。
2. 測量作業の大幅な効率化
RTKは現場の作業効率を飛躍的に高めるツールでもあります。リアルタイムに高精度測位が行えるため、従来必要だった複雑な測量手順や事後計算を大幅に簡略化できます。例えば、トータルステーションでの測量では視通しごとに機器を据え直す必要がありましたが、RTK-GNSSなら見通しの効く範囲であれば移動しながら連続的に測位可能です。広い造成現場などで一人が歩いて回るだけで測量が完結し、トータルステーションで逐次据え替え・照準する手間が省けます。
現場でRTK-GNSS受信機を用いて測量作業を行う様子。高精度アンテナを据えたGNSSローバーと手元のコントローラー(タブレット)により、1人でも迅速に測量・出来形確認が可能になる。RTKなら移動しながらでも常にセンチメートル級の現在位置を把握できるため、測点間の移動や機器の切り替えによる無駄な時間が減少する。
また、ネットワーク型RTKを使えば基準局の設置作業が不要になるため、さらなる時間短縮につながります。ある土木会社ではRTK導入により「これまでトータルステーションで1往復、レベルで1往復していた測量作業が、RTK+レベルの1往復で完了するようになった」と報告しています。手順を半減できたことで酷暑の中での作業負担も軽減され、「とてもありがたい」と現場から評価されています。このようにRTKは測量・墨出しの工程を効率化し、作業時間を大幅に短縮します。結果として工期短縮や人件費削減にも直結し、現場全体の生産性向上に寄与します。
3. 人手不足解消・コスト削減
深刻化する建設現場の人手不足に対しても、RTK導入は大きな効果を発揮します。高精度な測量作業を少人数でこなせるようになるため、熟練測量員の不足を技術で補うことが可能です。従来、丁張り設置や出来形測定には複数人のチームで作業することが一般的でしたが、RTK受信機とタブレットを持った1人で測量から記録まで完結できるケースも増えています。これにより人件費の削減や、空いた人員を他の重要作業に振り向ける余裕が生まれます。
また、RTKの活用は測量外注コストの削減にもつながります。例えば、小規模工事でもこれまでは専門の測量業者に発注していた精密測量を、自社の現場技術者がRTK機器で対応できれば外注費を節約できます。安価なRTKサービスや機器が登場したことで、中小施工業者でも初期投資を抑えて導入しやすくなっています。実際にソフトバンクのichimillサービス開始により「RTK導入へのハードルが下がりつつある」とされ、多くの企業にとってより身近な存在になってきています。
さらに、施工ミスや手戻りの削減によるコスト低減効果も無視できません。RTKで正確に位置出しを行えば、後になって「位置がずれてやり直し」という事態を防げます。少人数で一度で正確に測れることは、材料ロスや手直し工数の減少にも直結します。このようにRTKは人手とコストの両面で効率化をもたらし、限られたリソースでより多くの工事案件をさばく助けとなります。
4. 安全性・品質管理の向上
RTK導入によって現場の安全性と品質管理も向上します。高精度な測量が短時間で行えるようになることで、作業員が危険な場所に立ち入る時間を減らせます。例えば、交通量の多い道路脇での丁張り設置作業や、法面の急斜面での測量作業も、RTKなら遠隔から安全に位置を計測可能です。ドローンにRTKを搭載して空から測量すれば、人が立ち入れない場所の地形データも取得でき、崩壊しかねない斜面や河川沿いでの危険作業を置き換えることもできます。結果として、作業員のリスク低減につながります。
品質管理面でもRTKは強力なツールです。リアルタイムに高精度データが得られるため、施工中にその場で出来形のズレを検知・修正できます。たとえば舗装工事で設計高との誤差を即座にチェックしながら敷均し作業を進めたり、構造物据付の際にその場で位置を検証し調整したりといった即時検測・即時是正が可能になります。これにより出来形検査での指摘事項を未然に防ぎ、品質不良や施工ミスを減らすことができます。
さらに、RTKによる測位データはクラウド経由で即座に共有・記録できるため、トレーサビリティの確保にも有用です。誰がいつどこでどの精度で測ったか履歴が残ることで、施工管理の信頼性が高まります。写真計測やAR技術と組み合わせて現場を記録すれば、工事記録や検査書類の精度も向上します。総じて、RTK導入は安全かつ高品質な施工管理体制の構築に寄与します。
5. ICT施工・DX推進への貢献
RTKは単なる測量精度向上ツールに留まらず、建設業界のICT施工やDX推進の基盤技術となっています。国土交通省が提唱するi-ConstructionやCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)では、現場の3次元データ活用が重要な要素ですが、RTKはその高精度位置情報の取得手段として不可欠です。RTKを使えばドローン空撮による3次元測量で高精度な点群データが取得でき、従来多数必要だった地上基準点も大幅に減らせます。これは施工DXにおける省力化と精度向上の両立を実現します。
また、マシンガイダンス・マシンコントロールといったICT建機の自動制御にもRTKが活用されています。ブルドーザやショベルにRTK-GNSSアンテナを搭載し、設計データ通りに刃先の高さや位置を自動調整する仕組みでは、常に正確な現在位置が鍵となります。RTKによって重機の位置をリアルタイムに把握できるため、施工誤差わずか数cmという高精度な自動施工が可能です。これは将来的な無人施工や自動運転技術への布石でもあり、実際にRTKはドローンや自動車の自律航行でも欠かせない技術となっています。
