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失敗しない点群保存|現場で使えるファイル形式と管理方法の実践ガイド

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AR Civil Engineering

建設・測量業界では、3Dレーザースキャナーや写真測量による点群データを扱う機会が増えています。しかし、大容量で特殊なこのデータの保存方法に不安を感じている実務者も多いのではないでしょうか。点群を適切に保存・管理できていないと、せっかく取得した現場情報を失ったり活用できなくなったりする恐れがあります。本記事では、点群データ保存の重要性や陥りがちな失敗例を整理し、推奨されるファイル形式の選び方から効果的な命名・管理方法、クラウド活用まで、現場で実践できるノウハウを詳しく解説します。


点群データ保存の重要性(現場記録・DX基盤・トラブル防止)

点群データを正しく保存しておくことは、現場記録の維持や将来的なデジタル活用のために極めて重要です。例えば施工現場では、「完成後に必要な写真が見当たらない」「出来形記録が図面と食い違い説明に困った」といった経験はないでしょうか。施工物の形状や寸法を正確に記録しておかないと、検査で指摘を受けたり発注者と紛争になる恐れがあります。その点、点群データなら現場を丸ごと記録できるため、写真撮影漏れなどヒューマンエラーを防ぎ、完成後でも必要な情報を確実に取り出せます。まさに「後悔のない」品質記録を残す切り札となるのです。


さらに点群データは単なる記録に留まりません。DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤データとしても極めて有用です。点群は現場の地形や構造物をありのままデジタル化したもので、言わば現実空間を丸ごとコピーしたデジタルツインの基盤となる情報です。従来の図面や写真では把握できない詳細まで高精度に再現できるため、解析やシミュレーション、BIM/CIM連携など幅広い用途に活用できます。国土交通省が推進する*i-Construction*やBIM/CIMの原則適用を背景に、点群の現場活用は今や新常識になりつつあります。つまり点群データをしっかり保存しておくことは、将来のスマート施工やトラブル防止への備えにも直結しているのです。


ありがちな点群データ保存の失敗例

ここでは、点群データの保存で陥りがちな失敗例をいくつか紹介します。同じ失敗を繰り返さないよう、心当たりがないか確認してみてください。


古いデータを上書きして消してしまった: 点群の更新や再測定を行った際、ファイル名を工夫しないと古いデータに上書き保存してしまうことがあります。一度上書きしてしまうと過去の情報は戻りません。特にスキャン機器がデフォルトのファイル名(例:「scan0001.las」など)を付ける場合は注意が必要です。常に別名で保存し、元データは別途バックアップしておきましょう。

点群の座標系が不明になった: 時間が経ってから点群データを開いたとき、「この点群はどの座標で計測したものだっけ?」と困るケースがあります。基準点に基づく測量座標なのか、現場のローカル座標なのかが不明だと、他の図面や測位情報と重ね合わせることができません。これを防ぐには、ファイル名やメタデータに測量座標系や原点位置の情報を明記しておくことが大切です(例:「○○現場\_世界測地系2011座標系.las」のように)。また、計測時に基準点や既知点で合わせ込んでおく、取得後にメモを残すなどして、後からでも座標を追跡できる状態にしておきましょう。

特定のソフトでしか開けない形式で保存した: 点群データにはさまざまな保存形式がありますが、中には特定メーカーの専用ソフトでしか扱えないものもあります。その形式のまま保存して共有した結果、相手先で「データが開けない」となるトラブルも少なくありません。例えばAutodesk社のRecapで扱うRCP形式は、同時に生成される「◎◎\_Support」フォルダとセットで管理しないと他PCで開けなくなります。メーカー独自の形式(FLSやPTXなど)も、そのソフトが無いと読めないため注意が必要です。長期保存や他者との受け渡しには汎用的な形式(後述するLASやE57など)を使い、特殊形式しか選べない場合も必ず変換コピーを用意しておきましょう。

バックアップがなくデータ紛失: 点群データはファイルサイズが大きく扱いにくいため、ついPCのローカルやUSBメモリに一時的に保存したままにしてしまうことがあります。しかしその状態でPCが故障したりメディアを紛失したりすると、貴重な点群が一瞬で消失しかねません。実際に「ハードディスク故障でスキャンデータが全て消えてしまった」という悲惨な例も報告されています。そうならないよう、必ず別のドライブや社内サーバ、クラウドなど複数箇所にバックアップを取りましょう。特に生データは取り直しが効かないため、念には念を入れて保管することが重要です。

