top of page

点群から始める現場DX|i-Construction対応を無理なく実現する方法

タイマーアイコン.jpeg
この記事は平均6分45秒で読めます
AR Civil Engineering

現場のデジタル化(DX)が急務となる中で、「まず何から手を付ければいいのか」と悩む土木施工会社も少なくありません。国土交通省が2016年に建設業への *i-Construction* 導入を決定し、2018年以降はICTの全面活用としてドローンによる3次元測量(3D測量)が事実上必須化されるなど、業界全体でDX推進の流れが加速しています。一方で、中小の現場では人手不足や作業の属人化といった課題も根強く、「うちの現場にはまだ早い」と二の足を踏むケースもあるでしょう。しかし、生産性や品質・安全性向上の大きなメリットに加え行政からの後押しも相まって、3D対応は早晩どの現場でも求められる可能性が高いのが実情です。そこで 現場DXの第一歩 として注目したいのが *点群データ* の活用です。点群は出来形管理や進捗管理、インフラ点検など施工のあらゆる場面で品質と効率を飛躍的に向上させるポテンシャルがあり、DX初心者でも比較的取り組みやすいソリューションです。本記事では「なぜ点群から始めるべきか?」という背景から、点群活用の具体的な効果、導入ハードルの実情、そしてスマホやLRTKを使った手軽な始め方までをわかりやすく解説します。最後までお読みいただければ、「難しそう」「機材が高そう」という不安が解消し、自社の施工管理に点群を取り入れる自信がきっと芽生えるはずです。


なぜ「点群」から現場DXを始めるべきなのか(i-Constructionの背景と現場の課題)

まず押さえておきたいのは、*i-Construction* が求める現場DXの方向性です。i-Constructionでは調査・測量から設計・施工・検査・維持管理まで建設プロセス全体へのICT活用が掲げられています。中でも「3次元測量による出来形管理の高度化」は重要な柱であり、例えば完成地形を丸ごと点群データとして記録・活用することが新たな標準になりつつあります。従来の平面的な図面や写真では伝わりにくかった情報も、点群など3Dデータなら直感的に共有でき、コミュニケーションロスの削減や品質向上につながるからです。また、取得した点群データをクラウド経由で即時に共有すれば、遠隔地から現場を「見て」施工管理を行うことも可能となり、担当者が毎回現地に出向かなくても済むため大幅な省力化が報告されています。このように 点群データは現場DXの基盤技術 として、業務効率化と情報共有の課題解決に大きく寄与し得るのです。


一方、現場サイドの課題としては「経験や勘に頼ったアナログ管理」「煩雑な出来形計測や写真整理」「属人化したノウハウによるミス・抜け漏れ」などが挙げられます。これらを解決する手段として点群は極めて有効です。例えば出来形管理では、点群によって現場を丸ごと高精度に記録しておけば、後から必要な寸法をソフト上で計測したり正確な3Dモデルや断面図を作成したりできます。写真の撮り忘れや記録漏れによるトラブルも防止でき、発注者との認識齟齬も減らせるでしょう。「必要な情報をいつでもデジタルに取り出せる」状態を作れる点で、点群は現場DXの第一歩として最適なのです。さらに近年は3Dレーザースキャナーやドローン測量の普及、そしてスマホを用いた簡易計測手法の登場により、点群活用のハードル自体も下がってきています。つまり、「難しそう」「手間がかかりそう」という先入観に反して、点群ならではの即効性と手軽さで現場DXを無理なくスタートできるのです。


点群とは何か?図面・写真との違いをやさしく整理

では、肝心の「点群」とはどのようなものなのでしょうか。点群データ(ポイントクラウド)とは、空間内の多数の点の集合によって物体や地形の形状を表現した3次元データのことです。それぞれの点にはX・Y・Zの座標値(位置)が記録されており、場合によっては色情報(RGB)や反射強度なども含まれます。例えば地盤や構造物を点群計測すると、その表面上の無数の計測点がコンピュータ上に再現され、まるで写真のようにも見える立体モデルとして表示できます。言い換えれば、現実空間を丸ごとスキャンしてデジタルコピーしたデータと表現できるでしょう。