さらに、RTKで取得した測位データはBIM/CIMモデルと連携することで、設計・施工・維持管理を通じたデジタルデータ一貫利用を促進します。例えば、RTKで収集した出来形点群をCIMモデルに取り込んで出来形検証したり、将来のリニューアル工事に活用したりできます。こうしたデータ駆動型の施工管理は、インフラ維持管理や資産管理の高度化にもつながります。RTK導入は、自社の施工プロセスをデジタル化・スマート化する第一歩であり、業界の次世代標準に対応していく上でも大きなメリットとなるでしょう。
施工精度向上の事例とデータ
実際にRTKを導入した現場からは、精度や効率に関するさまざまな好事例が報告されています。以下にいくつかデータを紹介します。
まず精度面では、前述のように単独測位(通常のGPS)では誤差が数十cm生じていたものが、RTK導入により誤差約2〜3cm程度に収まったとのデータがあります。これは例えば道路線形測量において、従来は標識や目印を頼りに誤差10cm程度での位置合わせが限界だったものが、RTKならほぼ誤差なく(2〜3cm以内で)施工できることを意味します。ミリ単位の精度が要求される構造物でも、事前に基準点を精密測量しておけばRTKで据付位置を正確に誘導できるため、据付後の位置修正が不要になったという報告もあります。
効率面の数値としては、ある現場で測量にかかる時間が約50%削減された例があります。ネットワーク型RTKサービスを活用し、基準局設置や複数回の往復測量が不要になったことで達成された成果です。また別のケースでは、出来形測定の人員が従来の2名から1名になり、所要時間も1/3以下に短縮されたとのことです。これにより出来形検査の迅速化だけでなく、日常的な施工中の測量チェック頻度も上げられ、品質向上にも寄与しました。
さらに、新技術として注目されるスマートフォンRTKに関するデータもあります。例えばポケットサイズのRTK受信機「LRTK」をiPhoneに装着して測位した実証では、単体測位で水平精度約12mm、60回測定の平均化で8mmという驚異的な精度を記録しています。従来の高額な測量機器に匹敵する精度を安価な端末で達成できたことは、現場の測量スタイルを変える可能性を示しています。このように各種データから、RTK導入による精度・効率の劇的な向上が実証されています。
RTK導入の手順と注意点
RTKを現場に導入する際の基本的なステップと留意すべきポイントを押さえておきましょう。
● 導入の基本手順:
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目的・活用シーンの明確化: まずRTKを「どの業務に使うか」を決めます。測量や出来形管理なのか、重機のマシンガイダンスなのか、用途によって必要な機器構成が異なります。目的を明確にし、それに適したRTKシステムを検討します。
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機器とサービスの選定: 自前で基準局+移動局を用意する方法と、ネットワーク型RTKサービスを利用する方法があります。現場の通信環境や作業範囲、予算に応じて選定しましょう。最近はスマホ接続型のRTK受信機など低コスト機器も登場しています。必要に応じて通信SIMや無線機の手配も行います。
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初期設定と基準点測量: 機器を導入したら、まず基準局(または既知点)の設定を正確に行います。自前基準局の場合は国土地理院の電子基準点に接続して座標を求めたり、既知標石で較正したりして正確な基準座標を登録します。ネットワーク型の場合はサービスから提供されるデータで較正します。
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現場でのテスト運用: いきなり本番施工に使う前に、実際の現場で試験測量を行いましょう。既知の座標点を測って誤差を確認したり、従来法との比較をして精度と動作を検証します。不明点があればメーカーやサービス提供者に問い合わせて解決します。
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本格導入と教育: テスト結果に問題がなければ本番業務に適用します。現場スタッフへの使い方教育も重要です。測量の基本知識(測位状態の見極め方や注意事項)を共有し、複数人が扱えるようにしておくと安心です。逐次ソフトウェアのアップデートや機器校正も行い、精度維持に努めます。
● 導入時の注意点:
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衛星受信環境: RTKはGNSS衛星からの電波を受信するため、上空の開けた環境が必要です。高層ビルの谷間やトンネル内、樹木の茂みなどでは測位が不安定になります。こうした場所ではRTKが使用できない(または精度が落ちる)場合があると認識し、必要に応じて他の測量機器(トータルステーション等)と併用しましょう。
