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RTKによる土木測量の未来:
高精度GPSが現場を変える

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2025年3月13日 掲載
AR土木

現場の測量技術がいま大きく変わろうとしています。その中心にあるのがRTKと呼ばれる高精度GPS測位技術です。RTKは衛星測位の誤差を数センチまで小さく抑えることができ、従来の方法では難しかった迅速かつ高精度な測量を可能にします​

本記事では、RTK技術の概要と進化、土木測量の課題への解決策、高精度GPS技術の最新トレンド、そして未来の測量でRTKが果たす役割について解説します。さらに、新しいRTKソリューション「LRTK」の紹介と、無料で資料請求ができる情報もご案内します。ゼネコンから中小土木企業、測量技術者、インフラメンテナンス担当者まで、現場の生産性向上に役立つRTK測量の未来像をぜひ掴んでください。

1. RTK技術の概要と進化

 

RTK技術は1990年代から測量分野で研究・実用化が進められ、当初は基地局と移動局を無線で通信させる単一基準点方式が主流でした。近年では、国土地理院の電子基準点網など複数の基準局データを利用するネットワーク型RTKも実用化され、長距離でも安定した高精度測位が可能となっています​。

また利用できる衛星もGPSだけでなく、GLONASSやガリレオ、みちびき(QZSS)などマルチGNSS化が進み、受信可能な衛星数が増えたことでRTKの信頼性・精度はさらに向上しています。技術の進展とともに機器の小型化・低価格化も進み、現在ではRTK対応機器が以前より手に入れやすくなりました​。RTKは測量技術の進化の中で生まれた革命的な手法であり、その高精度ゆえに土木測量のみならずドローン測量や農業の自動運転、建設機械のガイダンスなど幅広い分野へ応用が進んでいます​。

2. 土木測量における従来の課題とRTKの解決策

土木測量の現場では、従来いくつかの課題が指摘されてきました。例えば、以下のような点です。

  • 多数の基準点設置と人手: 従来のトータルステーション測量や写真測量では、高精度な測量のために現地に多数の標定点(地上基準点)を設置する必要がありました。測量班が半日がかりで複数の基準点を設置・測量するのは日常茶飯事で、非常に手間と時間がかかっていたのです​。RTK測位を導入すれば、こうした事前の基準点設置作業を大幅に省略できます。基地局さえ設置すれば移動局はどこでも即座に座標を取得できるため、測量ポイントごとに基準点を設ける必要が減り、測量作業全体の効率が向上します。

  • 複数人での作業: トータルステーションによる測量は一般に機械操作員とプリズムを持つ補助員の2人1組で行う必要がありました。一方、RTK測位であれば移動局(ローバー)を持った作業員が1人で移動しながら測点を観測できます。基地局は固定しておけば無人でも機能しますし、通信圏内であれば地域の電子基準点から補正情報を得るネットワーク型RTKなら基地局設営すら不要です​。このように1人で測量が完結するため、人手不足の解消や人件費削減にもつながります。

  • 測量時間と精度の両立: 広大な現場や障害物の多い環境では、トータルステーションだと何度も据え直しや視通確保が必要で、測量に時間がかかっていました。RTKなら見通しの悪い地形でも上空さえ開けていれば測位可能です。例えば道路や鉄道の線形測量では、RTKローバーを車両に搭載して走行しながら連続測位することで短時間で詳細なライン測量が可能です。さらにRTKはリアルタイムに高精度位置を取得できるため、その場でデータを確認しながら作業できます。これにより手戻りの削減や即時の判断が可能となり、効率と品質の両立が図れます。

  • 全球座標への直接対応: 従来、工事現場ごとにローカル座標系で測量を行い、あとで公共座標系(世界測地系)に変換するといった手間がありました。RTK測量では初めから衛星基準の全球座標(日本なら世界測地系の座標)を取得できるため、座標変換や既知点へのローカライゼーション作業を簡素化できます。現場で取得した点群データや出来形データも公共座標系で即座に扱えるので、設計データとの比較や他チームとのデータ共有がスムーズになります。特にインフラ維持管理では、定期測量データを全球座標で蓄積できるため、時系列で変化を正確に追跡することができます。