ではこの点群データは、従来の図面や写真と何が違うのでしょうか? 最大の違いはその情報量と客観性の圧倒的な多さにあります。写真は一つの視点から平面的に撮影した映像であり、一度に写せる範囲や角度に限りがあります。また二次元画像から正確な寸法を読み取るのも容易ではありません。図面(平面図・断面図)は設計上の寸法や形状を示すものですが、施工中に生じた細かな出来形まですべて網羅できるわけではなく、現場で生じた変更が図面に反映しきれずに完成後に「図面と出来形が食い違う」ことも起こりえます。これに対して点群データは、現実の形状そのものを無数の点で余すところなく記録します。取得した点群はあらゆる方向から眺めて確認でき、後から任意の断面を切り出したり寸法を計測したりすることも自由自在です。いわば 現場全体のフルスケールな3Dコピー なので、点群さえあれば手元に図面や写真がなくても必要な情報を再現できます。この網羅性と正確さこそが点群最大の強みであり、近年土木業界でも国交省主導のi-Constructionによる後押しのもと活用が進んでいます。3Dレーザースキャナーやドローンによる点群測量技術が広まり、出来形管理への導入も「新常識」になりつつあります。つまり点群は「現場をありのまま高精度にデジタル保存できる」データであり、従来の図面・写真では得られない安心感と再現性をもたらすのです。


点群でできること(出来形管理、土量計算、進捗管理・検査記録、遠隔共有)

点群データは詳細かつ客観的な3D情報を持つため、現場の様々な業務に幅広く活用できます。ここでは代表的な利用シーンを挙げ、そのメリットを紹介します。


出来形管理 – 施工後の構造物や地形の出来形(完成形状)を確実に記録することができます。点群なら現場を漏れなく丸ごと記録できるため、人力でのスケール計測や写真管理にありがちな「計測し忘れ・撮り漏れ」が起こりません。取得時点の形状をミリ単位まで把握できる高精度データなので、設計図との誤差や施工精度を後からじっくり検証することも容易です。例えばレーザースキャナーや写真測量で取得した点群を解析すれば、設計値との差異を細部まで検出でき、従来見落としがちな微小な凹凸まで把握できます。このように点群導入によって出来形管理の精度が飛躍的に向上し、検査時の指摘減少や発注者との紛争防止につながります。「施工後に必要な写真を撮り忘れた…」「出来形記録が図面と合わず説明に困る」といった事態も、点群があれば心配無用です。

土量計算 – 掘削や盛土など土工事における土量(体積)算出も、点群データがあれば驚くほど簡単です。従来は出来形断面をいちいち測って体積を積算する手間がありましたが、点群なら既存地盤と出来形の差分からソフト上で瞬時に土量を計算できます。例えばある建設会社では、ドローンで取得した地形点群を用いて任意の断面から土量を算出し、設計・施工計画に活用しています。大規模造成地の起工測量を点群測量で内製化した結果、従来は数日かかっていた作業を1人が1日で完了できるようにし、約5日間の工程短縮に成功しました。この取り組みにより測量作業の省力化だけでなく、週休二日制(残業削減)の現場運営にもつながっています。また別の現場では、新人技術者がスマホのLiDARで資材置き場の盛土をスキャンし、点群データから短時間で正確な盛土量を算出しました。従来の体積算出作業を大幅に効率化できることが分かり、3Dモデルと計算結果を上司に報告したところ「こんな簡単に現場の状況を見える化できるのか!」と大変驚かれたそうです。このように点群を使えば土量管理がスピーディーかつ高精度になり、施工計画の最適化や出来高管理の効率化にも直結します。