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高さ方向の誤差: GNSS測位の特性上、高さ方向(Z)の精度は水平より劣ることに注意が必要です。一般にRTKでも鉛直誤差は水平誤差の約2倍程度になります。そのため、厳密な高さ管理にはレベルを併用する、もしくは基準高に既知点を用意して測位結果を補正するといった対策を取りましょう。
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通信・電源: ネットワーク型RTKを使う場合、携帯電波やインターネット接続が安定していることが前提です。山間部など電波状況が悪い現場では、オフラインで使える自前基準局モードや無線機通信も検討してください。また、受信機・コントローラーのバッテリー残量管理も重要です。長時間の連続稼働に備え予備電源を用意しましょう。
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測位状態の監視: RTKは常にセンチ級とは限らず、衛星配置や妨害電波の影響で精度が落ちることがあります。測位モードが固定解(Fix)か浮動解(Float)かを確認し、精度の保証される状態で測量する習慣をつけましょう。精度が不安定な場合は少し待機したり、測位データを平均化するなどして対応します。
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初期投資と費用対効果: RTK機器やサービス利用にはコストが伴います。ただし近年は低コスト化が進んでおり、従来に比べ導入ハードルは下がっています。自社の業務量に見合った投資か、他業務の効率化で十分元が取れるかを検討し、必要に応じてレンタルやリース、安価な機器の活用も検討してください。
以上の点に留意すれば、RTK導入はさほど難しくありません。むしろ適切に運用することで測量作業の標準化・簡易化が進み、将来的な技能者不足への備えにもなります。
RTK導入におすすめの機器:LRTKの紹介
最後に、RTKをこれから導入する方におすすめの最新機器として「LRTK」をご紹介します。LRTKはレフィクシア株式会社(東京工業大学発のスタートアップ)が開発したポケットサイズのRTK-GNSS受信機で、手持ちのスマートフォンと組み合わせて使用できるのが大きな特徴です。専用の小型受信機をiPhoneやiPadに装着するだけで、従来は据え置き型の高額機器が必要だったセンチメートル級測位が手軽に実現できます。まさに“一人一台”の万能測量機をスマホで実現する革新的デバイスです。
LRTKの主なメリット:
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高精度測位: LRTKを用いればスマホで取得する位置情報をcm精度に補正可能です。実測で水平精度8〜12mmという結果が出ており、従来の据置型RTK機器に匹敵する測位精度が得られます。
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利便性: ポケットに入るサイズで、現場を移動しながら必要なときにすぐ測量できます。専用アプリで測位開始から結果取得までボタン一つの簡単操作で、測量の専門知識がない方でも扱いやすい設計です。
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多機能: 単なる測量だけでなく、LRTKは点群計測、墨出し支援、写真の測位情報付加、ARシミュレーションなど多彩な機能を備えています。取得データは即座にクラウド共有でき、現場とオフィスでリアルタイムに情報連携することも可能です。
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コストパフォーマンス: 従来のRTK機器より圧倒的にリーズナブルな価格設定となっており、複数台導入して現場スタッフ各自が携行する使い方も現実的です。専用の長尺一脚(ポール)を使えば測量柱のようにも使え、高さオフセットの調整もアプリ上で簡単に行えます。
このようにLRTKは、これからRTKを始めたい土木・建設関係者にとって最適解ともいえるデバイスです。大掛かりな機材や専門知識がなくても、現場で即座に高精度測位ができるため、日常業務の延長でICT施工を実践できます。現在、実際の現場管理者や作業員の間でも「1人1台あれば生産性が大幅向上しそうだ」と静かなブームになりつつあります。
RTKの導入は、土木・建設現場における施工精度と効率を劇的に向上させ、ひいては人手不足や安全性といった課題解決にもつながることがお分かりいただけたでしょう。ゼネコンから中小施工業者、測量技術者、インフラ保守担当まで、規模を問わず活用できる技術として、RTKはもはや特別なものではなく現場の新たな標準になりつつあります。ぜひこの機会に、自社の現場へのRTK導入を前向きに検討してみてください。
高精度測位技術を味方につけて、施工の品質と生産性を飛躍的に高め、次世代の現場運営へ踏み出しましょう。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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