小型軽量RTKで測量革命:
iPhoneが土木現場を変える

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2025年3月14日 掲載

土木・建設現場における測量の重要性と新技術の登場
土木・建設現場において、正確な測量は工事品質や安全を支える基盤です。従来はトータルステーションやRTK-GNSS測量機など専門機材で測量を行ってきましたが、これらは高価で機材も重く、熟練オペレーターが必要という課題がありました。例えばRTK測量機は基地局と移動局を用いてリアルタイムに数センチの精度で測位できる優れた技術ですが、一般に数百万円クラスの投資と複雑な設定が伴います。また、人手不足が深刻化する建設業界では、より手軽で効率的に精度の高い測量を行えるソリューションが求められていました。
こうした中、近年スマートフォンを活用した小型軽量のRTK技術が登場し、測量の常識を覆しつつあります。特にiPhoneのような高性能モバイル端末は、カメラやLiDAR、GNSSセンサーを備え、現場の生産性向上に欠かせないツールになりつつあります。iPhone内蔵GPSも日本の準天頂衛星「みちびき」への対応などで精度が数十センチ程度まで向上していますが、「それでは足りない、もっと高精度に測りたい」というニーズに応えるべく、iPhoneを測量機に変える小型RTKデバイスが開発され注目を集めています。
iPhoneに装着する超小型RTK受信機「LRTK Phone」。わずか125gのデバイスを取り付けるだけでスマホがセンチメートル級精度の測量機に変身する。
このようなスマホ×RTKによる測量革命によって、これまでの課題がどう解決され、建設測量の現場がどう変わるのかを見ていきましょう。
RTK測量の仕組みとスマホRTKの違い
RTK(リアルタイムキネマティック)とは?
RTKとはリアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)の略で、GNSS(全球測位衛星システム)を利用してリアルタイムに高精度測位を行う技術です。
具体的には、既知の位置に設置した基地局(基準局)と移動局(ローバー)で同時にGNSS観測を行い、基地局から移動局へ誤差補正情報を送信することで、移動局の位置をセンチメートル級の精度で算出します。従来のGPS単独測位が数メートルの誤差となるのに対し、RTK測位では水平・鉛直とも数センチ(一般に2~3cm程度)の誤差に収まる高精度測量が可能です。
このため土木測量や建設施工管理において、出来形管理や基準点測量など精度要求の高い用途でRTK-GNSSが広く利用されてきました。
しかし従来のRTK測量には、専用の高性能GNSS受信機や無線機器が必要で機材が大型・高価になりがち、現場への機材搬入や準備に手間がかかる、といったハードルがありました。また基地局を自前で設置しない場合はネットワーク型RTKサービスの契約や通信環境も必要で、山間部など携帯圏外では精度が出せないケースもありました。つまり「高精度だけれど手軽ではない」のが従来RTK測量の現状だったのです。
従来のRTK測量 vs. スマホRTKの違い
一方、近年登場したスマホRTKは、手持ちのスマートフォンに小型のRTK対応GNSS受信機を組み合わせることで、手軽さと高精度を両立した測位を実現するアプローチです。従来方式との主な違いを比較すると次の通りです:
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機材の携行性: 従来は三脚付きのアンテナやコントローラーなど重量のある機材が必要でしたが、スマホRTKではスマートフォンに装着する小型受信機だけで完結します。例えば後述する「LRTK Phone」は重さ125g・厚さ13mmほどのポケットサイズで、常に持ち歩いて必要なときすぐ測量に使えます。大きな装置を担いで現場を移動する必要がなく、災害現場のように大型機材を持ち込めない状況でも威力を発揮します。
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コスト: 高性能なRTK-GNSS受信機は一般に数百万円するうえ台数も限られていましたが、スマホRTKデバイスは安価に提供されており「価格は超リーズナブル」で現場スタッフ一人に一台もたせることも現実的です。専用機をレンタルしたり測量業者に委託したりする費用を考えると、大幅なコスト削減につながります。
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測量の手軽さ: 従来は測量の専門知識を持つ技術者が機器設定・測位計算を行う必要がありました。スマホRTKでは専用アプリが用意されており、スマホになじんだユーザーなら直感的な操作で測位やデータ共有が可能です。位置補正情報(RTK補正)はネット経由で自動取得でき、測位結果もクラウドに即時アップロード・共有できるため、測量作業のハードルが格段に下がっています。
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精度と信頼性: スマホRTKとはいえ精度は従来同様にセンチメートル級です。さらに日本ではスマホRTKデバイスが準天頂衛星みちびきのセンチメータ級補強サービス(CLAS)に対応しており、携帯通信が圏外の山間部や海上でも衛星から直接補正情報を受信して高精度測位が可能です。複数周波数に対応したGNSS受信機であれば、ビル陰や樹林帯でも衛星捕捉率が高く、従来機で測位が不安定だった環境でも安定した測位が期待できます。