進捗管理・検査記録 – 工事の進捗状況や重要な検査項目も、点群を活用することで確実に記録・把握できます。例えば定期的に現場を点群スキャンしておけば、ある時点での出来高を3Dで蓄積できるため、どの範囲まで施工が進んだかを定量的に把握できます。従来は写真や測量野帳で管理していた進捗も、点群データ上で出来形を比較すれば一目瞭然です。また鉄筋の配筋状態や法面の仕上がり状況など検査対象も、点群で3次元記録しておくことで「やり直しがきく」検査記録を残せます。万一後日に疑義が生じても点群データから断面図や寸法を再取得できるため、追加調査のために現場に戻る手間が減ります。点群データは平面的な図面では伝わりにくい現場状況も直感的に示せるため、発注者や検査官への説明資料としても有効です。実際に点群や360度写真をクラウドで共有し、本社オフィスからVR空間上で現場を巡回するといった試みも行われています。担当者がいちいち現地に赴かなくても施工状況を把握でき、移動時間を大幅に削減できたと報告されています。このように点群は進捗・出来形を客観的かつ時系列に記録する手段となり、施工管理業務の省力化と信頼性向上に貢献します。

遠隔共有 – 点群データはクラウドを通じて関係者間で簡単に共有できるため、現場と遠隔地をリアルタイムにつなぐ情報基盤としても機能します。例えば現場でスキャンした点群地形を本社の技術者が即座にチェックし、離れた場所から施工の指示を出すことも可能です。専用ソフトをインストールしなくても、ウェブブラウザ上で点群の3Dビューを表示して距離や面積を計測できるサービスも登場しており、誰でも手軽にデータを扱えます。遠隔臨場(オンライン立会い)などにも点群共有が活用され始めており、現場と事務所間でデータや知見をリアルタイムにやり取りできる強みは大きいです。点群があれば「離れていても現場を見ている」のと同等の状況を作り出せるため、コロナ禍以降ニーズが高まった遠隔施工管理や働き方改革にも資する技術といえるでしょう。


導入ハードルは高くない!よくある誤解と現実の運用事例

「とはいえウチで使いこなせるだろうか…」という不安もあるかもしれません。しかしご安心ください。点群技術の導入ハードルは年々下がっており、現在では中小企業や現場の新人でも十分に活用できる環境が整いつつあります。ここでは導入時によくある誤解とその実際について整理し、あわせて現場での成功事例をご紹介します。


「機材やソフトに莫大な費用がかかるのでは?」 確かに従来のプロ向け3Dレーザースキャナーは数百万円以上、関連ソフトや高性能PCの準備にもコストがかかり、専門トレーニング費用まで考えると初期投資の大きさに尻込みしてしまいます。しかし重要なのは費用対効果の視点です。点群導入による業務効率化や手戻り防止によって、トータルではプロジェクト全体のコスト削減につながるケースが多く報告されています。例えばドローン点群の導入により測量コストの削減や工期短縮につながり、初期投資以上のリターンを得た事例は少なくありません。さらに最近では安価なサービスの活用や補助制度の利用も可能です。クラウド型の点群処理サービスなら月額数万円程度から利用でき、高額な買い切りソフトを購入しなくても始められます。自治体や国の補助金(中小企業の省力化投資補助など)で機器導入費用の一部を賄った例もあります。このように初期費用の不安は、長期的なROI(投資利益率)や外部支援策も踏まえて過度に構えず検討することが大切です。