ファイルが巨大すぎて扱えない: 高密度な点群ほどファイルサイズも巨大化します。数億点規模のLASファイルだと数GBを超えることも珍しくありません。そのようなファイルを単一で扱おうとすると、PCのメモリ不足で開けなかったり、一部ソフトでは4GB制限に引っかかりインポートに失敗したりします。また、メール添付や社内ネットワーク経由で共有するにも不便です。データ量が膨大な場合は、エリアごとに分割する、後述の圧縮形式を使うなどして、扱いやすいサイズに調整する工夫が必要です。


おすすめの点群ファイル形式と用途別の選び方

点群データには多彩なファイル形式がありますが、ここでは代表的な形式とその特徴を紹介します。それぞれ得意分野が異なるため、用途に応じて使い分けることが大切です。


LAS (LASer): 点群データの事実上の標準フォーマットです。アメリカASPRSが策定したバイナリ形式で、3次元座標や反射強度、分類情報などを効率よく格納できます。最も広く使われている点群形式の一つであり、多くのソフトウェアでサポートされています。元データ保存や他者との交換用としてまず選んで間違いのない形式です。

LAZ: LAS形式の圧縮版がこのLAZ形式です。データ内容はLASと同一ですが、ファイル容量を大幅に削減できます(圧縮率はデータにもよりますが、LASの20〜50%程度のサイズになります)。そのため長期間のアーカイブ保存やクラウド・メールでの共有にも適しています。ただし、読み書きには対応ソフトが必要です。しかし近年は無料ビューア含め主要な点群ソフトがLAZ対応しており、実務上大きな支障は少ないでしょう。

E57: ASTM(国際標準化機構)によって標準化されたベンダーニュートラルな3Dデータ形式です。点群データに加え、撮影時の画像やセンサーのメタデータなどをまとめて保存できる拡張性が特徴です。異なるメーカー間でデータ交換する中間フォーマットとして優れており、将来にわたって再利用しやすい保管向け形式としても推奨されています。各種レーザースキャナがエクスポート形式として標準対応していることも多く、ソフト間での受け渡しやアーカイブ用途に積極的に活用すると良いでしょう。

XYZ(テキスト): 点群の各点座標値(X, Y, Z)をテキストで列記したシンプルな形式です。場合によっては色(RGB)や反射強度などの値を追加したCSVやTXTとして出力されます。人間が直接中身を確認・編集できる反面、データ量が膨大になりファイルサイズも非常に大きくなります。そのため巨大全体をこの形式で保存するのは非現実的ですが、一部領域の抽出データを渡す場合や表計算ソフトで簡易解析する場合などに用いられることがあります。テキストゆえに汎用性は高いものの、基本的には上記バイナリ形式を使い、必要なときに変換して利用するのが望ましいでしょう。


*※上記のほか、PLYやPCDといったオープン形式、各メーカー独自のFLS・PTX・RCPなど様々な形式があります。自社や取引先の環境で対応状況を確認しつつ、長期利用には信頼性の高い汎用形式にして保管しておくことをおすすめします。*


ファイル命名ルールとバージョン管理のポイント

点群ファイルの名前の付け方ひとつで、後々のデータ管理性は大きく変わります。現場で誰が見ても内容を把握でき、かつ重複や上書き事故を防げるよう、明確な命名ルールを決めておきましょう。


プロジェクト名や測定場所を含める: 何の現場データか一目で分かるよう、ファイル名にプロジェクト名や工区・測点名を入れます。例:「`○○ダム_天端部点群.las`」など。

日時やバージョン番号を付記する: 同じ場所を複数回測った場合に区別できるよう、計測日や版数をファイル名に含めます。日付は「YYYYMMDD」形式で入れると並べ替えも簡単です(例:「`20230520_出来形点群_v1.laz`」)。版管理としてv1, v2...やRev.A, B...を付ける方法も有効です。