このように、RTKは時間・手間・人員・精度など様々な面で従来測量の課題を解決する切り札となります。例えば「標高の縦横断測量が従来の半分の時間で完了した」「人員を減らしても従来以上の精度で出来形管理ができた」など、多くの現場でRTK導入の効果が報告されています。結果として、品質向上と現場作業の負担軽減を同時に実現できるため​、土木測量のワークフロー自体がRTKによって見直されつつあります。

3. 高精度GPS技術の最新トレンド

技術革新のスピードは速く、RTKを含む高精度GPS/GNSS測位の分野でも次々と新しいトレンドが登場しています。最近注目すべきポイントをいくつか見てみましょう。

  • ネットワーク型RTKとクラウドサービス: 前述のとおり、複数の基準局データをリアルタイム統合するネットワーク型RTKが普及し、広域で安定したセンチ級測位が利用できるようになりました​。日本全国に約1,300点設置された電子基準点(GNSS連続観測システム)がその基盤で、Ntrip通信を介してインターネット経由で補正情報を取得するサービスも登場しています。これにより、自前で基地局を用意しなくてもクラウド経由でRTK測位が可能となり、特に中小規模の事業者でも手軽に高精度測量を利用できる環境が整ってきました。

  • 準天頂衛星「みちびき」の活用: 日本独自の衛星システムであるQZSS(みちびき)によるセンチメータ級補強サービス(CLAS)も高精度測位の新潮流です。CLAS対応受信機を使えば、衛星から配信される補正情報を受け取って単独測位でほぼRTK並みの精度を得ることが可能です。RTKのような通信インフラが不要になる利点があり、山間部など通信環境が不安定な現場でも高精度測位が期待できます。ただし現状ではRTKによる固定解の方が水平2~3cm程度とCLASより高精度であり​、使い分けが必要です。それでも政府の実証実験では「実用上RTKに遜色ない精度」が確認されるなど​、今後RTKと衛星補強情報を組み合わせたPPP-RTK技術が一層注目されるでしょう。

  • マルチGNSSと受信機の進化: 近年打ち上げられた衛星や新周波数の利用により、受信できる衛星信号の多様化が進みました。GPSのL1に加えL5帯や、ガリレオの高精度サービス、BeiDou(北斗)の信号など、多周波・多衛星対応の受信機が増えています。これにより都市部や森林など一部衛星が遮られる環境でも測位の継続性が向上し、初期化時間の短縮やフェーズ固定解の安定取得につながっています。また、GNSSとIMU(慣性計測装置)を緊密に統合したハイブリッド測位も実用化が進み、トンネル内や高架下でGNSSが途切れた瞬間もIMUでブリッジして測位を維持する技術も登場しています。これらはインフラ点検などで途切れなく位置記録を行う際に威力を発揮します。

  • ドローン・モバイルとの融合: ドローンによる写真測量やレーザー測量にRTK-GNSSを搭載することで、これまでは地上に設置していた多数の標定点を大幅に省略しつつ、空中写真や点群データに直接高精度な位置情報を付与できるようになりました。RTK搭載ドローンを使えば、広範囲の三次元測量も短時間で行えます​。また近年ではスマートフォンやタブレットとGNSS受信機を組み合わせて、現場で手軽に3次元計測を行うソリューションも登場しています。

このように、モバイル端末を万能測量機に変える技術が静かに普及し始めています。専用機に比べ安価で持ち運びも容易なため、今後は1人1台のスマホ測量が現場のスタンダードになる可能性があります。

4. 未来の土木測量でRTKが果たす役割

RTKは今後の土木測量において、単なる測位技術の一つを超えた中核的な役割を担っていくと考えられます。将来を見据え、どのような変化が期待できるかいくつか展望を述べます。

まず、RTKの浸透によって測量作業のデジタル化・自動化が加速します。例えば、建設現場ではICT施工と呼ばれる取り組みの中で、重機にGNSS受信機を搭載して自動的にブレードやバケットの高さを制御するマシンガイダンスが実用化されています。これもRTKの高精度測位があって初めて成立するものです。将来的には、測量士が測った設計面のデータを即座に重機に送信し、自動施工を行い、出来形を再度RTKで検測してクラウドに記録するといったシームレスなフィードバックループが実現するでしょう。リアルタイムで現場の三次元モデルが更新されていく、いわゆるデジタルツインの構築にもRTKは欠かせません。