以上のように、スマホを活用したRTK測量は「高精度測量を誰でも・どこでも・リーズナブルに」実現できる点で、従来手法とは一線を画しています。
LRTK Phoneの仕組みと強み
スマホRTKを代表する製品の一つが、LRTK Phoneです。これはiPhoneやiPad用の専用ケースに装着する超小型のRTK-GNSS受信機で、Bluetoothでスマホと接続して動作します。LRTKを装着したスマホはネットワーク型RTK補正情報の受信が可能となり、一気にセンチメートル級測位が可能な万能測量機*に変身します。測位データはスマホアプリ上でリアルタイムに地図表示されたり、写真撮影や点群計測時に高精度な位置タグを付与することもできます。
その結果、異なる日時・地点で取得した写真やLiDAR点群データを公共座標系上で正確に重ね合わせることができ、出来形管理やモニタリングに威力を発揮します。
LRTKの強みはハード・ソフト両面にあります。ハード面では前述の通り3周波対応のGNSSでGPS・GLONASS・Galileo・みちびき等を受信し、携帯圏外でもみちびき(L6帯)からCLAS補強信号を直接受信できる「圏外対応モデル」です。
これにより通信インフラに依存せず全国どこでも1台で完結した測量が可能です。ソフト面では専用アプリ「LRTKアプリ」とクラウドサービス「LRTKクラウド」が提供され、測位データの可視化や共有が容易です。例えばLRTKアプリには移動しながらの連続測位機能があり、1秒間に最大10点の座標を測り軌跡として記録できます。取得軌跡は即座にクラウド上の地図で確認でき、縦断面のプロット等も現場で可能です。
また測点の平均化機能により複数回観測した平均値を算出でき、単点測位でも平均化により精度を8mmまで高められた実例も報告されています。このように、LRTKは現場で実用的な高精度測量を支える工夫が随所に盛り込まれているのです。
小型軽量RTK導入のメリット
スマートフォンと小型RTK受信機を組み合わせた新しい測量手法(以下「小型軽量RTK」)を現場に導入することで、具体的に次のようなメリットが得られます。
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現場での迅速な測量: ポケットからスマホを取り出し数分で高精度測位が開始できるため、従来は測量班の到着を待ったり後日計測していた作業もリアルタイムに実施可能です。必要なときにすぐ測れることで、工事中の確認測量や出来形チェックの頻度を上げられ、手戻りやミスを減らせます。まさに「スピード命」の現場で強力な武器となります。
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コスト削減と効率向上: 高額な測量機を共用したり外部発注していたケースでは、自社で手頃な台数を揃えられるため外注費削減や機材待ち時間の解消につながります。1人1台体制が実現すれば、これまで2人1組で行っていた作業も単独でこなせ、人件費削減や作業効率の飛躍的向上が期待できます。リーズナブルな価格の小型RTKを配備すれば現場生産性が大幅向上する見込みがあります。
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測量精度の向上: 従来、簡易な測量は誤差数十cmのハンディGPSや距離測定で済ませていた場面でも、小型RTKによって常にcm精度を確保できます。精度の底上げにより出来形管理の精度向上や設計とのズレの早期発見が可能となり、品質確保に寄与します。また高精度データをクラウド共有することで、オフィス側で即時に図面照合や解析を行うこともでき、精度とスピードの両立が図れます。
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人手不足への対策: 測量の専門技術者が不足する中、スマホRTKなら熟練者でなくともある程度の測量が可能となります。直感的な操作アプリと自動演算により誰でも測量士並みの成果を得られるため、ベテランに依存しない体制づくりに有効です。さらに一人の測量士が複数の現場を駆け持ちする負担も軽減され、限られた人員でより多くの測量業務を回せます。省力化・自動化の一環として小型RTKは人手不足解消に貢献するでしょう。
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LRTKの実際の活用例
ゼネコンや土木業者での導入事例
既に国内の大手ゼネコンや中小土木業者でも、スマホRTKを現場に取り入れる動きが始まっています。あるゼネコン現場では試験的に施工管理担当者全員にLRTK付きiPhoneを配布し、丁張りの設置や出来形測定を各自で行えるようにしました。その結果、測量班へ依頼していた作業の多くを現場スタッフ自ら即時に完結できるようになり、日々の進捗管理が飛躍的に効率化したといいます。従来は測量待ちで停滞していた施工も減り、作業の待ち時間削減によって工程短縮やコスト低減につながったとのことです。また、ベテラン測量技師が不在の日でも若手社員がスマホRTKを使って問題なく測量をこなせたため、現場の技術継承や属人化解消にも役立ったという声が聞かれます。