座標系や単位情報も必要に応じて: 上述の通り座標系は非常に重要です。可能であればファイル名やフォルダ名に採用した座標系や原点名を含めます(例:「`P10基準点座標系.las`」)。難しい場合も、付帯ドキュメントやメタデータ欄に記載し、データだけ見ても空間座標が追跡できる状態にしておきましょう。

記号や全角文字の使用は控える: システムによっては日本語ファイル名やスペースを含む名前で不具合が出ることがあります。できるだけ英数字とアンダースコア(`_`)のみで構成し、スペースは使わない方が無難です。特にクラウド間で同期する場合や海外の協力会社とデータ共有する際に文字化けを防げます。


ファイル名とあわせて、古い版の保管も徹底しましょう。新しい処理をした点群データを保存する際は、必ず別ファイルとして保存し、以前の版はアーカイブフォルダなどに残しておきます。こうしておけば、万一新しい処理で不備があっても元に戻したり差分を検証したりできます。バージョン管理ソフトほど厳密でなくとも、手動で「○○\_v2」「○○\_v3」などと履歴を残すだけでも大きな安心材料になります。


フォルダ整理とデータ配置のコツ

点群データはプロジェクトごと、日付ごとに発生し、ファイル数も多くなりがちです。後から必要なデータをすぐ取り出せるように、フォルダ構成を工夫しましょう。


基本はプロジェクト単位でフォルダを作成し、その中に「原データ」「処理データ」「成果品」など目的別のサブフォルダを用意する方法が考えられます。さらに日付やエリアごとに細分化すれば、いつ・どこで取得した点群か明確になります。例として:


○○橋梁点群データ/
├─ 00_原データ/
│    ├─ 2023_05_現地測量/
│    │     └─ 20230520_橋脚A_点群.las
│    └─ 2023_06_追加測量/
│           └─ 20230610_橋脚B_点群.las
├─ 01_処理データ/
│    └─ 20230615_統合計算済_点群.las
└─ 02_成果品/
      └─ 20230620_出来形検査用_断面図.pdf

上記は一例ですが、社内でフォルダ構成ルールを決めておけば、他の担当者でも迷わずデータを探せるようになります。特に点群以外にも関連資料(写真・図面など)が多い現場では、名称と配置を体系立ててデータを一元管理することが重要です。また、ソフト固有のプロジェクトフォルダ(RecapのRCPデータとSupportフォルダなど)は、フォルダ構成を崩さないよう注意しつつ、上位のプロジェクトフォルダ内にまるごと保存するようにしましょう。こうした整理整頓を心掛けることで、「ファイルが見つからない」「別担当者がどこに保存したか分からない」といった事態を防げます。


大規模点群の分割保存と圧縮活用

前述のとおり、点群データは非常に大容量になることがあります。そこで分割保存や圧縮のテクニックを活用して、扱いやすくする工夫も欠かせません。


◯ 点群データの分割: 広大なエリアをスキャンした場合や、点群密度が極めて高い場合は、エリアや対象ごとにファイルを分けて保存することを検討しましょう。例えばプラント全体の点群を「エリアA・B・C」別に3ファイルに分割したり、道路の点群をキロ程ごとに区切ったりといった具合です。一つのファイルが巨大だと開くのにも時間がかかりますが、小分けにしておけば必要な部分だけ迅速に開いて処理できる利点があります。また、一部のソフトやフォーマットで上限サイズがある場合の回避策にもなります。分割時には重複部分(オーバーラップ)が最低限になるよう注意し、ファイル名に分割範囲を記載するなど管理も行いましょう。


◯ データ圧縮とアーカイブ: 点群データを長期保管したり共有する際は、圧縮形式の活用も有効です。前述のLAZ形式はポイントクラウド専用の圧縮フォーマットでしたが、それ以外にもZip圧縮など一般的な手法でファイルサイズを削減できます。特にテキスト系の点群データ(XYZやPTSなど)はZIP圧縮で大幅に容量が縮小するため、保管前に一手間かける価値があります。また、複数ファイルをまとめてZIP/RARアーカイブにすれば、フォルダ構成を保ったまま一括で転送・バックアップできる利点もあります(前述のRCP+Supportフォルダの例など)。ただし圧縮したままでは点群ビューアで直接開けないため、活用時には解凍が必要です。圧縮データを保管用、副次的に編集用の非圧縮データを保持するなど、状況に応じて使い分けましょう。