「高度な機材や専門技術がないとうまく扱えないのでは?」 点群と聞くと「最新の高価な測量機器がないと無理では?」と思うかもしれません。しかし心配はいりません。近年は技術革新によって初心者でも扱いやすい機材が増えてきています。例えば後述するスマートフォン+小型デバイスによる手軽な点群計測はその代表例です。確かに大規模で高精度な計測を本格的に行うなら高性能レーザースキャナーや高級ドローンが必要かもしれません。しかし初めから全てを揃える必要はなく、目的に応じて小さく始めることが可能です。小規模な現場であれば手持ちのスマホや市販の小型ドローンでも十分活躍しますし、必要に応じて機材をレンタルしたり専門業者へ外注したりと柔軟な方法も取れます。データ処理についても最近のソフトウェアは自動化が進んでおり、難しい設定なしで点群のノイズ除去やCAD図面化ができるツールが増えています。大容量データの扱いといった技術的課題も、クラウドサービスの活用や新しい圧縮技術の開発で徐々に解決が進んでいます。つまり「機材が難しそう」という不安は、技術の進歩と工夫次第で十分乗り越えられると言えます。

「専門スキルや知識がないと扱えないのでは?」 初めて点群に触れる場合、「3Dの知識もないし自分に扱えるか…」という不安もあるでしょう。確かに点群データ特有の専用ソフト操作や大容量データの取扱いなど、習熟すべきポイントはあります。しかしこれも過度に心配はいりません。今や多くの現場で若手技術者が独学や社内勉強会でスキルを身につけ、実務に活かし始めています。メーカーやソフト提供各社もセミナーやオンライン講習を開催したり、Web上にチュートリアル動画を公開したりしているため、身近に詳しい人がいなくても学べる環境が整いつつあります。またネット上のコミュニティで質問して教えてもらえるケースも増えており、「一度に完璧を目指さず簡単な計測から試して徐々に慣れていけば大丈夫」というのが現場での実感です。実際に導入した担当者からも「思ったより簡単に使いこなせた」「やってみたらむしろ面白い」といった声が聞かれます。要は経験を積めば誰でも習得可能な技術ですから、尻込みせずまずは触れてみることが上達への近道と言えるでしょう。


以上のように、点群導入にまつわる典型的な不安要素はいずれも適切な解決策で克服可能です。そして何より、それらの不安を補って余りあるメリットがこの技術にはあります。実際、費用・機材・スキルのハードルは年々低下しており、今では中小企業や新人でも十分に活用できる土壌が整ってきています。「難しそう…」と敬遠せず、一つひとつ対策を講じながらぜひチャレンジしてみてください。


▶ 実際の導入成功事例: 不安を乗り越えて点群活用に踏み出し、効果を上げている現場も増えてきています。その中から、規模の異なる2つの事例を紹介しましょう。


事例1: 中堅土木企業によるドローン点群の内製化 – 沖縄県の建設会社 *屋部土建* では、2010年代後半から現場DXに積極的に取り組み、ドローンによる点群測量をいち早く導入しました。同社はこれまで外注していた起工測量(着工前の地形測量)を自社のドローンで内製化し、作業時間を約5日短縮して1人の作業員が1日で完了できるようにしたといいます。取得した点群データから任意の断面を切り出して土量を算出するなど設計・施工計画にも活用し、測量作業の大幅な省力化と工期短縮を実現しました。さらに点群計測をあえて自社内で行うことで人材育成とノウハウ蓄積につなげる方針を採り、若手社員が進んで新技術を習得して社内に知見が蓄えられています。ドローンで撮影した点群から3Dモデルを作成し、発注者との合意形成や新人教育に活用することで若手のモチベーションアップや人材定着にも効果を上げているとのことです。トップの意思と現場の工夫次第で中小企業でも十分な成果を上げられる好例と言えるでしょう。


事例2: 新人技術者がスマホ点群で社内DXを提案 – とある建設会社の新人Aさんは、初めて支給された社用スマートフォン(iPhone)のLiDAR機能に着目しました。Aさんは試しに現場資材置き場の土砂の山をスマホでスキャンして点群化し、そのデータから盛土量を算出してみました。短時間で正確な土量が把握でき、従来の体積算出作業を大幅に効率化できることがわかったのです。Aさんが作成した3Dモデルと計算結果を上司に報告したところ「こんな簡単に現場の状況を見える化できるのか!」と大いに驚かれたそうです。これをきっかけに社内でも点群技術への関心が高まり、現在では試験的にスマホ点群+無料ソフトによる出来形管理を行う実験が始まっています。Aさん自身、「最初は難しそうでしたが、やってみると楽しく、先輩にも『これは便利だ』と褒められました」と語っており、新人でもアイデア次第で現場DXに貢献できることを示すエピソードとなりました。この事例からも、小さな一歩でもまず現場で「やってみる」ことの大切さが実感できます。