高速道路・鉄道インフラ点検への活用
インフラの維持管理分野でも小型RTKは威力を発揮します。高速道路の巡回点検では、路面の陥没や橋梁の変位を現場ですぐ計測し、その場で位置付き写真や点群データをクラウド共有する試みが行われています。従来は目視確認後に専門業者が来測量…という流れでしたが、スマホRTK導入により異常検知から測定・報告までを一回の巡回で完結でき、緊急対応のスピードが格段に向上しました。同様に鉄道の線路巡検でも、軌道のゆがみや路盤の変状箇所を担当者が直ちに測地データとして記録できます。トンネル内や高架下などGPSが届きにくい場所でもマルチGNSSと補強情報で測位を試みることで、ある程度の精度を確保できた事例もあります。今後、補正データの取得が難しい環境でも測位性能が向上すれば、鉄道・道路の保守点検業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が一層進むでしょう。
現場での具体的な測量フローの変化
小型軽量RTKの導入により、現場での測量フローも変わりつつあります。その一例として、従来型とスマホRTK型のフローを比べてみましょう。
従来の測量フロー: まず測量班がトータルステーションやRTK機材を現地に設置し、測量基準点を確認してから測定開始。現場作業員は測量結果を受け取るまで待機し、その後施工に反映する。データ整理は事務所に持ち帰ってから行い、場合によっては翌日以降に共有・図面反映…とタイムラグが発生していました。
スマホRTK活用フロー: 作業員自らがポケットのスマホで必要なときに即測量を開始できます。例えば掘削箇所の高さを確認したい場合、その場でスマホRTKを用いて座標や標高を取得し、瞬時にクラウドへアップロードします。事務所のPCではリアルタイムにその測点が地図上に表示され、離れた場所からでも結果を確認可能です。
測定データは自動で整理されており、現地での追記や手計算が不要なため、そのまま出来形図や報告書に利用できます。つまり、測量→共有→解析のサイクルが現場とオフィス間でシームレスに回るようになり、迅速な意思決定と施工へのフィードバックが可能になるのです。
このように具体的な活用事例からも、スマホRTKが建設現場のワークフローを大きく変革しつつあることが伺えます。ベテラン測量ブロガーも「山間部の密林の中でもLRTKは高精度測位できた」と精度を太鼓判しており、今後は主力の測量機として使い続ける意向を示しています。現場の隅々にまで浸透すれば、測量の革命と言える変化が定着するでしょう。
LRTK導入の手引き
小型軽量RTKに興味を持った読者の方は、まずLRTKの公式サイトをチェックしてみてください。製品の詳細仕様や導入事例、他のRTK機器とのスペック比較表なども公開されています。従来型の受信機や他社GNSS端末との比較では、重量・サイズや初期費用の面でLRTKの優位性が分かるはずです。また精度面でも、国家基準点との比較試験データなどが紹介されており、安価な機器でも一級水準に匹敵する成果が得られることが示されています。公式サイトでは無料の製品カタログや資料請求も受け付けていますので、詳しい情報を入手したい方は問い合わせフォームから気軽に申し込んでみましょう。メーカー担当者によるデモ依頼や見積もり相談も可能です。
まとめ
スマートフォンと小型RTK受信機の組み合わせによって実現した「ポケットサイズの測量機」は、今まさに建設業界の測量スタイルを変えようとしています。従来は専門機材と人員に頼っていた高精度測量が、誰でも・どこでも・低コストで行えるようになった意義は計り知れません。土木現場ではこの技術を活用して生産性向上や品質確保に成功する事例が増えており、将来的には測量士一人ひとりがスマホRTKを携帯する光景が当たり前になるかもしれません。
国も推進するi-ConstructionやDXの流れの中で、現場測量の高度化・効率化は重要なテーマです。小型軽量RTKはその切り札となりうる存在であり、測量革命の鍵と言えるでしょう。今後さらなる技術進化によって精度や使い勝手が向上すれば、3D計測やAR施工支援など活用範囲も一段と広がることが期待されます。
最後に、LRTKの導入によって得られる具体的なメリットをもう一度振り返ります。迅速な測量で工期短縮、コスト圧縮で利益率向上、精度向上で品質確保、人手不足解消で持続的な現場運営──これらを実現できるスマホRTKは、今まさに現場に求められるソリューションではないでしょうか。測量革命の波に乗り遅れないためにも、ぜひ一度この新技術を現場で体感してみてください。あなたの手元のiPhoneが、明日の土木現場を変える一台になるかもしれません。
LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上
LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。
LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。
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