また、RTKはインフラの維持管理でも重要な役割を果たします。道路や鉄道、橋梁などでは、定期的な変位測定やモニタリングが求められます。従来は水準測量や定点観測に頼っていたものが、RTKを用いた常時観測システムへと移行しつつあります。例えば、高速道路の路面沈下を検知するために路肩にGNSS受信機を設置し、常時センチ精度で高さを監視する、といったことも技術的には可能です。異常があれば即座に検知・通報できるため、災害予防やメンテナンス計画に革命をもたらすでしょう。

人材面でも、RTKは測量の未来を変えます。高齢化や担い手不足が深刻な建設業界において、RTKによる省力化・スキルレス化は大きな福音です。先進的な現場では新人作業員でも扱える簡便なRTK機器を導入し、ベテラン技術者の負担を減らす試みが始まっています​。専門の測量班を常駐させずとも、施工管理技術者が自ら必要な時にサッと測量できる時代が訪れつつあります。これにより、現場の意志決定のスピードが上がり、測量待ちによる工事停滞が減少するでしょう。

さらに、コスト構造の変化も見逃せません。RTK機器の低価格化・小型化が進んだことで、「測量機は高価で限られた人が使うもの」という前提が崩れ始めています。とりわけスマートフォンを活用したRTKは“一人一台”を現実的にしつつあります​。ある大手ゼネコンの研究では、安価な単周波RTK機器を現場事務所の予算で調達し、非測量技術者でも扱えるようになることで、現場全体が大きく様変わりするだろうと報告しています。このように、RTKは将来の土木測量において標準インフラとなり、誰もが当たり前に使う時代が来ると予想されます。

5. RTK測量の普及と今後の展望

現在、RTK測量は大手企業から中小の施工現場まで着実に普及が進んでいます。その背景には、国策としてのi-Construction推進や、先述した機器の低廉化・使いやすさ向上があります。特に国土交通省はICT施工を推奨し、施工プロセス全体のデジタル化を後押ししています。その中核技術としてRTK-GNSSは位置づけられており、出来形管理要領にもRTKドローンやRTK移動測量の活用が明記され始めました。近い将来、公共事業ではRTKによる3次元出来形測量データの納品が標準要件となる可能性もあります。

民間に目を向けても、導入事例の拡大が普及を後押ししています。例えば大手ゼネコン各社はダム工事やトンネル工事などでRTKや衛星補強情報を活用した精密測位の実証を行い、大幅な効率化と品質向上を実現しました​。

これらの事例は業界誌や学会で共有され、中小規模の土木業者や測量会社にも波及しています。「うちの規模でもRTKが使えるのか」「ベテランがいなくても精度が出せるのか」という不安は、成功事例を見ることで次第に払拭されてきました。今ではレンタルでRTK機器を短期間借りたり、測量会社にRTKオペレーションごと外注したりと、無理なく活用を始める企業も増えています。

技術面でも将来の展望は明るいものがあります。衛星測位は今後さらなる高度化が見込まれ、来年度以降、より多くのみちびき衛星が運用される予定です。加えて、欧米でも日本のCLASに似たPPP-RTKサービスが整備されつつあり、将来的には海外の工事案件でも共通の機器でセンチ測位ができるようになるでしょう。GNSSチップのモジュール化が進んだことで、自社開発のシステムにRTK測位機能を組み込むことも容易になりました​。

たとえば独自の施工管理アプリにRTK連携機能を追加し、図面上でリアルタイムに現在位置を確認するといったことも可能です。現場のクリエイティビティ次第で、RTKの活用範囲はさらに広がっていくでしょう。

最後に、教育と制度面の整備も重要です。測量士・測量士補の教育課程や資格試験でも、GNSS測量の知識は必須となりつつあります。現場でRTKを使いこなす人材育成のために、メーカーや教育機関による研修プログラムも充実してきました。制度的にも、公共測量の作業規程においてGNSS測量の規定が整備され、RTKによる観測成果の精度管理手法が標準化されています。こうした環境整備がさらに普及を後押しし、「RTK測量=あたりまえ」の時代が目前に迫っているといえるでしょう。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

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