スマホ・LRTKを使った無理のない始め方(費用感・精度・実績)

最後に、具体的にどんな機材・環境があれば点群を始められるかを見てみましょう。結論から言えば、近年は身近なスマートフォンや小型デバイスを組み合わせることで手軽に高精度の点群計測を行う方法が登場しています。その代表例が *スマホLRTK*(スマートフォン測量)と呼ばれるアプローチです。


例えばスマートフォン(主にiPhone)に装着する超小型GNSS受信機「LRTK Phone」と専用アプリ・クラウドを用いれば、普段使っているスマホがそのまま高精度な万能測量機器に早変わりします。手のひらサイズのアンテナ受信機をスマホに取り付けるだけで、衛星測位によるセンチメートル級の高精度測位が可能となり、スマホ内蔵のLiDARセンサーと組み合わせて位置情報付きの高精度点群を取得できます。従来は専門機器が必要だったRTK測位(リアルタイムキネマティック)をスマホで手軽に実現できる画期的な製品で、まさに初心者向けに設計されたソリューションと言えるでしょう。取得データはリアルタイムでクラウド同期されるため、計測したその場で自動的に点群データをクラウド上にアップロードできます。ブラウザ上で3D点群を表示したり関係者と共有したりすることも可能で、現場⇔オフィス間の情報連携もシームレスです。


気になる費用面ですが、従来機器に比べて価格は非常にリーズナブルで、現場の作業員一人ひとりが1台ずつ持てる時代が現実になりつつあります。高額なレーザースキャナーや測量機を何台も用意しなくても、スマホLRTKであれば必要な人が必要なときに気軽に3D測量を行えるのです。実際の価格は製品やサービスによりますが、イニシャルコスト・ランニングコストとも数十万円規模から導入可能なものが多く、中小企業でも手を出しやすい水準に下がってきています。精度面についても心配はいりません。LRTK Phoneを用いたスマホ測位では、水平位置で±2cm程度・高さ方向で±4cm程度の測位精度が実現できます。これはi-Constructionの出来形管理要領で要求される計測精度(±5cm以内)を悠々クリアする数値です。例えば国交省の基準では「出来形管理は±5cm以内、起工測量は±10cm以内」と定められていますが、スマホLRTKならその規格を十分満たす精度の点群が取得可能です。むろん適切な測位環境下での話ではありますが、少なくとも通常の土木施工で必要とされる精度はスマホでも十分実用域に達していることが各種検証で示されています。


では実際に、スマホや小型RTKを使ってどのように始めればよいのでしょうか?ポイントとなる機材・環境の例をいくつか挙げます。


スマートフォン/タブレット: LiDARスキャナーを搭載したiPhoneやiPad Proであれば、専用アプリによって数メートル四方の範囲を手軽にスキャンして点群化できます。小規模な構造物の出来形計測や室内測定などに向いており、操作も直感的です。LiDAR非搭載の端末でも、写真撮影から点群生成できるアプリ(フォトグラメトリ系)を使えば簡易的な3Dモデルを取得可能です。まずはお手持ちのスマホで試してみるのも良いでしょう。

小型RTK受信機(高精度GNSS): スマホやタブレットとBluetooth接続できるRTK-GNSS受信機も各種市販されています。前述のLRTK Phoneのようなデバイスを利用すれば、スマホ計測でも公共座標系に合致した高精度な測量座標付き点群が取得できます。特に広い現場で正確な座標が必要な場合や、公共測量の基準点に合わせた点群データを作成したい場合に有用です。スマホ単体でも点群化自体はできますが、RTKを組み合わせることで「測って終わり」ではなく後続業務に使える精度を確保できる点がメリットです。