クラウド保存の利点とローカルとの使い分け

近年はクラウドストレージの普及により、点群データもインターネット上で保管・共有しやすくなっています。クラウド保存にはローカル保存にない多くのメリットが存在します。


まず、クラウド上に置く最大の利点はバックアップの安全性です。ローカルPCや外付けドライブにのみ保存していると、それらが破損した際にデータ消失のリスクがあります。一方クラウドにアップしておけば、たとえ手元の機器が故障してもデータはクラウド上に残ります。また、クラウドはデータセンター側で冗長化されているため、自前で複数台にバックアップを取るより確実です。


次に多拠点からのアクセス性です。クラウドに点群を保存すれば、本社と現場事務所、協力会社など地理的に離れた場所からでも同じデータを閲覧・ダウンロードできます。いちいちハードディスクを郵送したり大型メールを送らなくても、リンク共有で済むのは大きな効率化です。権限管理機能を使えば、社外に一部データのみ見せるといった調整も容易です。さらにサービスによってはブラウザ上で点群をプレビュー表示できるものもあり、受け手側が専用ソフト無しでも確認できる場合があります。


もっとも、クラウド万能というわけではありません。データ量が多い場合、アップロード・ダウンロードに時間がかかったり、大容量転送に対応する契約が必要だったりします。また機密性の高いプロジェクトでは、インターネット上にデータを置くこと自体に抵抗があるかもしれません。そのため、ローカルとクラウドを使い分けるハイブリッド運用が現実的です。普段の詳細な編集作業や重たい解析はローカルの高性能PCで行い、完成データやバックアップをクラウドに保存しておく、といった形です。点群データ自体はローカル・ネットワーク・クラウドのいずれにも保存可能です。各社のセキュリティポリシーや現場の通信環境も考慮しつつ、重要データは確実に二重化するようにしましょう。


現場からスマホで点群取得!クラウド活用の実践例【LRTK】

 スマートフォンとLRTKを用いた高精度点群計測とクラウド共有のイメージ:左写真はiPhoneに装着したLRTKデバイス本体です。右上はスマホで取得した点群により土量を現場計測している例です。右下はLRTKのAR杭打ち誘導機能の画面です。


近年、iPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーや高性能カメラを活用し、スマホだけで点群計測を行う手法が登場しています。中でも注目されるのが、Lefixea社のサービス「[LRTK Phone](https://www.lrtk.lefixea.com/lrtk-phone)」です。LRTKはスマートフォンに小型の測位デバイスを取り付け、専用アプリを使うことで、誰でも手軽にcm級精度での点群スキャンを実現します。従来は高価なレーザースキャナーやGNSS機器が必要だった絶対座標付きの点群測量も、LRTKならスマホ1台でこなせてしまいます。


LRTKの大きな特徴は、取得した点群データをその場で即クラウドに保存・共有できることです。現場の技術者が一人で歩き回りながら周囲をスキャンし、そのデータをリアルタイムでクラウド送信すると、オフィスにいる上司や発注者も即座に点群を確認できます。まさに「いつでも・どこでも・誰でも」現場の3D情報を共有できる時代が到来しつつあると言えるでしょう。クラウド上のLRTKプラットフォームでは点群データの閲覧はもちろん、断面図の自動作成やオルソ画像生成、体積・距離計測など多彩な解析が可能で、取得後のデータ利活用までワンストップでサポートします。専門知識がなくても簡単に高精度3D測量が行えるため、点群データ活用のハードルを大きく下げる画期的なソリューションです。


現場での点群保存失敗を防ぐには、「すぐ保存・すぐ共有」できる仕組みを取り入れることも有効です。LRTKのようなスマホ計測+クラウド連携を活用すれば、取りこぼしのない現場記録と安全なデータ保管を同時に実現できるでしょう。


まとめ

点群データの保存・管理は、3D時代の現場運用において避けて通れない重要課題です。適切な形式を選び、ルールに沿って命名・整理し、バックアップやクラウドも駆使して保管することで、大切な現場の「3次元の記録」を失敗なく未来へ繋ぐことができます。紹介してきたポイントを実践すれば、点群データ管理への不安はきっと解消するはずです。ぜひ今日から取り入れて、安心・安全かつ有効に点群を活用していきましょう。


LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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