ドローン(UAV): 市販の小型ドローンを使えば、空撮写真から点群モデルを生成することも比較的低コストで可能です。上空から現場全体を撮影し、クラウドサービス等でフォトグラメトリ処理を行えば、広範囲の地形点群を短時間で得られます。発注者から航空写真測量の活用を求められている工事では、まずドローン点群から始めてみるのも一手です。最近はドローン搭載型のレーザースキャナー(UAV-LiDAR)も登場しつつありますが、まずは手軽な写真測量からでも十分効果を実感できるでしょう。

PC・ソフトウェア: 取得した点群データの処理や解析にはパソコンが必要です。とはいえ初めは市販のノートPCでも動作する軽量ビューアやクラウドサービスを利用し、本格的な編集が必要になった段階で高性能ワークステーションの導入を検討すればOKです。ソフトもいきなり高価なものを買う必要はありません。点群閲覧・簡易解析だけなら無償ソフトやインストール不要のクラウド型ツールもあります。目的に応じてフリーから有償まで選択肢がありますので、小さく始めて徐々にステップアップする方針で問題ありません。

インターネット環境: 点群データはファイル容量が大きくなるため、クラウドにアップして関係者と共有したり外出先で閲覧したりするにはネット環境の整備も重要です。現場事務所に高速回線を引く、モバイルルーターを用意するといった対応や、データ共有用のクラウドストレージサービスを契約しておくこともDX環境構築の一環として検討しましょう。


以上のように、「スマホ+α」から「ドローン+専用ソフト」まで 予算や目的に応じて様々な始め方が選べます。重要なのは「○○が無いと始められない」という絶対条件はないということです。自社の規模・ニーズに合った機材を無理のない範囲で選び、まずは使ってみることが肝心です。必要に応じて後から機材やソフトを拡充すれば良いので、最初から完璧に揃えようとせず小さく始めて徐々にステップアップするくらいの気持ちで問題ありません。


まとめ:点群を現場標準にするために「まずやってみる」

点群による現場DXは、一見ハードルが高いように思えるかもしれません。しかし本稿で述べてきたように、技術の進歩によって誰もが手軽に3D点群を扱える時代が到来しつつあります。点群データの活用は出来形管理や土量計算の効率化、遠隔施工管理の実現など、多くのメリットを現場にもたらします。その一方で、必要な初期投資やスキル習得のハードルは年々低くなり、「費用がかかりすぎる」「ウチには使いこなせない」といった先入観は過去のものになりつつあります。むしろ若手技術者を中心に「思ったより簡単だった」「新しい技術で業務が楽になった」という前向きな声が各所で聞かれ始めています。


現場DXの第一歩として点群活用を軌道に乗せるコツは、とにかく小さくてもいいから実際にやってみることに尽きます。最初はごく小さな範囲・限られた用途でも、点群を使ってみることで現場の見え方が変わり、周囲の理解も得られてきます。実際に成功した事例を社内外で共有すれば「自分たちもやってみよう」という機運が生まれ、DXの波及効果も期待できます。幸いスマホ測量など誰でも扱える手段も登場していますから、肩肘張らずにまずは試行から始めてみましょう。点群を使った3D管理を一度経験すれば、その有用性を実感できるはずです。そして「点群があるのが当たり前」の現場が増えていくことで、将来的にはそれが業界標準となり、ひいては建設業全体のDX推進にも大きく貢献することでしょう。まずは小さく踏み出し、点群活用のメリットをぜひ現場で体感してください。きっと「もっと早く始めれば良かった」と感じるに違いありません。さあ、あなたの現場でも今日から点群によるDXを始めてみましょう!


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

bottom of page